力を出すとき「セーノ」で息を吸いながら力を貯め |
「ハッ!」と息をはきながらエネルギーを解放する |
体を 「左に振り」 | 体を 「右に振る」 |
〃 「時計まわりに回転させ」 | 〃 「反時計まわりに回転させる」 |
〃 「かがみ」 | 〃 「立ち上がる」 |
〃 「壁から離れ」 | 〃 「壁につく」 |
〃 「腹筋を縮め」 | 〃 「海老ぞりになる」 |
小さな振りからはじめ | 振幅を大きくして行く(振り子の共振) |
左右の手の引き方を変える | 体の振り子の振幅を大きして行く |
(26)有酸素運動
…陸上競技の百&二百メートルはスタートからゴールまで息を吐き続けて走る無酸素運動だ。同四百メートルは有酸素運動で、
百メートルを越した所にある目印(一人一人位置は違う、そんな目印は意識してなかったという陸上OBも多い)で二息目を吐き始めるそうである
(人類の神経系は吸うのでなくて吐くタイミングで行動を起こす構造になっている)。クライミングの(山登りの)
場合でもムーブの一時的な終了点やレストする時など出来るだけ機会を見つけて意図的に息を吐くようにするのが良い。
そうすれば自動的にたくさんの息を吸って有酸素運動になって行く(息を吸うタイミングを考える必要はない)。
小刻みなタイミングでその場に有った無声音「ハッ」「ヒッ」「フッ」「ヘッ」「ホッ」どれか選び、それを言いながら息を吐くのが良い→即ち息を吸う。
(27)見ないで取りに行くor見てるけど回転を入れて取りに行く
…遠くのホールドを左手で取りに行く場合、ホールドの位置を記憶したら、ホールドを見ないで顔を右に向ける。
顎を引いて右の肩の上に顎を乗せるようにするとより遠くに左手が伸びる。
…例えば、右手と右足で立って左手でホールドを取りに行くフラッキングの時に頭の頂点と肛門を結ぶ線を軸に右に回転してから左手を出す
(右手はブロック〝懸垂の後の腕を曲げきった状態で保持”する場合が多い)。
(28)ホールドが効く方向にムーブを終了させる(ホールドを掴んでから効かせるまでをイメージして動く)。
…例えば、右斜め下方向に効くホールドを左手で取りに行く時、ホールドを掴んだら右斜め下方向に体全体が 動くとしっかりとホールドを掴むことが出来る。
フットホールドを左手の真下よりさらに右に移動させると、ホールドを右斜め下方向に効かせやすい。
(29)ホールドが効く方向にムーブを起こす。
…例えば、体の右上側遠くにあるホールドを左手でクロスで取りに行くのだが、体を保持する右手のホールドが右下に引く方向でしか効かないという場合、
右横とか右上方向に向かってムーブを起こすと右手が外れてしまうので、右下に向かって右手ホールドを効かせながら移動し、移動が終わって、 体が安定して保持されてから上方向に立ち上がり、その後、左手でホールドをキャッチする。
(30)イメージトレーニング
…思い入れて狙っているルートがある場合はイメージトレーニングが有効である。人の体は思った方向に動くものだからだ。
電車に乗っている自分の姿、岩場に向かって歩いている自分の姿、ルートを見ている〃、準備体操してる〃、
ハーネスOKと言ってる〃、クライミング中の〃、終了点へクリップしてる〃、ロワーダウン〃、ビレーヤーと握手〃をイメージする。
失敗でなくて成功している姿をイメージすること。
(31)フィギャーフォー
…右手でホールドを掴んだら、その右手の肘の内側に左足の膝の内側を噛ませて岩場に止まる。左足を起点に左手を伸ばして次のホールドを取りに行く。
フリークライミングの入門書に時々書かれている派手なムーブである。小さな右手ホールドでフィギャーフォーの形を作るのはホールドから剥がされる可能性が大きいし、
それが出来るくらい筋力のある人なら片手懸垂で右手をブロックしてから左手を出すことで解決出来るので、フィギャーフォーを使っているのを見ることは少ない
。←小川山廻目平にあるフェニックスの大岩の大岩を左側の側壁にあるルートの中段のハング超えの場所で見たことがある。アイスクライミングで、
氷りのつららが下まで届いてなくて、手は届くけれど足は宙ぶらりんになるような所を超える時にフィギャーフォーを使う。
衣類とアイゼンとアックスの重さがあるので片手懸垂ブロックが大変だからである。つららに右手に持ったアイスアックスを打ち込み、
アイゼンを履いた左足を高く上げて右腕を超えて、右肘の内側に左膝の内側を置く、左足の重さを利用してフィギャーフォーの形に持って行く、
それから、左手のアックスを上に打ち込み、フィギャーフォーを解除して体を上昇させる。
(32)レスト
…右手のハンドホールドを効かせて岩場に止まる。フリーになった左手を下にぶらぶらとさせて血流を回復させて休ませること。
左手をチョークバックに入れてチョークをつける人も多い(チョークアップ)。左手を休ませることが出来るということは、その左手で、
ホールドを探したり、ロープをクリップしたりすることが出来るし、時間をかけて考えながら登ることも出来る。つまり、
レストが出来なければリードは出来ないことになる。股関節の可動域が広い人はステミングの技{ムーブカタログの(5)}
を使えば前傾壁でも両手を離してレスト出来る。練習の時は、なるべく1手ごとに、フリーになった手を下げて、
チョークバック又は自分の尻に触ってから次の動きを開始するようにする。そうすると最も合理的なホールドの効かせ方が身について行くし、
上手にレスト出来るようになって行く。
(33)瞬間的にホールドを効かせて次のホールドを取りに行く
…外傾して静的に持っては効かないホールド(レスト出来ないホールド)を、後方にバックスイングを入れてから前方に向かい、 スイングの勢いのある内に右手で掴む(勢いがあるから一時的に右手が効いている)。その一時的に右手が効いている内に次のホールドを左手で取りに行く。
一つのバックスイングに右手と左手と取ってしまうのだが、左手(2手目)が良く効くホールドであるとうまく行きやすい。次のコーディネーションの一つの形と考えることが出来る。
(34)コーディネーション
…1手1手止まらずに複数手を一つの流れ(勢い,無重力)で進むカッコイイムーブ。落石の可能性あるような所を行く岩登りには向かない。
(35)キャンパシング
…前傾壁で使用、フットホールドに足を置かず、手と腕と体の振りのみで、次の手を取る厳しいムーブ。腕を伸ばした状態からスタート出来たらカッコイイけど難しい。腕を曲げた状態からわずかに上方向へ懸垂して、デットポイント状態上のホールドを取るならそれほど練習しなくても出来る。
落石の可能性あるような所を行く岩登りには向かない。
(36)足で登る
└Ytube3分
…足に注目して、上の動画を見て下さい。
足で登るは「極意」というべきムーブの基本です。「足を決めてから手を取りに行く」とか「足を上げてから手を取りに行く」とか「左足を起点に左手を取りに行く」とか言われます。初心の内は手を上げてホールドをとらえてから足を上げてしまいがちです(手が先になる)。
左膝を動かさないで左手でホールドをキャッチするよりも、 左膝をほんの少し曲げた状態から伸ばしながら左手でホールドをキャッチする方が 体を保持している右手にかかる負担が、数段少なく出来るのです。ホールドをとる時に微妙でも(もちろん大きくても良い)足の屈折を(右手が効く方向に屈折する)入れるということです。「(29)ホールドが効く方向にスタート」も参照して下さい。
(37)「へそ」で空を見る
…絶対に落ちられない高い所にいたり、高くなくても切り立った岩場5メートル以上を登る場面に遭遇したりすると、
私達は腰が引けて岩壁側にもたれかかるようになりがちです。腰が引ける程度は個人差がありますが、脳からの本能的な命令によるもので避けることが難しいです。
…図の左の棒人間のように腰が引けてしまうと
(a)足のつま先から踵の方に向かう方向(=足が岩を滑り落ちる方向)に力(体重による)がかかってしまいます。
(b)足で体重を支えるのが大変なので、立っているだけで腕力を消耗して行きます。
(c)腰をコントロール出来ないので体重を移動することが出来にくくなります(ムーブを起こせない)。
(d)両手で体重を支えがちなので、足への加重が減り(摩擦力が減るので)足が滑りやすくなります。加えて、ロープを操作することが大変になります。
図の右の棒人間のように「へそ」から空が見えるように(赤矢印)立ちたいものです。そのためには「その方が良かったこと」を脳に教えこまなければなりません。
「岩登り以外に山のトレーニングってあるんですか!!」日和田によくいるM田先輩に言われました。申し訳ないことに、
『山のための体力的なトレーニングのことじゃなくて、バランス感覚を脳に教えこむためのトレーニングのことなんだ!』とわかったのは言われてから何年も後(10年以上かな)のことでした。今だったら、
「スキーかスケートみたいなトレーニング!」とか答えたい所です。
*山を定期的に歩いていても上半身の筋力や持久力の形成は不十分です。
それを補うためににも岩登りは有効です(上半身を積極的に使うので)。
「その方が良かったこと」が脳に教え込まれる(or刷り込まれる)までのトレーニングの量や時間はものすごく個人差があります。 1回とか2回でOKの人もいれば、何十回の人もいます。前者の人は岩登り自体が好きになりどんどん岩場での姿勢が良くなって行きがちです。
後者の人は岩登りトレーニングが好きになれず、それを中断してしまいがちです(負のスパイラル)。ぜひ、がんばって中断しないでほしいです。 図の右の棒人間のように岩に立てるようになっていると、ちょっと怖い場所の通過の場面で安全度が格段に高くなりまし、
怖さも適度に小さくなります(まったく怖くないのはかえって危ない)。
…「何回トレーニングすればいいでしょう?」 岩登り苦手タイプの方の質問です。「2~3回、日和田に来ればいいですよ!」という答えをよく聞きますが、その答えは個人差を考えていませんからNGです。
「14回(84時間)以上、2週間以上の期間を開けずにトレーニング」という方が正解に近いです。 それでも足りなくて、、、20~30回」と提案したいです(そのためにはクライミングジムを利用されると効率的です)。
写真は埼玉高麗・日和田山の岩場・男岩一般ルートの出口クラックです。日和田に行ける人ならば、まずここが腰が引けない状態でクリアできるようになりましょう。
…以下は日和田と鷹取の日程です。首都圏在住の方でしたら、どちらか近い方に参加していただけたら幸いです(要:自宅でのたくさんの予習復習)。
(38)両手持ちの左右差
…体が回転して壁から剥がされそうにな場合、足を置く位置、足の向き、体の重心の位置など工夫しますが、足も体もダメな場合に左右の手の力のかけ方を変えるとうまく止まる場合がある。
…力まかせのバックスイングでなくて、体を振り子と考えると、左右の手の力の掛け方を交互変えることを繰り返すだけで、、振り子の振幅を大きく出来る。
ハンドホールドの効かせ方
*ハンドホールドがうまく効かせられる、腕の筋肉でその不足分を補わなくて良いので、腕が楽にります。
(1)ホールドの組み合わせ(オポジション)
二つ(三つの場合もある)のホールドを組み合わせ、それぞれに反対向きの力を加えてることで保持力を得る。例えば、手を外に向かって引けば(浮き石注意)
足は内に向かって押せるので、相当に外傾したフットホールドでも立つことが出来る。サイドプル、ガストン、アンダーホールド、ステミング、レイバック、チムニー、
などでホールドの組み合わせが使われる。
サイドプル
ステミング
レイバック
ガストン
(2)下に引くホールド
…重心が上に行くに従って(つまり登ると)効かなくなるので、下に引く体勢を維持して登る。
(3)横に引くホールド
…右手で右に引く(:ガストン)場合は対角の左足をつま先を左に向けてフットホールドに置き体を右に傾ける(右足はつま先を右に向けて適当な所に置く)。右腕を曲げるに従い肩を壁側に入れるようにする。
…右手で左に引く(:サイドプル)場合は、手と足の位置関係により、次の二通りになる
(その1)対角の左足をつま先を右に向けてフットホールドに置き体を左に傾ける。右足はつま先を右に向けて適当な所に置くか岩に添えてバランスをとる。
(その2) 対角の左足をつま先を左に向けてフットホールドに置き体を左に傾ける。右足はつま先を右に向けて適当な所に置いてバランスをとる。
*下の写真は上の逆(左手で右に引く)の場合である。対角の右足をつま先を右に向けてフットホールドに置き体を右に傾けている。左足はつま先を左に向けて適当な所に置いてバランスをとっている。
(4)上に引くホールド(:アンダーホールド)
…斜め上に引く場合もある。足を踏ん張って上に引く力を作る。
<付録>「ホールドの持ち方カタログ」
(1)オープン
リラックスした感じで、ひとさし指と中指と薬指の第一関節までをを引っかけるようにする。小指は短いので薬指に添える(小指の第一関節は引っかけない場合が多い)。岩にかからない指(親指,小指,場合によっては薬指,ひとさし指)を遊ばせないで、岩に添えると保持力が大きくなる。リラックスでなく、腕に力を入れて持つと保持力がアップする。ムーブを起こす時やムーブを終わらせる時などはリラックスしない(その方が保持力が高い)。
(2)クリンプ(カチ持ち)
人指し指から小指まで重ねる。親指の第一関節までを人指し指の第一関節の上あたりにかける。
(3)セミアーケ
カチ持ちするホールドを、手の平を卵を持つように膨らませて、手の平の手首に近い膨らんだ部分を壁に押し付けて持つ。オープンと異なり小指も使える。カチ持ちの一種とも言える。
(4)ピンチ
親指とそれ以外の指で岩を挟むように持つ。親指の腹で挟むと、遠くまで手が出せないことがあるので、親指の人差し指側の横関節の所で挟むと、手首がの可動域が増えて、遠くにもう一方の手が出せる。あえて親指をかけない方が遠くまでもう一方の手が出せる場合がある。
(5)リング
親指と人指し指で輪を作って持つ、他の指は人指し指に重ねる。
(6)パーミング
すべすべしたでっぱりを手のひらの摩擦でのっぺりとつかむ。
(7)ラップ
幼児の拳固を包み込むように持つ。
(8)ジャム
親指を曲げ、他の指は伸ばして手刀の形を作ってクラックに夾み、クラックの幅に合わせて手を膨らませてクラックからはずれなくする。
親指を上にしてクラックに夾む場合と下にする場合がある。クラックの幅がさらに大きければ手を拳固にしたり肘まで夾んだりして工夫する。
同じクラックに足(クライミングシューズ)をジャムしてフットホールドにすることが多い。
ジャムに有効なテーピングの方法の例 注意=血流を妨げないように緩めに巻く |
|
左手はテーピングしやすいですが右手 はだれかにお願いした方がベター |
人差し指は第一関節の手前まで 中指からは手の甲の終わりまで |
小指は第一関節の手前まで 一指し指と小指だけ長いのです。 |
親指と小指は指の又をかぶせるように 巻き付けます。 |
小指の所の巻き方を強調してみました。 実際は一つ前の状態で小指に巻きます。 |
さらに手首、親指、人差し指、小指は 包帯を巻くようにぐるっと巻きます。 図は手首を巻いた所です。 |
◆実際はこんな感じになります。◆手の甲側はテーピングで真っ白ですが、手の平側は皮膚が露出して手相が見える状態です。この巻き方だと手の平と指の保持力の低下が少ないです(パーミングも出来ます)。◆フィンガージャムをする場合は指は保護されませんが、フィンガージャムをしない方が良い場合が多いと思われます。◆その他、テープの先を二つに割って指に巻き付けるなど種々の方法がありますので、様々に工夫してみて下さい。 |
安全を守る技術を学ぼう(松浦寿治2016.4/30)
1992年、日本で初めて現在あるようなクライミングジムが大阪に登場しました(大阪クライミングソサエティOSC)、同年やや遅れて、千葉県の流山に2番目のジムが出来ました(ガンバクライミングジム)。それから24年、全国に200を超えるジムが出来て、まだまだ増加して行くでしょう。これだけ多くジムが出来れば、クライミングはたぶんテニスよりも簡単に始められるし、続けられます。2016年現在はクライミングジムと山ガールの時代であると仮称したと思います。
クライミングジムと山ガールの時代におけるクライミング人口は1980年代に比べて3桁も4桁も多いはずです。そしてその一部はクライミングジムを出て外岩に進出しています。使用するロープワークはクライミングジムのそれに近い状態が多く見受けられます。クライミングジムの支点は遊具保険がかけられほど強いものです。でも、外岩の支点は抜けてあたりまえ、クライミングジムのロープワークより何段階かの補強をしないで使用するのは危ないです。「登れるけれど危ないクライマー」は2010年のフリークライミング協会の注意呼びかけの時点よりさらにさらに増えています。「リングボルト一つに体重をかけて下を覗く」、「PASやデージーチェーンを連結されていないたった一つのボルトにセットしたとたんにビレー解除と言う」、「岩場の上に人がいるのにヘルメットをかぶらない」、「ボルト一つを支点にセカンドをビレーする」、「ハーケンを打って作られたルートにスリングを持たないで登る」などなどです。
40年の岩登り経験で蓄積された安全を守る技術を伝えたいです(「これでもかこれでもかと思うくらい頑丈に支点を作る」、「ケアレスミスに備えて複数の安全対策をする」、「ロープレスキューの技術を定期的にトレーニングする」、「現場に即したビレーシステム」、「現場に即した懸垂下降のシステム」、「合図が聞こえなくても登れるシステム」などなど)。「登れるけれど危ないクライマー」でなくて「そこそこ登れて安全なクライマー」を養成したいです(3級2級→1級→初段とか5.10→5.11→5.12→5.13とかの数字グレードのの向上を目指すのでなくて、ビレーヤーズグレードの向上を目指すクライマー)。
(注1)安全を守る技術に老若男女の区別はありません(テニス等のスポーツ種目とは違います)。
(注2)安全を守る技術の本質は「登りたい山と登れる技術のバランスが取れていること」です。
(注3)ロープを使って安全を守るためには自己脱出でロープを鉛直に登れる程度のクライミング力が必要です。
(注4)安全を守る技術を伝えることは登山教室Timtam&Cueのメインコンセプトです。
岩登り技術を総合的に身につけよう(松浦寿治2005.5/30 2010.2/4改訂)
◆フリークライミングとアルパインクライミングは区別しないで取り組もう。
①フリークライミングのルートの支点は電動ドリルで直径10ミリもあるような穴をあけて太い頑丈なボルトを埋め込んで作られたものがほとんどです。
しかもそのボルトはクリップする位置とかロープの流れを考えて計画的に設置されています(すぐれたルート開拓者によってひかれたルートの場合)。
それに対してアルパインクライミングのルートは、ハーケンや手打ちのボルトを使って作られ、よほどポピュラーなルートでないがきり風雪にさらされて朽ちて
欠落しかけている可能性ありといったものです。ミシン縫いのスリング対手作りスリング、レッグループ対シットハーネス、10.5ミリ50メートルクライミング
ロープ対9ミリ45メートルロープ、落ちることが前提対落ちることはほとんどない、といった例をいくつか考えていただければわかるように、
フリークライミングルートとアルパインクライミングのそれでは確保システムの強度は大きく違います。それで、長らく、
岩登りにはアルパインとフリーの二つのスタイルがあるとされて来ました。
②最近そのアルパインの側に変化が起こってきているのを感じます。アルパインクライマーを自負していても人口壁でトレーニングを した人がけっこう多いです。必然的に岩登りの腕が上達していて、ちょっと支点が不足していて、従来ならハーケンを打ち足して(Ⅳ級A1ルートにして) 登った所でもヒョイヒョイ(人口壁の技術を不用意に自然の岩場に持ち込むことは大変に危険です。ホールドや支点を確かめて 見きわめて出切る限り静的に登るなどの安全対策が必要です)と超えていってしまいます。
③日本フリークライミング協会は自然の岩場でのルート整備事業を行っていますが、2005年現在800名強しか会員 がいないわけで、整備する人手とお金が不足しています。一般に、岩場の整備事業はその岩場のヌシというか篤志家が個人(個集団)の趣味で行っているもので、 恒久的に管理されてはいません。フリー用に整備されたルートでも岩と支点の風化を見抜いて登るアルパインの知識と技術が必要になります。
◆フリークライミングは危険ともなうスポーツです。
①freefan別冊「安全BOOK2」(2010年1月15日発行)
の巻頭の文を以下に転記しますので参考にして下さい。
文中の「クライミング」は「フリークライミング」の意味です。
クライミングは危険をともなうスポーツです(小日向 徹“日本フリークライミング協会・安全委員長”)
90年代初頭、クライミングが急速に普及し、日本の各地に公共、民間を問わずクライミング施設が数多く作られるようになってきた頃、 多くの関係者が「クライミングはルールを守っていれば安全なスポーツである」と語っていました。その言葉に影響を受けた方の人数は相当数に上るでしょう。 その結果、クライミングは多くの方に、危険な活動ではなく危険な香りのするスポーツまたはレジャーとして捉えられていったのだと思います。そのことが、 クライマーの増加のみならず、各種競技会やイベント、施設の増加などクライミング界の発展には大きく貢献したと言えるでしょう。
特に人工壁は、従来の岩登りやアルパインクライミングに比較すれば、天候やフィールドそのものによる危険がはるかに少ないのは確かです。 より危険度の高いスタイルを経験してきた者にとっては、ボルダリングやフリークライミングは、(従来のスタイルに比べて)、 ルールを守っていれば安全と感じても不思議なことではありません。それはあくまでも従来の危険度の高いスタイルと比較した時の話であるにもかかわらず、 その言葉を単純に鵜呑みにして、自分が事故を起こすまでその「安全」を疑わなかったクライマーも中には存在します。
また最近の傾向として、次のようなことがあります。まず、以前はクライミングの能力レベルとクライミング中の危険管理能力が比例している場合が多かったのですが、 (自然の岩場に比べて極めて安全な)クライミング施設の登場により、クライミング能力と危機管理能力には何の関係も見られない、いわゆる 「高グレードを登れるのに危険なクライマー」が増えてきています。
また、最近では「安全のため」をうたう講習会やインストラクターも増えてきていますが、たとえ安全のための講習中でも、 それが実技であればクライミングそのものが持つ固有の危険まで無くなるというわけではありません。そのことを、教える方も教わる方も忘れていることが 大変多いように感じます。講習会であっても、本来クライミングが持っているさまざまな危険が、少なくなることはあっても完全になくなることはありえないのです。 特に自然的な要因による危険などは、常に、誰に対しても同じように存在しています。
さらに、どんなスポーツでも過度におこなえば、なんらかの障害を引き起こす可能性がありますが、クライミングについても 例外ではなく、 事故を原因としない身体各部の障害を抱え込むクライマーも数多く見受けられるようになっています。
クライミングにも安全上、守るべき基本的なルールやマナーがあるわけですが、安全であることが強調されるあまり、それらがおろそかにされる傾向があるように 思われてなりません。また、多くの事故例を見れば分かるように、クライミングは仮にルールやマナーを守っていたとしても、何が起きても不思議ではない、 危険を伴うスポーツなのです。
◆難しさでなくて、美しさと継続を目標にしよう
(美しい登りとは楽な登りのことです)。
岩登り(特にクライミングジム)のグレード
を追いすぎると、肉体的にも精神的にもデリケートになりすぎて、自然のフィールドに出て行くためのゆとりを無くし
がちなので気をつけて下さい。指,腕,肩,膝,腰,足首,等どこかに障害を抱える可能性もどんどん高くなります。登山を追求するのなら、
男性20Kg以上,女性15Kg程度の荷を背負って1日行動出来る丈夫な骨と筋肉、沢の中や冬の山での熱の消耗に絶えられるだけの皮下脂肪
(標準体重の範囲内で身につく皮下脂肪)があるべきです。それらの骨と筋肉と皮下脂肪は重たくて、高難度フリークライミングの追及とは相容れない所があります。
なので、登山を追及する者として「合理的で持続可能で身の丈に合った数値目標」を各個に設定すべきと考えます。「Timtamと笈の会員に対しては奥武蔵・
日和田山の岩場のステミングフェースルート5.7(or北横須賀・鷹取山の前浅間入口カンテルート5.7orそれに準ずる外岩ルート)
をクリア出来たタイミングを一つの区切りにするのが良くて、その後は岩登りの難しさでなくて、美しさと継続を目標にしよう」と提案しています
(美しい登りとは楽な登りのことです)。
◆奥武蔵・日和田山の岩場のステミングフェースルート5.7(or北横須賀・鷹取山の前浅間入口カンテルート5.7or
それに準ずる外岩ルート)をクリア出来たタイミングを一つの区切りにする
①ステミングフェースのクリアなら、性別年齢にかかわりなく(山は性別年齢にかかわりない)、月に1度程度の岩登りトレーニングで、
10年20年と保てる可能性が極めて高いです。人の体の作り(進化の過程で得た作り)に適合していると考えられるからです。
②反対に、ステミングフェースをクリア出来るだけのバランス感覚や基礎的な筋力が保てていないのなら、切り立つような一般登山道を行く程度で不安を感じます。
③区切りにする方法の例
…(1)「雨などで、山行が中止になった時とか、仕事等が忙しくて丸1日の休みが取れないなんて時はジム行く」と考える。
…(2)「“ジムに行くこと”も“山に行くこと”に含めれば、どんなに忙しくても2時間あれば山に行ける」と考える。
…(3)「ジムは“とにかくたくさん山に行く”ための手段である」と考える。
…(4)「行ける時にジムに行けばそれでいい」と考える。
…(5)「難しさでなくて、美しさと継続を目標にする」と考える(美しい登り⇒楽な登り)。
…(6)「5.11でなく、11年を目標にする」 と考える。
◆毎週末には山に行き1日9時間くらい行動するタイプの人の平日は以下の①~④のようです。
①相当に山慣れた人でも水曜日までは疲労が残ります。
②山の道具のメンテナンス、衣類の洗濯をします。
③記録や写真の整理を行う場合もあります。
④次の週末に行くの山のための資料収集メンバーとの連絡など行います。半年先、1年先に行くだろう山の準備をすることもあります。相当に思い入れて
準備するから山(沢,雪山,岩稜,etc)にある高いリスクを乗り越えることが出来る可能性を大きく出来るのです
(どんなに準備してもリスクが回避できないのが登山)。
◆なので、平日の夜にフリークライミングジムに行っても、入れ込んだクライミングをするよりは、週末の山に向けた調整的な
トレーニングをするのが良いということになります。調子に乗って多めにトレーニングをしてしまうと、瞬発的に筋肉を使った疲労をかかえてしまいます
(指,腕等を痛めてしまう可能性も有り)。
<参考>山岳ガイド協会の数字グレード
2011年5月の時点で、登山ガイドでなくて、山岳ガイド、登攀ガイド、国際ガイド受験の場合は、 以下のフリークライミングの力があるかないかが入口の所で問われたそうです。フリークライミングインストラクター 制度の出来た現在はもう変わってしまっているはずですが、努力をすれば到達できるのかそうでないかが数字ではっきり 示されているので参考になると思います。フリークライミングの力は登山中にある瞬間的な動きの変化に対応できる能力を計る目安になるから 数字グレードを示したのだと考えられます。
山岳ガイド=5.10aが安定してオンサイトできる。
登攀ガイド=自然の岩場でクラックを含んで5.11c以上を10本以上。
国際ガイド=5.12aを15本以上。
※ガイドになるには登山中にある持続的な厳しい状況(:風雪・重荷・低酸素・食事・疲労・etc) に対応できる能力を向上させなければなりません。 フリークライミングに並行してあるいはそれ以上に本格的な登山をする必要があります。 →くわしくは 日本山岳ガイド協会に問い合わせて下さい。
◆岩登り技術を総合的に身につけよう(この項のまとめ)
自然の岩場に向かうならば、フリーもアルパインもなくトータルして岩登りということで、
技術を総合的に身につけようと提案します。(松浦寿治 2016.2/4改訂)
確かめ
てから力をかける,三点確保,バランスクライミング
◆三点確保の確保とは
①「三点確保とは四点のうち一点だけ動かして登ること」という考え方が一般に定着しています。しかしその考え方は安全ではありません。なぜかと言うと、
・体重の多くを分担している一点(手でも足でも、特に手は重大)が動いたり,崩れたり,滑ったりして外れてしまえば落ちてしまうからです。
*腕力や指(ゆび)力が尽きて外れるのは本項の話題ではありません。
・バランスクライミング(手の負担が最も少なくなるような登り=手でなくて足で登る)がされていなければ、足が岩場を抑える力が不足するため足が滑りやすくなるからです。また、手で引くのと反対方向に足は滑りやすくなると知っていてほしいです。手の負担が大きい(つまりバランスが取れていない)と脳は恐怖を感じ始め、結果として体がすくんでしまいます。
・片手と片足で岩に停まり他の足はバランスを取るために使った方が(二点確保の方が)、残りの片手の手がかりを探せる範囲が上下左右に1m近く広がるからです。
②落ちないようにするためには、一点でも外れないように登ることが肝心です。つまり「一つ一つ、ホールド(及びスタンス)が‘欠けたり、動いたり、すべったりしないか’を確かめてから力をかける(引く,押す,乗せる,擦る)ことが岩登りをする時に忘れてはならない動作です。」と言えます。昔の先輩は「確かめてから力をかけた状態、つまり確実なホールドを手でしっかりつかんだ(or足をしっかり乗せた)状態」を「確保」と言ったのだと思います。
◆実質的には二点支持で登る(他の一点はバランスを保持するための補助として使う)
①三点でなくて二点で体重を支え、他の一点は補助にして登ることが多いです(支持二点+補助一点=三点確保)。
・Ⅲ級(梯子段あるいは階段のようなルート)の岩場を登る時でも、片手と両足で岩に停まっている時には体重はどちらか一方の足に乗せていてもう一方の足は補助です。つまり二点しか使っていなくて他の一点は補助としてバランスを保持するためにホールドやスタンスに添えるのです(添えて体重の何割かを支えることも多い)。
・Ⅳ級以上の難しい岩場の場合には二点にかける力を組み合わせ使う登り方(二点で一点の働きをする)が加わって来ます。
②三点に体重を乗せ続けていてはⅢ級(梯子段あるいは階段のようなルート、再掲)までしか登れません。というかⅢ級の岩場も含めて、岩登りは実質的には二点支持(支持二点+補助一点=三点確保)で登るのです。
だから、「三点確保が基本」でなくて、「一つ一つホールドを確かめてから、
力をかけることが基本中の基本」と言うべきだと提案します。
◆バランスクライミング、体の柔軟性が大切
①岩場に止まって体が安定して保持された状態をバランスがとれているといいます。手でささえる体重を極力少なくして、片足または両足になるべく多く体重が乗っている状態でバランスが取れているのが最も楽です。手でささえる体重が多くなる場合は腕を伸ばした状態でバランスが取れているのが楽です。手や腕が最も楽な状態でバランスをとりつつ登るのがバランスクライミングです。足を最大限に使って登ることとも言えます。
②四つ足動物は右後足→右前足→左後足→左前足→・・・の順に足を動かして歩きます。人(ヒト)の場合には右足→右手→左足→左手→・・・の順になります。別の言い方をすると、右手と左足が組んで対角線で体重をささえて、右足は補助、左手を動かしてホールドをキャッチしに行く、次に右足を動かして左手と組んで対角線で体重をささえるようにして、左足は補助、右手を動かしてホールドをキャッチしに行くとなります。この手足の動かし方が基本の登り方です。二足歩行をする人(ヒト)はこの登り方は練習しないと身につきません。「右足に立って右手をキャッチしに行き確かめてから右手に力をかける、左足に立って左手をキャッチしに行き確かめてから左手に力をかけるのが基本」と憶えると良いでしょう(足も確かめますが、それ以上に手を確かめることが重要です)。上記の四つ足動物の歩き方の登り方はバランスクライミングの基本です。
③四つ足動物には尾があってバランスの保持を助けています。尾のないヒトは背骨及び全身の骨格をくねらせることで尾のかわりをしなければなりません。なのでバランスクライミングには体の柔軟性がかかせません。ちょっと暇があればストレッチとか柔軟体操をしましょう。
④バランスクライミングとは、最小限の力で登る(狭義には最小限の手の力で登る)ということだ。
◆レストステップ(静加重静移動or体重移動)、山の歩き方イクオール岩の登り方
①重荷を背負って山道を歩くと人(ヒト)は自動的に確かめてから力をかけます。つまり「・・・歩幅せまく足(足1)を出し、滑らないか崩れないか確かめながらその足(足1)にそっと加重し、加重しながら全体重を出した足(足1)の真上に移動して、“よいしょ!”という感じで両足共にちょっとだけ反動をつけてその足(足1)の真上に向かって立ち上がり、それから後ろにあった足(足2)を持ち上げ、目視で足場を見極め、歩幅せまく前に出し、滑らないか崩れないか確かめながらその足(足2)にそっと加重し、加重しながら全体重を出した足(足2)の真上に移動して、“よいしょ!”という感じで両足共にちょっとだけ反動をつけてその足(足2)の真上に向かって立ち上がり、以下くりかえし・・・。」という歩き方(一歩一歩「確保」しながら歩く)をするのです。この歩き方がレストステップ(静加重静移動or体重移動)です。レストステップは安定して歩けるだけでなく、滑ったり石を落したりすることが少なくて、基本の山の歩き方と言えます。
②レストステップは基本の岩の登り方でもあります。ホールドを手で引くことが押さえられ、足場を真下に踏みつけるので、足が横方向にズレて外れてしまうことを防げます。
*緩傾斜の岩場で水平に近い大きな足場の場合です。その他を含めムーブカタログの項をぜひごらん下さい。
足の使い方の自動回路を身につけよう(自転車に乗るように)!
*Timtam会員の岩トレは、数字の向上(例:5.10d→5.11a・・・→5.13)でなくて、
ビレーヤーズグレードの維持を目標にして下さい。
(1)岩登りの練習の目標を「足の使い方の自動回路を身につける」こととビレーヤーズグレードの維持(向上よりも維持)に置くといいと思います。
(2)岩登りの基本的な動きに以下の①~④ような部分が多くみつけられます。
①右手のハンドホールドをつかんだら(右手をとったら)それが一番効果的に体重をささえられる状態に足や体や重心の位置を移動します(ハンドホールドを効かせる)。
②次に立ちあがったり腕を引きつけたりして左手で次のホールドを取りに行きます。
③左手のハンドホールドがつかめたら(左手をとったら)それが一番効果的に体重をささえられる状態に足や体や重心の位置を移動します(②と③の動作を合わせてムーブといいます)。
④次に立ち上がったり腕をひきつけたりして右手で次のホールドを取りに行きます。以下繰り返します。
(3)上記の①~④の動きの中にある「ハンドホールドをつかんだらその手が一番効果的に体重をささえられる状態に足や体や重心の位置を移動する」
練習をたくさん行うと、ハンドホールドを取ったとたんに自動的に足が(理想的な“体の保持が一番楽な”フットホールドに向かって)動くようになります
(足を含めた体全部が理想的な姿勢に向かいます)これが「足の使い方の自動回路を身につけた」状態です。
小さい頃に自転車の練習をしていていつのまにか乗れるようになっていた状態に似ています。
(4)足の使い方の自動回路を身につけた人はしなやかで安定した動き(ネコのゆっくり歩きみたいに丁寧に足を置いて歩く)をするようになります。
(5)「沢登りのためのクライミングジムでの練習方法」についてもごらん下さい。
RCCグレード |
各グレードのイメージ |
Ⅰ級 | 一般登山道になっている岩場コース、やさしくても慎重であるべし。 |
Ⅱ級 | 30度ぐらいの緩い傾斜の岩場、しっかりした足場で歩くように登れる。簡単に登れても、滑落や落石の危険はある。支点がないことが多いので注意。 |
Ⅲ級 | 40~70度ぐらいの緩い傾斜の岩場、しっかりして大きなホールドとスタンスが続く。 静加重静移動をすれば、手は添えるだけで腕力を使わずに登れる。支点の間隔が遠いことが多いので注意。 |
Ⅳ級 | 80度ぐらいまでの傾斜の岩場、しっかりして大きなホールドとスタンスが続く。 急傾斜なのでホールドをきちんとつかみながら登るが、腕力を使わずに静加重静移動で登るのが良い。 |
Ⅳ+級 | Ⅳ級に加えホールドとスタンスを二つ以上組み合わたり前傾壁を超えるなど、 一工夫しなければ登れない所が1箇所は出て来る。 |
Ⅴ級 | Ⅳ+級の核心部程度の所が数箇所,続けて出て来る。 |
Ⅵ級 | Ⅴ級より、ホールドが小さくなる(持ちやすいが第二関節までしかかからない程度)。
前傾壁なら距離が長くなる(ホールドはガバっと持てる)。1980年ぐらいまでⅥ級は登山靴で登られていた。 Ⅵ級はデシマルグレードの5.8に同じ。 |
ここからデシマルグレード | |
5.8 | RCCグレードのⅥ級に同じ |
5.9 | 5.8よりホールドが細かい(カチ持ちすれば効く程度)。 前傾壁の場合は距離が長い(ホールドは持ちやすいが第二関節までしかかかるない程度のものが出てくる)。 |
5.10a-d | 順を追って、上引きや横引き、滑らか、遠い、小さい等の難しいホールドが増えて行く。 それに対応するために多彩なムーブを繰り出して登る。スラブ壁では5.10bまで でグレードの追求を停止する方が無難である。数字グレードを上げたいなら前傾壁の方が怪我が少ない。そして、無理せず、前傾壁の5.11bまででグレードの追求を停止し、それ以下のグレードでトレーニングする考え方を勧める(数字でなくてルートを登る)。 |
5.11a~ | 取りに行くのも掴むのも難しいホールドがほとんどになる。 |
ここから人口登攀(エイドクライミング)グレード→こちらも参照して下さい。 | |
A0 | 手がかりはカラビナをかけた人工物(ボルト,ハーケンなど)だが、 足場は人工物を使わない(岩の上に置く)で登る。 |
A1 | 衝撃荷重をかけても簡単には抜けないしっかりした支点が1.5m 程度おきに間をあけず並んでいて、二台のアブミを使って登る。 |
A2 | 順を追って支点が不安定か遠くになる。 キャメロット>ナッツ>スカイフック>・・・ 1.5m>2m>・・・ ハーケンを叩くとキンキンと音がする>ボコボコ音がする>・・・ ケミカルボルト>ハンガーボルト>ハーケン>リングボルト>・・・ ボルト一般形>リングが欠落したボルト>・・・ ハーケン一般形>穴がつぶれor抜けそうなハーケン>・・・ |
以下クライミング関連用語集を長い目で書き足して行きます。解説を求める用語をメール
にて知らせて下さると工事進行の励みになります。よろしくお願いします。
リードアンドフォローのロープワーク(T=トップ S=セカンド)
TS…ハーネスを装着する。ギアラックスリングを左手を通して右肩にかける。ザックを背負ってから60cmスリングX本(内1本は120cmスリングの両末端をカラビナで連結したもの)を右手を通して左肩にかける。HMSカラビナ1ヶをハーネスのビレーループにかける。安全環付普通カラビナ2ヶと普通カラビナXヶとネイリングデバイス(ハーケン&カム&ナッツ&ナッツキイetc)をギアラックスリングにかける。ハーネスのギアラックにヌンチャクYヶをかける(X+Y≒12)とビレー器をかける(カラビナで吊す)。
TS…ロープの上と下を作る(ロープをほどく)。
*ロープの末端(末端Aとする→反対側を末端Bとする)をセカンドにわたしてセカンドのハーネスに末端Aを結ばせる。
*ロープをほどき地面の上にどんどん重ねて行く。
*ロープをほどいて末端B(一番上)まで来たら、トップのハーネスにその末端Bを結ぶ。
TS…ロープで互いにつながる(独語でアンザイレンと言う、エイトノットプラス留め結びで結ぶ)。
*シングルロープの場合ビレーループの左側に結ぶ。
(参考)右側に結んで誤りではないが、右利きの人の場合はビレー動作が見やすいので、左側に結ぶことを勧める。
ハーネスのビレーループが通る部分は耐熱補強が施されていますが、ビレーループ自体は補強されていないです。ビレーループに直接ロープを結んではいけません
{結ぶなら安全環付カラビナ2枚(反対方向に向けて設置)を介して下さい}。
*ダブルロープの場合ビレーループの左右両側結ぶ。
(参考)ダブルロープの場合ビレーループの左側に一本結び、もう一本はビレーループにつけた安全環つきカラビナに結ぶという方法がある。 ロープのもつれを素早く直せるので便利である。この方法はハーネスの取扱い説明書に書かれてないので安全度の検証はなされていないと
承知していなければならない。
S…セルフビレー(ビレーヤーの立つ位置に注意)・・・①
*立ち木などのしっかりした支点があれば長く太いスリングをタイオフしてそれにカラビナをかてカラビナを反転させ、それにメインロープを使って
クラブヒッチ(インクノット)を施してセルフビレーをセットする。
*後ろの立木(セルフビレーをセットした立木)と最初の支点(ハーケン等)を結ぶ直線上で、しかも、セルフビレーにゆるいテンションがかっかっている位置
に立つのが理想。
*上からの落石が避けられるようにセルフビレーをセットする。
*墜落の可能性のない平坦地からスタート出来るシングルピッチの岩場ゲレンデの場合はセルフビレーをセットしない。
*セルフビレーをセットしないセカンドの場合(主にシングルピッチの岩場)とセルフビレーをセットしたセカンドの場合(主にマルチピッチ2ピッチ目
以後の場合)のどちらも同じで、トップが墜落すれば正面の岩壁に激突する、だから、一個目の中間支点の真下で、岩壁にピッタリくっついた位置に立ち、
トップが中間支点の三つ目をセットするまでは岩壁から離れないこと。
*ルンゼやクラックの下には立たない(落石の通り道)、少しでも岩がリッジや稜になっている所の下に立つ。
*上に人(トップや他パーティ)がいれば必ず石が落ちて来ることがわかってビレーする(もちろん上に人がいなくても落ちて来る)。
休憩も含めて岩場の下や中にいる時は全て、セカンドだけでなくメンバー全員が落石に対する注意を怠らないこと。
←落石が来たらそれを最後までそれを見てかわすこと。
*ビレーヤーの位置を参照のこと
S…トップのビレイはボデイビレーで
*ビレー器具はATC、ハーフマスト、エイト環から選択
*ダブルロープの場合はATCで、沢登りの場合はエイト環で
S…「ハーネスオーケー」
*セカンドは『トップのハーネスとロープとが確実に結ばれているか。ハーネスのベルトがバックルの所で折り返されているか
(折り返さなで良いタイプもある)。』を点検して指差し呼称する。
T…「ビレーオーケー」
*トップはセカンドのビレーシステムのセット状況を点検して指差し呼称する。
S…「登っていいよ」 T…「行きます」
T…「見えなくなって、合図も聞こえない場合はロープがいっぱいになったら登って下さい」
T…ランニングビレー(スリングとリングベンド、ダブルフィッシャマンズノット、ブルージック系の結び、ヌンチャクとクリップの技術)
*1つ目のランニングビレー(支点構築の3要素)
①早く→ビレーシステムの構築(1つ目はセカンドのための要素が大)
②短く→グランドフォールを避ける(2つ目からはロープの流れのために長くして可)
③強く→ヌンチャク使用がベター(1つ目は墜落の際にかかる衝撃が大、衝撃吸収力有・短く・超軽量なヌンチャクがあると良い)
*ロープの流れを考えてスリングの長さを決める。
*ハーケンにスリングを通してスリングを二つに折りそこにカラビナをかけカラビナを反転させ、そのカラビナにロープをクリップする場合が多い。
*ハーケンの穴がつぶれていることが多いので幅の細いスリングが有効、ヌンチャクは使えないことが多い。
*ハーケンなどの支点が不足している場合は潅木を使ったりハーケンを打ち足したりナッツを使ったりして補足する。
*ナッツ回収器(チョクッレンチ)を携行するとそれに助けられることが多々ある。
S…「あと二十メートル」、、「あと十メートル」
*セカンドはトップにロープの残りの長さを知らせる。
*残りのロープがなくなった場合、セカンドは自分のセルフビレーを解除して、トップとロープいっぱいの距離を保ちつつ登り始める。
T…テラスにてビレーポイントの設営(一行下の①~③などの方法をその場の状況で選択する)、同時にセルフビレーをセットする。
*ビレーポイントの設営には①メインロープを複数の支点にクローブヒッチで連結する(荷重の流れを考えて連結の順を決める)
②デイジーチェーンとメインロープによる固定分散を使用する(デイジーチェーンに衝撃吸収力がないことを知っていること)
③スリングによる固定分散を使用する ④180cmスリングを使い流動分散から固定分散に移行する・・・などの方法がある。
*衝撃荷重が緩和出来るので、出来るだけメインロープを使ってセルフビレーをセットすること。
*支点とハーネスをスリングで結ぶだけのセルフビレーのセットは、それに必然性がある場合を除いて、勧められない。
◆例えば、2ピッチ目を登り出して、2m登った所で、中間支点をセットする前に、 トップが墜落したとする(もちろんトップは出来るだけ早く1つ目の中間支点をセットしなければならないのだが、 ついつい遅れてしまうことはよくある)。
◆セカンドは予定外の方向(上でなく下)に引きずり落とされる厳しい状況になりながら ビレーの手を握り締めることだろう。ビレーがうまく行けば、トップはビレーヤーの2mの下まで計4m墜落した所で止まることになる。
…セルフビレーをデイジーチェーンやスリングでセットしていた場合は2mのメインロープで衝撃を吸収する。
…セルフビレーをメインロープ(例:長さ1m)でセットしていれば、2mにセルフビレーの長さ1mを加えて3mのメインロープで衝撃を吸収することになる。 メインロープでセルフビレーをセットした方が衝撃吸収能力が大幅に向上する(この例では5割増)。
T…「ビレー解除」 S…「ロープアップ」、「ロープいっぱい」
T…たぐりよせたロープは足下に置くか、ロープを置けるほどのスペースがない場合はセルフビレーに振り分けて掛ける。
T…セカンドに対してのビレ-方法は以下から選択
解除法①:解除ホールに補助ロープを結び、 そのロープを上部の適当な位置に作った支点から吊るしたカラビナに通し、さらにビレーヤーのハーネスと結ぶ(補助ロープに弛みがないように結ぶ)。 ビレーヤーはビレーの手側のロープをしっかり持ちながら(ガクンと落ちるように解除されるのを防ぐために)、ゆっくりとしゃがみながら補助ロープを引いて 、ATCガイドをロックが緩む向きに(ビレーホールを中心にして)回転させる。
解除法②:解除ホールにカラビナのゲートのバネでない側を引っかけて、それをテコにして、ATCガイドをロックが緩む向きに(ビレーホールを中心にして) 回転させる。腕力の弱い人の場合はこの方法が出来ない可能性が高いし、習熟していないとガクンと落とす状態で解除してしまうので、 解除法①を最優先させること。
解除法③:HMSカラビナを上下にキコキコと動かす(数センチメートルオーダーでわずかにロープを緩める方向に動かすことが出来る)。
・附録:1つのATCガイドで後続2人に繋がるロープを2本同時にビレーすることが容易である。 しかし、一人だけ降ろすことが大変なので注意が必要である(テンションのかかっていない方のロープに フリクションヒッチを施してからロックを解除しなければならない)。
・附録:ATCガイドでロープを登る方法がある。即ち、ハーネスのビレーループに降りる方向にロックする(登りはロックしない) ようにそれをセットし自分で自分をビレーしながらロープを登る(ホールドが豊富な緩斜面に有効である)。
腰がらみ(凹地に座って行う) (確実に身につけておきたい必要技術)
├ATCボディビレー(腰がらみの一種、セカンドに正対して行う)
└エイト環ボディビレー(腰がらみの一種、セカンドにし正対して行う)
・太いとか毛羽立つとかの使い勝手の悪いロープでも対応できる。 かえって、太くて毛羽立っている方が制動力が強くなる。
・ビレー用の支点が不安な場合あるいはそれが無い場合は腰がらみしかない。←重要
ATC支点折り返しボディビレー(操作性がイマイチなので今はあまり使われない)
・折り返しの支点への加重が、その支点にATCガイドを吊るす方法(ビレーホールを用いて吊るす)でビレーする場合の2倍 (静的に荷重した場合)になるので、使わない方がベターとの意見があるが、墜落時の衝撃加重の場合はビレーヤーのハーネス部分でも墜落のエネルギーが 吸収出来る点で検証不足と言える。静加重よりも墜落時の衝撃加重やエネルギーを考えるべきなのに、 「カラビナの強度は〇キロニュートン」といった具合に静加重で表示される点には慎重に対応すべきである。
・附録:クラシックタイプATC(左右対称形)は太いロープや毛羽立ったロープでもロープがスムーズに動くが 、最近はセカンドのビレーには用いなくなった(支点折り返しビレーになるから)。クラシックタイプATC(左右対称形) はトップのビレーの時に有効である(ダブルロープの時にも有効である)。
速さ重視のビレー各種(岩角がらみ⇒人間より大きいくらいの動かない岩を利用のこと)
・肩がらみビレーは自分より充分に体重の少ない相手に有効、しっかりした足場の場所で行うこと。 そうでない場合は座って行う腰がらみビレーを行うこと。
・岩角(or樹木or鎖場の鎖or太い杭)にロープをからめてビレーする技術はビレーの原点、身につけておきたいものだ。
・グリップビレーは最速、緩斜面などで有効な場合が多い。
・ATCグリップビレー(=ロープをセットしたATCのHMSカラビナを支点から吊るし、ATCのすぐ下でロープを握ることでグリップビレーする方法 )は普通のグリップビレーよりは2本のロープを握り締める場所が分かりやすい。本質的にはグリップビレーなのでATCを介していても他のビレー器のように 簡単にはロープを停止出来ないので、初心者及び中級者は使うべきではない。上記グリップビレーと共に、太くて古くて毛羽立っていて、 ハーフマスト支点ビレーが使えないほどに流れの悪いロープに有効である。
・エイト環簡易掛けはロープが凍った時とか太いロープ2本でダブルロープで登る場合に使える。 ロープが流れすぎるのでしなやかなロープに対しては使わないこと。
・附録:懸垂下降で肩がらみというビレー器を使わない方法がある。 緩斜面向きで急斜面や空中懸垂ではロープが体に食い込みながら擦れるので痛くてつらい。
T…「登っていいよ」 S…「行きます」
S…セルフビレーの解除、ランニングビレーの解除。
S…テラスにてセルフビレー(登攀具の受け渡し、複数回に分けて)
TS…休憩も可
TS…支点ビレーを使っていた場合はボデービレーに変更、支点折り返しビレーの場合は変更なし。
*トップが入れかわらない場合(ロープの上下の入れ替え‘=ロープの上と下の作り直し’、①に戻る)
TS…終了点で気を抜かない。
リードアンドフォロー「ビレー解除」の合図が届かない場合
@トップがビレーポイントに着き、セルフビレーをセットしてセカンドに向かって「ビレー解除」と合図を送ったが、風の音や水の音にかき消されて合図が届かない、
あるいは届いているのだがセカンドからの「ロープアップ」の合図が返って来ないことがよくある。
@合図が届かない場合はトップはロープアップをしてはならない。トップはロープアップをせずにセカンドのビレーシステムを作り、
セカンドをビレーするつもりでロープを少しずつたぐっていく。ロープがたぐれない場合はセカンドがブルージック方式(沢登りノートの
ロープフィックスの項を見て下さい)で登って来るのでビレーの姿勢をずっと保って待機する。
@セカンドは「ビレー解除」の合図が来ないからトップのビレーを解除出来ないでいる場合と、
「ビレー解除」は届いたが「ロープアップ」の合図がトップに届かないのでロープがどんどん引き上がらない場合がある。
どちらの場合もあせらずの「ロープいっぱい」の状態になるのを待つ。
@セカンドは「ロープいっぱい」の状態になったら、セルフビレーをほどき登り始める。
@トップとセカンドとの合図の行き来がなくてロープがいっぱいになった場合には、トップはセカンドをビレーしているか、
50メートル(or 45メートル)いっぱいにロープが伸びた所を登攀中のどちらかの状態になっている。
@トップがセカンドをビレーしている場合はその時点で問題は解決されている。
@トップが50メートル上を登攀中の場合はコンテニアスクライミングになるが、途中にランニングビレーがいくつも入っているのでかなり安全な状態にある。
セカンドはロープをたるませることなく50メートルの距離を保って登りつづければよい。長く登らないうちに、いずれ、
トップはビレーポイントに到着して、ロープが一時的にストップし、再び上がり出す(セカンドのビレーをしている)。
セカンドはロープに引かれるに従って登って行けばよい。
@セカンド、サード、フォースと何人も後続がいる場合がある。セカンドはロープがいっぱいになったら、
そのロープを固定してしまいブルージック方式で登ります。トップと連絡が出来る所まで登ったら後続に様子を伝達します。
連絡が届かない場合はクライムダウンして連絡します。ロープがもう一本ある場合はトップからのロープの末端につながり、
サード以降のためにもう一本のロープを引いて登るのでも良い。
ビレーポイント作り
トップがセカンドを確保する場合は支点しビレー(エイト環グリップビレー、自動ロックするビレー器具“例:ルベルソー”によるビレー、
ハーフマスト結びによるビレー)を使うことが多いです。岩登りにおけるメンバー構成とダブルロープのシステム
の項を合わせてごらん下さい。最近、ペツルのハンガーボルトやケミカルボルトといった、
電気ドリルを用いて設置された強力なアンカーでビレーポイントが作られている状態をよく見かけます。
しかしながら、いかに強度があるボルトでもそれ一つをビレーポイントやセルフビレー用の支点にすることは危険です。
寒暖差や結氷などによりボルトが緩んでいる可能性があるからです。最低でも2つのボルトを連結するようにして下さい。
2つあればOKではないです。3つあれば3つ連結、ハーケンや岩角や灌木があればそれも連結するようにして下さい。
岩が脆い、リングボルト一つしか支点がないなどの理由で確実なビレーポイントが作れない場合
@トップはセカンドに正対して座り、腰がらみでビレーを行うこと
腰がらみ出来るほどに安定した座る場所が見つからない場合は見つかるまで登り続けること←ロープの長さ分‘50m’
離れてのコンテニアスクライミングで登ることになっても良い)。
@支点折り返しビレーを脆弱な支点に使うことには問題があります。セカンドの墜落によってかかる力とそれを止めようとするビレーヤーの力が合わさってかかる
(プーリー効果)が発生するからです。
*支点折り返しビレー=支点ビレーの支点にカラビナをかけ、
そこに下からのロープをかけて、引かれる方向を上向きに変えてATCでボデイビレーする。
*別件ですが参考までに=ダブルロープで登っている時にセカンドを支点折り返しビレーする場合、
二本のロープを同じカラビナ(折り返しの支点になるカラビナ)にかけることにが多くなります。
セカンドンドがビレーポイントを過ぎてトップとなり(つるべ方式で)さらなる上に登り出す前にロープ一本を折り返し支点になるカラビナからはずすようにして下さい。
もし、ロープ一本をはずさなかったとします。トップが墜落すると折り返しの支点のカラビナに通った二本のロープの内の一本だけに衝撃がかかり短く高速でスライドします。
そのスライドによって発生する摩擦熱でロープが溶融してしまうことになります。
トップとセカンドがピッチごとに入れ替わらない場合の方式(万年セカンドのための方式)
@トップはビレーポイントに着いたら、ビレーポイントをトップとセカンド(以下:万年セカンド)が共通に使用するために固定分散方式で作ります。30行ほど下に書かれたクローブヒッチ連結方式では、万年セカンドのために残しておけるビレーポイントが作れないからです。
@まず、二つ以上なるべく多くのハーケン等を見つけて、それぞれにカラビナをかけます。それぞれのカラビナにスリングをかけそのスリングの反対側をまとめて安全環つきのカラビナをかけます。複数のハーケンから出るスリングをまとめる扇のかなめの位置に安全環つきのカラビナをかけるのです。複数のハーケンが水平に並んでいない場合はどれか一つのスリングに加重されてしまうので、他のスリングの長さを調節してそれぞれのスリングに加重が均等に分散されるようにします。スリングの長さの調節は①スリングをねじる、②カラビナに複数回巻く、③スリングの途中でエイトノットを作るなどの方法があります(工夫して下さい)。このやり方は固定分散方式と呼ばれています。流動分散方式は一つのハーケンが抜けると支点が移動し、他のハーケン等に衝撃荷重がかかる、墜落したセカンドをロープの伸び以上に落としてしまう、等の理由でなるべく使わないで下さい。
@固定分散方式が出来上がったら、扇のかなめ位置の安全環つきカラビナにメインロープをクローブヒッチで連結してセルフビレーをセットします。
@メインロープを使ってセルフビレーをセットして下さい。不意の墜落による衝撃荷重を緩和するためです。支点とハーネスをスリングやデージーチェーンで結ぶだけのセルフビレーのセットは、それに必然性がある場合(セカンドからトップに入れ替わる場合、懸垂下降をセットする場合など)を除いて使わないで下さい。・・・★
@扇のかなめ位置の安全環つきカラビナの隣にカラビナをもう一つ追加すれば、支点ビレー用の支点となります。
@次に、セカンドをビレーポイントまで引き上げます。万年セカンドがビレーポイントに到着したら支点ビレーの支点を作っている場所にカラビナをかけて(カラビナにカラビナをかけるのでなくスリングにカラビナをかけるようにすること)、メインロープで(上の★の記述を参照のこと)セルフビレーをセットしてもらい万年セカンドへのビレーを解除します。
@上の時点では万年セカンド側のロープが上でトップ側のロープが下になっているので、ロープをたぐりロープの上下の入れ替えをします(50メートル全てたぐり入れ替えます)。
@トップは万年セカンドからスリングやカラビナなどの登攀用具を複数回に分けて受け取り(一度に行って全てを落とすことを防ぐ)、万年セカンドにボデービレーをしてもらって、登攀を開始します。その際、ビレーポイントを設営するのに使ったスリングやカラビナはそのままの形で万年セカンドのために残します。
<参考>ダブルロープを引いた場合で、ロープの長さが二本ともまったく同じで、 ビレーポイントのセルフビレーが左ロープでセットされたとします。トップはロープアップの際に、右ロープをセルフビレーの長さ(1メートル弱)だけアップして、 それから、右ロープと左ロープ二本を束ねて同時にアップするようにします。そうすると、セカンドが登る時に片側だけのロープアップをしなくてすませられる可能性が 高いです。
*ロープの長さが異なる場合は、セカンドが長い方のロープの末端でなくて左右同じ長さの所でロープにつながっているのが良いです (短い方のロープは末端につながる)。
トップとセカンドがピッチごとに入れ替わる場合の方式(つるべ方式)
2014年の現在、登山教室Timtamと登山教室笈では30行ほど上に記された「トップとセカンドがピッチごとに入変わらない方式
(万年セカンドのための式)」をロープワーク講習で採用し、クローブヒッチ連結方式は必要に応じて伝えることにしています。
万年セカンドのための方式は汎用性が高く(トップとセカンドがピッチごとに入れ替わる場合にも使える)、
構造が単純なので初心者にも理解しやすいからです。
@トップはビレーポイントに着いたら、ビレーポイントをクローブヒッチ連結方式で作ります。しかし、クローブヒッチ連結方式でビレーポイントを作る方が固定分散方式より短時間で出来て、使用するスリングが少なく、手元の作業スペースを広くすることが出来て、付近の支点を全て連結することが出来るので安全度を高く出来ます。トップとセカンドが入れ替わらない万年セカンドの場合に使えない(使いにくい)という欠点があります。
@まず、二つ以上なるべく多くのハーケン等を見つけて、一つ目にはヌンチャクを、二つ目からはカラビナをかけます(カラビナは一回転してゲートを岩側でない方に向ける)。メインロープを一つ目ヌンチャク→二つ目カラビナ→三つ目カラビナ・・・の順にインクノット(クラブヒッチ)で弛みなく連結してセルフビレーをセットします。「一つ目ヌンチャクのスリング」と「一つめヌンチャクの下のカラビナと二つ目カラビナを連結するメインロープ」で作る角度が60度以下になっているのが理想です(分散加重される)。
@次に支点ビレーのシステムを作ることになります。セカンドが落ちる衝撃は弱いはずですが、それでも支点ビレーの支点が飛んでしまうことがあります。
@メインロープで複数の支点にカラビナをかけ、それををインクノットで連結してセルフビレーをセットしています(上記)。そのカラビナの内の一つでそのカラビナをかけた支点が壊れても他の支点からのバックアップが充分に効いているカラビナ(Aカラビナとします)を選びそこに支点ビレー用のカラビナ(Bカラビナとします)をかけます。
@AカラビナにBカラビナをかけるのでなくて20cmほどの短いスリング(Cスリング:60cmの一般的長さのスリングを二~三重の輪にして“現場で”作る)をAカラビナにかけ(CスリングはAカラビナだけでなくてメインロープにもかけて万全を期すこと)て、そのCスリングにBカラビナをかけます。
@Aカラビナをかけた支点が飛んだ場合にバックアップとなる次の支点にかかる衝撃の方向まで考えてシステムを作るようにして下さい。バックアップの支点が飛んでもまださらにバックアップの支点があるぐらいの頑丈さがあっていいです。
トップがセカンドに対して行う支点ビレー
@沢登りで多用するエイト環グリップビレー(支点ビレー)はATCによる支点折り返しビレー
(ボディビレー)よりもセットが簡単で操作性に優れています。セカンドの確保の場合には積極的に使って下さい。
エイト環は下降器ですが確保器としてもすぐれている点があるのです。荷(ワンビバーク出来る程度の重さ)を背負っての登るルートでのセカンドの確保であればベスト(2006年5月現在)の性能を持っていると思われます。
@エイト環はATCと同様にトップを確保することも出来ます。確保の手を一時的に放してしまうようなトラブル(例、トップが落とした石にあたるなどして確保の手を一時的に放してしまう)あっても、エイト環の中を制動がかった状態でロープが流れているので再度それを握りしめることが可能です。ただし、ATCよりもロープを繰り出すスピードが遅くなります。
@ダブルロープでトップを確保する場合にはATCを使うようにして下さい。もし、エイト環に二本ロープをかけたままトップをビレーしたとします。トップが墜落するとエイト環に通った二本ロープの内の一本だけに衝撃がかかり短く高速でスライドします。そのスライドによって発生する摩擦熱でロープが溶融してしまう可能性があります。
@ダブルロープでセカンドを確保する場合は墜落しても静加重がかかるだけなのでエイト環に二本のロープをかけて支点ビレーしてOKです。しかし、エイト環に二本のロープをかければ操作性がかなりおちてしまいます。それで、一方のロープはマニュアル通りにエイト環にかけ、もう一方のロープはエイト環の大きな穴に通したらそのままカラビナ(エイト環の小さな穴にかかっているビレー用のカラビナ)
にかけてしまうと(エイト環のくびれの部分にはかけない)ロープの操作性を向上させることが出来ます。
自動ロックするビレー器具による支点ビレー
@ルベルソーという自動ロックするビレー器でセカンドの支点ビレーをすることが2000年ごろから流行しています。20014年の現在、ルベルソーキューブやATCガイドといった自動ロック解除のための小さなホールがついた形に改良されて普及しています。2本のロープを独立してビレー出来るし、ビレーの手を離すことも出来るので大変便利です。エイト環やハーフマストのビレーよりロープがキンクしにくいのも良い点です。セカンドが落ちてロープがロックされた場合にそのロックの解除に手間取る欠点がありますから注意して下さい(特に、沢登りの場合にはセカンドをおぼれさせてしまう危険があります)。
@以下の『 』内はは古いルベルソーの解除方法について2004年に記載したものです。参考になると考え削除せずに残すことにしました。
『セカンドが落ちてロックされたロープを解除するためには、ルベルソーをセットした支点から真横か斜め上に50センチメートルほど(右横か左横かはルベルソーのバケツ型の底の向きで決まる)離れた所にもう一つ支点(解除用の支点)が必要です。その支点にカラビナをかけ、ハーネスのビレーループ付近に連結したデージーチェーンを通し、そのデージーチェーンを“ルベルソーにセットされたロープを折り返すために使われているHMTカラビナ”に連結します(デージーチェーンがピンと張ってほとんどタルミが出来なくなる位置にあるデージーチェーンの輪を選んでで連結)。体重をかけてデージーチェーンにテンションを与えるとHMTカラビナが解除用支点の方向に引かれてロックが解除されます。デージーチェーンでなくてスリングや短いロープでも解除は出来ますが、その長さの調節でさらに手間取ってしまいます。ちなみに、デージーチェーンの取り扱い説明書にはセルフビレーはメインロープでセットしデージーチェーンは
バックアップとしてのみ使うことと記されています。』
@ルベルソーのような自動ロックするタイプのビレー器の改良が進んでいます。セカンドの墜落によるロックの解除のために器具を吊す輪と反対側に小さな輪がついた製品がブラックダイヤモンド社とペツル社とマムート社から出ています。使用法の研究とその習熟を経て使用して下さい。習熟していないと、ガクンガクンと落とすようなロックの解除になってしまう可能性が高いです。
@本ページのリードアンドフォローのロープワークの項にあるATCガイドの記述を参照した下さい。
@遭難対策ノートのショートロープ研修の項にあるルベルソキューブの記述を参照して下さい。
写真の赤ロープは細いが、実際はなるべく太いロ ープ(11mmぐらい)を使うこと。右上と左上に超頑 丈なアンカーを見つけ、そのアンカーからロープ (赤)を引いて来て、写真のように岩角より先に結 び目を出す(必ず結び目を作ること)。結び目を出 すのはメインロープ(下の写真の緑ロープ)がなる べく岩に擦らないようにするためである。ロープ (赤)でなくてスリングでも良いが、流動分散は使 わずに固定分散を使うこと。 、 |
ゲートを反対向きにしたカラビナを2個使う。安全 環が緩んだ例があるので安全環付カラビナであっ ても2個使う。普通カラビナ2個でも良い。 |
メインロープ(緑)をかける。写真では細いロープ だが、10mm以上の太いロープが良い。細いロー プだとロープの伸びのために、相当に長い距離で 落ちてしまう。 |
トップロープの支点の近くに支点があれば、そこか らのランニングビレーを残して、バックアップの支 点とする。とにかくこれでもかと思うくらいに頑丈 に作ること。 |
改良型流動分散方式 フリークライミングシングルピッチルートの終了点(10mm径のハンガーボルト2ヶを横に並べたタイプ,鎖でつ ながったラッペリングステーション等)の終了点にトップロープを張る場合に用います。流動分散によって終了 点を守ることが出来、しかも一方の支点が壊れても流動する距離が小さくてすみます。支点が2ヶなので、別 の支点からバックアップを施して安全度を高めて下さい。 注:流動分散はトップロープの支点(シングルピッチルートの終了点)のみに使用して下さい。マルチピ ッチのビレーポイントとして使ってはなりません。支点が流動することでビレーシステムが壊れます)。 |
|
クライマーは120cmナイロンスリングの両端に 普通結びを施してこれを肩にかけるなどして携行 して登ります。流動する支点なので、融点の低い ダイニーマスリングよりナイロンスリングの方が 良いです(摩擦熱によるスリングの痛みが少ない からです)。 |
左右2ヶのボルトにカラビナをかけて、持ってき たスリングを吊します。スリングの中央部分に 流動分散を施します。カラビナを2ヶ反対向きに しでトップロープの支点(終了点)として下さい (安環付カラビナを使っていても必ず2ヶ)。 |
沢登りで多用するエイト環グリップビレー(エイト環による支点ビレー)について
沢登りで良くつかうエイト環グリップビレーです。後続する数名をビレーするのに便利です。
@滝の落ち口でセカンドへのロープが屈曲する場所で有効です。ロープが屈曲しないと制動力が不足します。
*制動力が不足した場合=ビレーヤーは「セカンド→エイト環→ビレーヤー」のロープの流れがZ型になる位置に移動
(エイト環のある位置より上流に移動)して制動力を増して下さい。
*制動力不足を補うことが出来ないビレーポイントである場合は、エイト環をHMSカラビナに替え、
ハーフマスト支点ビレーを行って下さい(ロープがキンクしてもやむを得ない)。
@トップは滝を登り終えたら左右の側壁に支点となるような生きた太い立木を探します
(立木が無い場合は岩の塊を利用しますが相当大きくてぜったいに動かない岩でなければなりません。岩の塊も無い場合はハーケンを打ちますが別々のリスに
打った良く効いているハーケンを二本以上連結して下さい)。
@立木に太いスリングを巻いて安全環つきカラビナをかけ、エイトノットプラス止め結びでメインロープをフィックスします。
*メインロープをトップのハーネスにきちんと正式に結んでおくと、それをほどくのに時間がかかります。激しい墜落が予想されない場合は、
滝を登る前からメインロープをハーネスの安全環つきカラビナにエイトノットプラス止め結びで連結(いわゆる簡易ガケ)しておくと手早くフィックス出来ます。
簡易ガケによる連結は安全環付カラビナ一枚のみでなくて、反対方向にゲートを向けた普通カラビナを追加して万全を期して下さい。
@フィックスしたスリングの回収がめんどうになることが予想される場合は、スリングを用いずメインロープを懸垂下降のように木に回して2本にして
に引きその下でブーリン結び(止め結びを必ず付加)などで固定します。回収の場合は結びをほどいて、懸垂下降のロープの回収のように、
ロープの一端(セカンド側
)を引けば立木から抜けて来るという仕組みです。
@フィックスしたロープを手すりにして滝の落ち口近くまで行き、そのロープでインクノットを作りハーネスの安全環つきカラビナに連結して
セルフビレーをセットします。
*トップが滝を登り終えて、立ち木にメインロープをフィックスした後、そのフィックスしたメインロープを手すりにして滝の落ち口
まで行くのが簡単でない場合があります。その場合は立ち木に太いスリングを巻いて安全環つきカラビナをかけたらそのカラビナにメインロープをクリップします。
そして、セカンドにビレーしてもらっている状態を保ちながら滝の落ち口までもどります(パーティの人数が3人以下で、
後述のロープウェイ方式を使わない場合はこのセカンドにビレーしてもらう方法がベストです)。滝の落ち口に立ったらセカンドから立ち木に向かっている
メインロープにインクノットを作りトップのハーネスの安全環つきカラビナに連結してセルフビレーとします。
セルフビレーがセット出来てからビレー解除の合図を滝の下に送ります。あるいはフィックスしたメインロープにブルージック結でセルフビレーをセットして、
ブルージック結びを動かしながら滝の落ち口に向かう方法もあります。TPOに合せて工夫して下さい。
@セルフビレーのインクノットの上100センチメートルくらいの所にスリングをフリクションヒッチで固定、
そのスリングにカラビナをかけてエイト環グリップビレーの支点とします。
*フリクションヒッチがしっかり効いていることを確認して下さい。心配な場合はエイト環グリップビレーの支点はエイトノットや
インクノットなどのスライドしない結びを使用して下さい。
ロ-プウェイ方式
@高さがロープの長さの半分未満の滝の場合はロープアップをせずに、ロープの中間にエイトノットを作り二番手の人のハーネスと連結します。
@エイト環グリップビレーをして二番手に滝を登ってもらいます。二番手が滝を登り終えたら、滝の下から、滝の下側に残ったロープを引くと二番手が登って上がってしまったロープを戻すことが出来ます。三番手以下も同じ方法で登ります。上からロープを投げる手間がかからないので、短時間に多くのメンバーを滝の上に上げることが出来ます。この方法をローウェイ方式と名付けています。
@ロープウェイ方式で登るセカンドはロープが中間支点で屈曲する場合は自分の上のロープにかかるカラビナを自分の下のロープにかけかえる(いわゆる「カケカエ」)をして登り、滝の上に到着したら、ロープの中間に作ったエイトノットを解いてから滝の下の人にロープを引き戻すように指示します。「カケカエ」をしないで、中間支点を全て回収して登った場合はロープの中間に作ったエイトノットは解かずにロープを引き戻すように指示します。
@ビレー器具はエイト環を使って下さい。垂直やオーバーハングの場合とエイト環が無い場合はHMSカラビナによるハーフマストビレーにして下さい。登攀距離が長くハーフマストビレーだとロープがキンク(クルクル捻じれる)する可能性が高い場合はボディビレー(ハーネスのビレーループにビレー器をセットしてセカンドに正対してビレーする)を行ってください。
@沢ではオートロックするタイプのビレー器具(ルベルソーキューブ、ATCガイド、etc)の使用は不可です(セカンドが墜落するとロックするので、そのロックの解除にかかる何秒又は何分の間、セカンドを水流の中に宙吊りにしてしまう可能性があります。危険です)。
@懸垂下降のための準備から下降に至るまで、
セルフビレーをセットして準備者の安全確保に万全を期して下さい。
@下降器には、エイト環、ATC、HMSカラビナなどがあります。下降器としてはエイト環がベターです。
足場が悪くシビアな場面での懸垂用のロープセットはエイト環が手堅いですし、一番先に降りる人はロープのひっかかりをなおしながら
降りことが多いのですが、いつも制動が効いているエイト環がロープ操作の際に安心感があるからです。筆者(松浦)は沢登りではエイト環を、
岩登りではATCを使っています。HMSカラビナをいつもハーネスにつけているので、軽量化ということでエイド環か
ATCのどちらか一つ持てば良いと考えるからです。
@HMSカラビナを使った、ハーフマスト結びによる懸垂下降はエイト環などの下降器(ビレー器)
が無い場合に有効なので練習しておくと良いです。ハーフマスト結びによる方法の場合には30メートルといった長い距離を懸垂すると激しくキンク
(ロープがくるくる捩れてしまうこと)してしまいます。ロープが回転しないように握りしめて懸垂下降器を通すことでキンクを押さえながら降りることが出来ます。
ちなみにエイト環やATCによる懸垂の場合でも少なからずキンクしてしまうので、
下降器の種類にかかわらずキンクを押さえながら降りる方がベターです。
@懸垂用の支点は、腕より太い生きた樹木、二抱え以上もある大きな岩、
何本も何本も束ねた篠竹や灌木、同じリスに打たれていない3本以上のハーケンの連結、などなど、極めて万全を期してください。
ロープの回収に不安がある場合は迷わずスリングやカラビナを残置しましょう(ロープの回収時を思い切りイメージすること)。
@懸垂下降で一番先に降りた人は「ロープを動かして、ロープが引き抜けるか確認する」、「懸垂下降で降り立った地点から先に進めるか偵察する」、
「ロープの末端が結ばれていたら解く」の3つの確認動作を行ってから二番手に懸垂下降してもらう。
*「ロープが引き抜けない場合は上に残った人が懸垂のロープを張りなおす(支点を上に上げる,捨てカラビナを互い違いに2枚施す,等)」、
「先に進めない場合は懸垂の一番手は上に登り返して、別ルートを探す」、「一本づつ別々にロープの末端を結んでいた場合、
結びを解かずにロープの回収を始めると回収不能の事態に陥る」。
@全員が下りてしまっていて、ロープが回収出来ない場合
①ロープの末端が2本とも手元にある場合は、2本のロープにフリクションヒッチを施して登り返す。
②ロープの末端が1本しかない場合は手元に来ているロープを使って登り返す。上からのロープにフリクションヒッチを施してバックアップとする
(上からのロープは手がかりにしたり自己脱出を施しても良いが信用しないこと)。
③オーバーハングなどで単独登攀による登り返しが出来ない場合は手元側のロープのみ回収して、残りロープは残置して先に進む。
そういう事態が予想される場合は「4名で4本のロープで行動する」か、「超軽量(例ケブラー5mm50m)の補助ロープを初めから携行する」、
「近くの隊に声をかけ一緒に行動する」で対応する。
○捨て縄を連結して「輪」を作ります。 ○ハーケンの場合は3ヶ以上連結して 下さい。 ×中央のような短いハーケンは効いて いても抜けた例があります。 ×残置の捨て縄はロープを引き抜く時 の摩擦熱で傷んでいますから新 しい捨て縄を追加して下さい。 ×なるべく支点に負担をかけないように 静かに降りて下さい(飛び跳ねはNG) 静荷重でも体重の二倍はハーケン に荷重されています。 |
×この写真のようにロープをかけるの は危険です。左のハーケンが一つ 抜けただけで懸垂用のロープは支 点からはずれ落ちます。 ×流動分散や固定分散にしても危険で す。ロープの回収時に摩擦が大きくなり、 ロ―プが動かなくなってしまう可能性が 高まるからです(流動分散や固定分散 にして中間点に反対方向にゲートを向 けたカラビナを2枚残置しそのカラビナ にロープを通すのならば可)。 |
○バリエーションルートに行く場合は行った所から戻れる状態であるべきです。なの でクライミングロープ2本と捨て縄(径6mm,長さ10m程)、捨て縄を適当な長さに切 るためのロープ、残置するための捨てカラビナ(2個反対向きか、安全環付1個か、 テープでゲートが開かないように止めるか)をいつも携行して下さい。 ○上の写真はカラビナを残置しない場合ですが、ロープの回収のことを考えると カラビナを残置して懸垂ロープを張る方が無難です。 |
@以下のような懸垂下降の方法があります。
◆ロープを投げる方法
①ロープは巻いてループにせずに2本まとめて折り返して束ねます。手前の三分の一を地面に中間の三分の一を左手に、 末端の三分の一を右手に持ち、左手、次に右手の順で投げます(左利きの人は反対の手になります)。ロープの末端はスッポヌケ防止のために結ぶのが基本です。
②ロープの末端を結ぶ時は2本束ねて結びます。潅木にひっかかるなどのトラブルを防ぐため、2本を束ねて結ばずに、 1本ずつそれぞれにノットを作る方法がありますが、誤って末端の結びを解かずにロープの回収を始めてしまうと、 ロープが回収出来なくなります。<参考>懸垂下降で一番先に降りた人は「ロープを動かして、ロープが引き抜けるか確認する」、 「懸垂下降で降り立った地点から先に進めるか偵察する」、「ロープの末端が結ばれていたら解く」 の3つの確認動作を行ってから二番手に懸垂下降してもらうこと。
③下を確認し、「ロープダウン」と大声で叫んで、ロープを投げます。
④ロープが途中でひっかかるのを防ぐために、ロープの末端を結ばないで投げる場合があります。トップは末端が結ばれていないことを何度も自分に言い聞かせながら、 つねに、ロープを末端に注意しながら懸垂下降すること。
◆ロープを袋に入れて、懸垂下降者が持って降りる方法
①投げたロープは途中の岩角や潅木に引っかかることの方があたりまえです。投げずにロープ袋に末端の側から少しづつ押し込むように入れて行って (ロープをロープ袋に)しまいます。そのロープ袋を腰のあたりに吊して、そこからロープを引き出しながら懸垂下降する方法がベターです。 ロープを投げないので引っかかることはありません。ロープの長さを超えた距離の下降になることがあるので、 ロープの末端にエイトノットなどで大きな瘤を作ってから袋にしまって下さい(ロープの末端は2本束ねて結ぶこと←上の項の②を参照のこと)。
②ロープを袋にしまうやり方だと藪の中でも降りて行くことが出来ますが、藪の中の懸垂下降の場合は距離を20メートル程度に留めてください。 藪との摩擦でロープが回収出来なくなるからです。
③細いダブルロープでなくて、シングルロープ2本をつないで懸垂下降する場合、ロープ2本はロープ袋に入りきらないのでロープ袋を2つ用意して下さい。 2つの袋にロープを1本ずつ入れ腰の左右に吊るして懸垂下降します。ロープの末端にノットを作ってからロープを袋に入れて行くとすっぽ抜けが防止出来ますが、 このノットを解いてからロープを回収することをくれぐれも忘れないようにしましょう(袋に入れる時にメンバー全員で確認すること)。 ロープの入った袋を腰の左右に吊るしているのでズボンの腰のあたりロープを添わせて制動をプラスすることが出来ません。 出来るだけ手袋をして懸垂下降を開始して下さい(手袋がない場合は相当にゆっくり降りて下さい)。
◆ロープをループにして首にかけ、数メートルずつ繰り出しながら懸垂下降する方法
①片手で懸垂のロープを抑え、片手で首のループからロープを繰り出すのです。上記の方法に比べ、袋に入れる手間が省略出来て便利ですが、 首つりになってしまうリスクがあります。
②投げたらひっかりそうな所で、とにかく早く下降してしまわななければならない時に有効な方法です。
◆2本のロープの1本ずつを振り分けて右と左の腰に短いスリングで吊るし、左右から少しずつロープを繰り出しながら懸垂下降する方法
①上記の方法に比べ、首つりになってしまうリスクは軽減されます。
②末端を結び(←3つ上の段落にあるロープを投げる方法の項の②を参照のこと)、ロープを振り分け、 60cmスリングを2重にした30cmスリングで振り分けたロープ束の中央を吊って、ハーネスのギアラックにカラビナで吊るします。その作業を右のロープと左のロープ1本ずつ行います(クライマーの左右の大腿のあたりにロープが吊られる)。
③ロープがクライマーの腹側から引き出されるようにセットします(背中側から引き出されてはいけない)。 失敗すると長くロープが出すぎて垂れ下がってしまう可能性があります(潅木が多ければ引っかかる)。
④右と左からロープが出て来るので、ビレー器の真下、体の中心線の所にロープを持つ手(制動手)が来ることになります (両手を上下に接近させてロープを握る)。
⑤ズボンの腰のあたりロープを添わせて制動をプラスすることが出来ないので、出来るだけ手袋をして懸垂下降を開始して下さい (手袋がない場合は相当にゆっくり降りて下さい)。
⑥失敗すると長くロープが出すぎて垂れ下がってしまう可能性があります(潅木が多ければ引っかかる)。
◆懸垂下降する人を別のロープで上から確保してしまう方法
①懸垂用のロープ以外に別のロープがあり、2人以上の人がいれば、そのロープで懸垂者を上から確保することで、 下り始め10mくらいまでは、ベストの安全性を保つことが出来ます。
②上からの確保者から下の懸垂下降者が見えないと、10mも下降するとロープを重さで懸垂下降者の動きがわからなくなり 「確保のロープをゆるめ過ぎてしまう」という欠点があります。
③別のロープがない場合は懸垂用のロープをまず回収出来るように支点にセットしてから、支点の所で動かないように固定してしまいます。 下に垂れる二本うちの一本で懸垂し、残りの一本を確保用のロープにします。1本懸垂では確保器の制動力が不足することを知っていなければなりません。 確保器の制動力不足補うために行って返って方式、エイト環2回がけ、ハーフマスト2回ひねり、制動側のロープを腰に回す、 使いこんだ太いシングルロープを使用する、などの方法を使って下さい。トップが下に降りたら確保に使った側のロープを引き揚げて、 2番目以後の人の確保に再び使用します。ラストの人が懸垂する前に、ロープの固定を解除して下から引き抜けるようにセットしなおします (ロープの回収が出来るかを先に降りた人に確かめさせること)。③の用法はトップが下に降りたと同時にロープが引き抜けるかを 確認出来ないという欠点があります。
◆ロープをセカンドが繰り出す方法
①太い立木などに懸垂のロープをセットします。その際、末端からたぐって真ん中が来るようにしますから、 足元には末端が下で懸垂をスタートするロープが上になるように、ロープが置かれています。なので、その状態を利用します。
②トップは懸垂下降をセットします。ロープを投げる方法・ロープを袋入れて持って懸垂する方法・ロープを首にかけて持って降りる方法などと比較して、 相当に早く懸垂下降を開始できます。なので、悪天候や日暮れが近づいて時間がないときに有効です。
③セカンドはトップの懸垂下降器を通った後のロープを2本まとめて持ち、トップの下降に伴って、そのロープを繰り出します。 何かあったら繰り出すロープを強く持てばトップの懸垂を停止させることができます。50mのロープだったら、 12.5mまでセカンドはトップの懸垂のバックアップをしながらロープを繰り出すことが出来ます。
④12.5m懸垂した所でセカンドはロープダウンしなければなりません。なので、12.5m以下の距離の下降に向いています。 やむおえずロープダウンする場合は、そのロープがトップより上の位置にひっかかるとやっかいなので、ロープの末端は結びません。
⑤12.5m以上懸垂する場合はロープダウンがあるので、トップは上から落ちてくるロープに十分注意しなくてはなりません (ロープといっしょに石も落ちるので要注意)。また、ロープの末端が結んでないので、 トップはロープのスッポ抜けに充分に注意しながら懸垂下降を続けます。
◆カウンターラッペル
①懸垂の支点は金属の輪でなければなりません(ゲートを反対向きにした2枚のカラビナ、そのカラビナは残置します)。
②残置スリングを懸垂の支点にしてはなりません。懸垂下降の途中で熱により溶融して、スリングが切れてしまうからです。
③トップロープのクライミングが終わりロワーダウンで降りる時に似ています(ビレーは懸垂者自身が行います)。
④ロープは投げずに上に残し、懸垂者が引きながら、降りて行きます。
⑤ロープが岩角にあたり擦れる部分が多くなりますから(摺れが原因で石が落ちるので注意)、 長い距離(5メートル程度以上)の懸垂には向かないです。短い距離ならば、最も早く懸垂下降が開始出来て、おまけに、 セカンドのためのロープも張れてしまう方法です。
⑥50メートルロープを使い、16.6m(50m÷3)以下の距離を下るカウンターラッペルならば、上から3本のロープが垂れる状態で懸垂を終了出来ます。 懸垂者の下降器にセットされていたロープを負傷者のハーネスの安全環付カラビナにかければ、3分の1のつりあげシステムを作ることが出来ます。 手の使える負傷者なら負傷者が上からのロープをたぐることが出来るので非常に素早く吊り上げることが出来ます。
⑦カウンターラッペルは縦走路から数メートル下に落ちた負傷者の所まで素早く懸垂下降し、状況を確認し、 負傷者を縦走路まで吊り上げるのに非常に有効な方法です。
⑧ただし、石を落とす可能性が大なので、負傷者の真上からでなく少し離れた所から降りることを忘れないで下さい。
@先に下りた人が懸垂用のロープを下で持っていて、次に降りてくる人が墜落しかけたとたんにそのロープを引いて墜落を止める方法があります。 ロープの下を持つ人は上からの落石には充分な注意が必要ですが、ぜひ使うべき方法だと言えます。
懸垂用のロープにロープスリングでブルージック結び
(摩擦に強いフリクションヒッチ)を施し、それをハーネスと結んで、下降者が自分自身を確保しながら降りる方法があります。操作性にやや劣って時間がかかるので、
一番初めに降りる人のみその方法を使い2番目からは上記のロープの下を持つ方法を使うようにすると良いです。
@上記の「懸垂用のロープにブルージック結びを施してそれをハーネスと結んで、下降者が自分自身を確保しながら降りる方法」を使った場合、
下降中にブルージック結びが締まってしまい、その解除に手間取ってしまうことがよく起こります。
短時間のうちに懸垂下降で脱出しなければならない状況ではブルージック結びをしない方がより安全になる場合もあるでしょう。
ブルージック結び以外のオートブロック結び(マッシャーやバッチマンなど)を使ったり、結びを施す位置を懸垂下降器の上にしたり下にしたり、
様々に工夫されています。
*ペツル社のシャント というアッセンダ―(ロープ登り器)を懸垂下降器の下にセットする方法は優れています(セットの方法や使用法はシャントの取扱い説明書を見て下さい)。 でも、やや重いので(軽量化のため)登攀時に常時携行する人は少ないです。シャントには懸垂下降用の二本のロープ(赤ロープと青ロープ) の径が異なると使えないという欠点があると知っていなければなりません。
*2012年現在推奨されている方法 ハーネスのビレーループと安全環付カラビナを30cmスリング (60cmスリングの二つ折り)でつなぎその安全環つきカラビナに懸垂下降器と懸垂用ロープをセットします。 下降器のすぐ下の懸垂用ロープに60cmスリングでオートブロックヒッチ(バッチマンその1が良い)を施して、 それをカラビナでビレーループと連結します。懸垂の制動手が右手とすれば、左手でそのオートブロックヒッチがロックしないように調節しながら懸垂下降をします。 トラブルが起きた場合は左手を解放します。オートブロックヒッチがロックして懸垂下降が停止します。操作性は今一歩で、上記のシャントに及びません。 しかし手持ちのスリングでセット出来るので軽量なのと。「径の異なる2本のロープによる懸垂」でもOKという点で優れています (径の異なる2本のロープにシャントは使えない)。
@懸垂者の落とす石が懸垂用のロープに当たることがよくあります。
大きな石の場合はロープが激しく痛んでしまうので注意が必要です。
@二本のロープを繋ぐ場合は二本のロープを末端を揃えて、普通のノット(フェーラー結び)を施して束ね結び、
さらにもう一回普通のノットを施して束ね結ぶ(連続二回ノットで束ね結ぶ,二つのノットは密着させる=離なさない)繋ぎ方を基本としたいと思います。
結び目は末端から1メートルぐらいの所に作って下さい(一般の結びではロープの直径の十倍以上は末端を残せと言われていますが,この場合は百倍になります)。
結び目にはそれを開く方向の荷重(いわゆるリング荷重)がかかりますが、ロープの回収の際に結び目に障害物を乗り越える能力が得られます。
その能力を採用するということです。二つのノットを密着させることで、結びが固くなりすぎずに容易に解くことが出来ます。
二つのノットということでで安心感も高まります。
@上記の二本のロープを末端を揃えて、普通のノット(フェーラー結び)を施して束ね結ぶ方法で、連続二回ノットで結ばず、
一回のノットだけにすると(結び目は末端から1メートル弱ぐらいの所に作る)、結び目が障害物を乗り越える能力は最大になります。
細めのダブルロープを使用した緩斜面の懸垂下降ならば、結び目はエイト環(輪の大きいクラシックタイプのエイト環)を通過します
(ロープの末端の方を結び目より先行してエイト環の輪に通すこと)。メリットが大きいのでTimtam&笈は一回のノットで繋ぐ方を採用しています。
@末端を1メートルぐらい残してエイトノット(連結部分はエイトノットの形が8の字というよりはくの字になるまで強く引き締めて下さい)
で束ねる方法がありますが、間違えて末端を短くしすぎるとすっぽ抜ける可能性があります(1999年2月に松浦が実験)。
@安心感があるということで、ダブルフィッシャーマン結びプラス止め結びとか、普通に結んでその右と左にダブルフィッシャーマン結びを
施すなど他の結び方を使う人もいます(全て結びは密着させること)。ダブルフィッシャ-マン系の結びは障害物を乗り越える能力に劣ります。
自己責任で決めることなので、懸垂下降のロープをセットした人が一番最初にそれを使って下降するべきです。また、
下に降りたらロープが回収出来るかを確かめることを忘れてはなりません。
@結び目のあるのは下側(壁側)のロープ(青ロープとします)
になるようにセットします。上側だと下側の引かれるロープが上側の引くロープと壁の間に挟まる可能性があるからです。
一番目の人はメンバー全員に青ロープを引くと言って確認してから下降を開始するようにしましょう。
*登山教室Timtam&笈および青山一丁目山岳会では青ロープ(色の濃い方のロープ)を引くようにいつも懸垂のロープをセットすると申し合わせています。
それでも毎回、全員に青ロープを引くと確認するようにしています。
@再掲:懸垂のロープをセットした人が一番先に降りること。
懸垂下降で一番先に降りた人は「ロープを動かして、ロープが引き抜けるか確認する」、「懸垂下降で降り立った地点から先に進めるか偵察する」、
「ロープの末端が結ばれていたら解く」の3つの確認動作を行ってから二番手に懸垂下降してもらう。
*「ロープが引き抜けない場合は上に残った人が懸垂のロープを張りなおす」、「先に進めない場合は懸垂の一番手は上に登り返して、別ルートを探す」、
「一本づつ別々にロープの末端を結んでいた場合、結びを解かずにロープの回収を始めると回収不能の事態に陥る」。
@一番最後に下りる人は、
二本のロープの間にスリングでハーネスと連結したカラビナを入れて、二本のロープをきちんと二つに割って下りて来ると
ロープの回収が楽になります。
@ちなみに懸垂下降が「楽しい」などと言う人がいますが、
潜在する多くの危険(ロープを投げる時の失敗、ロープが回収出来ない、落石に当たる、落石でロープが切れる
“ルンゼ内やガラ場での懸垂は要注意”、ロープの長さが足りなくなる、
懸垂で降りてもその先に行けない、懸垂の支点が壊れる・・・)を知ってほしいと思います。
@懸垂者によるエイト環結び目通過
①二本のロープを末端を揃えて、普通のノット(フェーラー結び)を施して束ね結ぶ(結び目は末端から1mぐらいの所に作る)、
結び目が障害物を乗り越える能力は最大になる。
②細めのダブルロープを使用した結び目ならば、エイト環(輪の大きいクラシックタイプのエイト環)を通過させることが出来る。
③通過しにくい場合は1メートルくらあるロープの末端(2本)を結び目より先行してエイト環の輪に通し、
結び目通過のタイミングの合わせてその末端を引くと良い。
④太いロープの場合はエイト環にかかるロープのテンションをマリーナヒッチに逃して結び目を通過させ、
通過後にマリーナヒッチを解除してテンションをエイト環に戻す方法で対応する。ハーフマスト懸垂やATC懸垂の場合もマリーナヒッチによる方法
が良いでしょう。ハーフマスト懸垂には別の結び目通過の方法もあります(こちら)。
2本束ねて普通のノットで結ぶ(末端は1m程度) いわゆるリング荷重になるが結び目は障害物を 越えて進む。 |
一つ結び目が通過してから次の結び目が来る ように二つの目結び目は離しておく(写ってい ないが写真の下に二つ目の結び目がある。 |
@せまいテラスでピッチを切りながら懸垂下降を複数回くりかえす場合
①例えば城山のバトルランナールートを登り、エキスカーションルートの終了点あたりにある懸垂ポイントから下る場合。
三日月ハングの下でピッチを切ることになる。
②途中のテラスの支点がペツルのハンガーボルト2本の連結であっても、捨て縄で他の支点と連結してバックアップする慎重さが必要である。
③懸垂のロープを回収する時にロープを下に落下させてしまわないように、
末端をクローブヒッチでハーネスや支点に連結するなど、状況に合わせて様々に工夫をしてからロープを引き抜く(回収する)ようにすること。
④ロープは途中のテラスより下に落とさない方がベターですが、そうも言っていられない場合も多いです。下にある樹木の頭にロープがからまったりしないように
工夫しながらロープを引き抜く(回収する)こと。
1、岩場について、リードする者(以下リーダー)が終了点まで登る
(1)リーダーの動作
@始めに準備運動をする。手や指の準備運動も忘れず行う。
@ハーネスは腰の最もくびれた所にしっかりと装着する(逆立ちしてもすっぽ抜けないように)。バックルの所でベルトを折り返す(最近は折り返しをしなくとも良いハーネスが多くなっている)。
@ロープをほどく(途中に結び目がないようにする)。ロープバックに入れてロープを持ち歩けばロープをほどく必要はない。
@エイトノット(八の字結び)又はポーラインノット(止め結びを必ず追加)で連結する。右利きの場合はビレーループの左側にロープを結ぶ。
@反対側のロープの末端にエイトノットでコブタンを作っておく(長いルートの場合にロープが確保器からすっぽ抜けるのをふせぐため)。ロープバックを使っていれば末端はバックに結んであるのでコブタンを作る必要はない。
@ロープを結ぶ時に二回巻つける方法がある。二回巻きにする大きな利点はないらしい、適宜使用のこと。
@リーダーはビレーヤーのビレーシステムを、ビレーヤーはリーダーのロープの結び目を、互にチェックし合ってから登り出す。
@ヌンチャクのカラビナは上のカラビナが右に開くなら下のカラビナも右に開くようにセットする(下のカラビナを左に開くようにセットしてもOKで好みと状況により選択する)。ベントゲートのカラビナの方は回転しないように固定する(固定された状態で販売されているから固定するわけを知っていてほしい)。ストレートゲートのカラビナの方も固定(テープで根元を巻く)してしまった方が扱いやすいが2~3個は固定しないでおく方が応用範囲が広くなる。
@ヌンチャクのストレートゲートのカラビナを支点にかける、ベントゲートのカラビナにロープをかける。
@次の支点が真上になくて右斜め上にある場合はカラビナ(ロープをかける)のゲートが左側に向くように支点にかける。
プレクリップ
一つめか二つめの支点へのクリップに失敗するとグランドフォールしてしまうのでプレクリップしておく方が安全である。
1.5メートルぐらいの棒の先にテーピングテープでヌンチャクを固定する→上のカラビナのゲートを3センチくらいの棒を夾んで開いておく
→下のカラビナにロープを逆クリップにならないようにしてかけておく→一つめか二つめの支点を狙ってその支点に開いたカラビナのゲートがかかるように棒を操作する
→支点にカラビナがかかったら棒を引き下ろし固定用のテーピングテープを切る。プレクリップは積極的に行うべきだと提唱したい。
プレクリップマシンの項を参照のこと。
@支点の間隔が遠くランナアウトしてしまう場所を充分なゆとりを持って越えられないならば、途中で降りる
か上の支点にプレクリップするかして安全を期すること。
@ロープを多くたぐってクリップするよりもなるべくたぐらない「腰クリップ」を目指す。
@途中の支点の数より2~3個多めにヌンチャクを持つ。ヌンチャクだけでなくスリングを2~3本携行する(何かトラブルがあっても多目的多用途のスリングがあれば解決出来る)。トップロープの支点を作る場合はさらにカラビナ2~3枚とか長いスリングなどを持って行く。
@ヌンチャクのストレートゲートカラビナをハーネスのギアラックにゲートが外側を向くように吊るす。こうすると、ヌンチャクをハーネスから取る時に腕が伸びる方向に動くのでわずかだけれども血流を増大し結果として腕をレストさせることになる(10回近くクリップすれば積み重なる効果あり)。
@クリップにはフロントクリップとバッククリップの二種類がある。左右どちらの手でもスムーズにクリップ出来て、しかも逆クリップやゼットクリップにならないように日を変えて何度も練習する(自宅で練習できる)。
@登る時に自分の引いているロープを体側に出して登る。ロープを足にからめない&またがない(落ちると逆さまになり頭を打つ可能性がある)。
@落ちる時は絶対に何もつかまない。どうしても怖い場合は自分のロープの結び目をつかむ。
@ハーネスに腰掛けるイメージで落ちる。
@ハンガーボルトの穴に指を入れない(不意の墜落があると指を激しく痛めるから)。ハンガーボルトをつかみたい場合はヌンチャクをかけてヌンチャクの中央のスリング部分をつかむ。
@「テンション」とビレーヤーに声をかけてからロープに体重をかけて休んだり次の進路を研究したりする。テンションの時間が長くなるようなら、長めのヌンチャクで支点とハーネスのビレーループを結んで体重をそれに移動して、ビレーヤーを休ませる配慮が必要である。
@何回も同じ内容のトライを行うと筋肉や腱を痛めてしまうので「テンションアンドトライは四回以内に」すること。
(2)ビレーヤーの動作
@始めに準備運動をする。腰の運動も忘れずに行う。
@ハーネスは腰の最もくびれた所にしっかりと装着する。バックルの所でベルトを折り返す。
@ロープの末端がビレー器からすっぽ抜けるのを防ぐため、、クライマーに連結してない側のロープの末端は結び目を作る、又は、ロープバックの末端止めに結ぶ、又は、ビレーヤーのハーネスに連結する。
@リーダーはビレーヤーのビレーシステムを、ビレーヤーはリーダーのロープの結び目を、互にチェックし合ってから「登っていいよ」と指示を出す。
@ビレーヤーはATCなどの確保器の利き腕側の穴にクライマー側のロープが上になるように通して、ビレーループにつけられたHMS(ハーフマストでビレーするために作られた大きな安全環つきカラビナ)にセットする。
A…エアー,T…トラフィック,C…コントローラー、H…ハーフ,M…マスト,S…ジッへル(ビレーの意)
@HMSカラビナはネジ式よりスプリング式の安全環の付いた物の方がトラブルが少ない。
@リーダーが登り出して少なくとも二つ目のカラビナにクリップするまでビレーヤーは岩壁に張り付いた位置に立つ。立つ位置はリーダーの第一クリップが右手で行われるなら右寄りの出来る限り真下である。右にいることでリーダーの第一クリップを容易にし、真下にいることで墜落した時に真上に引き上げられるようになります(横に引きずられて岩に激突しない、真上に引き上げられるので腰椎を痛めにくい)。また真下にいることで、ビレーヤーと一番目の支点の間で斜めに張ってしまったロープに墜落者の足が当たることで起こるやけど(ロープバーン)や墜落者の反転を防ぐことが出来る。
@墜落を止めるとその反動で岩に当たったり、足場からころげ落ちるような場所でビレーする場合はセルフビレーを施してからビレーする。
@リーダーが四つ目のカラビナにクリップしたあたりからビレーヤーは岩壁から離れて、上を見やすい位置に移動する。
@リーダーがロープをたぐる時、ビレーヤーは両手のストロークと足を使って体を移動することを組み合わせて、クリップするのに必要な長さ(長すぎるとクリップに失敗してたぐり落ちした場合にグランドフォールする危険がある)だけを素早く出してあげる。
@リーダーがクリップしたら登るに従ってロープを引いて行き、クリップしたヌンチャクを通り過ぎたら登るに従ってロープを出して行く。
@リーダーが落ちた時はいつでも止めなければならないのでビレーヤーは一瞬たりともスキを作ってはならない。リーダーが今落ちたら、どれだけ落ちて、どこにぶつかるかまで考えてビレーする。
@ビレーヤーがロープのリーダー側から来て確保器を通過した所を常に握っている状態を保つには、軽く握った確保の手の中をロープがスライドする方式と、両手が入れ替わって必ずその部分を左右どちらかの手が持っている状態を保つ方式がある。後者の方が操作性が良いようだ。
@「テンション」と言われたら、出来る限りロープをたぐってピンと張り、ロープが流れないようにしっかり握る。次に、腰を落としてしゃがみ体重を使ってさらにロープをピンと張って待機する。リーダーから「登ります」の合図があり、ロープの張りが緩んだら立ち上がってもとの体制に戻り、ビレーを続行する。
「ビレーヤーが、トップの最初のクリップまでスポットをするか?」&「トップの3つめのクリップまでしゃがんでから立ち上がりながらロープを繰り出してあげるか?」の選択について。
①ルートによって使い分ける必要があるので、「スポットが必要か」と「ロープの立ち上がり繰り出しが必要か」を打ち合わせてから登り始めるのが良い。
*ルートを見ただけでわかる熟達者コンビの場合はこのかぎりではない。
②特に理由がないかぎりスポットと立ち上がりビレーはしない方が良い。
※スポットはしない方が良い理由:
・・・スポットは出だし核心で一つ目の支点が近い場合のみ有効で、一つ目の支点が遠い場合のスポットは安全が保てないから。
※立ち上がりビレーはしない方がベターの理由:
・・・立ったままだとツーストロークのロープの繰り出しになるが、必要以上のロープの繰り出しが防げるから。
・・・リーダーの落下距離をビレーヤーが立っている状態からとっさに座りこむこで短くできるから
・・・リーダーのたぐり落ちに身構えていることができるから。
・・・ビレーヤーの目線が動かないから。
※インストラクションとしての理由:
・・・スポットと立ち上がりビレーの長所と短所が理解できていないレベルの初心者による、安易な真似が避けられるから。
・・・ビレーが未熟なのに、自信を持って「私がビレーします!」と申し出る人は多くて、そのタイプに安易なスポットや立ち上がりの真似をさせてはならないから。
2、終了点について、ロワーダウンで降りる(トップロープを残さない場合)
(1)リーダーの動作
@終了点にロープをクリップしてロワーダウンの準備をする。
@終了点は様々なパターンがあるのでそのパターンに合わせてロープをクリップしなければならない。
@終了点の信頼度を考えバックアップをとることをおしまない。
・ハンガーボルト又はケミカルボルトを二つ以上使った終了点は大丈夫と思う(ハンガーボルトのネジが緩んでいることがあるので注意)。
・大木にロープを結んだタイプは木をゆすったり、ロープの劣化を確かめてから使う。
・手打ちのリングボルトやRCCボルトは三つ以上あっても信じない。
・ハーケンは手打ちボルトよりは信頼性があるがフリークライミング用に整備された岩場にあるハーケンには疑問を持たなければならない。
@ゲートが開き双方向を向いた二枚のカラビナが残されている場合はその二つにクリップする。
・クリップしたら「テンション」とビレーヤーに合図を送る。
・ビレーヤーから「降ろします」と合図が来てロワーダウンを開始する。
@カラビナが一つだけ残されている場合は自分のカラビナを一つ寄付して補強する(カラビナが残されていなければ自分のカラビナを二つ寄付する)。古びたロープが使われている場合は自分のスリングを寄付して補強する。もったいないと思うかも知れないけれど、
自分とまだ見ぬ後続クライマー達の保険だと思えば安いと言える。高いお金(数万円かな?)をかけて作られたルートを無料で使わせてもらっているのだからカラビナの二枚やスリングの二本くらいは寄付してしまうような太っ腹でいたいものだ。
不安な終了点…でも…もったいなくて寄付出来ない…という人はロワーダウンせずに懸垂下降に切り替えるべし。
@終了点がカラビナのように開くゲートを持たない物(リング、鎖、ゲートが開かないカラビナ、以下リングと記載)の場合は次のようにする。
・まず、長めのヌンチャク等でセルフビレーをセットする。
・ビレーヤーに「ロープをゆるめて」と指示を出す(ビレー解除ではない、ゆるめるだけ)。
・ハーネスからつながるロープをヘアピンのように折ってリングに通す。
・リングを通ったロープのヘアピンで(ロープ2本束ねたまま)エイトノットを作り、ハーネスのHMSカラビナにかける。
・ビレーヤーに「テンション」と指示を出す。
・テンションがかかり、体重がロープに移動出来て安全を確認したら、ハーネスとロープのメイン連結の結びをほどく。
・全体の安全を確認したらセルフビレーをはずす。
・「降ろして」とビレーヤーに指示してロワーダウンを開始する。
@体の中心線(足から頭に向かう)の方向と鉛直方向の交差角が60度ぐらいに体を寝かせて行く(横になって寝るくらいの感じ)と足が岩にささった感じになる。足は肩幅くらいに開く。足が岩にささった感じを保ちながら歩くように降りる(ロワーダウンする)。
@支点
(プロテクションにとったヌンチャク)の所でビレーヤーに「ストップ」と声をかける。ストップしたら支点からヌンチャクをはずす
(ロープからもはずす)。はずしたヌンチャクはハーネスに吊るす。ヌンチャクの回収が終わったら「降ろして(ダウン)」と声をかけて次の支点に向かう。
@自分の仲間が次に同じルートを登る場合はヌンチャクを回収せずにそのままロワーダウンして下に降りてしまい、ヌンチャクを壁に残したままロープを引く抜く。
次に登る人はその残されたヌンチャクにロープをクリップしながら登る。残されたヌンチャクを使って登っても
オンサイトやフラッシュしたことになるとされている。支点の間隔が遠くてランナアウトしてしまう場合は
、残すヌンチャクにスリング(下にカラビナがかかっている)を追加すると良い。
@上記のヌンチャクを回収しないロワーダウンの際に、一番上のヌンチャクから始めて下から二番目のヌンチャクまでベンドゲートに通っているロープをはずすし、
一番下のヌンチャクに通るロープのみそのまま(ベントゲートにロープがかっかったまま)
にして降りてくる。下まで降りてロープを引き抜くと、一番下のヌンチャクに(次に登る人のために)
プレクリップされた状態でロープが落ちてくる。プレクリップは積極的に行うべきだと提唱したい(再掲)。
@前傾していたり、斜上するルートの場合はヌンチャクをはずして行くうちに回収したい支点から遠ざかるので、始めの最上部のヌンチャク(☆ヌンチャクとする)
をはずす時に☆ヌンチャクを岩側のロープ(:ビレーヤーと終了点の間にあるロープ)からはずさないでおいて、支点からはずした側のカラビナ(ストレートゲート)
をハーネスのビレーループにかけてしまう。こうすると岩側のロープにそうようにして降りて行き、
必要の時は岩側のロープを引けば回収したい支点に向かうことが出来る。一番下のヌンチャクをはずす時に大きく振られることが予想される場合はビレーヤーに
セルフビレーをセットするなどして引き込まれない準備をさせてから降りるか、又は、☆ヌンチャクは回収してしまいリーダーだけが振られる状態にして
振られることに対応しながら降りる。
@前傾のきついルートや大きく斜上するルートの場合には一番下のヌンチャクをはずすと大きく降られるだけでなくグランドフォールする可能性がある。
そういうルートの場合は(必然的に)上の方のヌンチャクは楽に回収出来るが下の方のヌンチャクは降りるに従ってだんだん回収するのが難しくなる
(ヌンチャクから遠くに降りてしまう)。難しいのにがんばって回収しないで下から二個以上ヌンチャクを残して地面に降りてしまうようにする
(ブランコのように振ったりしない)。一度地面に降りてロープをほどき、今つながっていたのと反対側のロープの末端(ビレーヤ側末端)につながって、
セカンドがフォローしながら登る形で再度登りながらヌンチャクを回収する(ビレーヤーは今までビレーしていたのと終了点をはさんで反対側のロープを
ビレーすることになる)。再度登り返せないほど消耗している場合は自己脱出で登る。
@前傾がやや甘いルートで少しがんばれば回収が続けられる場合には、
下から二番目のヌンチャクを残して先に一番下のヌンチャクを回収する。その後で、下から二番目のヌンチャクを回収する
(振られるので地面や岩角などにぶつからないか十分に確認してから下から二番目のヌンチャクをはずす)。
一番下のヌンチャクを回収する方法
①下から二番目のヌンチャクのストレートゲートに手持ちのヌンチャク(以下:ヌンチャクA) をかけ自分のハーネスから上の終了点に延びるロープをクリップする。
②ビレーヤーに「降ろして」と指示してロワーダウンを続け、一番下のヌンチャクの所で「ストップ」と指示して停止する。
③一番下のヌンチャクのストレートゲートに手持ちのヌンチャク(=ヌンチャクB)をかけハーネスのビレーループと連結してセルフビレーをセットする。
④ビレーヤーに「ゆるめて」と指示を出し、ロープが緩んだらセルフビレーにテンションを移す。
⑤一番下のヌンチャクのベントゲート側のロープ(ビレーヤーから終了点に向かうロープ)をはずす。同左のロープはビレーヤーから下から二番目のヌンチャクを 経由して終了点まで続き、終了点で折り返してヌンチャクAを経由してクライマー(壁途中にいる回収者) に繋がる形になる(以下:トップロープ)。
⑥一番下のヌンチャクを手がかりに数十センチメートル登り、ビレーヤーに「テンション」を指示する。テンションがかかった所でセルフビレー(ヌンチャクB) 及び一番下のヌンチャクを回収する。
⑦トップロープのビレーヤーに近い側を両手で持ちゴボウで下から二番目のヌンチャクまで登る (登れるなら普通に登っても良い)。
⑧下から二番目のヌンチャクのストレートゲートに手持ちのヌンチャク(=ヌンチャクC)をかけハーネスのビレーループと連結してセルフビレーをセットする。
⑨ビレーヤーに「ゆるめて」と指示を出し、ロープが緩んだらセルフビレーにテンションを移す。
⑩下から二番のヌンチャクのベントゲート側のロープ(ビレーヤーから終了点に向かうロープ)をはずす。
⑪下から二番目のヌンチャクを手がかりに数十センチメートル登り、ビレーヤーに「テンション」を指示する。テンションがかかった所でセルフビレー (ヌンチャクC)とヌンチャクAと下から二番目のヌンチャクを回収する (回収すると振られるので注意)。
⑫ヌンチャクが全部回収出来たらロワーダウンで下まで降りる。
※上記の⑦の時にゴボウで登れないほど消耗しているなら、回収をせずにロワーダウンで下まで降りて、消耗の回復を待って残された トップロープを使って普通に登り(普通に登れないならゴボウで登り)、 ⑧にもどる(登りを別の人に依頼しても良い)。
@地面に降りたらロープを引き抜く。
(2)ビレーヤーの動作
@「テンション」と言われたら、出来る限りロープをたぐりさらに腰を落としてロープをピンと張る。
リーダーに「降ろします」の合図を送り、立ち上がり、岩壁から離れていた場合は岩壁に張り付く位置まで歩いていき、それからロープをゆっくりと繰り出し(流し)
て行く、ロープを繰り出すスピードはなるべく等速度を保つ(降りる人が安心する)。地面近くまでリーダーが降りてきたらスピードを極端に遅くしてゆっくりと
着地させる。
@リーダー側でない方のロープの末端はエイトノットなどで結び目を作っておくことを基本とする。そうすればロープの長さが足りなくなってビレー器具を
すっぽ抜けることがふせげる。
@ロープの長さが足りなくなってリーダーが壁の途中で止まってしまったら、ビレーヤーはロープの末端(リーダー側でない方の末端)
近くを自分のハーネスに仮固定(ATC仮固定)する。
ビレーヤーは下降用のロープと支点工作用のスリングやカラビナを持って、リーダーが着地するまで同ルートを登り、
途中のプロテクション(信頼性の高いもの)から懸垂下降する。信頼性の高いプロテクションがない場合は着地したリーダーにロープをほどくことなく
そのロープをビレー(リードアンドフォローのロープワークでトップがセカンドをビレーする形)
をしもらい終了点まで登ってしまう、終了点でセルフビレーをとりビレーを解除の指示、終了点から補助ロープとメインロープの二本を使って懸垂下降する。
@下降中のリーダーが支点の所で「ストップ」と合図して来たらロープを繰り出すことを止めて、ヌンチャクの回収を待つ。
ヌンチャクを回収したらまたロープを繰り出す。
@リーダーが一番下ヌンチャクを回収するとに大きく振られることが予想される場合は、下から二個以上ヌンチャクを残して地面まで降りるように指示する。
3、終了点について、トップロープをセットしてからロワーダウンで降りる。
(トップロープフリーの岩場)
リーダーの動作(上記2と重複しない項目)
@トップロープの支点を新たにセットするのは終了点の消耗を少しでも減らすため & トップロープが残されていても
そのロープの脇を別パーティがリードクライミングで登れて同ルートの終了点を使ってロワーダウンすることが出来るようにするためである。
@ロワーダウン用に設置されたリングやカラビナなどを支点として使わずに自分のカラビナでトップロープの支点を作る。
@終了点の様々な状況に合わせてトップロープの支点を作る。
・まず、長めのヌンチャク等でセルフビレーをセットする。
・ビレーヤーにセルフビレーをセットしたことを知らせる(ビレー解除ではない、ゆるめるだけ)。
・終了点を作る二つ以上(太い生きた立木の場合は一つでも可)の支点(支点の強度によりその数は自分で決める)を使ってトップロープの支点を作る。
・トップロープのかかる所はゲートを反対に向けたカラビナを2枚使用すること。安全環つきカラビナであっても2枚使用する
(安全環が回ってはずれた例がある)こと。
・終了点のボルトとか鎖とかに向きを変えた二つのヌンチャクをかけてトップロープの支点を作ることが多い。
二つのヌンチャクにそれぞれ均等にトップロープの加重がかかるようにすること
(ヌンチャクをかける鎖の穴の位置を工夫するとかスリングを使って長さ調節するなど)。
・終了点のボルトの穴に残置のロープが通っている場合は、ボルトの穴のロープの下にカラビナをかけるかスリングをかけて支点工作をする
(ロープの上にカラビナをかけてそれに加重をかければ、ボルトの穴とカラビナに挟まれてロープが傷む)。
@フリークライミング協会の設置した終了点の場合は長いスリングで流動分散をかけて支点を作って良い(支点を守ることにつながる)。 流動分散は一方の支点が壊れた時にハンマーで打ったような衝撃がもう一方の支点を直撃するので一般的ではない。
@「ゆるめて」とビレーヤーに言い、
自分で作ったトップロープの支点のカラビナ2個(自分のカラビナ)にロープをかける。
@「テンション」とビレーヤーに言ってロープを張ってもらう。
@ロープに体重を移して安全を確認したらセルフビレーをはずす。
@「降ろして」とビレーヤーに指示してロワーダウンする。
@次の人が順番待ちをしている場合にトップロープを残させてもらう場合はロワーダウンしながら
ヌンチャクを全部回収する。岩場が貸し切り状態で次の順番待ちの別パーティがいない場合はヌンチャクを
回収しないでそのままロワーダウンする。ヌンチャクを回収しないで次の人がトップロープクライミングすれば、
たくさんのランニングビレー(ヌンチャク)にロープが通っているので安全度を大きく高めることが出来る(ロープを引き抜けばリードクライミングも出来る)。
@トップロープを使ってクライミングを楽しんだら、最後の人はトップロープを残さないでロワーダウンで降りる方法を使って降りる
(トップロープセットに使ったヌンチャクやスリングは回収する)。
@レンチ13mm,17mm,19mmを持って行き、ボルトのネジを締めながらなロワーダウンしたいものだ(寒暖の差でネジはいずれ緩んでくる)。
4、終了点まで行けずに途中で降りるリーダーの動作(上記2と重複しない項目)
@途中の各支点にヌンチャクを残したままロワーダウンをして、次の人にバトンタッチ、ヌンチャクの回収は終了点まで行ける人が担当する。
@終了点まで行ける人がいない場合の方法は四つある。◆一つ目・・・最高到達点から補助ロープ(あらかじめ持って行く)を下まで降ろし、
それを使ってプレクリップの棒を上に引き上る。プレクリップ用のヌンチャクの下のカラビナに長いスリングをかけて、
上の支点にプレクリップする。その長いスリングをつかんで上の支点まで行く。この岩場途中でのプレクリップを何回か行って終了点まで行く。
◆二つ目・・・あらかじめ残置してよいカラビナを二つ持って行く。最高到達点とそのすぐ下のヌンチャクを残置用のカラビナと取り替える。
残置用のカラビナを使ってロワーダウンする。もったいなくても二つの残置カラビナを残すこと。
◆三つ目・・・人工登攀に切り替える。例1…支点にかけたカラビナをつか)む(A0)。例2…支点にスリングをかけてそれに足を入れてアブミとして使う(A1)。
例3…フイフイ・フレキチューブヌンチャクを使って登る。
フイフイ・フレキチューブヌンチャクとは、60cmぐらいの長さのスリングをフレキシブルでやや強い管
(電気配線用の蛇腹のついたプラスチック管が良い)に通し、フイフイとカラビナを両サイドにつけたヌンチャク
(下のプレクリップマシンの項の中段に写真と使用法が掲載されている)。
◆四つ目…300cm程度の長いダイニーマスリングを携行して登る。それを支点を懸垂下降のように通し、
長スリングにつかまって下の支点まで行く。下の支点に到達したら、長スリングを回収する。以下これを繰り返し下まで降りる。
ビレーをしてもらっている状態で降りられる。
5、ロープの長さの半分より長いルートを登ってしまった場合の動作
*ロープの末端がビレー器からすっぽ抜けるのを防ぐため、、
クライマーに連結してない側のロープの末端は結び目を作っておく、又は、ロープバックの末端止めに結んでおくか、
ビレーヤーのハーネスに連結しておく、こと(再掲)。
<ロワーダウンの途中で、ロープが足りないとわかった場合で、ロープが2本ある場合>
ビレーヤーが2本目のロープをメインロープに繋ぎ、結び目通過させます。
①リーダーとビレーヤーが協力して結び目を通過させる。
リーダーは終了点から下って来るロープにオートブロックヒッチでスリングをセットし、ハーネスの安全環付カラビナと結びセルフビレーをセットする。
もし、終了点から下って来るロープにリーダーの手が届かない場合は途中の支点にセルフビレーをセットする
(その際はたった1つ支点を使ったセルフビレーなので、リーダーはホールド持ちスタンスに立ってレストの状態でビレーヤーの結び目通過を待つこと)。
リーダーがセルフビレーをセットしたら、ビレーヤーは素早く結び目を通過させ。ビレーを再開する。
②ビレーヤーのみで結び目を通過させる。
メインロープにオートブロックヒッチでスリングをセットし、そのスリングとビレーヤー近くの強固な支点とをマリーナヒッチで結びテンションを
マリーナヒッチに移す。ビレーヤーは結び目を通過させた後、マリーナヒッチのテンションを徐々にゆるめて、再度テンションをビレーヤーに戻す。
マリーナヒッチの出来る長スリングがない場合は2本目のロープの反対側の末端を補助ロープとして利用して結び目通過する→
こちらをごらん下さい。
<ロワーダウンの途中で、ロープが足りないとわかった場合で、ロープが1本しかない場合>
リーダーは確実な支点のある所まで登り返す。二つ以上支点を連結した強固な支点を作る。セルフビレーをセットしてビレーを解除してもらう。
確実な支点にカラビナを残置し、メインロープを使って懸垂下降する。ロープが足りなくて下まで懸垂下降出来ない場合は途中まで懸垂下降する。途中で二つ以上支点を連結した強固な支点を作り、そこから再度懸垂下降する(迷わず複数のカラビナを残置すること)。
<終了点で、ロープが足りないとわかり、さらに、別の長いロープに取り換えてトップロープを残したい場合>
リーダーは終了点でセルフビレーをセット(確実にセット)しそれにテンションを移して、ビレー解除を指示する。以下①または②の方法を選択して
長いロープを引き上げ、トップロープをセットする。その後、セットしたトップロープを使い懸垂下降で下まで降りる。
①フリーになったメインロープ引き上げて、中間支点から抜き、それを荷揚用ロープとして使う。荷揚げ用のロープを下に投げ
、もう一本の長いロープを引き上げる。
②フリーになったメインロープの末端にもう一本のロープをテーピングテープを用いて連結(2本の水道管を連結するようにロープの末端どうしを合わせて、
連続した一本のロープにするかのごとく、継ぎ目をなるべく滑らかに連結)のしてもらいそれを引き上げる(もう一本のロープは中間支点を通過しながら登ってくる)。
もう一本のロープが上がって来てからは①と同じ方法で懸垂下降をする。①の方法との違いは「途中にブッシュとか大きなハング等があって
ロープを投げても下に届かないルート」でも、もう一本のロープを引き上げることが可能となる。途中でテーピングテープが切れてしまって
もう一本のロープが上がらない場合は①に切り替える。①に切り替えられられない場合は、トップロープのセットをあきらめ、途中まで懸垂下降する。
途中で二つ以上支点を連結した強固な支点を作り、そこから再度懸垂下降する(迷わず複数のカラビナを残置すること)。
プレックリップマシン 最新情報:コング社のPANICカラビナ
手作りプレクリップマシンその1 ①コピー用紙50枚が挟める程度の大きな紙夾みを 短く切ったテントのポールに針金で固定して作る。 ②右の駒は小さなカラビナ用 ③左の駒は大きなカラビナ用 ④左側の部分を3メートルほど長く伸ばせる釣り竿 とかゾンデ棒などにテープで止めて使用する。 |
手作りプレクリップマシンその2 ①プレクリップマシンにヌンチャクを夾む。 ②駒を噛ませてカラビナのゲートを開いておく。 ③左のカラビナにロープをかける。 ④右のカラビナを高い支点にかけて、黒いテントポー ルを左に引き抜くとプレクリップされる。 、 |
コング社製の高速クリップ器 ①右側の開いた部分(門)を支点に差し込むと銀色 の部分が門を閉ざして支点に固定される。 ②手作りプレクリップマシンに夾んで使う、又は長 い棒にテーピングテープなどで固定して使う(クリ ップ後に棒を強く引きテープを切る)。 ③ケミカルボルトには(ハンガーが高速クリップ器の 門の幅より太いために)使えない場合がある。 ④ハンガーボルトのネジの部分が大きく外に出て いると高速クリップ器が使えない場合がある。 |
上→市販のカラビナゲート用ゲート開きプレート(左 下写真のように使う。 下→ペットボトルのプラスチックで作ったカラビナ用ゲー ト開きプレート(右下写真のように使う) 、 、 、 、 、 、 |
市販のカラビナ用ゲート開きプレートを使ってゲート を開いた所。支点にクリップすると自動的にゲートが 閉じる(使い方は左上写真のコング社製の高速クリ ップ器のそれと同じ)。 |
手作りのカラビナ用ゲート開きプレートを使ってゲート を開いた所{使い方は市販のもの(左写真)と同じ}。 、 、 |
ゲート仮固定可カラビナ付ヌンチャク 最新情報:コング社のPANICカラビナ ①雪崩捜査用ゾンデ棒にベルクロで取り付けた例、 ベルクロ(赤と青のプラスチックの駒)の代りにテー ピングテープで止めてもいい。 ②ゾンデ棒でなくて現地調達の木の棒でも良い。 ③ゾンデ棒でなくて釣り竿でも良い。 ④写真右のカラビナが入手出来ない場合は一つ上の 写真のカラビナ用ゲート開きプレートを使えばいい。 |
フレキチューブヌンチャク ①40cm程度のフレキチューブを使用する。フレキチ ューブ(電気配線用)はホームセンターで手に入る。 ②フレキチューブの中にはスリングが通っている。 ③写真では見えないが、チューブの左側からスリング の末端が出ていてカラビナがかかっている。つまり 全体としてはヌンチャクになっている。 ④ハーネスに付けて携行し登攀の途中で足元から 2.5m程度上の支点にプレクリップが出来る。 |
フイフイ・フレキチューブヌンチャク ①右上のフレキチューブヌンチャクのゲート仮固定可カラビナのかわりにフイフイを使用したもの。 ②ハーネスに付けて携行し、登攀の途中で足元から2.5m程度上の支点にフイフイを引っかける。 ③メインロープを左のカラビナにクリップし、ビレーヤーにテンションをかけてもらう。 ④テンションのかかった(上の支点からビレーヤーに向かう側の)ロープを引いて(いわゆるゴボウで)、フイフ イを引っかけた支点に手が(ゆとりを持って)届く高さまで登る。 ⑤フイフイを引っかけた支点に普通のヌンチャク(以下:ヌンチャクA)をかける。 ⑥ヌンチャクAとハーネスを別のヌンチャク(以下:ヌンチャクB)で連結し、セルフビレーをセットする。次にテン ションを緩めてもらい、セルフビレーに体重を移す。 ⑥’(←⑥の代り)ヌンチャクA(等)をホールドにしてレストの態勢を作ってテンションを緩めてもらい、⑦に進む。 ⑦ヌンチャクAにメインロープをクリップする。⑧と⑨を飛ばして⑩に進めるなら進む。 ⑧ビレーヤーにテンションをかけてもらい、ごぼうで30cmほど登る。 ⑨フイフイを引っかけた支点の近くで、レストしてその支点にクリップ出来る態勢を作る。ホールドが乏しければ ヌンチャクAが有効なホールドとなる。レストの態勢が出来たらテンションを緩めてもらう。 ⑩ヌンンチャクB(セルフビレー)とフイフイ・フレキチューブヌンチャクを支点から回収する。ヌンチャクAが押し つける力でフイフイ・フレキチューブヌンチャクが支点から回収出来なければ、そのまま登り、後で回収する。 ※フレキチューブの長さは上記の全作業が出来る範囲内でなるべく長くする(写真の場合はチューブの長さ が43cm、全長63cm)。 |
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プレクリップフォーク その1 ①左側の部分を3メートルほど長く伸ばせる釣り竿 とかゾンデ棒などにテープで止めて使用する。 ②岩場の途中に下がっているヌンチャクにプレクリッ プすることが出来る。 、 |
プレクリップフォーク その2 ①ロープをヘアピン状に折ってフォークにかける。 ②プレクリップしたいヌンチャクにヘアピンの輪を かける。 ③ロープを二本とも下に(写真では左に)引くと、 ヌンチャクのゲートが開いてプレクリップされる。 |
プレクリップフォークを使わない方法(プレクリップフォーク その3) ①リードクライミングを終えて終了点からロワーダウンする際に、「プレクリップしたい支点の一つ上のヌンチャ ク」からのみロープをはずしして下まで降りる。他のヌンチャクには手をふれない。つまり、他のヌンチャクは みなロープが通ったままになっている。 ②ロワーダウンが終わり、リーダが着地したらロープを引く。ロープの末端がプレクリップしたい支点の二つ上 のヌンチャクを通過したとたんにロープを引くことを停止する。 ③目的の支点にプレクリップされた状態でロープが落ちてくる。 ④この方法を使えば、プレクリップフォークを使わずに済ませることが出来る。この方法がうまくいかないか、あ るいは意図的にロープを完全に回収してしまった時にプレクリップフォークを使う。 |
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長いタイプを 作成してみた。 100cmほど腕 を長く出来る。 折り畳み式にす るのであれば、 使わないテント ポールを希望段 数にして、内側に ゴムひもを入れる 方法が考えられる。 ※カラビナのゲート が開いたまま過大 な荷重をかけない ように。 |
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カラビナ周辺を硬くする。 |
骨は真鍮パイプ使ったが、銅線のほうがいいか もしれない。骨には不意の墜落時に体に刺さら ない柔らかさが必要! |
テーピングの応用(右および、下の写真3枚) カラビナゲートに隙間を確保し ハンガーやハーケンの下に押し当てて テープをカットしゲートを閉めます 欠点としては 一回毎にやり直すのがめんどう 外れやすさの具合は練習が必要 |
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岩登りにおけるメンバー構成とダブルロープシステム
◆ダブルロープシステム
@マルチピッチの岩登りルート、大きな山の本番ルートはロープを二本使って登る(=ダブルロープシステム)。
@ダブルロープは軽い、登った分の距離を懸垂下降て撤退出来る、一本切れてもまだ一本残る、など、本番ルートに適した利点がある。
@また初心者等を支援するロープワークとしても利用出来る。⇒「トップは終了点についてAロープを固定し、Bロープでセカンドをビレーする。セカンドはAロープをホールドにして登ることが出来る(鎖場の鎖のようにAロープに頼って登れる)。」
@以下、その1~その5でダブルロープシステムに関して記してみる。
その1、二人組でトップとセカンドが入れ替わりながら登る(つるべ方式)。
…トップは二ピッチ目でセカンドになり、セカンドは二ピッチ目でトップになるので二人の分担する役割は同じ(登る&確保)である。
…トップは二本のロープを引きセカンドはATCなど確保器の二つの穴を利用してその二本のロープを同時にビレーする。トップとセカンドは一方のロープ(左ロープとする、もう一方を右ロープとする)を立っている位置の左側でほどき、ハーネスのビレーループの左に結ぶ。右ロープは立っている位置の右側でほどき、ビレーループの右に結ぶ方法とエイトノットで輪を作って(止め結びを付加すること)ビレーループについた安全環つきのカラビナに簡易ガケする(ノーマルカラビナを安全環つきカラビナと逆方向にゲートを向けて追加しておくと万全)する方法がある。何ピッチもロープを操作すると左右のロープが交差することが起きるが簡易カゲならばロープをはずしての修正が容易である。
…セカンドは二本のロープを一本のロープの時と同様に繰り出して行く。トップが左ロープをクリップする場合に左ロープだけ出さずに右ロープも同時に出す。大きくたるみが出ないかぎり、左だけ、あるいは右だけ、ロープを繰り出したり繰り戻したりはしない。
…トップは登攀ルートの左に支点があれば左ロープをクリップし、右に支点があれば右ロープをクリップしながら登る。左右を交互にかける必要はない(ほとんど左ロープしかクリップしないなんてこともある)。
…左ロープと右ロープが交差することがあってはならない(下からのロープの流れを確かめてからクリップすると良い)。墜落した場合にロープの交差点を溶融劣化させてしまう。
…一つ目の支点と二つ目の支点が近距離にあってしかも左右に大きく離れている場合、及び、二つ目以後の支点の並び方が下からでは判断できない場合には一つ目の支点に短いヌンチャクと60cmスリングの二つ折りをセットして左右二本のロープをそれぞれにクリップする。トップが墜落した場合にビレーヤーが引き込まれる方向を統一しておくためである。一つ目の支点へのクリップは十分に考えて行わなければならない。
…大きなトラバースをする場合(左にトラバースするとする)、トップはトラバースの開始地点で右ロープをクリップして、そのクリップから20~100センチ程度下に支点を作り左ロープをクリップする(上下2連のカラビナの上に右ロープを下に左ロープをクリップする)。左ロープをクリップしないと、セカンドが登る時に右ロープで上に、左ロープで左に引かれることになってしまう。トラバースはセカンドの方が恐い場合もあるのでトップはなるべく多く支点をとって進むようにする。
…ダブルロープのビレーについてはこちらをみていただきたい。
参考、ツインロープシステム
…ロープ2本をひとつのカラビナに掛けることがないのがダブルロープシステム、ロープ2本をひとつのカラビナに掛けながら登るのがツインロープシステムシステムである。ツインロープシステムでは10ヶ所の中間支点があれば10ヶ所全部でロープ2本をひとつのカラビナに掛けなければならない。
…フリークライミング・インストラクター委員会の指導教本では、「ルートが直線的でセカンドも1人の場合、ひとつのカラビナに2本通して良い」、「墜落時、カラビナ内の摩擦が強く、支点に強い負荷をかけるため、伸縮性の高いツインロープ( ∞ マーク)を使うのが正式」とある。ロープの摺れによる溶融より、支点破壊しない為の意味が強いと理解出来る。
…クリップがシビア(下からのロープの流れを確かめてからクリップするゆとりのない)なロングルートで、2本のロープによる懸垂下降撤退の可能性ありの時にツインロープシステムは有効であると考えられる。
…エベレスト厳冬期登山や北極点に行かれた「かげろう」師は積極的にツインロープシステムを使われる。巨大で厳寒の環境下ではツインロープシステムであるべきだったのだろうと推察出来る(ダブルロープシステムを作るゆとりはない)。
その2、二人組でトップとセカンが入れ替わらないで登る(万年セカンドのための方式)。
…トップは二ピッチ目でもトップになり、セカンドは二ピッチ目でもセカンドなる。
…トップ及びセカンドの動作は基本的にその1と同じである。異なる点は
①ビレーポイントを万年セカンドのための方式で作ること。
②セカンドがビレーポイントに到着したら、セルフビレーをセットしてもらい、トップはセカンドのビレーを解除する。その後、セカンドに自分側のロープを端からセルフビレーに掛けるか足下に降ろして行くかしつつ、トップ側の末端までたぐってもらう(ロープの上下を入れ替える)。
③トップはセカンドにビレーをしてもらい自分のセルフビレーを解除して次のピッチもトップで登ることを続ける。
その3、三人組で登る。
…トップが二本のロープを引きセカンドとサードにそれぞれ一本ずつビレーしてもらって登る(一方のロープがたるむことがないので、安全性と操作性がセカンド一人に二本のロープをビレーしてもらって登るより良くなる、一つ目の支点でのクリップに気を使う必要もない)。ロープの引き方等は基本的にはその1同じである。
…トップとセカンドの間でロープ一本、セカンドとサードの間でロープ一本を使用して一列につながって登る方法がある。セカンドのことを中間者(ミッテルマン)と呼ぶ人もいる。セカンドはロープが真上に一直線に伸びている時は支点にかけたカラビナ等を回収する。斜上したりトラバースしたりする場合はロープのかけかえ(トップ側のロープを支点にかけたカラビナから外して、サード側のロープをそのカラビナにかける)を行う。ロープのかけかえをしないで支点カラビナ等を回収してしまうと、サードが墜落した時に大きく振られることになって危険である。トップが登って、セカンドが登って、サードが登って、サードがそのままトップになって登ればロープの上下の入れ替えをしないですむので時間的に早い(3人つるべ方式)。
…ビレーポイントを作る場合万年セカンドのための方式にで作ること(その2と同じ)。
…やさしいルートならトップは二本のロープを同時にビレーして登らせると時間が短縮出来る。ロープを一本にして末端に二人つながり(髭を出してつながる)同時に登らせる方法もある。ロープを一本にして中間者をアッセンダーとかユマールとかブルージックで登らせる方法もある。
その4、二人組と二人組(三人組)の二組で登る。
…「二人組でロープ一本、もう一つの二人組(三人組)でロープ一本」を使えば二本のロープで四人(五人)が登れる。協力するために、
各組は大きく離れることがないように登る。
…人数が増えれば落石にあたる可能性も増えてしまう。少なくともルンゼ内にあるルートを二組同時に通過してはならない。
その5、四人以上が一組になって登る。
…二人組とか三人組を複数作って登るのが良い(何かあった時にロープは多い方が良い、人数多く塊にならない方が良い)のだが。
メンバーに不安があって全員が繋がって登ることがある。もし人数マイナス一本のロープ(四人なら青赤緑三本)があれば、
1列につながって登るのがロープがごちゃごちゃにならないで良い(トップ…青ロープ…2番手…赤ロープ-3番手…緑ロープ…ラスト)。
1列につながっている場合、上から引いてもうらうロープはしっかりハーネスに連結し、
下を引き上げるロープは安全環付カラビナでハーネスのビレーループに連結(いわゆるチョン掛)しておくと、
ロープが交錯した場合や2番手がつるべ方式で新1番手になる場合に下からのロープを旧1番手に渡すことが容易に出来る。
以下にも様々な方法を記すが、人数が四人以上の場合は一列になって登るのが最も合理的と思われる
(わかりやすい,二人しか立てないビレーポイントでもOK,トップの交代が容易)。
…四人が青と赤のロープ二本で登る場合(現場にロープがニ本しかない場合を想定)。
青ロープの末端から4m上に長さ40cmの髭(魚釣りで、
針を二つつけた仕掛けを作った場合の上の針とハリスの様)を作る。
40cmの髭とはロープの途中にエイトノットを施して50cm程度のヘアピン状の輪を作り、
その輪の先にさらにエイトノットを施して(ヘアピンは40cmに短くなる)ハーネスと連結するための輪を作ったものである。
青ロープの末端に一人、青ロープ髭に一人つながる。そして赤ロープにもう一人つながる。
トップは青ロープと赤ロープを引いてダブルロープシステムを使って登攀を開始する。ビレーヤーは青赤ロープそれぞれの末端につながった二人である。
トップはビレーポイントについたら万年セカンドのための方式でビレーポイントを作り、
まず青ロープの髭に連結している人を上げる、同時に4m下にいる青ロープの末端につながった人も上がって来ることになる。
二人がビレーポイントまで上がったら、セルフビレーをセットさせ、青ロープ末端の人に赤ロープの末端につながった人を上げさせ、
青ロープ髭の人に青ロープの上下を入れ替えさせる。
ロープの入れ替えが終わったら青ロープ髭の人からその人が回収してきたギアを受け取り(ギアに不足があればさらに補い)、
その後青ロープ髭の人にビレーをしてもらって、二ピッチ目を登り始める(メンバーに不安がある場合はテラスに四人を全部そろえ
・次の動作を指示し・ロープやギア類を整理し・全体の安全を確認してから二ピッチ目の登りを開始する)。
…四人が青ロープ1本で登る場合(現場にロープが一本しかない場合を想定)はロープウェイ方式で又はロープフィックス方式を使って登ります。
◆十人ぐらいで登る
@シングルピッチのフリークライミングのような場合である。沢登りの場合は沢登りのロープワークの項を参照のこと。
@シングルピッチで数本のルートがある岩場なら十人いてもいい、休み休み交代で登れて楽しい。
@十人いてもトップ(クライマー)とセカンド(ビレーヤー)の役割に変わりはない。お茶係とか盛り上げ係とかの役があって良い。
◆一人で登る
@一人でロープを使わないで登ればそれだけ早く登れるので、登攀時間が短い方がリスクが小さい場合に有効である。
@一人でロープを使って登る方法の例を以下に記す。
…ザックにロープ送り入れる(ロープがスルスルと引き出せる)。
…ザックから出ているロープの末端Aをビレーポイントに固定する。
…そのロープに、スリングによるブルージック結びを連結し、そのスリングをハーネスと連結する。
…岩場途中の中間支点(ランニングビレーがセット出来るハーケン等)とビレーポイントの間の長さだけロープをザックから引き出す。
…ブルージック結びをザックからロープが出てる場所あたりまでスライドさせる。・・・①
…登攀を開始する。
…中間支点まで登ってロープをクリップする。
*普通のクリップだと次の中間支点まで用にザックから引き出したロープが下に流れてしまうので、ロープをただカラビナに通すのでなくて、ハーフマスト結びをほどこしておく方法がある。同じく、洗濯鋏でロープをカラビナに仮止めする方法がある。
…安定した所に立つ。
…今の中間支点と次の中間支点との間の長さだけロープをザックから引き出す。・・・②
…①~②までの作業をビレーポイントに到着するまでくりかえす。
…ビレーポイントに到着したらロープをフィックスする。
…フィックスロープを使って懸垂下降し、中間支点を回収、ロープ末端Aの固定を解除する。
…フィックスされたロープにブルージック結びを施してそれを上にスライドさせながら登る。
…ビレーポイントに到着して登攀終了。
…二ピッチ目以降は以上の作業を繰り返す。
*ブルージック結びと同じはたらきをし、
ブルージック結びより作業効率が良い「ソリスト」というビレー器具があったが現在は手に入りにくいようである。
本番ルートへの条件 青山一丁目山岳会
2008.10/2 改訂2009.9/11
谷川岳の岩場、北岳バットレスなどいわゆる本番ルートに向かう個人山行を青山一丁目山岳会が許可する条件は以下のとおりです。
①表丹沢の沢8本程度、西丹沢の沢8本程度の沢登りのリーダー経験があること。
リーダー経験とは全体にリーダーシップを取っていることに加え、
ロープを出す部分は概ね全てリードしていることを言います。 少なくとも日本の山だったら、連れて行かれるなら行かれないルートはないと言えます。
どこのルートを登ったと言うだけの登山経験は当てにはなりません。
②当該山行前一年以内に外岩5.10a(テンエー)ルート(男女共通)をレッドポイントしていること。
アルパインのRCCグレード(Ⅲ級~Ⅵ級)とフリーのデシマルグレード(5.7~5.10a~5.13~)を混同しているのではありません。 アルパインルートでもバランス感覚が必要で、フリーの数字で表すと分かりやすいと言うことです。山は老若男女の区別をしないので、
筋力が少ないタイプの方はより多くの努力と工夫が必要になります。実は体のキレと言うことであれば、外岩5.7が登れる程度の体のキレがあれば充分に行けるアルパインルート(バットレス四尾根,一ノ倉南稜,前穂北尾根
etc.)はたくさんあり言えます。でも、敷居は低く出来ません、ホールドや登り方を完全に覚えて5.7を登り「条件をクリアしました」申告するタイプの方に許可を出さざるを得なくなることを防がなければならないです(5.10aをホールドや登り方を覚えて登れる→5.7はたぶん初見で登れる)。
③北岳バットレス・第四尾根→同・中央稜→同・ピラミッドフェース→同・○○○というような、
次から次へのグレードアップを狙うような取り組み方はしないこと。
グレードでなくてルートを登って下さい。グレードアップを求め続ける方は、他の会に転籍して下さい。
当会は中級レベルまでの登山を行う所だからです。
④当該山行前一ヶ月以内に三ッ峠の岩場でトレーニング(概ねリードで登る)していること。
⑤連れて行く、連れて行かれるの関係になっていないこと。
⑥一ヶ月前までには登山の内容概略を会に連絡していること。
⑦谷川岳の場合は谷川岳登山指導センター所長(〒379-1728 群馬県利根郡水上町大字湯檜曽 ℡ 0278-72-3688)に届を出して受理されていること。
⑧冬季の北アルプスのバリエーションルートは基本的に受理しません。
降雪量が多く10日ぐらい閉じ込められても不思議ではない所だからです。
参考:富山県庁生活環境文化部自然保護課(〒930-8501 富山市新総曲輪1-7 ℡ 076-444-3398)
⑨参加メンバー全員の家族が「その山行には遭難事故の可能性があり、
自己責任の元に参加メンバーになっている。」と承知していること。
たとえば、無雪期の剣岳本峰南壁(Ⅲ級ルート)に届けが出た場合は、堅くて安定したコースが多い剣岳の岩場ですが許可になりません。
①踏み跡がない、②支点が朽ちている、③浮き石が多い、という状況になっているからです。
*多くの人が行かないルートは危ないです。
たとえば、無雪期の穂高畳岩(Ⅱ級ルート)のに届けが出た場合は、そこはやさしい階段のように歩いて登れる岩場ですが許可になりません。
剣岳の本峰南壁の理由に加え、支点の間隔が遠いことが上げられます。
*本番ルートはやさしくても危ないです。
たとえば、無雪期の谷川岳一の倉沢南稜のような超人気ルートに5.10aルートをレッドポイントしたことがないメンバーを含んで届けが出た場合は、
多くの人が行くルートであり、Ⅳ級+程度の快適に登れる岩場ですが、基本的には、許可になりません。
①ルートを間違えた、②天候が悪化した、③行く手を超遅いパーティに阻まれその横をすり抜ける・・・などの対応に不安があります
(5.10aが登れる程度の体のキレがないから)。
*落石の少ない人気ルートに、連れて行ってもらうのであれば、行けてしまうので、初心に近い方ほど許可条件は緩やかのものとなります。
しかし、実力差がはっきり上の人に連れて行ってもらうような山行に何度も何度も出かけて行くことは青山一丁目山岳会の方針ではありません
(少ない回数ならば、それはある程度必要なことなので、OKです)。
初心の人に手をさしのべよう 松浦寿治 2008.8/4
「終身の計は人を樹うるに如くはなし。」とは老子の一つの格言の抜粋だ。その格言の全文を現代語にすると、
「一年の計を立てるなら、穀物を植えて育てるのが良い。
十年の計を立てるなら、樹木を植えて育てるのが良い。
生涯の計を立てるなら、人を育てるのが良い。」
となる。
山登りの世界に置き換えれば、
「一年山登りをするなら、岩登りをするのが良い。
二年山登りをするなら、沢登りをするのが良い
三年山登りをするなら、地図読み山行をするのが良い。
十年山登りするなら、山の人を育てるのが良い。」
という感じになる。
登山教室Timtamでは入会から二年程度で、地図読み山行・沢登り・岩登り・雪山登山
などジャンルは様々だけれどその指向に対応した個人山行に行ける登山者になるだろう。
個人山行に行けるようになった頃は技術や体力が右肩上がりに向上していて、
健康になり、生き生きしてきて、とても楽しい。でも、その向上はいずれ横這いとなり、
やや低下して安定する。その頃、仕事、子育て、介護、などの理由から、一人二人と山から遠ざかる仲間が出始める。
三年を越えて生き生きと楽しい山登りを続けたいなら。人を育てることを忘れてはならない。自分がそうしてもらったように、
山登りを志す初心の者に手をさしのべて共に学ぶように心がけてほしい。
その(山登りを志す初心の者に手をさしのべる)最も簡単な方法は、基本ステップの講習山行に定期的(二ヶ月に一度くらいかな)
に参加することだ。Timtamの研究生・同人・バックアップ会員・スタッフ会員・講師の制度はそのために考えられたシステムだと知ってほしい。
「半ば自分のために、半ば初心の人のために」と考えて山に行けば、山の世界が少しずつ、そして素敵に、広がって行くはずだ。