雪山登山のノート

Timtamの冬山(雪山) 雪山に必要な装備・諸道具
食料のこと ピッケルとアイゼンワーク
陽春(残雪期)の雪山登山 雪山でのテント生活技術
雪洞のこと 深雪の山の用具
12本爪アイゼンクライミング アイスクライミング(モノポイントアイゼン)
ホワイトアウトへの対応 ツエルト必携
凍傷への対応 低体温症への対応
高所・低圧環境下での障害 紫外線障害
熱傷(やけど) ビーコン取扱説明書
岩登りのノートに行く 沢登りのノートに行く
遭難対策ノートに行く Timtamのトップページに行く
雪山登山企画集に行く  

雪山登山のノート
Timtamの冬山(雪山)   雪山に必要な装備・諸道具   食料のこと   ピッケルとアイゼンワーク   陽春(残雪期)の雪山登山   雪山でのテント生活技術   雪洞のこと   深雪の山の用具   12本爪アイゼンクライミング   モノポイントアイゼンクライミング   ホワイトアウトへの対応   ツエルト必携   凍傷への対応   低体温症への対応>    高所・低圧環境下での障害   紫外線障害   熱傷(やけど)   ビーコン取扱説明書   岩登りのノートに行く   沢登りのノートに行く   遭難対策ノートに行く   雪山登山企画集に行く   Timtamのトップページに行く  

 
Timtamの冬山(雪山)
 Timtamの入会案内前文にある「四季おりおりの生活の延長線上にある山」に冬も入りますが、「冬山」というのは山に行く者にとって特別な響きがあります。かっては「冬山に登る」=「危険・えらい・プロの領域」という図式があり、普通の登山者は冬山を楽しむことをあきらめていました。
 しかし、冬山というのは、烈風さかまくアルプスや谷川岳だけではないはずです。静かな尾根のハイキングもあればスノートレッキングもあり、もちろん冬季登攀やアイスクライミングがあってもいいわけです。もっとも、夏と違って、気象上の危険度は高まりますから十分な準備・心構えが必要なことは言うまでもありません。Timtamの冬山はおそらく「冬山」でなくて「冬の山」なのだと思います。「冬の山の楽しみを存分に味わうこと」がコンセプトではないかと思います。

 
雪山に必要な装備・諸道具
あわせて、「山道具のこと」のページをごらん下さい。
無雪期の用具の多くが雪山の用具に転用できます。紺色文字で記された物は無雪期のものがそのまま使えます。
①着用…ズボン、シャツ、下着、帽子、靴下、山靴、ヤッケ&オーバーズボン(雨具上下で代用可)、目出帽子(またはフェイスマスク)、オーバー手袋、手袋、スパッツ、サングラス、地図、磁石、現金、時計、ナイフ、行動食
②ザックの雨ブタに…ティッシュ、ヘッドランプ(懐中電灯)、電池スペア、ビニールテープ、ライター、日焼け止めクリーム、その他の薬、自宅や車の鍵、計画書、筆記用具
③ザックの本体に…テルモス、防寒具、補助ロープ、食料、アイゼンのレンチ、ツエルト、着替え(非常用衣類を兼ねる)、コンロ&ボンベ&小コッヘル、ビニール袋(ホームセンターにあるコンクリートブロックも運べる超厚手タイプがいい)
④歩行用具…ピッケル、ピッケルカバー、アイゼン、アイゼンケース、赤布、ワカン、スノーシュー、スキー、シール、ストック
⑤テント生活のために…トイレットペーパー、シラフ、シラフカバー、ビニール袋、サーマレストマット(半身用)、ポリタン、カイロ、テント、コンロ、ボンベ、たわし、ラジオと天気図用紙、ぞう足、トランプ、コッヘル、食器、スコップ、テントマット、調理用具
⑥雪崩対策…ビーコン、スコップ、ゾンデ⇒ビーコンなど使い方は「遭難対策ノート」のページの雪山サバイバルの項をごらん下さい。
⑦登攀用具…アイスバイル、アイスピッケル、出刃アイゼン、ロープ、スノーバー、デッドマン、カラビナ、スリング、ハーネス、薄手の手袋(+予備)

 
食料のこと
あわせて「山の食料のこと」のページをごらん下さい。
①一日分の行動食の例(全部あわせてげんこで一握りくらい)…チョコレート1かけ、ソーセージ1かけ、カリン糖4かけ、煮干し3匹、アーモンド3粒
②テント食…ペミカン、野菜味噌、フリーズドライ食品、など

  
ピッケルとアイゼンワーク
①ピッケルとアイゼンの選び方⇒あわせて、「山道具のこと」のページをごらん下さい。
ピッケル
…ピックやブレードの形=最初のい本は一般縦走用で形が気にいったものピックが親指側を向いて持っても小指側を向いて持っても手にしっくりなじむ感じで持ちやすいもの。シャフトの長さ=店の人の勧めより短めがいい(身長170cmで60cm以下)。
アイゼン
…爪の数

爪の数 主な使用場所 雪面の斜度 雪面の堅さ 備考
4本爪 森の中 10度程度以下 堅雪不可 無いよりは増し,北八ヶ岳縞枯山
で使用例有り
6本爪 森の中
スノートレッキングに良い
20度程度以下 人が踏み固めた雪
クラスト雪で使用例有
バランスの良い人による北八ヶ岳
天狗岳で使用例有
8~10本爪 森林限界を超えて使用可 30度程度以下 氷の斜面で使用例有 昔の人は8本爪でどこでも登った
出刃12本爪 森林限界を超えて使用可
岩登りに使用可
90度まで可 垂直な氷で使用可 オールラウンドに使える
出刃10本爪 森林限界を超えて使用可
岩登りに使用可
90度まで可 垂直な氷で使用可 足の小さい人向き、12本爪より
も雪ダンゴの心配が少ない
モノポイント
11~13本爪
アイスクライミング
ミックスクライミング
90度以上可 垂直な氷用向き アウトサイドステップやインサイ
ドステップで氷や岩に立てる

ワンタッチ式とバンド式
…ワンタッチ式は便利だがワンタッチアイゼンが付く靴が必要になる。バンド式はやわらかい靴底の登山靴(軽登山靴や皮靴)にも対応する。
1本ストック(ストックについては「山道具のこと」 のページのストックの項をごらん下さい)
…長さ、形(T字型)、ジョイント部分(ネジ式不可)
2本ストック
…長さ、形(I字型)、ジョイント部分(ネジ式不可)

②歩行時のピッケルとアイゼンの使い方
ピッケルの持ち方
…安全なときはピックが親指側、滑落の可能性があるときはピックが小指側に来るように持つ。
ピッケルバンドの種類
…リスト式、肩かけ式、リストループ式・・・好みの問題だが、筆者は左右の手に持ち替えが楽で縦走からアイスクライミングまでオールラウンドに使えるということで、 リストループ式にしている。
静加重静移動、二点支持
…重力のは斜面に対して平行な方向の分力(斜面を滑り落ちる方向の分力)に対抗するために雪山では杖としてのピッケルが必要になる。 急斜面ではピッケルと左右の足の三点のうちに点が雪面をグリップし残りの一点のみ移動する。ザク(ピッケルをつき)イチ(右足)ニ(左足)、ザクイチニ、ザクイチニ、 ・・・のように頭の中で手足に指示を出して歩く。
*二点確保でなくて二点支持です。確保とは確実に保持することですが、岩登りでホールドを持ったりスタンスに立ったりする時にそれら (ホールドとスタンス)を「確保」出来るほどに、 雪面を保持出来ないです。岩登りにおける三点確保の項をご覧下さい。
ブレードによるカッテイング
…短い距離だったらアイゼンなしで突破できる。
アイゼンをつけるタイミング
…森林限界を出る前にアイゼンをつける。森の中でも凍った道の場合はアイゼンをつける。
フラットフッテイング
…急な登りはダックウォークになる。下りは割りと簡単。トラバースの場合山側の足は進行方向に向け谷川の足は靴先を少し谷側に向ける。
フロントポインティング
…アイゼンなしのキックステップの要領で雪面を蹴りこんで足場を作って登る方法で急斜面で有効である。疲れたら片足のみフロントポインティングで蹴りこみ、 片足は水平方向につま先を向けてフラットフッティングにすると楽。
アイゼンをひっかけない工夫
…足もとを良くみる(岩登りの練習をたくさんしているのが良い)。2本の線路の上を歩くつもりで。右に行きたければ右足から踏み出して進行方向を変える(方向転換をする)。
耐風姿勢
…山側を向いて、両足を肩幅以上に開き踏ん張る、ピッケルを両足の前の両足とピッケルの石突きが正三角形になる位置に突いて、スキーの滑降時のような姿勢 (クラウチングスタイル)になる。耐風姿勢のまま歩行して風の通り道を突破する(風の通り道は幅が数十メートル程度)。
後向き下り
…急斜面の場合谷川を向いて下るのでなくて山側を向いて登るのと同じ体制で下る方法。高度感が少なくなり安定して下れる。

③滑落停止
滑落停止は最後の手段、転んだら滑り出す前にピックを打ち込んで止めなければならない。それでも滑り出したときに使う。
“足が下、背中で滑っている場合”、“頭が下、背中で滑っている場合”、“頭が下、腹で滑っている場合”など雪上訓練で練習しましょう。

④ピッケルとアイゼンの使い方のアドバンス
穴堀りの用具として(雪洞ぐらい掘れる)。鉈の代わりとして(枝を切って、雪に埋めるペグを採る)。登山家のステイタスとして(武士の刀のようなもの)。 確保の支点として(残雪期の山ではスタンディングアックスビレーが有効)。氷や雪壁の手がかりとして(ピックやブレードやシャフトを打ち込んで手がかりにする)。

⑤ピッケルとアイゼンの代用品
尖った石を持つ、杖を拾う、ストックを使う

 
陽春(残雪期)の雪山登山
①陽春の雪山とはどんな山
雨、雪、ラッセル、長い行動時間、クラストした斜面、雪目と日焼け、軽量化と行動食、グズグズ雪、アイゼンに挟まる雪ダンゴ、テント泊、避難小屋泊

②入門の山
日光・白根山、日光・太郎山、上越・巻機山、谷川岳・天神尾根、白馬岳・大雪渓、白馬岳・小蓮華尾根、中央アルプス・空木岳、南アルプス・茶臼岳

③陽春の雪山技術⇒「遭難対策ノート」のページの雪山アドバンス訓練の項をごらん下さい。
スタンディングアックスビレー、支点工作(デッドマン,スノーバー,スノーポラード)

 
雪山でのテント生活技術

①用具⇒雪山に必要な諸道具の項をごらん下さい。

②食料と調理⇒「山の食料のこと」のページをごらん下さい。

③テント設営
テント場の決定、雪踏み(整地)、防風ブロック、テントのポールをつなぐ(雪の上に落とさない)、ポールをスリーブに通す、四隅の固定(底面を平行四辺形でなくて長方形にしないと風に弱くなる、張り綱の固定(雪穴に細引きをつけた割り箸を埋める)、内張りつけ(外張りつけ)、テントマットを敷く、アイゼンとピッケルをテントの外にまとめて置く(雪に埋まってわからなくならないようにする)

④テント生活
私物入れ、雪とり、私物の整理、共同装備や食料の整理、水作り、天気図を書く、食事作り、食後のかたづけ(トイレットペーパー大活躍)、トランプ、就寝場所の決定、ナイフと懐中電灯と水筒を置く位置、革靴は抱いて寝る、起床時間の決定、寝ている時に寒くなったら、酒飲み宴会はほどほどに、サーマレストマットを守る(ちょっとした不注意で穴が空く)

⑤テントの撤収
私物の整理、朝食をとる(体が温まったタイミングで撤収する)、ヤッケ&オーバーズボン&スパッツをつける、パッキング(出来るだけテントの中で行う)、テントの撤収、ポールをたたむ、テントをたたむ(たたまないでシラフをシラフ袋に詰めるようにテントをテント袋に詰め込んでも良い)、ごみは持ち帰る

 
雪洞のこと
まずは実用的なRタイプ縦穴式雪洞穴を紹介します。

Rタイプ縦穴雪洞全景


上にかけるタープがギリギリの場合


タープの屋根をかける前の状態


雪洞の内部(Rタイプ縦穴式)

雪洞の内部(ねずみ穴式)

雪洞の内部(Sタイプ縦穴式)タープの結露はこまめに拭く

雪洞について全体的に解説
①どういう時に掘るのか
昔は岸壁登攀時や長期縦走時に掘ったが、現在は体験の素敵さを求めた「雪洞遊び」のために雪洞を掘ることが多い。緊急事態でツエルトやテントがない場合のビバーク用に掘る場合もある。現在でも東北の山の縦走で積極的に使っている山岳会がある。

②特徴
暖かい、換気が悪い、掘るのに時間と労力がかかる(特に横穴式)、湿度が高い(特に横穴式)、撤収が楽、大人数で泊まれる、トイレで外に出なくて済むように出来る、

③適期とエリア
2~3月、豪雪地帯

④場所
雪崩の心配のない所、雪が多量にある所

⑤タイプ
縦穴式、横穴式、ねずみ穴式、イグルー、イグルー+横穴

⑥道具
スノーソー(雪用)、スコップ、ノコギリ(雪洞を掘る内に出会う潅木用)、シート(入り口用&雪出し用)、銀マット、コンロ、ボンベ、ローソク(酸素欠乏を感知する役がある)、ゴアテックスシラフカバー(これがなければシラフはビショビショに濡れる)、サーマレストマット、雨具上下、オーバー手、ビニール袋、赤布、ツエルト、ビーコン、ゾンデ

⑦注意事項
雪崩、滑落、衣服を濡らす、シラフを濡らす(新しいゴアテックスシラフカバーで対応)、火事(縦穴式で対応)、酸欠(ローソクの火が消えても無事だった経験多々あり)、外に出した物の紛失、スコップ最低1本は中に、天井は下がって来る(縦穴式は下がらない)、外部との隔絶(携帯電話やアマチュア無線は通じる)、ベンチレーター(作っても埋まること多し、縦穴式RタイプとSタイプは割と喚起が良い))

⑧掘り方(ねずみ穴式)
場所の選定(ゾンデを指して2メートルほどの雪の深さを確認&雪崩の来ない所)、1メートル程度は掘り下げてから横に掘り進む、右と左から掘って中央で連結する、ブロックの切り出し方のコツ(スノーソーで横方向は水平だが、縦方向は斜めに切り込みを入れVの字の形でこじり出す)、ブロックの運搬(シートに乗せて引きずる)、天井を丸くなめらかに仕上げる、周辺の木に赤布で目印をつける、居室は入り口より高く、作業は交代で、棚をあちこちに作る、堀終わったらスコップを含む全ての荷物を中に入れる。

⑨縦穴式(Timtam&Cueは縦穴式を推奨)
ゾンデ棒で突いて調べ、雪の深さが150cm程度あれば作れます。横穴式に比べて、①設営が速い、②湿度が高くなりすぎない、③天井が下がって来ない、④酸素が欠乏するリスクが減る、⑤首から下げたナイフを使ってシートを切ることで、緊急脱出が出来る、⑥トイレ部屋の併設も容易なので、外に出なくても一晩過ごせる、等の利点があり、実用的です。

Rタイプ縦穴

(1)雪洞を掘る部分のみ踏み固めます。
(2)真っすぐに掘り下げます。
(3)堀った時に出たブロックを積み上げて回りを囲みます。
(4)シートをかけて、シートの端を強めに引っ張って固定します。
(5)シートの傾斜は30度くらいです。
(6)外のシートの下のブロックの隣にアイゼン等の荷物置き場が出来ます(荷物は全て雪洞の中に入れるのが基本です)。
(7)スコップとスノーソー1本は雪洞の中に入れます。
(8)火災等に備え、メンバー何人かは常にナイフを首から下げておきます(テント泊と同じ)。
(9)シートの上に積もる雪は、時々パンパンと払うようにします。
(10)2月の田沢湖スキー場~秋田駒~源太岳~下倉スキー場に2泊縦走に用いました。吹雪の日が多かったですが、快適でした。

上の写真は、青森の山岳同人主催の「小学6年生のための縦穴雪洞を作って楽しむ会」の様子です。ブロックを高く積んでも、被せたシートの張力で崩れることはなかったです。

Sタイプ縦穴

(1)シートの真ん中内側に雪玉を入れて、シート外側からテルテル坊主のように縛って支点を作ります。
(2)シートを支点の上にある樹木の枝で吊りあげます。
(3)シートの端を張り綱で強めに引っ張って固定します。
(4)高さがあるので居住性が増しますし、雪をパンパンと払う回数も少なくてすみます。


*Rはドイツ語のルンペンで「ぼろきれ」、Sは「サーカス」の意味です

青森の山岳同人流転」会長よりのR式およびS式縦穴につき補足説明
タープはカモシカか秀山荘の物を用いています。カモシカだったら大(だいだい色、6~10人)は2.7×3.6m、中(緑、5人まで)で2.3×2.9mのようです。素材は15Dか30Dナイロン(多分15D)。

荷物置き場ですが、四方に積んだブロックの外のタープの下に物を置くスペースはなく雪に埋まってしまいます。

Sタイプ誕生経緯ですが、たまたま人数多くて8人くらい?だったので、「大きめの覆うものにしよう」と家にある山道具の中で探してエスパースのフライを持っていったとのこと(おそらく6~7人用のテントフライ)。中心部トップを吊ったのは立体の形なのでただ被せるだけだと天井が垂れ下がるからです。Sタイプの場合は四方のブロックは正方形なり正六角形なり、円形の方がおさまりがいいです。

積雪60cmあれば十分作れます。小6生の自然クラブで校庭で作る場合、積雪40cmくらい、40cmでも余裕で作れますが、別の場所からブロックを切り出す必要はあります。

R式はテントとほぼ変わらず、湿度は高くないです。テントに比べると周りが雪なので(断熱という意味で)暖かいです。イグルー・横穴雪洞に比べても作成時の濡れがほぼなく、かつ、湿度が高くないので濡れ物も着干しできてしまいます。

空間がは広いです。9人用まで経験があります。

600m~5000mで経験済み。氷以外なら、どんな雪質でもできます

弱点はしんしんと降る雪、降雨です。

S式は樹林帯で作りますが、樹林帯は風が弱い事もあり、降雪に対してより屋根雪を下ろしやすいという視点から考案されました。S式は当然風には弱いです。

通常の冬山、稜線ではしんしんと雪が降るという事は少ないので(たいていは風雪なので、タープ上に大量降雪はあまりない)、降雪で困る事は少なかったです。

降雪がある場合は酸欠に注意が必要です。少し寒いですが、タープとブロックの間を少し風が通るくらいの方が良いかも知れません、その日の天候により使い分けます。

もう一つの弱点は、タープの朝の結露です。コンロを点けると水滴となり落ちてくるので、手拭いでこまめに拭きます。風通しを少し良くしておくと結露はしなくなります。

シートの傾斜は付ける必要ないですが、降雨があるのであれば、有効と思われます。

スコップ、鋸は全て中に入れておいた方が紛失など無いです。

その日の天気の特徴を読み込んで、重要視する点を変えていく事が必要です。例えば、風が怖い日であれば、タープの固定をしっかりする(タープがめくれないように雪ブロックでさらに押さえて補強するなど)とか、しんしんと降る雪で酸欠が怖いなら、こまめにタープの雪を落とし、換気をするとか、寒さが心配なら、がっちり風が入らないような作りにするとか、などです。・・・「流転」による雪山宿泊方法比較表(エクセルファイル)

 
深雪の山の用具
雪の深さにあわせて、下りの楽しみ方にあわせて用具を選択します。最もオールラウンドなのはスノーシューヒール固定タイプ(もちろんワンタッチでヒールフリーになります)だと思われますが、長時間の下りが伴う場合はスキーに数段かないません。山岳スノボーはまだまだ未開拓の分野です。

用具 手具 深雪の深さ 持ち運び 登れる斜度 その他
ワカンジキ ピッケル 30cm程度 軽量コンパクトで便利 30度程度 3月以後の締り雪の上に積もる新雪に向く
残雪の午後のグズグズ雪に向く
スノーシューヒールフリー 2本ストック
持たないでもok
60cm以上ok やや重い、やや大きい 20度〃 スノートレッキング用に良い
スノーシューの一般的イメージがコレ
スノーシューヒール固定 2本ストック
ピッケル可
60cm以上ok やや重い、やや大きい 40度〃 キックステップが出来るので深雪の急斜面で抜群の登攀力を発揮する
山スキー&シール 2本ストック 90cm以上ok 重い(8kg程度)、長い(170cm程度)
藪の場合はスキーを紐で引く
20度〃 深雪の踏破性能はぴか一、滑降の楽しさは抜群
クロカン 2本ストック 30cm程度 エッジなし回転用のサイドカーブなし、登り対応アーチベンド有り 10度〃 片足加重で登り用ワックスを効かせ両足均等加重で下り用のワックスを効かせる
テレマークスキー&シール 2本ストック 30cm程度 エッジがありサイドカーブあり滑降対応のアーチベンドのみ 30度〃 テレマーク姿勢はアクロバチックで遊び感覚
スノーシュー&スノボー 2本ストック
(伸縮タイプ)
60cm以上ok 重い、大きい 30度〃 深雪の滑降に抜群の性能有、未開拓の分野

ワカンジキによるラッセル
…前の雪を削り落とし、膝でかため、そっと足を乗せる、おいらん道中のように足を運ぶ、汗をかくまえに交代する。

スノーシューによるラッセル
…ワカンジキより浮力が大きいので街を闊歩する感覚でストライド大きく歩く。林道はヒールフリーにして林道から山に分け入る時に踵は固定する(踵を固定した方がスノーシューが外れてしまうトラブルが少ない&スノーシューをコントロールしやすい)。2本ストックを用いてクロカンスキーのごとく推進力を得るために使うと良い。

山スキーによるラッセル
…緩斜面では街を闊歩する感覚でストライド大きく歩く。スキーは持ち上げずに引きずる感じ。ストックはクロカンスキーのごとく使う。
…急斜面や雪が深い場合は右のスキーの上をスライドして左のスキーが前に出るようにし、左のスキーを蹴り上げて(2~3回蹴り上げることもある)スキーのトップが雪面に出てから踏み込む。スキーのビンディングの真下(足の土踏まずの位置)で斜面に直角の方向(斜面の抗力の向きの反対向き)に体重をかけるとシールがよく効く。そのためにはストックの補助が必要である。ストックのグリップ先端を手の平にあててドアのノブをつまむよに持ち、手を腰から後ろに持って行きグット押しつけて推進力を得る。ストックの先端はスキーのテール部分にささっている。

 
12本爪アイゼンクライミング
①12本爪アイゼンとは
…突き出た2本の前爪があるアイゼンを総称して12本爪アイゼンといいます。小さな足の場合に雪団子を付きにくくするために土踏まずあたりの2本の爪をなくした 10本爪アイゼンもその仲間です。2本の前爪を雪面や氷に蹴りこむことで垂直に近い角度まで登れます。幅5センチで5ミリほどの岩角をフットホールドにして 立つことが出来るので岩登りの用具としても大変優れています。12本爪アイゼンは雪、氷、岩に使える多用途のアイゼンです。

②雪面を歩くためのフラットフッティング、フロントポインテイング
この雪山登山のノートのページのピッケルとアイゼンワークの項の中段に書かれていますのでごらん下さい。

③ロッククライミング
…いわゆる正対(「へそ」つまり重心からの鉛直線(重力の方向)と両手両足の中央を結ぶ体の中心線がほぼ並行か重なる状態を保った姿勢で登ること ⇒こちらもごらん下さいで登ります。小さなフットホールドでも前爪2本が乗ればきわめて安定して立てます。 そのためには「岩の面に直角に靴先を向け」&「フットホールドになる小さな岩棚の方向と靴底の面が平行になるようにして」足を置きます(爪先で立っていて、踵は下げ気味です)。 岩に爪を乗せる時は猫が歩くような感じで音をさせないように静かに置き、置いたら動かしてはいけません。動かすと二本の前爪のうち一本にしか力がかからない瞬間が出来るので、 そこが支点になり靴が力点の梃子になって支点にならなかった方の爪がはずれます。
…手には毛糸の手袋をはめていますから、垂直に近い岩場は大きなホールドでも支えられません。手袋を絹の手袋のような薄いものにして濡れたらすぐ取り替えるようにすれば 支える力は増しますが、3月以後の暖かい時期でないと厳しいです。手袋よりもアックスのピックを岩に引っ掛けて登った方が良い場合も多々あります (ミックスクライミングとして発展中)。

④アイスクライミング
…12本爪アイゼンでのアイスクライミングは正対で登ります。氷の面に直角にそして踵を下げ気味に蹴りこんで2本の前爪を しっかり効かせるようにします。ロッククライミングの場合と同じ理由で蹴りこんだら動かさないこと。正対なので肩幅よりやや広めで同じ高さに右足と左足の左右合計4本の前爪を フットホールドとして決めて、右手のアックスは右足の上、左手のアックスは左足の上で右手と同じくらいの高さに打ち込んで両手両足でX(エックス)字の形を作ると安定して 氷に止まれます(安定姿勢)。安定姿勢から足の前爪でガツガツと登りさらに高い位置の肩幅よりやや広めで同じ高さに右足と左足を蹴りこんで両腕を伸ばして膝が曲がった X(エックス)字の形になります。次に(前の動作と同時に行ってしまう場合も多い)立ち上がって両腕を曲げたX(エックス)字の形になります。そしたら、 両手のアックスをさらに高い所に打ち込んで次の安定姿勢を作ります。
…アックスにつけたリストループに頼って登り、握力を消耗しないようにします。最近のアックスには付属品として専用のリストループがついています。 ついていない時はリストループとアックスはペアで購入しましょう。スナップフックがついていて簡単にアックスとリストループを離すことが出来るタイプのリストループは 支点工作でスクリューをねじ込む時に大変便利です。
…正対のクライミングは腕に負担がかるので垂直に近い氷を登るのは大変です。なるべく斜度の緩い弱点をついて登るのが良いです。垂直に近い氷を登る時は モノポイントアイゼンクライミングに移行した方が無難です。
…アイスクライミングのフィールドは谷の中であることが多く、風雪にさらされることなくクライミングが楽しめる場合が多いです。 楽しめる期間は短くて12月から2月初旬までという所でしょう。雪山登山より全天候型な分、ガイド達は講習会をやりやすいです。八ヶ岳の赤岳鉱泉あたりのフールドで、ガイドを頼み、 鉱泉から用具をレンタルしてスポーツ感覚で楽しむ方が安価に最新のクライミング技術と用具に触れられて良いのかも知れない。

⑤ダブルアックス
…右手と左手に氷用のピッケル又はアイスバイルを持ってそのピックを氷に打ち込んでハンドーホールドにしながら登ることを言います。支点を作ったりレストするために足場を切るので 右手にピッケルを持つべきだという説とスナーグなどの打ち込みハーケンを打つから右手はバイルを持つべきだという説がありました。現在は高性能のスクリューハーケンをねじ込むのが 主流になっているので右手はピッケルでもバイルでもあるいはピッケルのブレードやバイルのハンマーポイントをはずして(ネジでついているので)重さを軽くして使う人も多いです (小柄な日本人や女性にはその方が良いかも知れません)。
…手首のスナップを利かせてピックを打ち込みますがピックの形状やアックスのバランスによって打ち込み方は異なります。トンカチを打つようにする場合とか、 それより少し引き落とす感じで打つ場合とかありますので適宜試しながらベストの打ち方を見つけて下さい。
…先行者がピックを打ち込んで空けた穴にピックを打ち込んだり、打たずに差し込むだけで効かせる方法があります。先行者の空けた穴がなくても魚が餌をついばむように チョチョチョとつついて小さな穴をあけそこにピックを差し込むだけで効かせてしまいます。差し込むだけの方法は力の消耗を抑えることが出来ます(特に弱い左手に有効)。
…アックスにつけたリストループ(リーシュ)に体重をかけて握力の消耗を防ぐようにします。2003年頃よりモノポイントアイゼンクライミングに対応してリストループを つけない電車のつり皮を持つような形のグリップを持つアックスが登場して来ています。

⑥アイスクライミングの支点工作
…アックスのピック部分でつつくようにして空けた穴にスクリューをねじ込んだり、スナーグハーケンやアイスハーケンを打ち込みます。 その方法には以下のようなタイプがあります。設置した支点はセカンドが回収します(回収したとたんにスクリューやスナーグハーケンの中の雪を長めの金属棒で 突き出します)。
・フロントポインティングをしなくても立てるような足場の所でスクリューをねじ込んだりスナーグハーケンを打ち込んだりして支点工作する方法。 安定した足場なら2箇所支点工作して大きな衝撃にそなえることも可能。
・アックスとハーネスをスリング等でつないでアックスに体重を預けて両手をフリーにして支点工作をする。
・リストループに左手を肘まで入れて体重をかけてフリーになった左指でスナーグハーケン(アイスハーケン)を持ち右手に持ったアックス(バイル) でそれを打ち込む。
・左手のアックスに腕を伸ばしてぶる下がったまま、右手で腰のあたりに腰の力も利用してスクリューをねじ込む。
・岩が出てくることもあるのでロックハーケンやイボイノシシタイプのアイスハーケンを打ち込む。
・立ち木や潅木にスリングをタイオフ。


 
アイスクライミング(モノポイントアイゼン使用)
 

└ムーブ 2分 セット


└ 支点練習 1分 セット


└支点セット 1分 セット
①モノポイントアイゼンとは
…突き出た1本の縦爪の前爪があるアイゼンを総称してモノポイントアイゼンといいます。1998年ごろからアイスクライミング用アイゼンということで見かけるようになりました。 1980年代前半にもう縦爪の前爪のあるアイゼンやバナナピックのアイスハンマーは発明されていたのですが前爪は長く2本のままでした。 1980年代後半からフリークライミングの世界で正対( 「へそ」つまり重心からの鉛直線(重力の方向)と両手両足の中央を結ぶ体の 中心線がほぼ並行か重なる状態を保った姿勢で登ること ⇒こちらもごらん下さいでなくて振り (ハンドホールドを効かせるために「へそ」つまり重心からの鉛直線(重力の方向)と 両手両足の中央を結ぶ体の中心線がずれて傾いて交差する(二直線がねじれの位置にある)姿勢で岩に止まり、次に、 腕はそのままか引きつけながら、曲げていた足を伸ばして次のホールドを取りに行くと体が振り子のよう横に移動しながら上昇する、そういうふうに体を振りながら登ること、 足は爪先でなくて小指側で立つアウトサイドステップや親指側で立つインサイドステップに置くことが多い⇒ フリークライミングのムーブを参照のこと) が垂直やそれ以上の壁を登るのに多用されるようになっていました。前爪が1本の縦爪は壁に対して角度を持って蹴りこんでフットホールドに 出来るのでアイスクライミングにおいてもアウトサイドステップやインサイドステップの足の使い方を可能にしたのです。 最近では踵に爪をつけてヒールフックの出来るアイゼンまで登場していることからわかるように、モノポイントアイゼンはフリークライミングのムーブをアイスクライミングで 行うために開発され、毎年のように工夫改良が加えられた新モデルが出る「発展途上にあるアイゼン」なのです。

②クライミングテクニック
…12本爪アイゼンのクライミングと異なり、積極的にフリークライミングのムーブを取り入れて登ります。 中でもフギャーフォーというアクロバチックな動作は一度は挑戦してみたいものです(宙吊りの大きなつららの末端近くに右手のアックスをパツンと打ち込んで右手をホールドしたら、 次に左足の膝の裏を右腕の肘の内側の上に乗せて左足をホールド、そして、左手のアックスをつららの上部に打ち込みます)。アックスは打ち込むよりもなるべくピックを つついて穴をあけてピックをその穴に差し込んで引っ掛けるようにしてホールドすることが多いです。

③ロッククライミング(ミックスクライミング)
…前爪1本で小さなホールドをとらえることが出来るのですが、氷用に設計されている前爪なので長すぎます。梃子の作用が働いてふくらはぎに負担がかかりつらいです。 その負担を軽くするためにさらなる改良が加えられることと思います。ロッククライミング用のモノポイントアイゼンが出来て、ルートによってアイスクライミング用と ロッククライミング用あるいはその中間用のアイゼンおよび靴を使い分ける時代が来るかも知れません。用具を高いお金を出して揃えても次の年にはモデルが古くなってしまう状況の現在 なので、そういう使い分けはアマチュアのクライマーでは出来ないというべきかも知れません。

④12本爪アイゼンクライミングとの共通項
…モノポイントアイゼンクライミングと12本爪アイゼンクライミングと共通する点は多いです 。上記の12本爪アイゼンクライミングの項をごらん下さい。

 
ホワイトアウトへの対応
①ホワイトアウトの体験
…筆者は1968年3月初旬・秋田乳頭山周辺・笹森山、1969年2月下旬・青森八甲田山高田大岳、同南八甲田山・横岳、1972年1月初旬・裏岩手連峰・源太岳でホワイトアウトを体験し、その後はホワイトアウトの中を行動するような山行をうまく回避してきました。1968年3月初旬秋田乳頭山周辺・笹森山での体験を以下に書きます。
…笹森山に登頂した後に帰ろうと思ったら天候がみるみる悪くなり、濃い霧と激しい風と雪と低温の中に入ってしまいました。視界は20メートル程度でミルクの中にいるようでした。歩いていても進んでいないような感じがして気持ちが悪くなりました(足元を見て自分が動いているのを確認したら少し直りました)。ヤッケのフードの性能が悪くて顔の一部の頬の所が凍傷になりました(始め真っ白、後に日焼けのように黒くなり、皮がむけ変わってなおりました)。目から涙のつららが下がっていました。目出帽子を被っていたのですが、口の所で吐く息が凍って団子のようになっていました。登って来た尾根が見つからず現在地を失ったので現在地の確定できる山頂に登り返して下る方向を磁石で確認しながら下りました。

②ホワイトアウト対応の服装(一ヵ所も皮膚を露出しない、視界を保つ、体の暖かさを保つ)
…出来れば顔の前の口の所が覆えるフードを持った冬用のヤッケがいいです(冬用といってもシンサレートなどの保温材の入ったものは温度調整がやりにくいのでやめた方がいいです)。顔の前の口の所が覆えるフードがついていないヤッケ(or雨具)の場合は目出帽子(orフェイスマスク)で対応できます。目出帽子(orフェイスマスク)はヤッケのポケットに入れてすぐ出せるようにしておいて下さい(冬用ヤッケでもそうして下さい)。完璧な無風状態でもないかぎり、森林限界を出る前のタイミングで、森の中を歩いて来たときの服装に薄手のセーターを一枚重ね着してヤッケ(or雨具)をその上に着て下さい(フロントのファスナーは下から三分の一以上は閉めておいてください。オーバー手袋を付けてからではファスナーをはめるのは大変です)。オーバーズボン(雨具のズボンでよい)を履きます(もちろん、ベースキャンプを出る時から履いて来る方がいいです)。ロングスパッツを付けます(ロングスパッツはベースキャンプを出た時から付けているはずですが念のため)。毛糸手袋は厚手の暖かいものが扱いやすいです(予備必要)。オーバー手袋は二本指か三本指のミトン型でスポンジなどの保温材が入った大き目のものがよいです(手が暖かいと気持ちが安定します)。オーバー手袋はちょっとした作業をするために手から外した時に風で飛んでしまうことがよくあるので、ゴムヒモ(テントポールを連結しているショックコードが丈夫でよいがパンツのゴムヒモでOK)で手首と連結しておけるように改造して下さい(簡単です)。サングラスは色が薄いやつがいいです。サングラスは紫外線だけでなく風雪からも目を守る道具と考えて下さい。ゴーグルはサングラスよりクモリやすくてあまり役に立ちません。サングラスなら(ゴーグルと違って)クモっても顔とサングラスの間に指を入れて(指でこすって)クモリを取って視界を確保し続けることが出来ます。帽子はナイロン製で耳が隠せてつばがある冬山用帽子がよいです。帽子のつばとヤッケのフードが絶妙に助けあいます。たとえば右から風が来たらつばを左に動かすと右頬のところまでヤッケのフードが回って防風効果が高まります。ホワイトアウト対応の服装のことを完全装備と言う人もいます。完全装備の足にスキーかスノーシューかアイゼンかが、そして手にストックかピッケルかがプラスされることになります。

③赤布ワーク
…冬の山はA地点から山頂を往復してA地点に戻る方が、A地点から山頂を越えてB地点に行くよりずっと簡単です。それは登りのトレースを利用して下ることが出来るからです。降雪が続いても森の中ならば半日程度はトレースが残っていますが、森林限界を超えてしまえば、そこの雪はクラストしているので、トレースはほとんど残りません。トレースのない場所でホワイトアウトしてしまったら、登って来た尾根を探すのはかなり困難となります。尾根を一本間違えて下ってしまって、下の方でトラバースしてもとの尾根に戻ろうとすれば、長い距離でしかも沢越えまである激しいラッセル行になりかねません。
…まず家の近くにシノ竹の竹ヤブをみつけておきます。たとえば狭山日高インターから日和田山まで行く途中の道の右側にそんな竹ヤブがあります。秋になったら100本ほどシノ竹を採ってきます。現地で枝を払い1メートル50センチぐらいの長さに切りそろえて束ねて持ってくるのがいいでしょう。
…布屋さんに行って、赤い布地(安いやつ、材質は綿がよいでしょう)を買ってきます。赤い布を幅5センチ長さ30センチぐらいの短冊(以下:赤布)に切りそろえます。赤布の両側に5センチくらいの縦向きに布を裂いて穴あをあけます。一方の穴に紐を通して赤布100枚ぐらいを一まとめにして束ねます。一枚の赤布を引くと布が裂けて束から一枚だけ取り出せます。反対側の裂き穴は破けていないので、これを利用して短冊を木の枝にタイオフします。
…ホワイトアウトが予想される森林限界に出て行動することが予想される場合は森の中にいるうちに、100メートル程度おきに樹木の枝に赤布をタイオフ(以下:赤布を打つ)して目印をつけて先に進みます。シノ竹には事前に赤布を結びつけて携行します。ストックにしばりつける、とか、ザックにつける、とか、藪が多い場合は腰から引くとかして携行します。森林限界に出て一切樹木がなくなったら20メートル程度おきに赤布をつけたシノ竹を雪面に刺して立てながら進みます。もしホワイトアウトしたら、赤布をたよりに戻ります。可視光の中で最も波長の長い赤色はホワイトアウトの中で最も目立つ色なのです。
…赤布を山に残して来て良いかと問われれば、自然保護の観点などから考えるとノーグッドです。ですが現在は赤布を打って登りそれを回収しながら下ってくる登山者の方が少ないようです。

④コンパスベアリング
…ホワイトアウトしていてしかも赤布の目印がない場合は、地図とコンパスに頼って方向を決めて行動します。航空機の計器飛行のようなものです。山頂などの現在地が確実にわかる所から例えば南南西にのびる尾根を下り次の現在地が確実にわかる大岩を目指します。トップを歩く者はコンパスを首から下げて自分の進行方向とコンパスの南南西を見比べながら下ります。
…迷いやすい広い尾根で西偏の補正が正確に必要になる場合は事前に進行方向が磁北線から何度の角度をなすかを地図から読み取っておきます。その場合はシルバコンパス(オリエンテーリングコンパス)が必要です。地図の山頂から目的の方向にシルバコンパスの長い辺の方向を一致させて置きシルバコンパスの中の手回しリングを回して中の矢印(以下:矢印⇒)を磁北線と平行にあわせて、手回しリングの外側にある角度の目盛りを読み取り記録します(山頂で磁北線から320度、次の大岩の所で270度といった具合)。現地で、山頂についたら、磁石の中の手回しリングをまわして角度目盛り磁北線から320度に合わせ、シルバコンパスのを自分の腹にあてて体を方位磁針と矢印⇒が重なるまで回転させます。シルバコンパスの長い辺の方向に歩きます。
…さらに正確を期する場合はメンバーが少し離れて一直線に並び、前と後ろでそのメンバーが並んで作った直線の方向を確認しながら歩きます(前に出たメンバーが振り返って後続のメンバーの進行方向をシルバコンパスで確認することをバックベアリングといいます。後ろからのベアリングと前からのバックべリングを組み合わせながら方向を決めて行動すると最も正確です。
…メンバーが少し離れて一直線に並び、前と後ろでそのメンバーが並んで作った直線の方向を確認しながら歩く方法はおおざっぱに南南西に下るなんていうときでも進行方向の確認に使うと良いです。メンバーシップや全体の安心感が高まります。
…今後はGPSの進歩がさらに進むと思われます。ホワイトアウトの超低温下でも使えるように早くなってほしいと願っています。ちなみに気温は標高が100メートル上がると雲が出来ない時には1℃、雲が出来る時には0.6℃ずつ低くなります。また風速が1メートル増すごとに体感温度が1度下がります。平地で0℃の日に標高3000mで風速20mの山頂(or尾根or稜線)では体感温度はマイナス50℃となります。

 
ツエルト必携
ホワイトアウトの中でもツエルトをかぶれば中で火をたいてお茶を沸かして休憩できます(火を使う動物が人間なのです)。ツエルトがあれば一晩や二晩の山頂ビバークだってなんのそのです。「遭難対策ノート」のページのツエルト必携ツエルトビバークの項を読んでください。

  
凍傷
(1)キーポイント
*凍傷は低温による局所的障害であり、局所が氷点下になると発症する。→マイナス2℃で細胞外,マイナス6℃で細胞内で氷る
*組織の凍結による障害と低温による循環障害の両者が原因である。
*マッサージは厳禁
……外からさすったたりマッサージしたりしてはならない。→解凍治療に入って以後も同様(組織を破壊する。)
*救急処置は温湯による凍結の解凍である。
*急速解凍後の再凍結は予後を極端に悪くする。
*局所を乾燥型にすることが大切で、軟膏類の塗布は禁忌である。→しもやけ(凍瘡:プラス5℃)とはちがう。
*手が冷たくなったら、手を握って開いて又握ることをくりかえす時手の甲をそばめるような動きを加え、指の回りにある筋肉を使うようにすると良い。

(2)症状
①しびれ感→②蒼白&痛み→③痛みの消失→④硬結→⑤発色

(3)凍傷の治療
①急速融解法
*再び凍らない安全な場所まで降りてから行なう。→中途半端な解凍はしない。再凍結があってはならない。
*38~42℃のお湯に20~40分浸す。→しなやかになり色がそれ以上良くならないとこまで。
*焔に当てて暖めるのは厳禁→お風呂の温度のお湯であたためると憶えておく。
*挙上、外傷&感染からの保護
*精神面でのはげまし。
②低分子デキストラン、③プロスタグランジンE1(PGE1)、④交感神経遮断、⑤末梢血管拡張剤、⑥蛇毒酵素、⑦局所療法、⑧切断、⑨リハビリテーション

(4)凍傷の予防
*風を当てない
*しめつけない→ひも、靴下
*たばこ→末梢血管の収縮
*カロリー摂取
*運動
*一度なるとなりやすいので注意

(5)凍傷の分類 度数 (6)凍傷の分類 時期
第1度……紅斑、浮腫
第2度……水泡形成
第3度……皮膚全般にわたる壊死
第4度……切断を要する完全壊死
急性期……凍傷、融解、水泡形成、壊死の開始
亜急性期…壊死完成、血管けいれんおよび先端硬化の開始
慢性期……血管けいれん期および先端硬化が持続し、疼痛および反復する潰瘍形成

  
低体温症への対応
(1)キーポイント
*中核部体温(直腸温など)が35℃以下になった状態を低体温症という。
*初期症状を自覚(低体温症による意識障害はかなり早めに起こる)。
*産熱量より放熱量が多いとき低体温症が進む。
*「ふるえ(シバリング)」は、寒さに対して産熱で対応している証拠である。
*低体温症が重い状態では、意識が混濁する。
*応急処置としては、暖かい室内に移し、湿った衣服は脱がせ、乾いたものに着替えさせる、意識がはっきりしているときだけ暖かい飲み物を与える。
*アルコールは厳禁、抹消の血管が開き冷えた血液が体幹部に流れ込んでしまう(A、T、C“アルコール,たばこ,カフェイン”は厳禁)。

(2)メモ1
*疲労、空腹で急速に進行する。
*生理的反応(血管収縮、シバリング)
*意識的行動(衣服、火にあたる)
*熱が失われる原因→①放射(最大の原因)、②蒸発(2/3皮膚、1/3呼吸)、④対流(風)、⑤伝道(水:空気=240:1)

  中核体温(℃)…臨床所見
バイタルサインのチェック

・意識レベル

・呼吸

・脈拍

・血圧

・体温
  ↓(体温35℃以下の場合) 偶発性体温症を疑う
・乾いた衣服に着替えさせる
・身体を加温する(自己回復は難しい)
  ↓
 中心加温法(胃の中に温湯を循環させる)
 表面加温法(お腹にゆたんぽ)
  ↓
 中心加温の山でのやり方 (わきの下や大腿のつけねなどに 小さな湯たんぽを当てる?)

37.6…直腸温度正常 
37……口腔温度正常
36……熱損失を補うためのエネルギー代謝量増加
35……最大戦慄
34……被害を意識し反応あり;血圧正常
33……この温度以下になると重い低体温症
------
33℃以上は表面加温
------

32-31…意識混濁;血圧が測りにくくなり瞳孔は
開くが光には反応;戦慄の消失
言語不明、けん怠、脱力、よろめき、幻聴、幻覚
------
30℃以下はぜったいに中心加温→心停止の可能性有
------

30- 29…漸次意識消失;筋肉硬直進む
;脈拍・血圧測定困難;呼吸数減少
28……心筋の過敏性とともに心室細動の気配
27……自発的動作停止;光に対して瞳孔無反応
;深部腱反射および表在性反射消失
26……被害をあまり意識しない
25……心室細動の出現
24……肺水腫
22-21…心室細動の頻発
20……心停止

(3)メモ2
○なぜ低体温症になるのか?
 低体温症は、体の外に奪われる熱と自分で産生する熱のバランスで、奪われる熱が多いときに体温が維持できずに起こります。従って、それほど寒くない環境でも、栄養が足りなかったりすれば起こりますし、特に、お年寄りや小児などでは、起こしやすいので注意が必要です。
○低体温症になりやすい人・なりやすい状態
 ・お年寄り、小児
 ・栄養不足や疲労
 ・水分不足 
 ・糖尿病、脳梗塞など神経の病気がある人
 ・怪我をしている人
○低体温症に気づくには?
 手足が冷たくなったり、寒くて震えます。
体の中心の温度が35℃まで下がると低体温症ですが、震えは中心の温度がもう少し高い段階から始まり、体に警告サインを出します。ここでのんびりしていると、本当に低体温症になります。震えがあるのは、熱を上げるエネルギーが残っている証拠です。ここで改善するのが一番安全で、早道です。
○低体温症の対応が遅れるわけは?
 初期の低体温症は、心臓発作のように緊急性が高くないので、もう少し・・と言ううちに、気づくと悪化してしまいます。
○体温測定は?
 一般の体温計で体温を測っても低体温症の診断にはなりません。
低体温症の体温は個人差がありますので、測定する必要はかならずしもありません。
とにかく、震えがあるか、意識がしっかりしているか、を確認して下さい。
○震えが始まったら何をすればいいのか?
1。隔離  冷たいものからの接触をさけます。地面に敷物をしたり、風を除けたり、濡れた衣服は脱いで下さい。着替えが無くても、濡れたものは脱いで、毛布などにくるまって下さい。
2。カロリー補給  何よりカロリーで、体温を上げるエネルギーを補給することが大切です。
3。水分補給  体温が下がると利尿作用が働いたり、体内の水分バランスが変化し、脱水になります。温かくなくてもいいですので、水分をとります。温かければ、さらに理想ですが、まずは水分補給です。
4。保温・加温  体温を奪われないために、なるべく厚着をして下さい。顔面・頚部・頭部からも熱の放散が大きいので、帽子やマフラーなどで保温して下さい。毛布などにくるまる場合は、一人でくるまるより2-3人でくるまった方が暖かいです。特に、老人や小児など弱い人には、元気な人が寄り添って一緒に包まれると保温効果があります。
屋外場合は、これ以上濡れないように、湿気から隔離できる衣服やビニール素材などがあれば、くるまって下さい。震えがある段階では、どんな温め方をしても大丈夫です。
○悪化のサインは?
 震えがなくても低体温症になっていることもあります。
見当識障害(つじつまの合わないことを言う)、ふらつくなども、重症な低体温症の症状です。また、震えていた人が暖まらないまま震えがなくなって来るのは重症になっている証拠です。
○震えがなくなったり、意識がもうろうとしてきたら?
 震えが止まってしまった低体温症は、自分での回復は難しいです。急に悪化する可能性もあるので、できれば、至急病院に搬送しましょう。ただ、避難所によっては搬送が困難だったり、危険を伴うことも考えられます。その時は無理をせずに、以下のような対応をして下さい。
こ れ以上体温が低下しないよう、今まで以上にしっかり加温をしてください。またコマメに、意識が悪化していないか、呼吸をしているか、確認して下さい。ま た、この状態では、丁寧に扱い、可能であれば横に寝かせて下さい。さすったり、乱暴に扱うと、心臓が止まるような不整脈を起こすことがありますので、注意 が必要です。
この状態では、
1。むせないようであれば、カロリーのある飲物をのませてください(低血糖や脱水を伴っていることが多いです)
2。ペットボトルなどに、人肌程度のお湯を入れて湯たんぽを作り、脇の下・股の付け根・首の回りに当てる(42℃を超えた湯たんぽは、長時間当てるとやけどをするので注意)

  
高所・低圧環境下での障害
(1)キーポイント
*大原則:
下山、撤退、酸素吸入
・・・それが出来ないとき薬剤投与&加圧バック(ガモウバック…プラス110mmHgの加圧可)
*予防対策の4原則:
 ①初期症状を自覚、
 ②症状が出たらより高い場所に泊まらない、
 ③悪化するときは下山、
 ④一人で下山させない

*急性高山病は、高地に順化していない人が急速に海抜2,400m以上の高地に到達後、数時間から3日目までに、低酸素、低圧、低温環境に曝されることと運動負荷により生じる症候群である。
*この症候群の定義は、頭痛があり、その上に①消化器症状(食欲不振,むかつきまたは嘔吐)、②疲労および(または)脱力、③めまいおよび(または)ふらつき、④睡眠障害、の4項目症状の一つが存在するものである。
*急性高山病は生命を脅かすことはないが、急性高山病を先行して高地肺水腫が発生する、高地肺水腫は、適切な治療を行わないと死の転帰をとる。

(2)メモ
*急性高山病
2500mで25%の人に3つ以上の症状(①食欲不振,むかつきまたは嘔吐、②疲労および(または)脱力、③めまいおよび(または)ふらつき、④睡眠障害、の4項目症状のうちの3つ以上)
3000mではほとんどの人→10%の人は重症化
*高地脳浮腫
急性高山病の症状プラス「精神状態の変化」又は「運動失調」
*高地肺水腫
 ①呼吸困難、咳、痰、喘鳴(ぜいめい)、胸部圧迫感
 ②中心性チアノーゼ(酸素のついていない赤黒い血液が多くなり、皮膚が赤黒くみえる)、頻脈、頻呼吸
  <注>①②いずれかが二つ以上、体質や遺伝的素因がプラスされる、日本では元気な若年者に多い(発症者の平均26.4歳)、西岳2658mで発症例あり

(3)原因(原因は酸素が足りなくなること。)
  低酸素・高CO血症
      ↓
  水、電解質代謝異常
      ↓
  細胞内脱水・間質(細胞と細胞の間)の浮腫

(4)重症な兆候
*脈拍120回/分以上で重症、140回/分で最重症
*意識障害、立位保持、歩行不能、視野障害
*チアノーゼ、血痰

(5)鑑別が必要なもの
*乾性せき→高山の乾いた空気が原因かも?
*消化器症状→食事の内容の変化が原因かも?
*意識障害→高・低血糖かも?
  <注>一般に低地での慢性疾患は悪化し症状を強くする。

(6)急性高山病緊急処置(国際山岳連盟医療委員会)
*軽症急性高山病
 ①休息、安静
 ②アスピリン、アセトアミノフェンなどの非ステロイド系の鎮痛解熱剤
  <参考>ステロイド…副腎皮質ホルモンを利用した薬で様々な症状を抑える万能薬(たとえばウルシにかぶれたらステロイド軟膏を塗ると劇的に快方に向かう)である。しかし、副作用も大きいので注意が必要である。
 
③ダイアモックス(acetazolamide)500mg/日
  <参考>ダイアモックス(炭酸脱水素酵素阻害剤)は予防的投与が可能である。入山前日・・・125mg(1/2錠)×2回、1日目・・・125mg×2、2日目・・・125mg×2、3日目・・・125mg×2、4日目からは不要
*重症急性高山病/高地脳浮腫
 ①下山、撤退、酸素吸入
 ②-aデキサメサゾン(副腎皮質ステロイド)8mg経口または静注、以後6時間ごとに4mg
 ②-bプレドニン(副腎皮質ステロイド)50~100mg経口または静注、以後8~12時間ごとに50mg
 ③加圧バック(可能なら②と③を組み合わせる)
*高地肺水腫
 ①下山、撤退、酸素吸入
 ②ニフェジピン(Ca拮抗薬)10~20mg、以後6時間ごとに遅効性ニフェジピン20mg
 ③加圧バック(可能なら②と③を組み合わせる)
*緊急時
 ①下山、撤退、酸素吸入
 ②デキサメサゾンまたはプレドニン+ニフェジピン20mg+ダイアモックス500mg
 ③加圧バック

(8)パルスオキシメーター
*血液中の酸素量と脈拍が測れる携帯出来る測定器

<図>登山時のSpOの変化(佐藤小屋2300m~富士山頂3775m)
×…20歳代男性     ○…50歳代以上

SpO(%)
100
×○                
           ×
           ○

90                   ×
                   ○   ×
                               ×
                        ○
 
80
                               ○
 


70
 
 
 
 
60   500  1000  1500   2000  2500  3000  3500  4000 
0


<図>登山時のSpOの変化(佐藤小屋から富士山頂)
×…20歳代男性     ○…50歳代以上

その1(0~2500m)

SpO(%)
100
×○
         ×
         ○

90                 ×
                  ○


 
80

 
 
 
70
 
 
 
 
60   500  1000  1500  2000
0

-------------------------------
その2(2500~3775m)
SpO(%)
100




90
     ×
            ×
     ○
 
80
            ○
 
 
 
70
 
 
 
 
 2500  3000  3500  4000 
0

(9)レイクルイーズ急性高山病評価システム(1991年第7回国際低酸素シンポジウム)

自己判定
①頭痛
  0…まったくなし、1…軽い、2…中程度、3…激しい(耐えられないくらい)
②消化器症状
  0…まったく正常、1…食欲がないまたは少し吐き気がする、2…かなりの吐き気または嘔吐あり、3…強い吐き気と嘔吐(耐えられないくらい)
③疲労・脱力
  0…まったくなし、1…少し感じる、2…かなり感じる、3…とても感じる(耐えられないくらい)
④めまい・ふらつき
  0…まったくなし、1…少し感じる、2…かなり感じる、3…とても感じる(耐えられないくらい)
⑤睡眠障害
  0…快眠、1…いつものようには眠れなかった、2…何度も目覚めほとんど眠れなかった、3…まったく眠れなかった

臨床的評価(リーダーなど他の検者が自己判定に加えてチェックする)
⑥精神状態の変化
  0…変わりなし、1…傾眠・けん怠、2…意識当識・錯乱、3…昏迷、4…昏睡
⑦運動失調('右足のつまさきに左足のかかとをつけ次に左足のつまさきに右足のかかとをつける’をくりかえして歩く)
  0…正常、1…綱渡り歩行、2…線から踏み出す、3…倒れてしまう、4…立っていることが出来ない
⑧四肢の浮腫
  0…なし、1…1か所、2…2か所以上

機能的スコア(自己判定に加えてもよいし、臨床的評価の後に検者が尋ねてもよい)
「全体的にみると、これらの症候があなたの活動能力を落としましたか?」
  0…変わらない、1…少し落ちた、2…かなり落ちた、3…とても落ちた(ほとんど寝たきり)

1)ある高度到着後、48時間以内を観察期間とする。
2)自己判定:①~⑤の自覚症状を自己採点する。0~3までの4段階で評価しスコア化する。
3)臨床的評価:⑥~⑧の兆候について、検者が記入する。0~4までお5段階で評価し、スコア化する。


  
紫外線障害

紫外線障害とは
…急性皮膚障害(日焼け)
…慢性皮膚障害(光老化)
  (光免疫抑制・光発癌・光線過敏症)

 急性皮膚障害

紫外線とは
…太陽光線の内、可視光線の波長帯(780~400nm)より短い波長帯(400~100nm)を言う。薄いガラス板一枚を通るか通らないかでUVA(400~320nm)とUVB(320~290nm)に分けられ、さらにUVBより波長の短いUBC(290~190nm)、真空紫外線(190~100nm)がある。
…地表に到達する太陽光線のうち、6%が紫外線、そのうち9割がUVAである。
…UVBとUVAの一部がサンバーンに関与している(7:3~8:2)
…紅斑惹起作用は、UVBはUVAの600~1000倍
…UVAは真皮まで到達し、DNA障害を起こす。
<参考>赤に近い光や赤外線は皮下脂肪の下にまで到達する。なので赤外線は中まで暖める。
標高が上がるに従い空気に吸収される紫外線量は減少し、平地に比べて
高度1000mではUVBは20%、UVAは17%増加する。
高度2000mではUVBは35%、UVAは27%増加する。
高度3000mではUVBは50%、UVAは34%増加する。
高度5000mではUVBは70%、UVAは44%増加する。

日焼けとは
…日焼けにはサンバーン(紅斑反応)とサンタン(色素沈着)の二つがある。
…サンバーンとは日光暴露後に数時間で始まり、12~24時間後がピーク、紅斑・腫脹・水泡形成・痛みを伴う反応である。
…サンタンとはサンバーンの後、3日目ころから起こる色素沈着である。

サンバーンのメカニズム
…真皮上層の毛細血管の拡張と血管内皮細胞の腫大を伴う炎症反応
…紫外線の血管に対する直接作用に加え、他の細胞から遊離される化学伝達物質(プロスタグランディンなど)による炎症反応も関与
…発熱・悪心などの全身症状(表皮角化細胞からインターロイキン6などによる)
…基底細胞層へのsunburn cellの出現(角化細胞のアポトーシス)

日本人のスキンタイプ
…Ⅰ すぐに赤くなるが、元の皮膚色にすぐもどる
…Ⅱ そこそこ赤くなり、そこそこ色素沈着する
…Ⅲ あまり赤くならず、どんどん色がつき、なかなか消えない
<参考>タイプⅠとタイプⅢではMED(minimal erythema dose 最少紅斑量=皮膚が赤くなるまでの時間)が2倍違う
      日本人のタイプⅡのMEDは、真夏の海岸で約20分程度
サンスクリーンの成分
…紫外線吸収剤(紫外線を吸収し、熱などのエネルギーに変換するように分子設計された有機化合物、UVBに効果がある。 かぶれを起こしやすい成分が多い。
    パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルなど
…紫外線散乱剤(サブミクロンからミクロンの粒子径の無機粉体で紫外線を散乱・吸収する。 比較的かぶれを起こしにくい成分が多い。
    酸化亜鉛・酸化チタンなど

サンスクリーンの有効性
…SPF(sun protection factor 塗布部位のMEDがどれくらい延長するかの指標、主にUVBに対する防御効果
…PA(protection grade of UVA 紫外線UVA照射後の即時黒化の程度を比較して3段階に分類
<参考1>一般の日常生活でSPF10,PA+、
      屋外での軽いスポーツやレジャーでSPF10~30,PA2+、
      炎天下のレジャーやマリンスポーツでSPF30以上,PA2+~3+
<参考2>2mg/cm2の密度で塗るのが理想だが、実際は0.39mg/cm2ぐらいしか塗られていないという調査結果がある(真珠2個分くらいを顔全体に伸ばすとちょうど良い)。
       2~3時間毎に塗りなおす。
       紫外線吸収剤による、接触性皮膚炎に注意

治療
…軽症例には冷湿布が有効だが、基本的には原因の明らかな一過性の皮膚炎であるので、短期間に対症療法を行う
…外用療法:ステロイドの外用薬
…内服療法:非ステロイド、ステロイド系抗炎症薬の短期内服

 慢性皮膚障害

…紫外線による皮膚障害は、その年齢までに受けた総受光量に比例し、障害は累積して非可逆的
…自然の老化は委縮性変化であるが、光老化では増殖性変化を示す。
…主な徴候は、深い皺、シミなど
    老人性色素斑・脂漏性角化症・肝斑
    光線性花弁状色素斑・菱形皮膚

  
熱傷(やけど)

熱傷の深さ(深達度)
…Ⅰ度熱傷 皮膚の表面だけの損傷 数日で炎症が消退して治る
…浅透性Ⅱ度熱傷 真皮の浅い部分までの損傷 1~2週間で治る、傷痕を残しにくい
…深透性Ⅱ度熱傷 真皮の深い部分までの損傷 治るのに3~4週を要す、肥厚性瘢痕(熱傷ケロイド)を残すことが多い
…Ⅲ度熱傷 皮膚全体の損傷 自然に治るのには1~数ヶ月を要すし、肥厚性瘢痕になる。皮膚移植手術を必要とすることが多い

現場での処置
…冷却
…水泡は破かない、大きな水泡は内溶液だけ抜く
…清潔に保つ(ガーゼ・包帯などで被覆)
…安静・拳上を心がける

病院での冷却方法
…氷水ガーゼで30分間冷却

<参考>
保冷剤で冷やしても、立体的な患部では、一部しか冷やすことができない。氷や保冷剤で水を冷やし、その水にガーゼなどを浸して患部全体にむらなく当てて冷やすこと

<参考>
8~10℃が理想、冷やしむらに注意、冷やし過ぎに注意



登山教室Timtamトップへ

登山教室Cueトップへ




Let's go climbimg all together