のタネに留めるロープワーク

*話のタネに留めるロープワークは「仲間と登る」「初心者を支援」「傷病者等を救助する」のロープワークを用いて同様のことが行えます。

メール Timtam ロープワーク目次

 
ロープの結び目通過
<注>人を背負っての懸垂下降の時には結び目通過は行うべきではない(失敗する可能性が高い)。

◆懸垂者によるエイト環結び目通過
①二本のロープを末端を揃えて、普通のノット(フェーラー結び)を施して束ね結ぶ(結び目は末端から1mぐらいの所に作る)、結び目が障害物を乗り越える能力は最大になる。

②細めのダブルロープを使用した結び目ならば、エイト環(輪の大きいクラシックタイプのエイト環)を通過させることが出来る。

③通過しにくい場合は1メートルくらあるロープの末端(2本)を結び目より先行してエイト環の輪に通し、結び目通過のタイミングの合わせてその末端を引くと良い。

④太いロープの場合はエイト環にかかるロープのテンションをマリーナヒッチに逃して結び目を通過させ、通過後にマリーナヒッチを解除してテンションをエイト環に戻す方法で対応する。


2本束ねて普通のノットで結ぶ(末端は1m程度)
いわゆるリング荷重になるが結び目は障害物を
越えて進む。


一つ結び目が通過してから次の結び目が来るように二つの目結び目は離しておく(写っていないが写真の下に二つ目の結び目がある。

 
◆懸垂者によるハーフマスト結び目通過
使用ロープ:ベアール8.1ミリ・アイスライン新品同様、
*8.1ミリの細いロープではうまく行きますが、太いロープ、古いすべりの悪いロープの場合は写真その4の所の操作が大変で、トンと落ちる距離を相当に長くすることになるでしょう。

*ハーフマスト結びで長距離の懸垂下降をするとロープがクルクルとたくさんキンクしてしまい
がちです。HMSカラビナの所でロープが回転しないように握り押さえながら進んで下さい。


その1


その2


その3、結び目がハーフマスト結びを広げる。


その4、広がった穴にロープ末端を入れて引く結び目が通過したとたんにトンと落ちる(この写真の場合で20cmくらい落ちる)のでそれに対応すること。

@懸垂者によるATC結び目通過

補助ロープ使用の一般型…Timtamでは下の改良型を推奨しています。

自己脱出使用の改良型

以下は一般型のATC結び目通過です
①結び目が近づいたら懸垂下降バックアップシステムを使って停止する(仮固定で停止する場合もある)。

②懸垂者の目の高さぐらいの位置に補助ロープを挟んだフリクションヒッチ(マッシャーが効けばそれを使う、NGならバッチマン)をセットする。


③Aロープはテンションを移すロープである。Aロープにハーフマスト懸垂をセットし、セットした位置で仮固定する。Bロープはフリクションヒッチを下に引き下ろすロープである。


④メインロープのバックアップシステムを緩めて懸垂下降してAロープにテンションを移す。テンションが移ったらメインロープからATCを外して、結び目の下に再度ATCをセットする(バックアップシステムも作り直す)。


⑤メインロープの結び目の下にセットしたATCに施したバックアップシステムが効いて停止するまで、Aロープを使って懸垂下降する。


⑥懸垂下降が停止したら、Aロープに施したハーフマストを解除する。さらにBロープを引いて、最初にセットした補助ロープを挟んだフリクションヒッチをメインロープの結び目の所まで引き下ろして回収する。

⑦エイト環を使えば数秒で結び目通過が出来るのに、ATCだと数分の時間がかかる。雷雨等で早急に下降しなければならないこともあるので、大きなルートに行く場合はエイト環はあった方が良い。


◆ロワーダウン&補助ロープを使って結び目を通過させる。
下記は上からロワーダウンで吊り降ろす場合の結び目通過なので、懸垂者の動きが上のビレーヤーから見えている場合のみ使用のこと(4行下の<注>参照)。

救助者などを上からロープに吊って降ろして行く時に用いる。ロープを繋ぐことで、同じ支点を使って、ロープ2本分の長さを吊り降ろすことが出来る。エイト環などの制動器(以下:エイト環)でロープに制動をかけながら降ろすのだが、2本のロープの結び目がエイト環を通過出来なくなるので、次の①~⑩の手順で結び目を通過させる。

<注>上にいる人が懸垂者の動きが見えなくなる場合、10メートル程度降ろしたあたりから、懸垂者に引かれているのかロープの重みで引かれているのかが区別がつかなくなってしまう。 なので、上からの吊り降ろしより、普通の懸垂下降を最優先させなければならない。普通の懸垂下降で「結び目通過」が必要になった場合は、 懸垂者によるエイト環結び目通過マリーナヒッチによる方法で対応する。


①一本目のロープAと二本目のロープBをダブルフィッシャーマン結びなどで連結しておく(連結は頑丈に行うこと)。

②一本目のロープAでエイト環αを使って救助者の吊り降ろしを行って行き、ロープAとロープBの結び目が近付いたら、ロープAをエイト環αに仮固定する。

③テンションのかかったロープAと補助ロープCをフリクションヒッチで連結する(スリングでロープAにフリクションヒッチを施し、そのスリングと補助ロープCを連結)。 *フリクションヒッチ→ブルージック,バッチマン,クレムハイスト,マッシャー,など

④補助ロープCをもう一つのエイト環βに仮固定する(補助ロープCに大きな弛みがあってはならない)。

⑤エイト環αの仮固定をほどき、エイト環βに補助ロープCからのテンションがかかるまで、ロープAを徐々に繰り出す。

⑥エイト環βにテンションが移ったら、エイト環αを結び目を通過した位置にセットしなおす(結び目を通過させる)。

⑦ロープBをエイト環αに仮固定する。

⑧エイト環βの仮固定をほどき、エイト環αにロープBからのテンションがかかるまで、補助ロープCを徐々に繰り出す。

⑨エイト環αにテンションが移ったら、エイト環βと補助ロープCを解除(取り去る)する。

⑩エイト環αとロープBを使って救助者などの吊り降ろしを継続する。

◆樹木をビレー器具にして吊り降ろす場合の結び目通過方法
下記は上からロワーダウンで吊り降ろす場合の結び目通過なので、懸垂者の動きが上のビレーヤーから見えている場合のみ使用のこと(上の項の<注>参照)。

①吊り下げを行う場所に太い樹木が植えていればこの方法が便利である。
②一本目のロープAと二本目のロープBの末端を二本束ねて、普通のノット(フューラー結び)を2個重ねて作り、連結する。普通のノットを引きはがす向きの加重(リング加重)が加わるので、安全のために、結び目からそれぞれのロープの末端は1メートル程度出すこと。
③エイト環などの制動器を使わずに太い樹木の幹にロープAを掛けて、樹木とロープAの摩擦を利用して制動をかけながら救助者などを吊り降ろす(腰がらみのビレーに似ている、腰→樹木)。
④ロープの結び目があっても気にせず、ロープAからロープBに移行する。フューラーノットの結び目は樹木で引っかかることなく、その表皮の上を滑って通過する。懸垂下降の項もごらん下さい。

 
ロープ割懸垂(救助用のもう一本のロープが無い場合)
服や髪の毛が挟まったり、バックアップのスリングがロックするなどして、懸垂下降(空中懸垂)の途中で動けなくなった人を助けに行くシステムである(救助される人がぶら下がるロープのテンションを利用)。救助される人は、スリングを持っていないか、スリングを持っていてもフリクションヒッチを使えない程度の初心者である(ガイドに対するクライアント)。

ロープ割り懸垂でなくて自己脱出のシステムを作り、ロープをつたって降りていく方が、時間はかかるかも知れないが、ロープのテンションからの自由度が高いし、緩斜面にも対応出来る。実際の場面では、知名度・汎用度・単純度も高い自己脱出を使うべきだろうと考える。なので、ロープ割懸垂はロープワークの総合力を試すための「ゲレンデで行う課題」としたい。


安全環付カラビナとエイト環を使用


右ロープにひっかけて・・・


左ロープを巻きこんで行く、


左ロープを巻いたら、エイト環を下に折る、


実際にテンションのかかったロープにロープ割懸垂をセットした所。


制動力を増すために、と下降によってロープがキンクするのを防ぐために、カラビナを使うロープ割懸垂を、エイト環ロープ割懸垂の下にセット(カラビナを使う方がブレーキ力が少ないので下にする)。上の写真で、’エイト環の大きい輪’と’HMSカラビナ’の2か所から固定分散を施してハーネスのビレーループと結び懸垂下降を開始する。


救助する人の上に行き、救助する人の懸垂下降のセットを解除出来るためのシステム(フリクショヒッチ等)を作る。


◇救助される人にマリーナヒッチでセルフビレーをセット(救助者がフリーになれる支点と連結)する。

◇二分の一吊り上げシステムをセットし自分の体重で救助される人を吊り上げ、救助される人の懸垂下降システムを解除する。


◇救助される人にフリーになった懸垂用ロープを使い再度懸垂下降をセットしなおしてもらう。マリーナヒッチを解除してあげて懸垂下降を再開してもらう。

◇救助される人によるテンションがロープに戻ったらそれを利用して懸垂下降する。テンションが緩む可能性があるので、救助される人の近くから離れない。

 
チロリアンブリッジのセット
@川の対岸にロープの一方を固定、川を越えてロープを張る。ロープを張る支点の3mほど手前の位置にブルージック結びでスリングをかけそのスリングにかけたカラビナを動滑車に、ロープを張る支点にかけたカラビナを定滑車にしてロープをピンと張る(トラックの荷のひもをかける方法と原理は同じ)。

@ロープにハーネスのカラビナをかけ、ロープを渡って対岸に渡る。

@張られたロープの高い方から低い方に渡る方が簡単。

@チロリアンブリッジは荷の運搬(流星法と組み合わせる)にはスピードがあり輸送力もあって威力を発揮するので、時間があれば、ザックなどを運搬してみる。




90度回転すれば荷揚げシステムの図になる。

ハーケンの打ち込み方向に注意(図では抜ける方向)図のようにハーケン1本による支点でシステムを作ってはなりません。

ハーケンの場合は効いていても3本を連結して1つの支点にして下さい。全力で、腕より太い、枯れていない、樹木を、探して、支点にして下さい。・・・人工の支点より立木の方が望ましい。


 
ラビットノット


@鎖場や固定ロープとラビットの輪の2か所にかけたカラビナで連結し、支点(アンカー)の所で一つずつカラビナをかけかえる。

@2つの支点とメインロープをスリングを使わないで半流動分散で結ぶことが出来る。

ラビットの耳を左右それぞれ必要な長さに調節して出来上がり。左上に出たロープの末端に必ず止め結びを施すこと(ブーリン結びの止め結びに同じ )。

 
がルーダ

30Kg程度以下の加重でないとロープは動きません。軽い荷物の荷揚げには便利です。 ガルーダよりもビエンテの方が操作性が良いようです。

ビエンテ

ガルーダとビエンテは共にルベルソーキューブやATCガイド等のセカンドの墜落を自動的に止めるタイプの確保器の代用として使えますが、信頼性に欠けます。 カラビナとフリクションヒッチを使って同じシステムが作れます。解除とロープの繰り出しをスムーズに行うことは難しいので、沢登りには向きません(セカンドが墜落して水流に入った場合に危険)。


 
バタフライノット
@エイトノットで代用出来ます。

@輪の大きさ(髭の長さ)をコントロールすることが簡単にできます。

@リング荷重(結びを開く方向の荷重)用なので、リング荷重がかかる場合に安心感があります。

@強いテンションがかかっても解きやすいです(エイトノットより断然ほどきやすい)。

@一本のロープで三人が登る場合中間者のハーネスの連結用に昔は使われていました(現在はエイトノットで連結)。

@ガイドがショートロープで二人以上の人を引っ張る場合にメインロープからの髭出し部分を作って中間者のハーネスと 連結するのに使います(エイトノットでも同じことが出来ます)。

@悪場のトラバースなどでロープをフィックスする場合に中間支点との連結に使用します(エイトノットでも同じことが出 来ます、髭の長さの調節がいらないならクラブヒッチの方が便利です)。


①まずは手の平の上で出来るように練習しましょう。じょうずになったら手以外の物(棒切れなど)を使った方が痛くないです。



②ロープを巻く時のクロスがポイント。



③一回巻いて



④二回巻いて、真ん中の輪を引き出す。



⑤輪をどんどん引き出す。



⑥引き出す輪の大きさによって輪(髭)の大きさを変えられます。



⑦引き出したら反対側に反す。



⑧手に巻いた二巻きに下から挿入する。



⑨手を引き抜いて



⑩上のロープを上に下のロープを下にそれぞれ引いて、バタフライノットが完成する。

 
インラインエイトノット


完成形

@エイトノット及び一つ上の項のバタフライ結びで代用出来ます。

@バタフライ結びは双方向ですが、インラインエイトは片方向です。

@バタフライ結びより覚えやすいです。

@メインロープで作ったセルフビレーの中間にエイト環等の確保器をセットする支点に使います。

*遠くの立木を支点にしてそこにメインロープのセルフビレーを長めに作ります。セルフビレーに頼って滝の落ち口まで行き、滝の落ち口付近で停止します(セルフビレーが効いている状態)。次に、セカンドを引き上げるビレーシステムをセルフビレーに使っているメインロープ上に作ります。インラインエイトの輪が確保器をセットする支点となります。沢登りノートのエイト環グリップビレーの項を見て下さい。

 
流動分散方式

・フリークライミングシングルピッチの終了点(=トップロープの支点)を作る場合は積極的に流動分散を使って下さい。クライマーの登る方向に合わせて支点が流動して便利ですし、支点を消耗から守れるからです。また、フリークライミングの終了点(=トップロープの支点)の場合は支点を構成するボルトが一つ飛んで支点が数十センチ下がってもビレーヤーが下の広場にいるので、ビレーシステムに大きな損害がないし、クライマーの墜落も想定の範囲内だからです。

・それ以外の場合(マルチピッチ2ピッチ目のテラスに立ってビレーをする場合.etc)は、なるべく、流動分散を作ってから固定分散に移行して下さい {セルフビレーの位置が変動して不安定だからです。また、支点を作っているボルトが抜けた場合にはビレー器具が1メートル程度飛んでしまうからです
(流動分散にに吊るすビレー器はATCガイド等のオートロック型を使用のこと)}。

・流動分散は複数の支点に均等に加重されるので支点にかかる負担を減らすことが出来ます。 複数の支点にカラビナをかけ、さらにスリングをかけスリングの上部を1回ねじって下部とともにゲートの向きを変えた2個のカラビ ナ(安全環つきカラビナであってももう1つノーマルカラビナを加えて2個にする)をかけて固定します。角度が大きく 開かないようにセットします(60度以上に開くと支点が1つのときより大きな加重がかかる)。

・流動分散はセットを間違えると一方の支点が壊れた場合に全てがこわれて重大な事故につながります。

・流動分散が正しくセットされていても、支点が壊れた場合に流動部分の長さだけ墜落するので、ビレーシステムが大きく動いたり壊れたりし やすいです。 ←流動分散が壊れた時の支点にかかる衝撃は流動分散を使わずに複数の支点から個々にスリングで結ぶ場合よりずっと大きくなります (ハンマー効果or衝撃荷重)。

・流動分散が壊れなくても、流動分散で作った支点は流動するので、それにビレー器を吊るせばビレー器も流動します。 同じく、セルフビレーをセットすれば、セルフビレーの位置も流動します。

・流動分散が壊れた時の支点にかかる衝撃が、長く伸びたメインロープを介しての衝撃であれば、それは弾力に富んだ荷重ですから、 フリークライミングシングルピッチの終了点(=トップロープの支点)として使用することが出来ます。しかし、 ジャミングをするクラックルートや落ちると当たるようなテラスを越えるルートでは、流動分散が壊れた時にロープの伸び以上の距離を墜落するので、固定分散の方が良いです。

・流動分散でビレーポイントを作る場合は以下の方法で固定分散に移行することが基本であるとします。

①流動支点付近を別のスリングで編みぐるぐる巻いて縛る(相当に強く縛らないと意味がない)。

②150cmとか240cmの長いスリングを用いて流動分散を施し、位置を決めたら流動支点付近でエイトノットやクローブヒッチで結んで固定分散に移行する。
←150cmとか240cmのダイニーマ細スリング(軽量で持ち運びが容易)が手に入るようになった、シンプルで素早くセット出来るので、 流動分散でビレーポイントを作ることが普及しつつある。
 

流動分散の作り始め



真ん中を捩じることが最重要



安全環付カラビナをつけて出来上がり
 


支点が3ヶの場合も同じ



真ん中を捩じる



安全環付カラビナをかけて出来上がり



カラビナの上の部分の流動するスリングを別のスリングで織物のように編んで、ぐるぐる巻いて縛り、支点の破壊に対応する(「編み込み」と呼ぶようである)。

*相当に強く縛らないと意味がない。



流動分散を作り、方向を決めて縛ると固定分散に移行します。180cmや240cmスリングなら3ヶ所支点でも縛れます。

写真はエイトノットですがクローブヒッチで縛る方法があります(固定後でも荷重方向が調節出来ます)。下の写真のように片側を一回転してカラビナですくいハーフマストヒッチを作って流動をおさえる方法もあります。


編み込みかエイトノットかクローブヒッチかハーフマストかはV字の角度が50°以下になるかどうかとシステム全体のが適当な長さになるかどうかを考えて選択します。




改良型流動分散方式 その1
フリークライミングシングルピッチルートの終了点(10mm径のハンガーボルト2ヶを横に並べたタイプ、鎖でつながったラッペリングステーション等)の終了点にトップロープを張る場合に用います。流動分散によって終了点を守ることが出来、しかも一方の支点が壊れても流動する距離が小さくてすみます。支点が2ヶなので、別の支点からバックアップを施して安全度を高めて下さい。

注:流動分散はトップロープの支点(シングルピッチルートの終了点)のみに使用して下さい。 もし、マルチピッチのビレーポイントとして使う場合はセカンドのビレーはオートロック型のビレー器(ATCガイド等)を使って下さい(ハーフマストビレー等は不可)。 支点1つ壊れたてもビレーシステムが機能するからです。


クライマーは120cmナイロンスリングの両端に普通結びを施してこれを肩にかけるなどして携行して登ります。流動する支点なので、融点の低いダイニーマスリングよりナイロンスリングの方が良いです(摩擦熱によるスリングの痛みが少ないからです)。



左右2ヶのボルトにカラビナをかけて、持ってきたスリングを吊します。スリングの中央部分に流動分散を施します。カラビナを2ヶ反対向きにしでトップロープの支点(終了点)として下さい(安全環付カラビナを使っていても必ず2ヶ)。

改良型流動分散方式 その2
(クアッドアンカー)
確保支点(ビレーポイント)を作る方法に、クアッドアンカーがあります。
※一方の支点が壊れても流動する距離が小さくてすむ改良型流動分散方式(の一種)です。
※写真はダイニーマのソウスリングを使用していますが、ダイニーマは融点が低いのでケブラーロープをお勧めします。
自然の岩場では各支点の強度は刻々と変化しています。必ずバックアップを追加して下さい。 

<参考>
写真は5.5mmケブラーロープです。高耐熱(融点は測れない)、高強度です。ちなみに、ナイロンの融点は250度程度でダイニーマのそれは150度程度です。


①5.5mmのケブラーロープ約5mをダブルフィッシャーマンズベンドで輪にします。

※写真は、ケブラーロープを使わず、ソウスリング(240cm)を使用しています。


②輪を二重(二つ折り)にし、オーバーハンドノットで結びを作ります。


③もう一つ、オーバーハンドノットで結びを作ります。

*結びと結びの間にロープが4つ(クアッド)できます。

④トップロープの支点にする場合は、この4本の内の3本にカラビナを掛けます。

*写真ではバックアップは1ヶですが、2ヶ3ヶと増やし頑丈に作って下さい。

⑤マルチピッチの場合は、結びと結びの間のロープが2本ずつ長さが変わるように結びを作ります。

* 片方でセルフビレイを、もう片方にビレイ器をセットしてセカンドをビレイします。セカンドが登ってきた際のセルフビレイやギアの受け渡しに便利です。


 
セルフアンカーリングシステムスリング
アンカーチェーンやデイジーチェーン(以下AC)を使う場合
*衝撃荷重が緩和出来るので、出来るだけメインロープを使ってセルフビレーをセットしましょう。
*支点とハーネスをACで結ぶだけのセルフビレーのセットは、それに必然性がある場合を除いて、勧められません。

◆例えば、2ピッチ目を登り出して、2m登った所で、中間支点をセットする前にトップが墜落したとします(もちろんトップは出来るだけ早く1つ目の中間支点をセットしなければなりませんが、ついついそれが遅れてしまうのです)。
◆セカンドは予定外の方向(上でなく下)に引きずり落とされる厳しい状況になりながらビレーの手を握り締めるこでしょう。ビレーがうまく行けば、トップはビレーヤーの2mの下まで計4m墜落した所で止まることになります。
…セルフビレーをACでセットしていた場合は2mのメインロープが衝撃を吸収します。
…セルフビレーをメインロープ(例:長さ1m)でセットしていれば、2mにセルフビレーの長さ1mを加えて3mのメインロープが衝撃を吸収することになります。メインロープでセルフビレーをセットした方が衝撃吸収能力が大幅に向上するのです(この例では5割増になります)。

※ACはガイドがお客様に必携用具として提示することが多いです。ガイドに連れられたお客様の場合はメインロープでクローブヒッチを 作ってセルフビレーをセットするのは時間がかかったりクローブヒッチが結べなかったりです。それでガイドはお客様にACを持っていただくことをお願いするのです(お客様はガイドの指定する強力な支点にACをかけることで適当な長さのセルフビレーが確実に素早くセット出来るからです)。もちろんガイドもメインロープでなくてACでセルフビレーをセットします(お客様が理解しやすいので)。
※以下はガイドとお客様の関係(or連れて行く連れて行かれる関係)にないメンバー構成で行われるマルチピッチの岩登りを対象に書かれています。


1、セルフビレーをセットする
●ACはラッペリングボルトやケミカルアンカーが10~30cmの間隔で複数個あるビレーポイント (そこにセットした流動分散とハーネスをACで連結する)やそれらの支点が鎖で結ばれている強力なラッペリングステーション (鎖の輪とハーネスをACで連結する)のあるルートで用いるものであると考えます。
簡易でないセルフビレーはなるべく多くの支点を連結し頑丈すぎるほどにセットするべきです。 リーダーがビレーポイントに到着して、ACによる簡易のセルフビレーを行ったとしても、それは簡易でしかないと承知していて下さい。 支点を連結して頑丈にすることを心がけて下さい。
ACで簡易のセルフビレーをセットした直後に「ビレー解除」の合図を送る「危うさ」 を時々みかけますのでご注意下さい。

(注)マルチピッチ 2ピッチ目以後のビレーポイント(狭いテラス)では支点が流動することでテラスに立てなくなる可能性が大です。 沢登りではオートロック型のビレー器を使うとセカンドが溺れる可能性があります。なので流動分散は基本的には使わない方が無難です。
*流動分散は、その様々なメリット「素早くセット出来る等」と、様々なデメリット「150~240cmスリングが複数本必要等」 がわかってから使って下さい。
*流動分散を使う場合は片方の支点が壊れた時に手を離す可能性があるので支点ビレーのビレー器はオートロック型ビレー器(ATCガイド等)でなければなりません。
*ハーフマストやエイト環で支点ビレーを行う場合は流動分散でなく固定分散を使用して下さい。オートブロッ型のビレー器は連結されていればどのボルトに吊るしても良いのですが、 ハーフマストカラビナとエイト環は頑丈に作られて流動しない支点に吊るさなければなりません。

ボルト一つ(目に余るのは手打ちのリングボルト一つ )にACを連結してそれで セルフビレーがセット出来たと思いこみ、ACに体重をあずける「危うさ」を時々見かけますのでご注意下さい。

●ハーネスのビレーループが通る部分は耐熱補強が施されていますが、ビレーループ自体は補強されていないです。 ビレーループにACをタイオフで連結している例を多く見かけますのでご注意下さい(ACはハーネスのロープを結ぶ部分に連結)。


2、ACを使った懸垂下降
●ハーネスに連結したACのハーネスから2個目の輪に懸垂下降器をセットします。
●セットした輪より3~4輪目先のACの先端をしっかりした支点とカラビナで連結してセルフビレーとします。
●懸垂用ロープに下降器をセット、下降器から下に出た懸垂用ロープにスリングを巻きつけるオートブロックヒッチを施し それをハーネスのビレーループにカラビナで連結します。これが、懸垂下降で不測の事態が起きた場合のバックアップシステムとなります。 オートブロックヒッチでなくてシャントという専用の器具を用いても良いです(シャントの重さはそれなりにあります。 皆がシャントを持っているわけではありません)
●普通の懸垂下降の要領で下降します。その際、離してはいけない方の手(懸垂の速度を調節する手)が右手ならば左手でオ ートブロックヒッチを柔らかく包むように持って、オートブロックヒッチっがロックしないようにしながら下降します。不測の事 が起こり両手がフリーになってもオートブロックヒッチがロックして懸垂下降が停止します。

3、ACとセカンドオートロックビレー器を使った懸垂下降登り返し
●上の2の方法でACと懸垂下降器具をセットした状態でテラスまで降りて、そこから登り返す場合です。登り返す斜面が比較的緩い傾斜の時に、素早く登り返す時に使います。
●懸垂下降器がセカンドオートロック型ビレー器(以下:ビレー器)であれば、ACにビレー器がついたままの状態でビレー器の横についたロッキングホールとハーネスの ビレーループを安全環付カラビナで連結します。ビレー器の下に出たロープ2本を引き上げながら、懸垂して来た斜面を登り返します。 手を離せばビレー器がロックして墜落しません。緩斜面の登り返しに適しています(垂直前後の斜面であればこの方法より普通の自己脱出の方が良いです)。
●懸垂下降器がエイト環やATCであればこの方法は使えません。自己脱出等のロープを登る方法で登り返します。

4、ACで固定分散の支点を作る
●2つの強力なボルトが打たれているが、それが鎖などで繋がれていないビレーポイントの場合、ACに両末端とその二つのボルトカラビナで連結し、 中央の適当な位置に安全環付カラビナをセットしてそれを支点とする。
●固定分散による支点が早く出来ます。トップが交換しない場合はACをビレポイントに置いてトップはスタートすることになります。 セカンドからACが借りられない場合は次のビレーポイントでは、この方法を使うことが出来ません。


 
ポロネ(ロープで作るフリクションヒッチ)
太い径のロープに細い径のロープを巻き付けるのであれば、フリクションチとして使えるのですが、ロープ(Aロープとします) の末端で同じAロープにポロネをかけても、安定した動作が得られません特に最近の硬めのロープではフリクションが効きません。 ポロネに似ていて摩擦力がさらに強い「ブレイクスヒッチ(興味がある方は調べて下さい)」であってもフリクションが効きません。 その硬めのロープで径が8mm以下であっても、10mm幅のスリンングで作るフリクションヒッチならほぼ安定した動作が得られます。ロープを持つなら、そのロープに対して安定してフリクションヒッチが動作するスリング(or細い径の捨て縄)を必ず携行することを推奨します。


その1、たくさん巻きます。



その2、巻きはじめのロープをからげて、



その3、上から2番目の輪を広げて、



その4、上から二番目の輪に通します。



その5、すっぽ抜けないように末端を結び、



その6、きっちり絞めて出来上がり。

スリングがない時に、メインロープ(Aロープとします)でフリクションヒッチを作ることが出来たら良いのですが、Aロープ末端でAロープにポロネをセットしてもフリクションヒッチうまく動作する可能性は少ないです。ロープを持ったらそのロープにフリクションヒッチが正常に動作するスリングを必ず持っているようにしたいものです(スリングによるフリクションヒッチは覚えやすいです。フリクションヒッチ用スリングも多種市販されています)。

 
スリングで作るアルパインヌンチャク


その1、スリングでヌンチャク60cmを作ります。



その2、赤のカラビナを銀のカラビナの中をくぐらせます。



その3、引き出して、下の2つのスリングの末端に2つともクリップします。



その4、アルパインヌンチャク20cmが出来ます。



その5、カラビナをはずして下の3つの末端の輪のどれにかけても・・・



その6、ヌンチャク60cmに戻ります。普通のヌンチャクと違いスリングがカラビナのゲートにかかってそれを開いてしまう可能性をわかって使って下さい(長い場合も短い場合も起こり得る)。

以上です。 ロープの結び方・ロープワーク2016.12/2更新