静的ストレッチと準備運動 松浦寿治 2011年10月17日
腕立て、腹筋、背筋、そして懸垂・・・筋トレは苦しくてつらいです。
なので私は「山に数多く行くこと」と「街は遠くを見て大股で歩く(山は小股で歩く)こと」で、筋トレに変えちゃおうと考えています。そして、筋トレでなくて、ストレッチをボチボチ続けています。ストレッチは苦しくないように行うから、筋トレ嫌いの私に向いています。もちろん、ストレッチを省略しちゃう日も多々あります。
ストレッチ・・・柔軟なことは山登りには有効です。
例えば1、高いスタンスに右足を乗せてそこに乗り込んで行く場合。体が柔らかくて足が高くまで上がれば、静荷重静移動の登り方あるいは歩き方(レストステップ)が安定します。足が上がらなければ手で引いたり、下になる左足を後ろ方向に蹴ったりします。結果として、右足を真下に踏みつけることが出来ないので、滑ったり落石を落としたりの歩き方になります。
例えば2、岩登りで、ちょととだけ前傾した壁に、正対して、膝を曲げた状態で、外形したホールドを持つ場合。体が柔らかければ、股関節の開きや背骨のしなりをを利用して体の重心を壁に近く持って行けるので、壁からはがされるモーメント(壁と重心との距離×重力)が小さくなります。壁と重心の距離が12cmから10cmに縮まればモーメントが20パーセントもダウンするのです。
瞑想するような感じで、1種目20秒くらい、ゆっくり痛くない程度に筋肉を伸ばすのが静的なストレッチです。
風呂上がりとか、運動が終わった時のような体が温まっている時に行いましょう。リラックスして行いましょう。筋肉を伸ばして疲労物質が除かれているのをイメージしましょう。座って行える種目は座りましょう。寝て行える種目は寝ましょう。目をつぶるのも良いです。副交感神経が働いていて筋肉も伸びていますので、静的ストレッチ後には筋肉は充分に力が出せなくなり、かえって捻挫などの怪我をしやすくなると知っていましょう。
足の屈伸1234、5678、2234、5678のようにハツラツとして体を動かして行うのが動的なストレッチです。
ラジオ体操は動的なストレッチだと言われているようです。体が温まってきて、交感神経が働き、モチベーションが上がって来ます。筋肉が温まることでその弾力が増します。神経の信号伝達が各筋繊維にバラバラに行われているのを同じタイミングに揃えるようになって全体として筋力が増加します。動的ストレッチをする姿は、2011年現在、まだ日本で見かけるチャンスは少ないです。20年ほど前からほとんどのサッカーチームが練習や試合の前にダンスのような動的ストレッチを取り入れています(世界の強豪ッカーチームの真似から始まっているらしい)。なので、近所の中学校サッカー部で良いので練習開始頃を狙って見学に行ってみましょう。
運動の開始の前に相当に時間をかけて静的ストレッチを行う人がいます。実は私もそうして来ましたが、ちょっと違ったかも知れません。
準備運動に動的ストレッチを行い、整理運動に静的ストレッチを取り入れるのが良いようです。
@大学に入ってすぐにワンダーフォーゲル部に入部しました。
「滑る時は登りも下りも靴底のフリクション(摩擦)を効かすんだ!」
それ以外は先輩からの説明はありませんでした。それで有無を言わさず、1年生は30キログラムぐらい2年生は40キログラムぐらいの重荷を背負って歩かされました。登りは1年生が「ファイト」と言ったら2年生が「ソーレ」と返しながらゆっくり行動します。下りは走り、2年生が「走れ!走れ!」と言って棒切れなんかもって1年生を追いたてます。そんなことをして山道の歩き方を理屈でなくて体で覚えさせられたのです。それから30年を経て、人に山道の歩き方を伝える立場になってしまいました。
30年の山歩きの経験の中で「下り方」を説明する記述や先輩は少なかったです(登り方のそれは多くみつかります)。それで、下りの場合は自分(松浦)の歩き方を観察した内容を説明しています。長い年月に渡って山歩きが原因で足を痛めたことがないので、たぶん間違いはないと思います。
@登り方の説明
「重い荷物を背負っているつもりで歩く」
「ゆっくり息があがらないペースで歩く」
「アイススケートのように片足に乗りながら」
「普通の歩き方(踵から着地してつま先に抜ける)を小股にして歩く(滑りそうな場合は靴底全体で着地するイメージ)」
「左足に体重を乗せて左足一本で立ち、小さな歩幅(踵でなくて靴底全体で着地出来るほどの歩幅)で右足を出し、体重を静かに右足に移動して『よいしょ』という感じで両足で反動をつけて(右足の反動が大きめ)、右足の土踏まずの垂直方向の真上に立上がります。」
などなどいろいろ言いながら説明します。
@下り方の説明
「右足を痛めた時に、右足が前で左足を後ろにして、横に向いて降りますよね!」
「そうすると左大腿の正面の筋肉(大腿直筋)でなくて、左大腿の横(左右二つ)筋肉(大腿外側広筋と内側広筋)をたくさん使う歩き方になります。」
*大腿直筋と大腿外側広筋と大腿内側広筋をあわせて大腿四頭筋といいます。
「そうするとかなり楽に降りられるのです。」
「大腿の側広筋をなるべく多く使い大腿直筋をなるべく少なく使うように降りると楽だと言うことです。」
「山道には石による段差がしょっちゅう出て来ます。それから、中央あたりがくぼんで両側が10~30cmくらい高いのが普通ですよね!」
「左足で段差を作るほどに大きな石に乗ったら、右足を前に出さずにその石の横か斜め後ろあたり足場に出せば、体が斜面に正対したまま大腿側広筋を使って降りられます。」
「左足で道の真ん中に立ったら、右足をまっすぐ前に出さずに右斜め前(道の右端側)の足場に出せば、段差が少なくなってしかも体が斜面に正対したまま側広筋を使って降りていますよね!」
「次に右斜め前(道の右端側)に右足で立ったら、左足を前に出さずに左横(道の真ん中あたり)の足場に出せば、また体が斜面に正対したまま大腿側広筋を使って降りられることになります。」
「その時、出した足の足首の曲がる方向と膝のまがる方向が同じになること(ねじれの位置にならないこと)が大切です。」
「指のつけねの手前の盛り上がった部分からそっと着地して、足首のバネを有効に使うと楽です(つま先から着地する感じ、雪山の踵キックステップを除く)。」
「同じ足場近くで足踏み(右足と左足を踏みかえる)して降りやすい(楽に降りられる)方の足で降りて行きます。」
「上手な人は走って降りてるように見える時がありますよね!」
「走ってなんていなくて、同じリズムで小刻みに足を出しているのです。」
「しかもスピードが出ないようにするためと、よい足場探しのために(それが見つかるまで)足踏みをしていることが多いのです。」
「テニスとか卓球とかで一流の選手が小さく足踏みをするようにしているのを見たことがありませんか?サーブレシーブする時なんかによく見かける足踏み(フットワーク)です。」
*卓球の技術書に「小刻みなフットワーク」という項目で解説されていたのを見たことがあります。→参考5
「足踏みをして、リズムを整え、短い段差でなるべく側広筋を使う足場を探して、降りて行きましょう!」
「側広筋を使って降りられる足場がみつからない場合は、遠慮なく体を横に向けて(斜面に正対しない)しまいましょう。そうすれば、大きな段差でも側広筋を使って降りることが出来ます。」
「山道が長い階段に整備されているとつらく感じませんか?それは、階段では道の中央も両側も段差が一定なので、斜面に正対したままでは、側広筋を使って降りれる足場がなくなってしまうからなのです。」
「側広筋を使って降りる方法を知らないと、大腿直筋を多く使ってしまうのでつらいです。そのつらさを補うためにストックを使う人がいます。長いストックを体の前に出してそれに体重を分散して降りる人を多くみかけて危ないと思っています。もしストックの支持が外れれば前につんのめって倒れます。」
「ストックを使うなら一本ストックで50センチくらいに短いのがよいと提案します。そのストックを下りに使う場合は、体より前にはストックを突かないで、体の横か斜め後ろに突くようにします。そうすれば前につんのめる危険が少なくなります。その使い方はピッケルのそれと同じなのです。ピッケルと同じ持ち方だからT字のストックがいいです。」
「長い2本ストックはスノーシュー歩行とかノルディックウォーキング用だと思って下さい。」
<参考1>まずは街の階段で練習しましょう。
●登り降り共通で、足首の曲がる方向と膝の曲がる方向が同じ向きにすることをこころがけて下さい(爪先の上に膝が来るイメージ)。
●登りは基本的には日常的に行う階段登りと同じです。
●下りは始めの一段目だけを練習に使います。一段目の前で足踏みをして、斜面に対して体を右か左の斜にかまえます。例えば右を前にしたとします。左足首の曲がる方向と左膝の曲がる方向が同じ向きになるようにしながら、左膝を曲げ、右足を体側よりやや後ろに降ろします(右足を前に出さない)。右足の指のつけねの柔らかい所が最初に着地するつもりで降ろして下さい(足首のバネを有効に使う)。右足に体重を移して右足で立ったら、左足を右足を降ろした段と同じ段に降ろします。足踏みして斜面に正対し、その後は普通に何事もなかったかのごとく降りてしまいます。また、新たに階段に出会ったら、斜面に対してかまえる向きを左に替えます(以下、右と左を適宜くりかえして下さい)。一番楽な下り方なので、すぐに身につくはずです。
<参考2>レストステップ(静加重静移動or体重移動)
●重荷を背負って山道を歩くと人(ヒト)は自動的に確かめてから力をかけます。つまり「・・・歩幅せまく足(足1)を出し、滑らないか崩れないか確かめながらその足(足1)にそっと加重し、加重しながら全体重を出した足(足1)の真上に移動して、“よいしょ!”という感じで両足共にちょっとだけ反動をつけてその足(足1)の真上に向かって立ち上がり、それから後ろにあった足(足2)を持ち上げ歩幅せまく前に出し、滑らないか崩れないか確かめながらその足(足2)にそっと加重し、加重しながら全体重を出した足(足2)の真上に移動して、“よいしょ!”という感じで両足共にちょっとだけ反動をつけてその足(足2)の真上に向かって立ち上がり、以下くりかえし・・・。」という歩き方(一歩一歩「確保」しながら歩く)をするのです。この歩き方がレストステップ(静加重静移動or体重移動)です。レストステップは安定して歩けるだけでなく、滑ったり石を落したりすることが少なくて、基本の山の歩き方と言えます。
●レストステップは基本の岩の登り方でもあります。ホールドを手で引くことが押さえられ、足場を真下に踏みつけるので、足が横方向にズレて外れてしまうことを防げます。*緩傾斜の岩場で水平に近い大きな足場の場合です。←<参考1>の①と②は岩登りノートの「確かめてから力をかける…」の項よりの抜粋です。
<参考3>足のどこに荷重するか(軽登山靴を使用している場合)
大きな足場の場合は、土踏まずに立つ感じにします。小さな足場の場合は「足の親指のつけね(インサイドステップ)」の所か「足の小指のつけね(アウトサイドステップ)」の所で足の指で足場を掴むように(斜面と靴のなす角度は60~80度程度です。意識しなければ足親指の付け根側だけ使ってしまうので、始めの内は意識して小指の付け根側も使うようにして下さい。
*重登山靴の場合は爪先立ち(斜面と靴のなす角度は90度)になります。足首が固定され靴底が曲がらないので爪先立ちが可能なのです。
<参考4>重荷を背負うと歩き方がうまくなるという考えに対して。
●ビニロンの家型テントと一斗缶に入った食料をキスリングという特大ザックで持ち歩いた時代がありました。その時代は全体に装備が重く、1泊の縦走登山でも20Kg、雪山登山なら40Kgの荷になりました。
●重荷を背負って山道を歩けば、自動的に小股の山道の歩き方になるのだから、重荷を背負えば歩くのが上手になるという考え方は上記のキスリングの時代には適合していたかも知れません。しかし、重荷を背負えば、腰椎、頸椎、膝などに大きく負担がかかります。筋肉は鍛えられますが、椎間板などの関節のクッション組織は鍛えることが出来ず、次第に劣化し回復することはありません。荷はなるべく軽く、しかも前後左右均等に負荷がかかるように持ったり背負ったりして、その関節のクッション組織の劣化を務めて防止しなければ、長く登山を続けることは出来ないのです。
●必要以上の重荷は背骨や足の間接を痛めるので長く続ける山登りには向きません。晩秋のころによく言われる「冬に向けて30Kg以上の荷を背負う歩荷訓練をしておくべき」という考えは改めたいです。歩荷訓練をするのなら、目的を軽量化研修に変更しようと提案します。
軽量化研修
①各自の登山スタイルで最も重くなる山行に向けた荷を揃える(例:2泊3日の雪山テント縦走)。
②上の①の荷を軽量化する。そして丁寧にパッキングして、一日歩く。。
<参考5>卓球部と柔道部のこと
松浦は14年間、卓球部、そして12年間柔道部の顧問をしていて、卓球個人の部ですが県大会3位の選手1名、8位の選手2名、柔道団体の部で県ベストエイトの選手を育てることが出来ました。いろいろありましたが、概して楽しく充実した部の活動が出来たことが自慢です。
野球,サッカー,バレー,バスケなどに比べると、卓球や柔道はマイナーな種目です。マイナーな種目が楽しくなるためにはたくさんの生徒の入部が必要条件でした。その為には、対外試合で多く勝利しなくてはなりません。卓球部8年目の時、勝利のためには、攻撃よりも守備の練習をたくさん行うのが良いと気付きました(攻撃は教えなくても覚えるからです)。守備の重視は松浦の運営する登山教室のビレーヤーズグレードを初めとする多めの安全管理システムに受け継がれてています。
<参考6>ストック使用について2014.9/9(S藤)
●私のストック使用、経緯。
私は在宅のリハビリテーション専門職で、(杖)歩行や生活動作の援助に携わっています。山では2本ストックを使用していた時期がありました。
膝を手術した後は1本杖を積極的に使っていました。今は、ストックを使わないスタイルを好む感じです。 逆に言えば、
ストック(ポール)を使うスタイルをカッコいいと考える人もいると思います。上手に使用すれば、機能的ですし疲労を軽減する事で安全に寄与するでしょう。
●(若い方は特に)ストックを使用せず、しっかり脚力を付け て歩ける事が重要と思います。
どこも調子の悪くない人はストックは使わない方が良いと思います。その背景は、ストックを持つとどんな場面(斜面)でも使いたくなってしまい、
変な歩き方のクセがついてしまうのではないか、と思うのです。変なクセというのは手(腕)に頼って、そこに体重(荷重)がかかり、
手首や肩を痛めてしまう心配があることです。傾斜の強めな下りではその心配が高まります。また手に荷重されることで、両足の間にあるはずの重心が杖先の方向へ移動し、
結果不安定な状態を作り易いと思います。杖先が滑ったら転倒の心配もあります。(若い方は特に)ストックを使用せず、しっかり脚力を付けて歩ける事が重要と思います。
● 慣れていく順序を考えてみては。
①最近ではファッションや流行で使う方が多いのではないかと思います。広告や他の人たちが使用している影響は大きいでしょう。使用されるのは個人の自由ですので、
上記の考えを無理強いして「使うな」という気持ちはありません。
「使い方を知りたい…」というレベルの人であれば、慣れていく順序があるのでは、と考えます。
②私はストックは姿勢制御のために2本で使用するのが良いと思っています。
③まずは平坦な斜面でクロスカントリースキーのように交互に突いて、使い方に慣れていくのが、手にも負担を掛けず、姿勢を補助するという点で有効と思いま す。
歩くときは、「振り出す足と対側の手」が、自然と前に出ます。振り出した手の延長で自然に前方にストックを突くのが良いと考えます。
ストックを持って少し歩いてみれば自然とそんな動きになっていくと思います。(この場合のストックの長さは、スキーで使う時と同じくらい、肘が90°曲がる位です)
④教本には、上り斜面では短く持って突く、下り斜面では長めに持って下方へ突く、と説明しているものがあります。平坦な斜面で
「足での歩行が基本、ストックは軽く突く」に慣れた上で、グリップの位置を変化させた「教本の使い方」を習得されたら、ストックマスターと呼ばれることでしょう。
ただ私の経験から、いちいち短く、長く、なんて面倒です。いつもの長さで使用してしまうのがほとんどです。特に悪かった、というのも感じませんし、
無くてもいいかな…というのが実感です。横向きになって段差を降りるような場面では邪魔に感じます。
⑤1本のみで使用する場面もよく見かけます。1本のストック(T型のグリップ)の使い方は、本来はどちらかの足(膝、足首など)に心配な状況があり、
弱い足が接地すると同時に(反対の手に持った)ストックを突いて足への負担を補助する、というものです。私のように左膝を手術した、痛くなるかも…といった人間には、
右手に持つ1本ストックは有効でしょう。しかし、足が痛んでなければ1本でストック(杖)を使用する意義は乏しいのかな、と思います。
(1本ストックの長さは骨盤よりやや下方、股関節の高さを基本として、実際に使用しながら楽に感じる長さに調整します。)
⑥最近、理学療法士の方と「山での1本ストックの使い方」の話をしていましたら、曰く「1本杖は、特に足が悪くなくとも私みたいな体幹や筋力の弱い人が使うには楽なんだよ~、
右手で持ってて疲れたら左手に持ち替えて…」と言われてしまいました。
⑦まとめとして、一般に健康な方がストックを使用したいのであれば、姿勢制御用に2本で使用するのが良いと思っています。歩行は左右対称な運動なので、
ストックも2本使用する方が効率的と考えるからです。ただし先の理学療法士の話を加味すれば、使う方が楽に感じるのであれば2本ストック、
1本ストックと堅苦しく分けなくとも良いようにも思います。あと「重い荷物を背負って縦走する」といった場合には、
健康な方でも快適に歩くという点でストックは有効に働く事でしょう。
⑧余談ですが、山で悪路が続く時に「ストックは手に持たずザックへ」と注意書きがあった時の話です。白馬鑓ヶ岳から白馬鑓温泉へ降りる道で、その看板がありました。
面倒です。無視してストックを持っていたら、山小屋関係者とそんな場面で遭遇してしまい、注意された事がありました。いいペースで下っていて、
つい休まずしまわず、で使用し続けてしまってました。細かに出し入れできる人は、ストック使いとして合格者だと思います。
●雪の上ではとても重要。
雪面でつぼ足で歩く、ワカンで歩く時など、大きく振り上げた足が接地するまでに片足で立つ時間が長くなる状況では、2本ストックはとても有効に思います。
片足を上げている時間が長くなると「反対側の立っている足」は、上げている足側に体が倒れないように頑張ります。その時、立っている足の股関節外側の筋(中殿 筋)
が主に収縮しますが、中殿筋以外にも太腿やお尻の筋、体幹の筋も協力して姿勢保持に努めます。重い靴やワカンなど履いて何千回、
何万回?と繰り返され るこの姿勢制御にストックを突く動作はとても役立ちます。スノーシューは重量があるので、やはり振り出す足にも立っている足にも負担が高まるので、
ストッ クは姿勢を安定させて安全に歩く点で有効と思います。
<参考7>松浦の経験から2007.2/2
①「側広筋を使って降りる方法を知らないと、大腿直筋を多く使ってしまうのでつらいです。そのつらさを補うためにストックを使う人がいます。
長いストックを体の前に出してそれに体重を分散して降りる人を多くみかけて危ないと思っています。もしストックの支持が外れれば前につんのめって倒れます。」
②「ストックを使うなら一本ストックで60センチくらいに短いのがよいと提案します。そのストックを下りに使う場合は、体より前にはストックを突かないで、
体の横か斜め後ろに突くようにします。そうすれば前につんのめる危険が少なくなります。その使い方はピッケルのそれと同じなのです。
ピッケルと同じ持ち方だからT字のストックがいいです。」「長い2本ストックはスノーシュー歩行とかノルディックウォーキング用だと思って下さい。」
③市川の○病院のリハビリ科で聞いのですが、リハビリ科の療法士は肘をわずかに曲げた(160度ぐらい)状態で丁字の持ち手の杖を持てといいます。
肘を完全に伸ばして持つとすぐに痛めてしまうそうです。山のストックの場合も、肘がわずかに曲がった状態になるように狙いをつけてストックを突くのが良いでしょう。
④筆者(松浦)は雪の無い山にストックは持ち込みません。持つとしたら1本ストックです。
<参考8>ノルディックウォーキングについて2012.10/24M浦
大股で腕を振って歩くことで、体幹をとりまく多くの筋肉が使われます。しかし腕回りの筋肉については少し不足なので、二本ストックを持つことでそれを補い、結果として、
優れた全身運動をする歩き方になります(健康管理にgood)。ノルディックウォーキングをトレーニングとして取り入れるのは相当に有効であると考えます。
「街中では大股で歩くようにする!」それだけでも良いトレーニングになります。
<参考9>ハイキング程度の山歩きと上半身の運動不足とストック 2013.1/29M浦
●人はもともと(人類誕生の時代から)野山を杖なしに歩いていた動物です。ストックの使用は本格的な登山をする方には基本的にはおすすめしません。
ストックなしに歩けるバランス感覚を大切にしていただきたいです。しかしながら、初心者の方や年に数回程度しか山に行かないタイプの方にとっては、膝を痛めるリスクを減らせたり、
楽に歩ける、バランスがとりやすい、など、ストック使用の利点がいくつかみつかります。
●ハイキング程度の山歩きの場合、足腰の筋力は結構使いますが上半身はそれほど使いません。それで、下半身の筋肉ばかり引き締まってアンバランスになる可能性があります。
有酸素運動によって下半身ががっちりし、無酸素運動不足により上半身が貧弱になるかも?ということです(急傾斜を登る本格的登山はこのかぎりではありません)。
上半身の筋肉を使うために、両手にストックを持ち、その推力を有効に使って歩く方が多くなっています。膝等を痛める可能性も減るでしょうから、一挙両得だと思います。
最近ではストックを持たずに歩いている人の方が少ないのではないかと思えるほどです(若い人でも当たり前のように持っていて、すこし心配しています)。
●ネジ式で長さを調節出来るストックを使われる方が多いです。冬になると、ストックの長さが固定出来なくなるトラブルに必ずといってよいほどに出会います
(気温が低いためにネジが緩む→それをなおす時ににシャフトの継ぎ目から雪や水が入り込んでしまう→水が凍ったり潤滑剤になってネジが効かなくなる)。
下の写真のようなネジを回す方式でない長さ調節機能を持ったストックの使用をお勧めします。
●前に向かう推力を得るためにはストックの先端(石突)は後方を向きます。後ろを歩く人を突いてしまわないように十分に注意が必要です。
●樹木などの障害物の多いルートではストックがじゃまになることも多いです。そういうルートではストックはザックの中にしまう方が良いです
(外に出すと木の枝にひっかかってやっかいだし、落として紛失する可能性もあります)。
●岩稜、鎖場、藪漕ぎ、沢登り、腕の力(特に指力)がものを言う岩登り、ピッケルを持つ雪山登山、・・・、
つまり本格的登山やバリエーションルートを行く登山にストックを持って行くのはひかえた方がよいです。
ハイキング程度の山歩きの延長上でバリエーションルートにストックを持って行くと、登山の核心部分で、じゃまになるし重荷にもなります
(1グラムでも軽量化した方が安全につながります)。膝等を痛めていて(あるいは痛めやすくて)杖の補助が必要な方は仕方ないとして、
ストックは初めから持って行かないのが良いです(必要なら木の棒を拾いましょう)。
●1本ストックについて
1本ストック=片手に持ち、時々左と右手に持ち替える(手が疲れない)、ピッケルを持つと同じ持ち方(ストックの上部から下に押すように)で持つ、
長さはピッケルの長さ(身長170cmの人で60cmくらい)で登り下りとも同じ長さにする。ピッケルを持って歩くのと同じ使い方をする。登りは体のやや前につき、
下りは体の真横か少し後ろにつく(体の前について、失敗して前転する危険が回避出来る)。1本ストックの方がピッケルを持って歩くことに連続している
(ピッケルについては雪山登山ノートのピッケルアイゼンワークの項をごらん下さい)。
<参考10>ストックについて、UIAA医療部会の提言より
●2本ペアで両手に持ち、ストック上部の紐輪に手首を通し、指を長軸に沿わせて握る。
●長さは登りは短めに調節する。それは前腕の角度が肘の水平線より上向きだと、循環が低下するためである。前腕の筋肉が早く疲れ、高所低温、
低酸素状態にあっては、指が早く冷やされて凍傷になりやすくなる。下りは長めに調節する。足元のバランス保持が良くなる。「高齢者(60歳以上)、
脊椎と下肢関節に不調がある人、重い物を背負う時」の場合は特に勧める。バランスの保持が良くなるので転倒の危険が軽減される。また荷物の重さが適当な場合、
疲れの感覚が軽減される。
●しかしながら、常時ストックを使っていると、それに頼るのが癖になり知らず知らずのうちにバランス感覚を失って行く。その結果、
痩せ尾根・岩場などストックが使えない場所に遭遇すると、転倒・踏み外し・躓きなどからの事故につながった例は少なくない。
●押したり引っ張ったりの強い刺激は関節軟骨の栄養や制御筋肉の鍛錬や弾力性の保持に重要で、ストックの常時使用はこれらの生理学的に重要な刺激を減弱させる。
運動生理学的な観点からすると、健康なハイカーはストックに頼らない、関節に負担をかけない、弾力的で安全な、膝関節を痛めない歩き方に習熟することを目指すべきである。
<参考11>2本ストックと小刻みなフットワーク2014.9/7松浦寿治
●おかげ様でテレビや雑誌の取材を受けることが多くなりました。山歩きの技術の話になると、「ストックの使い方」を教えて下さいと、判で押したように問われます。
「超初心者や足を痛めている方でないならばストックは使わない方が良いのです。」と答えたいのですが、用意した2本ストックを提示しての質問なので、
ストック否定論をぶちまけるわけにいかなくて、以下のような話をします。
●本当は持つならば「1本」ストックが良いと思っているのですが、話は「2本」ストックの場合になります。
①長さは肘を直角に曲げて持つとストックの石突が地面に着く程度にします。
②右足を出す時は左手側のストックを右足の土踏まずから左50cmのあたりに突きます。入場行進の時の手の振り方(右手と左足が同時に出て次に左手と右足が同時に出る)
のタイミングでストックを突くのです。
③上記の①と②の方法ならば登りも下りもストックの長さを変えなくても大丈夫になります。
④しかし、街にあるような平らな道や階段では入場行進のような歩きが出来ますが、地形の複雑な登山道では難しいです。なので、安定した足場に立ち、
突き安い方の手(例えば右手)のストックを体側に沿わせた位置付近(前すぎず、後ろすぎず)についたら、小刻みなフットワーク(右でも左でもどちらの足からスタートしても良い、
必要に応じて足踏みが入る、テニスのサーブレシーブ寸前のフットワーク参照)を使って良い位置に足場を整え、さらに段差を越えます(登りも下りも同じ)。
次に出す手は左手とはかぎりらなくてつきやすい方の手です(右手が続く場合もある)。手も足もそれぞれ突く所と置く所をしっかりと見極め、一手一手、一歩一歩、
確保して進むのです。さらに地形が複雑になり段差が大きくなったら(岩稜のような山道)ストックはザックにしまいましょう(素手で岩角などを持って進むのです)。
山に登る理由
一千万年前に、ヒトに近い動物といわれるラマピテクスが現れて、二本足で立って歩いた。
二百万年前のホモハビリスは、簡単なものではあるが、道具を使い始めた。 七十万年前、ホモエレクトスは火を使うようになった。
十万年前のネアンデルタール人は洞窟に住み、衣服を着るようになり狩りをして暮らした。
四万年前のクロマニヨン人は、洞窟に色彩のある芸術的な絵を残した。ここまで来ると、もう現代人とほとんど変わらない。
約一万年前に大革命が起こった。農耕や牧畜の始まりである。農耕や牧畜は、自然の恵みだけを頼りに生活することに比べたら、飛躍的に安定した食糧供給システムである。この時からヒトは、自然界の食物連鎖のつりあいを離れ、生態系の中で他の生物と共存して生活することをやめたのである。
この革命はヒトの生活も変えた。人口の増加、多人数の生活のためのルール、罪と罰、土地の所有、貧富の差、国家の成立、環境問題・・・などのことが生じた。
そしてその後、わずか数千年の期間のうちに、科学技術を駆使した現代生活をクリエートするまでに至ってしまった。
少なくとも数万年の単位でゆっくりと生活のパターンを変えてきたヒトにとって、千年のオーダーでの大変化は、早急にすぎた。環境の変化に身体の進化が追いついていけないから、様々なストレスが生じてくる。
歩きたい、狩りをしたい、道具を使いたい、焚き火をしたい、といった原始の営みに端を発する様々な欲求を満たしてやらないと、このひずみからのがれることはできない。そこでヒトは、スポーツとかリクリエーションとか趣昧とか呼ばれる、他の生物のやらない生活様式を工夫考案したのである。
レクリエーションとして山に登ることは、その工夫の一つであるといえよう。登山やハイキングは、原始時代の生活のシミュレーションをたくさん体験できるから、レクリエーションとして、大変優れたものである、といえる。
かくて登山者は、増加の一途をたどることになった。
岳人1992年10月号掲載
2013.10/20NHKテレビ「病の起源」より補足
*脊椎動物(魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)には脳がある。その脳に扁桃体という所があって、恐怖を感じるとストレスホルモンを出す。ストレスホルモンは筋肉を刺激し、ハイスピードで敵から逃げることが出来るようになる。
*魚を天敵の魚と同じ水槽で長く飼うと、ストレスホルモンが出続けて、脳細胞が委縮し、ストレス症になる(魚で実験出来る,脳細胞の委縮はMRIで確認出来る)。
*チンパンジーは社会を作り生きているのだが、隔離して孤独にすると恐怖でストレスホルモンが出てストレス症になる(チンパンジーで実験出来る)。ヒトも同じで孤独でストレス症になる。
*ヒトの脳は発達していて、前記の扁桃体は海馬(記憶をコントロールする)の隣にあり、「恐怖と共に覚えれば忘れない」仕組みになっている。
*<松浦の疑問>恐怖と反対の「発見の鋭い喜びと共に覚えれば忘れない」は扁桃体か別の部分か?
*現代もアフリカに残る、狩猟採集をして暮らす部族にはストレス症は発症しない。
*狩猟採集で暮らす部族は食べ物を均等に分け合って食べている(平等)。平等は扁桃体の興奮を和らげる(ヒトで実験出来る=MRIで確認出来る)。農耕牧畜を始めた現代人は不平等な社会を作ったために扁桃体を癒すことに工夫が必要になった。
*運動や、朝に起きて夕に寝る生活をすると扁桃体が癒される(MRIで確認できるようだ、多くの人が体験で理解出来る)。
※つまり原始の狩猟採集の暮らしを取り入れることはストレス症になりにくいしストレス症の治療にもなる。
登山靴の重さ
一昔前だったら無雪期だろうと沢登りだろうと山に行く時はいつも革の重登山靴をはいていた私も、今では六種類ほどの靴をとっかえひっかえ使っている。プラスチックがいいか、革がいいかなんてことも最近は悩まなくなった。両方持っていって用途によって使い分けているからだ。靴も使い分ければ長持ちするので、結局安上がりになる。
無雪期の山は運動靴か軽登山で行く。軽い方がよいというわけである。
そうはいっても、体重六十五キロの男性が靴の重さ二キロを軽量化すると、六十五分の二(約三・一パーセント)だけ楽になるといった単純なものでもない。人が生活するための代謝に使われるエネルギーを考えに入れなくてはならないからで、四人乗ってる自動車から一人降りても燃費は四分の三にはならないのと同じである。
筆者のつたない計算によれば、先の男性は二キロ荷を軽くすると約一・二パーセント、女性(体重五十五キロ)では約一・六パーセントのエネルギーが節約出来ることになる。この量は一日歩いても男性四十六キロカロリー、負担の大い方の女性でも五十五キロカロリーというわずかなもので、チョコレートひとかけら食べればまかなえる。
どうやら靴の重い軽いは関係ないということになりそうである。
人のエネルギーの消費量は極端な場合を除けば、背負っている荷の大小よりは、その人の行動がのんびりした軽務なのか、汗にまみれる苦しい激務なのかによって決まるものである。前者より後者は数十パーセントという大きなオーダーで増加する。
さあ雪山だ!とばかりに急に重い靴に変えれば、今まであまり使われないですんでいた筋肉に負担をかけ、そこで激務をさせることになる。使われない筋肉は毛細血管の量が少ないのですぐに酸素や養分の供給が不足する。
脳は激しい呼吸をうながし、これを受けて体全体に激務が広がってしまう。長く続ければわずか二キロの違いがバテを呼ぶ。
シーズンが変わったら、靴慣らし(体慣らし)のトレーニング山行を行い
たいものだ。それができるほど数多く山に行けない人は、一年を通して同じ
靴ですませる方がよいのかも知れない。
岳人1992年4月号掲載
ガイドのノウハウ10
松浦寿治 提案2012.4/14
その0:クライアントがいなければ実質的にガイドは出来ない。
*多くの人がその0を越えられない。
その1:指導過多にならないようにすること。
*教えることは極力減らし、クライアントが自ら活動することで学び楽しんでもらうこと。
*ガイドの話す時間はクライアントの話す時間より多くならないように心掛けること。
その2:8時間の山行のために16時間の準備をしよう。
*準備をすればオーラが出る。
*導入に工夫を凝らし、正午過ぎた頃に核心部にかかる。
*低い眺望のない山でも講習になる。
*赤線ルートや超やさしいバリエーションルートなら偵察なしの方が味が出る。
<注>偵察なしの講習会は面白いという考えに対して←偵察がなくても多くの準備は必要、
積極的にロープを使う場合は偵察は必須←支点が見つからないなんてことになりかねない
*手持ちのネタを3年分(36コース)を持とう。
*圧倒的に良いものでなければ受け入れられない。
*わずかな欠陥で、リピートしてもらえなくなる。
その3:大多数の原理。
*親派の多いメンバー編成を心がける。
*メンバーを知っていることが大切(良い先生は生徒のことがわかる先生である)。
*メンバーのうなづきが評価の基準になる(うなずきが少ない場合の修正ネタが必要)。
*ガイドの呼吸と同じタイミングで動作が起きれば最高。
その4:割れ窓の理論でなくて割れない窓の理論。
<参考>割れ窓の理論→割れた窓はすぐに修理しないと、別の窓もどんどん割れて行く。割れない窓の理論→割れた窓をすぐ修理するのは大変なので、
始めから割れない工夫をしておく
*注意これ俊足(これはまずいと思ったとたんに、間髪を入れずにまず注意)→トレーニングが必要
*右に指導したい時に、一旦左に振ってから右に移る(使いすぎると逆効果、10回に1回ぐらい使うこと)
*小さな事故でも起こさない工夫をする。
*危ない人にはマンツーマンで補助者をつける、補助者がいなければ赤字でも小人数編成にする。
*参加条件に工夫を凝らそう。
*仲間作りは事故対策の基本。
*保険システムの研究。
*規律確立の基本は「充実した山の案内」である。
その5:自分の守備範囲を明確に。
*全てのことでプロにはなれない。
*一人で出来ることはかぎられている。
*知らない所に協力者が存在する不思議。
その6:会計簿をつけてお金の流れを把握する。
*正当な収益があってやる気が出る。
*アマチュアはプロに勝てない。
その7:研究を怠らない。
*広告媒体、最新技術・用具、登山地情報。
*トレーニングと体のメンテナンスはガイドの仕事です。
その8:既存の概念に捕らわれない。
*クライアントには教えられることが多い。
*逆転の発想を大切に。
*がんばれと言わない(山はメンタルヘルスの場)。
*登れる人や社会的に成功した人は要注意。
*充分に休むことはガイドの仕事です。
その9:ガイドが楽しくなければクライアントも楽しくない
*クライアントが楽しければガイドも楽しい
*クライアントと向き合うのでなく、クライアントと同じ方を向く。
*ガイドの仕事はこれまでにたずさわったどの仕事よりも楽しい。
指導技術
メインエンジンとしての講習会
①講習会運営の基礎
目標が明確な講習
準備の整った講習
話し方に工夫のある講習
導入に工夫のある講習
講習生の名前を覚えている講習
講習生の目の高さで指導する講習
②指導過多の講習にならない
③むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをおもしろく
④講習のエピローグに感動を求めて(山行はミュージカル)
⑤人は教え、学ぶように設計された動物である。
⑥講習会は始まる前から始まっている
企画→参加条件精査→募集活動→宿泊予約→装備調達→
→締切り設定→メンバー役割構成→講習会当日の運営→事後作業
講師は良い姿勢で→姿勢は何かを伝える
①ストレッチ、トレーニング、体調管理(含:虫歯予防)、十分な休養
②服装、髪型は落ち着いた感じに
③第一印象は当たる、初めからプラスの印象を
持ち物、登山用具の扱いに心を配る
①なごり手→「どこにしまった」、「だれに渡した」と確認しながらそっと手を引く
②買う時→必要なものだけを買う、何を買って良いかわかってから買う
③保管→片づけは一つの棚ごとに行う(保管場所が記憶出来る)。
話すことの基本を学ぼう
<話すことの8則>
1,声は人、まず人間としての完成を。 2,絶えず反省を、話しには自信を。 3,まず内容の把握を、そして表現の工夫。 4,人の前ではかたくならず、親しみやすく、ゆったりと、崩れずに。 5,正しい姿勢で自然な呼吸。 6,ことばは正しく、品良くわかりやすく。 7、聞く身になっての話す。 8,準備に油断なく。
<話すことの基本練習>
1,口の体操(始めゆっくり次に次第に早く、1日目あ行、次の日か行)
あえいうえおあお~、わ、が、ざ、ば、 鼻濁音 か゜、んか 拗音 きぁ、しぁ、ちぁ、にぁ、みぁ、ひぁ、りぁ、ぎぁ、じぁ、びぁ
2、舌を滑らかにする運動と呼吸運動
①背筋を伸ばして、腹いっぱいに空気を吸い込みます。そして口を大きく開けて「アー」と静かに声を出します。できるだけ続けて下さい。20秒、30秒続けば立派です。
②胸いっぱいに空気を吸い込んで、正しいはっきりした発音でレロレロレロ・・・・これも20秒続けば大丈夫です。ロレロレにならないようにします。
3、鼻濁音、母音の無声化
おんか゜く、ごか゜く、みこ゜と、中学校 やまか゜た、じょーき゜、ごこ゜、管弦楽 花が咲く、行ったが留守だった。君はえらいが気が弱い、連合軍、もしもしこちらは登山教室○○です。台の上にマイクがあります。私達は毎日登山を行っています。今晩は大変冷え込むみこみです。深いため息をつく。親切な先生、背の低い生徒。
5、ことば(各音節の発音)
ア あごのあばたのあと、ああにたり、あの子の兄も姉もあの子も。慌てる時は、粟を食うのでなく、泡を食うのである。赤いインクと青い色えんぴつを本の上に置きました。 言い分があって言おうとしたが威圧されて何も言えなかった。 浮かんだ浮きが又沈んで浮こうとする所を引いたが玉網に受け損なった。瓜売りが瓜売りにきて瓜売りのこし売り売り帰る瓜売りの声。 青は藍より出でて藍より青し。 歌唄いが来て歌唄えと言うが、歌唄いぐらい歌唄えれば、歌唄うが歌唄いぐらい歌唄えぬから歌唄わぬ。
カ カッパコの子はカッパコその子もカッパコ、親ガッパコ、子ガッパコ。 上加茂の傘屋が質屋に傘かりて、加茂の帰りに返す唐傘。 鴨、米かみゃ小鴨粉米かむ、小鴨米かみゃ、鴨粉米かむ。 粉米の生かみ こん粉米のこ生かみ 古栗の木の古切り口 菊栗、菊栗、菊栗、三菊栗、合わせて六菊栗 久留米のくぐり戸は栗の木のくぐり戸、くぐりつけりゃ、くぐりいいが、くぐりつけなきゃ、くぐりにくい戸だ。 隣の客はよく柿食う客だ。
サ 佐賀の佐々木三郎さんと佐山の佐々佐吉さんが、さる日、さる酒場で皿の鮭を肴に酒をさしつさされつしていたと、さる人が、ささやいた。
タ 月々に月みる月は多けれど月々に見る月はこの月の月。 東京、特許、許可局の局員。 向こうの格子に竹立てかけた。
ナ この杭の釘は引き抜きにくい。 長町の七曲がりは長い七曲がり。 長持ちの上に生米七粒。
ハ 頬に浮かべる笑いはホホエミ、頬につける紅は頬紅、頬にかぶるのはホッカブリ、或いはホ-カブリとも言うが、ホーカムリがほんとう。 椰子(やし)の実を狒々(ひひ)が食い、菱(ひし)の実を獅子(しし)が食う。 坊主が屏風に坊主を書いた。
マ 阿波へ藍買い、甲斐へ繭(まゆ)買い。 お前の前髪、下げ前髪
会場の使い方(街の会場、山の会場)
講師の立ち位置、物立てアンサーチェッカー、桂馬飛び、答えから指名、動いて相談、二人組か三人組で活動、全員で活動(例、神経の伝達時間測定)、テーブル対抗クイズ形式、ホワイトボードの使い方(一般論→板書一枚、講義の流れがわかる、せいぜい二色、絵を拡大コピーして張る、大切な質問を張る、書き始め文字や図の形がわかる前に話す、ノートに書き移す場合はその時間を設定、など)、ドアの蝶番やはロープワークの支点として使える、階段は歩き方の説明に使える、など
登山コースや岩場ゲレンデも会場となる(指導項目に合致した区画に分けて配列したコースを作る)。
評価技術
A、相対評価 平均がわかれば勘で自分の位置がわかる。
B、診断的評価(講習生の実態を事前に把握すること)
登山経験から類推してしまうことが多い。
連れて行かれた登山経験は当てにならない場合が多い。
良い指導者とは「講習生のことがわかる指導者」である。
C、形成的評価(講習会の途中で何がわかり、何につまずき、どう変容しているかを把握すること)
うなづく&息があう…人間の持つ本来的な理解の雰囲気づくり。
「形成的評価」と対角関係に「傾聴(相手の話をよく聞くこと)」がある。
<参考>傾聴のポイント
①聞いているよとサインを送る(「ウンウン」とうなずく、相手の話に合わせて「反応のトーン」を変える、など)。
*講習生が聞いてないのに話し続けるのは?
②相手の話を素直に最後まで聞く。
*講習生が話しが終わる前に反論や自分の考えを言うのは?
③目的は相手の話を聞くことにある。
*講習生より講師の方が多く話しているのは?。
D,総括的評価(講習生に渡すこともある評価)
客観的でわかりやすいこと(具体的に示せるように、示してもよいと思う)、
達成動機をねらった評価(講習生を励ます評価)でなければ意味がない
(厳しく到達出来てないことを表現しがち)。評価の基準を明確に。
E、自己評価と相互評価
自己評価は全体を相対的に見て参考にする。
評価が難しい項目の場合は相互評価は役に立つ。
ショートロープ研修資料
◆安全を絶対に守れると確信出来ないなら進まない、引き返して別の方法を考える。
◆ショートロープは熟練した山岳ガイドが使う技術であって、安易に使うものではない。
◆ギアの携行法、
なるべく必要最小限に、ハーネスにつけるのみ、胸につける場合は右側に少々、ザックのウエストベルトは撤去する、ピッケルバンドはいらない(ピッケルのアルペンざしなどピッケルの携行法の工夫)、安全環つきカラビナはネジ式(途中までしか締めない)、スリングは細いダイニーマ{60cm,180cm(180cmスリングは支点、簡易ハーネス、引き揚げ用の補助ロープなど多用途)}
◆支点を作る
岩角、鎖、立木などをなるべく利用、180cmスリングで固定分散(早い)、流動分散はやめた方が良い。
◆ロープのザックへのしまい方とコイルの止め方
①雨蓋の下、右側から引き出せるようにする(ザックから物を出す場合はサイドジッパーから)。
②9m,4m,2m,♀(クシニクと覚える)、即ち、負傷者からコイルを持つ手までに2メートル、コイルに4メートル、肩に巻くのに9メートル使い、残りをザックに送り込むように入れる。
③はじめは9メートルの部分を(コイルにして肩にかけないで)ザックに入れておくとすっきりする(4m,2m,♀)。
④ザックから出たロープをハーネスにクラブヒッチで連結する。
⑤首と左手でコイルを作る。
⑥コイルは右肩から左腰にかけて襷(たすき)がけにする。
⑦ビレーループに通して、コイルをからげて(2回転する方がベター)、オーバーハンドノットで止める。
*負傷者から15m離れた所のロープを折って1メートルほどのヘアピン(ロープ2本の束)を作りそれを救助者のビレーループに通して、肩にかけたコイルをからげて、セカンドに向かうロープに止め結び(オーバーハンドノット)する。
◆負傷者とロープの連結
ガイド協会はエイトノットであるが、Timtamではブーリンプラス止め結びで連結する(なぜならハーネスがない場合に使えるから)。
◆コイルの持ち方
負傷者側から左手で持って、コイルを作り、作り終えたら右手に持ち替えて(左手で巻いたロープを右手で持つのは負傷者側からロープを伸ばせるから)、コイルが負傷者からのロープの上にくる方向に右手首を時計回りに返し、右手の中指と人指の間で負傷者側から来るロープを挟む(ロープの緩み止めが出来る)。
◆コイルの左手への持ち替え
右手の手首のひねりをもとにもどしてロープの緩み止めを解除。コイルを左手に持ち替えて、コイルが負傷者からのロープの上にくる方向に左手の手首を左回りに返し、左手の中指と人差し指の間で負傷者側から来るロープを鋏みロープの緩み止めを作る。
*コイルの左右手への持ち替えをくりかえし練習する(以下左手から右手への持ち替え)。
左手の手首のひねりをもとにもどしてロープの緩み止めを解除。コイルを右手に持ち替えて、コイルが負傷者からのロープの上にくる方向に右手の手首を右回りに返し、右手の中指と人差し指の間で負傷者側から来るロープを鋏みロープの緩み止めを作る。
◆下りの場合
①下りは負傷者が先行する(負傷者は救助者より下方にいて救助者に上方向に引かれながら歩く)。
*登りは救助者が先行する。
②鎖場をコンテで下る方法:(a)ロープを鎖にかけて鎖スライドビレー,(b)カラビナを鎖にかけてそのカラビナとハーネスをスリングで連結した鎖スライドセルフビレー(鎖スライドビレーは登りにも使える)
◆トラバースの場合
①負傷者の上側を歩く、歩けない場合は振り子トラバース、振り子トラバースも出来ない場合はロープをフィックスするか後ろにビレーヤーを配置する(負傷者は中間者になる)。
②2人の場合は2人の中央の上から2人をロープで釣る。
③トラバースルートをショートロープで通過するのは相当に難しいので、負傷者の後ろにいて腰のハーネスを掴んで歩くぐらいで良い(ロープを介せずに負傷者を持つ)。
④たとえば雪の斜面では負傷者用のトレースをつけて次のレストポイントまで行き、負傷者用のトレースの上にショートロープ保持者用のトレースをつけて戻って来きて上下2本のトレースをつける。
⑤トラバースのショートロープは難しい、危ないと思ったらロープをフィックッスとか、後続にビレーヤーを配置する方法に切り替える。それもだめならルートを変える(例えばトラバース出来る所まで戻り、そこをトラバースしてから直上する)。
◆レストしてもらう方法
セルフビレーをセットしてあげられない場合は低い姿勢で手はどこかを持ってもらか地に手をつかせる(手でどこかを持たせることで不用意にその場から動かなくなる)。もちろん、セルフビレーがセット出来るならセットしてあげる(負傷者はセルフビレーをセット出来ない)。
◆タイトロープへの切り替え
①6m(2+4=6)のタイトロープは両手はフリーだけれど確保力は小さい
②15m(2+4+9=15)のタイトロープは有効(短いと確保力が小さい、長いとロープと回りの木や岩との摩擦が大きくなりすぎる)。氷河の場合は20~25mのタイトロープを使う(日本では沢の高巻きとか急斜面のヤブ漕ぎなどで使用するので10~20mの長さが良い)。
◆スタッカットへの切り替え
①手のコイルをほどくのみで4mのスタッカット
②肩のループをほどくと15mのスタッカット
③ザックからロープを出して50mのスタッカット(いつも行うリードアンドフォローのクライミング)
④セカンドがビレー出来ない場合は単独登攀になる。技術が無いとか時間が無いなどで単独登攀出来ないなら引き返す。
◆打ち合わせの重要性
①次に行うことを説明し、意志の疎通をしっかりしてから行動開始すること。なるべく見える所、声が聞こえる所でピッチを切る。
②ロープは伸びていて結びあっている者どうしの距離が遠いほど安全度は高い、だが、それは離れる者どうしのしっかりした打ち合わせがあってこその安全である。
③例えば「動かないで下さい」では不十分で「ここから一歩も動かないで下さい」と打ち合わせる。「ロープがいっぱいになったら、セルフビレーを解除して登ってきて下さい」とか、「ロープが弛まないように登ってきて下さい」とかはっきり打ち合わせてから離れること。
③声が聞こえる距離以上に離れない方がいいけれど、声が聞こえないいし姿も見えないしホイッスルの合図でさえ届かないくらい離れることが多々あると知っていなければならない。
◆岩角ビレー、棒くいビレー
1本のロープをビレーするのに有効、下りの場合はビレー終了後巻き取りながら追いつくことも可能(コンテで行ける程度の場所の場合)
◆懸垂下降,負傷者より先に降りる場合
負傷者に懸垂をセットしてから下る(ハーネスのビレーループからスリングで作った30cmぐらいの「ひげ」を出してその「ひげ」の先に下降器をセットすると良い)。下に降りたら、ロープの末端を持って負傷者のトラブルに備える(落石が来ない場所にいること)。
◆懸垂下降,負傷者のより後に降りる場合
懸垂のロープをセットしてから、上の支点の所でロープを固定、負傷者に1本のロープで懸垂してもらい、もう1本のロープでビレーする。
負傷者の懸垂が終わったら、上の支点の所のロープ固定を解除しロープが下から回収出来るようにする。後続者は2本のロープで普通に懸垂下降をする。この方法は懸垂の初めが不安定な足場である場合に有効である。しかし、上から負傷者(懸垂者)の動きが見えなくなってしまう場合は、20メートル程度降ろしたあたりから、懸垂者に引かれているのか、ロープの重みで引かれているのかが区別がつかなくなってしまうので、10メートルを軽く越えるような長い距離の懸垂下降の場合は「懸垂下降,負傷者より先に降りる場合」を使用すること。
◆ロープフィックス
単独登攀をして、ロープを固定しながら戻る。1人しかいなければ回収も含めて2往復になる。負傷者はラビットノット使用で固定ロープを通過する。まず、負傷者を悪場の手前に留める(動かないで待っているように指示する)。ザックからロープを出しながら(上り出しの支点にロープを固定すること。途中のランニングビレーにハーフマストヒッチでロープをかけながら行く単独登攀で進む)悪場を通過し、安全地帯まで行きロープを固定する。ザックをその安全地帯に置いて、再び負傷者の所まで、ロープを支点にクローブヒッチなどで固定しながら、戻る。負傷者の肩あたりの高さにロープが張られるように固定する。負傷者の所に戻り、負傷者のハーネスのビレーループにスリング2本を連結しうさぎの耳のようにする。うさぎの耳とフィックッスたロープをカラビナ(耳それぞれに2ヶ)で結び、負傷者を伴って悪場の先の安全地帯に向かう。途中の支点でうさぎの耳のカラビナを一つずつかけかえて行動させる(いわゆるフェラータ)。
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◆2人の場合のひげ出し
エイトノット2つとクラブヒッチでひげを作る、ひげの長さは20cmから30cmにする。2人の間隔は1~2メートル、夏が1メートル強、冬は前の人にアイゼンで蹴られないように2メートル弱。弱い方の人が近くつまりひげに繋がる。
◆2人の場合のロープを真ん中で2つにわける方式
①2人をショートロープで引くとわかっていて、さらにスタッカットやトラバースになるピッチがあるとわかっているなら、出発前にロープを真ん中にエイトノットを作り、そこからザックに送り込んで、2本のロープがザックから引き出せるようにしておく方が良い。
②上記ひげ出しを使う時は1本だけロープを引いて2人をつなぎ、2本使いたいときはひげをほどき、もう1本のロープで結びなおす。
③ひげ出しを使わないで2本を引いてで歩く時は、2つのコイルは持てないので、弱い人の側のロープのみコイルを作り手で持つ(弱い人が近く)。強い人(後ろの人)の側のロープはコイルなしでハーネスの安全環付きカラビナに繋ぎ直接引く(タイトロープにする)。「ロープが大きく弛まないように歩いて」と指示する。弱い人のザックのサイドのベルトの所にヌンチャクをかけ強い人のロープを通しておくと、弱い人がロープを踏まないで良い。
④スタッカットにするときにがこの方式の本領発揮である。また、トラバースの時も2人の間の上部に位置することが容易である。
◆ルベルソーキューブ(あるいはATCガイド等)によるビレー
①ロープを半分から分けて2本にして二人を同時に上げる場合に有効である。ルベルソーキューブ(以下キューブを略)を2個持っていて個別にセットすると、一人落ちて一つがロックしても、もう一人の方のルベルソーはロックしない。ビレーポイントでセルフビレーをセットしなくても良い。次のピッチはセカンド2人のルベルソーを借りてまたそれを2個持って登る(3人組にルベルソーが4個あるということ)。
②ルベルソーキューブを吊るす支点は確実なものでなければならない(確実でない場合はクラシックな腰がらみによるビレーが最も有効である)。
③ルベルソーキューブを支点から吊るすカラビナは小さな安全環付カラビナ、ルベルソーキューブとロープの間にセットされるカラビナは大きなHMSカラビナである(HMSカラビナを使わないとスムーズなロックの解除が出来ない)。
◆ルベルソーキューブのロックの解除
①HMSカラビナのキコキコするやり方、
②解除用ホールを使うやり方
1つのルベルソーで後続2人に繋がるロープを2本同時にビレーしている場合はテンションのかかっていない方のロープにフリクションヒッチを施してから解除する。解除用ホールに適合している大き目のカラビナをいつも持っていると良い(コングのHMSナピックスクリューカラビナはお勧め)。
*1周目はハーネスをつける。スリングやカラビナの数は限定しない。2周目はハーネスなし、安全環つきカラビナ2、普通カラビナ1、60cmスリング2本、120cmスリング1本のみ持つ(二人分合わせてその数)。