増水からの脱出
激しい雨により急激な大増水が起こり、上流にも下流にも向かえない場合があります。まず水筒の水をいっぱいにします。登山道に近い方の側壁を登り、側壁の後はひたすら藪を漕いで尾根を進みます(なるべく尾根の一番高い所を行きます(トラバースはなるべくしない)。登山道に近い方の側壁が登れない場合は登れる所から登ります。どんなに登山道から遠くても日本の山なら最大で二日間の藪こぎで登山道まで出れるでしょう。増水からの脱出となることが予想される場合はゴルジュの中とか両側壁が草付きになってるような悪場には踏み込まず、天候回復待ちということで待機するか早めに撤退(沢の下降)を決めてしまわなければなりません。勢い余って、そういう悪場に踏み込んでいる時に大増水にあった場合は、その場からのぼれそうな側の側壁を登攀しなければなりません、ハーケンが打てればいいのですが、打てない場合も多いです。そんなことは避けたいですが、どうしてもという時にはボロボロの壁をノーピンでダマシダマシ登らなければなりません(常日頃のクライミングトレーニングを怠ってはなりません)。キャンプ中の脱出もあります。素早くパッキングするために、一回り大きめのザックを使用するのが良いです。
怪我人や病人を背負っての脱出
歩けない人を伴って沢を登るのは大変なので、増水がないのであれば、登って来た沢を下降します(もちろん登ったり側壁に逃げた方がいい場合もあります)。懸垂下降を多様します(それを学ぶ救助訓練にかかさず参加しましょう)。負傷者を背負う方法についてはこちらもごらん下さい。
*大原則は救助者の安全を優先することです。→アクシデントの現場での稿をごらん下さい
…怪我人が出る→怪我人が出た場所の安全確認→安全な場所への移動(脊椎が折れているような場合は固定してから移動するべきなのだけれど、そこが安全な場所でなければ移動せざるを得ない)→応急処置→運搬方法の検討
*止血は心肺蘇生法を施すよりも現実的な応急処置と思われます。出血している場所を直接押さえて止血します(大動脈でもないかぎりそれで血は止まります)。タオルなどを介して押さえることはしません(圧迫する力が弱くなってタオルにどんどん血を吸わせるだけ)。血液を介して感染する病気(一部の肝炎はかなり感染しやすい)が防げるので手近にあるビニール袋を手袋にして止血するのがベターです。
軟部組織損傷の処置の原則(RICE) | |
R:rest | 安静にする |
I:ice | 氷りあるいは氷嚢で冷やす |
C:compress | 損傷部位を圧迫する *血行障害を引き起こす可能性があるの で圧迫は山では行わない場合も多い。行 ったら、1時間毎に緩めること。 |
E:elevate |
損傷部位を挙上する |
骨折の症状 |
|
1,疼痛 | 激しい痛みがあり、動かしたりさわったりすると痛みが増す。 |
2,変形 | はれがひどく、骨折がひどい場合には変形がみられる。 また、手足の骨の場合には骨折した側が短縮する。 |
3,異常可動性 | ふつうでは動かないような位置に動く。 |
4,轢音(れきおん) | 異常可動性がある場合に、骨折した骨どうしがこすれて音がする。 |
5,機能障害 |
受傷と同時に使えなくなる。 |
ザックのウェストベルト
最近市販されているザックにはウェストベルトのついていないものはないと言ってよいと思います。ザックを背負いウェストベルトをつけて泳ぐと、ザックの浮力で腰が持ち上がり、頭を水から上げるのが出来にくくなります。泳ぐいだり、トロや釜や滝壷に転落した場合はすぐにウェストベルトのバックルを解放します。そうすると体が立つので頭が水の上に出て泳ぐのに都合がよくなります。ザックは浮き袋として機能します。
ザックの背が高い場合はウェストベルトを開放しても雨蓋部分に頭を押されることを排除できないので肩紐も外してザックにしがみつくのが良いかも知れません。また、ザックの背が低い場合はウェストベルトを開放するとかえって泳ぎにくくなるという報告もあります。
「以下会員のTさんよりの報告です。」
奥多摩の倉沢谷へ行って、泳いできました。
ザックのショルダー(肩紐)を緩める(長くする)と泳ぎやすくなりました。背中とザックの間に隙間ができ、ザックが体より離れる状態でぷかぷか浮かんだ為、浮力が得やすくなったと考えます。
《注意1》ザックのショルダーを緩めれば、だらん、とザックが後ろへ下がる為、チェストベルトが首に引っかかりやすくなってしまいます。
《注意2》ウエストベルトとチェスト両方外してやってみましたが、結構浮力は得られました。しかし、「泳いだ後にすぐ取り付いての登攀」となると不向きだと考えます。肩紐が長くてザックが左右に揺れて安定しないです。
《実験》ウェストベルトをはずし肩紐を長くした場合
1.平泳ぎ…汎用性が高い。疲れずに進みやすい。流れのあるところでも進みやすい。
2.背面で浮く(ザックを腹に乗せるラッコ泳ぎ? )…安定が悪かった。流れのあるところでは、あまりすすまない上、手と足をかいていないと沈む。
3.ザックをビート板替りにして泳ぐ。…一見楽そうだが。遅い。特に流れが強いと止まって進まない。 バタ足より平キックの方が楽。
ザックを浮袋にする
ザックを背負って泳いだ場合、ザックの下部にかかる水圧はなかなかのもので、ザックの底にあった衣類やシラフなどをビニール袋で防水したはずなのに濡れてしまう可能性があります。濡れては困る衣類などはセーターが一つ入るくらいの小さななビニール袋に小分けして入れ袋の口はしっかり縛ります。その袋をいくつかまとめてあまり大きくないナイロンのスタッフバックに入れて(そうするとビニールがやぶけない)、それをザックに詰めます。海に浮かぶヨットのごとくたくさんの気室をザックの中に作ります。ザックカバーをしても中は濡れます、荷物の出し入れのスピードが落ちる、藪こぎに不向きなどの理由でザックカバーはしない方がいいです。藪こぎや泳ぎにに不向きなので、ザックのサイドにテントポールとか水筒とかコップとかをくくりつけずにザックの中にしまいましょう。
入渓点
入渓点に「新茅の沢」とか「源次郎沢」とか「ナメラ沢」とか書かれた導標を見ることはあるけれど、それは極めて稀なことで、ほとんんどの沢は地図を読んで自分で探さなければなりません。ここかなと思っても、バス停からの位置、一つ手前の橋の名前、一つ先の橋の名前、上空の送電線、林道の屈曲の数、沢の流入方向、遡行記録の記述、などの複数の情報が一致してから「たぶんここだ」と思うようにしよう。絶対に確実とわかるまで断定しないのです。「たぶん」とすることは「間違えが累積して完全に現在地を失う」ことへの防止策として重要です。
渡渉
@沢登りのスタートの前後はまだ下流域、川幅が広く水量も多いです。半ズボンの裾が濡れちゃうくらいの深さだと、浮力で体を水流にすくわれてしまいます。肩を組む、上流に杖をつく、ロープを出すなどの方法で対応します。予想しなかった(ガイドブックや記録に記載されていない)困難な渡渉に出くわすようなら、当日は晴れていても、前日までの降水量が相当に多かったことを示しています。その後も、水量の多さによる困難な場面に出くわすことが多くなると言えます(一日待って水流が落ち着くのを待つことも必要です)。
肩組みの渡渉
流れと人の進行方向の関係
・杖をついての徒渉
・渡渉+流星法+ロープの回収 | |
・バランスの良い若者を選んで 一番手で行ってもらいます。 ・左岸(川下から見て右)から 右岸(川下からみて左)に渡 るとして、渡渉点の川上に頑 丈な支点(支点A)を見つけ ます。 ・その支点にロープを固定し、 一番手のハーネスの安全環 付カラビナをそのロープ上を スライドするようにセットしま す。 ・ビレーは下流から行い(広い 河原が良い)、一番手が流さ れたらビレーヤーより下流に 行ってしまう前にハイスピード でロープをたぐって引き寄せ ます。もし、ビレーヤーより下 流に行ったら人数得を集め て(3人以上?)でごぼう抜き します(2分の1システムの 形になっている)。だから増 水の川を行く時は人数が必 要です。 |
|
右岸 ↓流れ↓ 左岸 | |
・一番手が渡渉出来たら。一番手は右岸の相当に川下の支点Bまで行きます。ビレ ーヤーは左岸の支点Aに行きます。 ・一番手とビレーヤーで協力してロープを回転させて、ロープの両末端を左岸から 右岸に移動させます(右岸から懸垂下降のロープ回収の要領でロープが回収出 来るようにする)。*この時にもう1本のロープを左岸に届けることが出来ます。 ・一1番手は支点Aと支点Bの間に2本のロープがピンと張られた形でフィックスします。 ・二番手以後はハーネスの安全環付カラビナをそのロープ上をスライドするように セットし、上流から下流にスライドするようにして左岸から右岸に渡ります。 *必要に応じて二番手をもう一本のロープでビレーします。二番手が渡ったら滝を登る時の ロープウェイ方式の要領で二番手が渡渉を始める時の状態までロープを戻します。 ・全員が渡り終えたら右岸から懸垂下降のロープ回収の要領でロープを回収します。 |
水の濁り
撤退の目安として「沢の水が濁っていたら遡行中止」という記述をよく見かけます。豊かな森を源流にする沢の場合、相当の増数があっても水は濁りませんので、「水の濁りは遡行中止でなくて沢からの脱出の目安」とするぐらいおおげさに考えた方が無難です。降水多しの時節には沢の水が濁ってなくとも遡行グレードは2ポイント上がっていると認識すべし。数日雨が降り続いたあとの入渓は当日が雨でなくても要注意です。
水流の中か水流の近くを行く
沢登りは水線どうしを行くのが王道です。水流の中やその近くはいつも水で洗われているので岩が安定していています。水流から離れると風化した岩が残っているので、落石や足場の崩壊の危険があります。滝は登れるんだったら登っちゃった方が、高巻きより安全な場合も多いです。高巻きする時に水流から離れるからです。
ゴーロ
川原の石がゴロゴロしている所をゴーロといいます。沢が明るく開けて、流れが緩やかな場合が多いので気楽な気分で歩けます。石車に乗ったり、石の上でスリップしたりして転び怪我をすることがあります。静加重静移動の歩き方(小股、ベタ足、踏み出した足を確かめてながら置いて、その足の真上に体重を移動してから踏みしめるように立ち上がる)を心がけましょう。高い石の上から降りる場合は階段を下りる時のように真っ直ぐ足を踏み出さず、体の横か斜め後ろに足を下ろして大腿の側筋を使う(大腿四等筋をなるべく使わない)下り方をしましょう。20~30キログラムもある重荷を背負っているつもりで歩くと静加重静移動の歩き方を長く続けられます。ツルンと滑って石の上に尻餅をつくと尾底骨をやられますので背中がザックをクッションになるようにうまく転びましょう。
滝
@滝の登攀はリードアンドフォローのロープワークで登ります。
@ロープが短くてロープウェイ方式が使えない場合や登るのが比較的簡単な滝の場合はロープフィックスを使います。セカンド以後はロープフィックスの項で解説するブルージック方式や流星法方式で登ってもらいラストのみビレーして登ってもらいます。
@ビレー器具はエイト環を使って下さい。垂直やオーバーハングの場合とエイト環が無い場合はHMSカラビナによるハーフマストビレーにして下さい。登攀距離が長くハーフマストビレーだとロープがキンク(クルクル捻じれる)する可能性が高い場合はボディビレー(ハーネスのビレーループにビレー器をセットしてセカンドに正対してビレーする)を行ってください。
@沢ではオートロックするタイプのビレー器具(ルベルソーキューブ、ATCガイド、etc)の使用は不可です(セカンドが墜落するとロックするので、そのロックの解除にかかる何秒又は何分の間、セカンドを水流の中に宙吊りにしてしまう可能性があります。危険です)。
@中間支点を自分で打つ場合も多いです。ハンマー2本、ブレードハーケン4枚、アングルハーケン2枚は表丹沢の沢に行く時でも団体装備として持ちましょう。ハンマーを振るうのが得意でない人はあまり人が多く来ない沢(例:表丹沢・前大沢)に行ってハーケン打ちの練習をするといいでしょう。
@登攀のルートを見つけるのは多くの経験が必要です。先輩が登り出す前に、自分だったらどう登るかシュミレーションをいつもするようにしましょう。
@ハーネスとロープの連結はロープの末端にエイトノット&止め結びで輪を作り安全環付カラビナを介して連結する(いわゆる簡易ガケ)の方が滝を登り終えた後の処理が楽です
(簡易ガケによる連結は安全環付カラビナ一枚のみでなくて、反対方向にゲートを向けた普通カラビナを追加して万全を期して下さい)。
@セカンドにはセルフビレーをセットしてもらいましょう。セルフビレーがセット出来ない時はトップの墜落で引きずりこまれない位置に立ってもらいましょう。
@プロテクションをセットしながら登りますが、支点を完全に信用するのは止めて落ちないように登りましょう。ホールドの岩がはがれることも多いので、いきなり体重をかけずに確かめながらそっと持ち、そっと立つようにして下さい。
@いつでもクライムダウンできるような上り方をして下さい(エイヤって登っちゃっうと進退きわまることになります、もし進退きわまったら、遠慮せずに「高巻いて登り上からロープを降ろして!」と頼みましょう)。
@滝を登り終えたら、ビレーポイントをみつけます。太い樹木が一番です。樹木がなければ大きな岩塊を使います。岩塊は直径で1メートル程度の大きさがほしいです。直径数十センチのものだと動かないようにみえて動くことがあるので気をつけて下さい。滝の上で後続するメンバーを引き上げる方法については「岩登りの注意」のページにあるエイト環グリップビレー及びロープウェイ方式の項をごらん下さい。
@人数が多い場合はセカンドはもう一本のロープを引いて登り、滝の上でもう一つのビレーシステムを作ります。リーダーのロープとセカンドのロープを使って、2名が同時に上がります。また、セカンドとサードでその滝より上にある滝にロープを張ってしまうという方法(次から次へと交互にロープを上に上げる)もあるので、TPOに合せて使い分けて下さい。パーティで2番目に歩くのはパーティで一番力の弱い者で良いのですが、そういう人が滝を登る時は3~4番手以後にします(屈強な人が滝の上に多くいる方が、人をごぼう抜きで引き上げたり、もう一本ロープを張ったりする、など、が出来るようになるからです)。
@スタート地点と終了点の間で声が聞こえない場合や‘手で作る○や×等’の合図が見えない場合が多々あるので十分に打ち合わせしてから行動を開始すること。
ロープフィックス
@ロープが短くてロープウェイ方式が使えない、比較的簡単な滝を登る、側壁のトラバース、危険な高巻き、などの場合にロープをフィックスします。ロープフィックスで登る後続者が「滑落して自力で脱出できない状態になった場合」に救助することが難しいと知っていて下さい(例:水流の中に吊られてしまった状態)。
@スタート地点と終了点の間で声が聞こえない場合や‘手で作る○や×等’の合図が見えない場合が多々あるので十分に打ち合わせしてから行動を開始すること(再掲、「滝」の項参照))
@トップが滝や側壁の登攀の終了点についたら、以下の方法から選択してロープを固定又は仮固定します。
①ロープアップしないで固定(8の字結び等)する。
②ロープをアップしてから仮固定(ハーフマスト仮固定等)する(仮固定ならテンションがかかってもロープを動かせる)。
@余りのロープは高い方あるいは上流の方に早い段階で上げてしまうことが原則です。例えば2本ロープがある場合は2本目のロープを持っている人を2番手にしてなるべく早く先に進ませます。しかしながら、上記①のロープアップしない場合の方を多く使うべきです。ロープアップしない方が早くて、しシンプルでわかりやすいからです。また、余りロープ(上流に上がっている)を使わざるを得ないような(危険な)状況では、ロープウェイ方式を使っていた方がその状況を回避しやすいからです。
@スタート地点にいる人(ビレーヤー)は以下の方法を選択します。
①ロープをしっかりした支点に、ロープにわずかにテンションをかけて、固定する
②ロープをビレーする体制を取り続ける(仮固定するとよい)。状況の応じてテンションを調節する。
③固定しないで、ロープを手持ちする。
④上記②と③を避ける場合がある(落石が予想される場合)。
@セカンド以後は固定されたロープと腰のハーネスをスリング(長め←短ければもう一本スリングをつなぐ)を介してブルージック結び(オートブロックヒッチならなんでも可)で連結し(必ずブルージック結びが正常に作動するか実験すること)、ブルージック結びをスライドさせ、中間支点の所でカラビナをかけかえながら前進します(ブルージック方式)。もし墜落してブルージック結びを施したスリングに吊られながら、水流の方に振られてしまった場合はハーフマスト仮固定を解いて墜落者をロワーダウンさせます(急がないと溺れてしまいます)。くりかえしになりますが、水流に吊られることが予想される場合にはロープフィックスは使うべきではないです(ロープウェイ方式を使う)。ダイニーマスリングの融点は170度ぐらいナイロンのそれは220度くらいなのでブルージック結びはナイロンスリングを使用べきです。ブルージック結びを使わずにタイブロック(1方向にのみ進める金属製んお超軽量な器具)を使うのがベストです。
@流星法方式:トラバースするようなルートであればブルージック結びでなくてカラビナをロープにかけてそれを腰のハーネスとスリングで連結し、ロープの通ったカラビナを引きずりながら、中間支点の所でカラビナをかけかえながら前進します(流星法方式)。流星法方式の際にハーネスとロープをウサギの耳のように二本のスリングで連結して中間支点の所でカラビナを一つづつ掛け替えるとさら安全度が高まります(ラビット方式orフェラータ)。墜落すると水流の中に吊られそうな場合には腰のハーネスと連結するスリングは短いもの(60cm以下)にしておくなどの工夫が必要です。さらに難しいトラバースの場合は渡渉で使う流星法を使います(ロープウェイ方式と併用するとベスト){ロープを2重にして使用し,全員が通過したロープを引き抜きます(懸垂下降のと同じ,中間支点がある場合は残置します)}。
@最後の人(ラスト)はロープの末端と自分のハーネスを連結し、終了点の人(上流にいる人)の「ロープアップ」を待ちます。ロープが一杯になったら、終了点の人にビレーしてもらいながら、中間支点を回収(フォロー)しながら登ります。トラバースルートを行く場合、トップとラストでは落ちた時にロープに吊られる方向が異なるので、それを充分に計算して通過しなければなりません。「ロープアップ」をぜずにロープの中間で自分のハーネスと連結し、余ったロープはザックに入れて登る方法も多く使われます。
コンテニアスクライミング
<10~20メートルコンテニアス>
@高巻き藪コギなどてロープをフィックスしていると時間がかかる場合は10~20mの間隔をあけてメンバーがみんなロープに繋がりコンテニアスクライミングをする方法があります(ロープをハーネスに固定する場合とカラビナを介してスライド出来るように繋がる場合があって、後者には行動の自由度が高い長所と垂直方向の移動には向かない短所が有ります)。トップは適宜、中間支点にロープを通したり、立木や岩の間を通過したりして、自分と後続の墜落を停止出来るようにしながら歩き、セカンド以後は中間支点でカラビナをかけかえながら進みます(ラストはそれを回収しながら進みます)。
<腰引きコンテニアス>
@バランスが不安でスピードが遅いンバーAがいる場合に有効です。さしたる悪場でない(藪こぎや緩傾斜のザレ場程度)場合に10~20mの間隔をあけてロープで繋がり(きっちり固定:ハーネスのビレーループに連結するのがベスト)、メンバーAを腰で引っ張りながら行動すると良いです。その際、トップもメンバーAも手にロープの輪は持ちません(余ったロープはコイルにして肩に巻くかザックにしまう)。ロープを引っ張るトップの消耗が大きいので、熟達者が複数名いれば適宜交代すると良いでしょう。
<2メートルコンテニアス>
@ガイドが行うショートロープという方法があります。ガイドはロープの輪を持ってお客さんとの距離を2mほどに保ちながらそしてお客さんを少し引きながら歩きます(お客さんはロープの輪を持ちません)。悪場にさしかかった場合、ガイドは、手に持ったロープの輪を離し、お客さんを待たせて、その悪場を通過してしまいます。悪場通過後にお客さんをビレーして同所を通過させます。
<スタッカットクライミングとの組み合わせ>
@コンテニアスクライミングの反対がスタッカットクライミングです。スタッカットクライミングとは「リードアンドフォローのロープワークを使って登る」や「ロープをフィックスして登る」などがあります。
@コンテニアスで歩ける安全地帯とスタッカトが必要な悪場が交互に現れる場合には、リーダーとサブリーダーでロープを結び合い、10~20メートルコンテニアスのまま安全地帯を歩くことで、ロープをザックに出し入れする時間を短縮出来ます(数人のパーティでロープが1本しかない場合は特に、有効です)。
<氷河で使うコンテニアス(クレバス救助)>
@メンバー同士が、20~25m間隔でロープは手に持たずに張った状態で歩きます。50mロープなら、前後と真ん中に一人で3人程度、2人ならショートロープのセッティングのように、身体に10回ほど巻いてから、ビレーループを通して止め結びをします。ロープを手に持っていると、衝撃を手で受けることになり、ひきずり倒されやすいからです。20~25m間隔が、ロープの伸びや途中の抵抗で転落を止めるのに有利なのですが、実際は、前後の声の届きにくさ、長いロープをきちんと張って歩くこと難しさなどからペースダウンしてしまうので、15mくらいに短くしてしまうことが多いようです。氷河で使うコンテニアスは、氷河のない日本では雪渓や雪稜で使う他に、沢の高巻で真価を発揮します。沢の高巻の場合は樹木が多いので摩擦を避けるために15mよりもう少し短い方が良いです。
<雪上技術の輪どうしコンテニアス(安全地帯以外では使わない)>
@手にループを作っておいて、とっさに握り締めたり、ループににピッケルを刺すコンテニアスクライミングの方法(=輪どうし)があります。
「輪どうし」は使わないで下さい。「輪どうし」でパートナーの滑落を確実に止めることが出来る雪質は無いからです。二人がロープに繋がり、二人がそれぞれ手にループを持って歩くのは、オールシーズン、ロープの運搬の時のみです(確保の技術ではありません)。
ゴルジュ
↑へつりのロープワーク
@沢の両岸が切り立った崖になっている場所をゴルジュといいます。ゴルジュの中に入ってしまうと、ハイスピードで岸を上に登って増水から逃れるようなことが出来ないので慎重に対処せねばなりません(増水からの脱出の項をごらん下さい)。
@ロープを出してゴルジュを突破する場合は、リーダーはランニングビレー(中間支点)を取らずに行きます。ビレーヤ-はビレー器具を使わずロープを手に持っているだけで待機します。ビレーヤーはリーダーが流れに翻弄され流され始めたらビレーヤ-より上流にいる間に川岸までたぐりよせます(アクシデント対策のページの夏山サバイバルの項を見て下さい)。もし引寄せに失敗して、自分より下流の水流の中心付近にロープで吊られて鯉のぼり状態になってしまったった場合は緊急事態です。以下のイチカバチカの方法①②③④を試みますが、そんなことにならないためにもそしてそうなった時のためにも、ビレーヤ-は足場の良い広い川原にビレーポイントを求めるようにしましょう。
①ビレーヤ-の回りに同行メンバー全員を集め、全員が力を合せてリーダーを水流からごぼう抜きします。
②全員の力でもごぼう抜きが出来ない場合はロープを緩めることで安全地帯に誘導出来ないかを探ります。
③すぐ下が滝などで安全地帯への誘導が不可能の場合はリーダーが溺れる前にロープを切断して下流に流します。ロープを切断しないと長く伸びたロープが岩角などに引っかかりリーダーは水流の中で吊られる状態が解除できない可能性が高くなります。
④いろんなことが困った状況にあっても落ち着いて考えればきっと打開策が見つかります。「落ち着け! 考えれば必ず方法が見つかる!、考えろ!」と自分に命令しましょう。
@リーダーがゴルジュを突破してセカンドを引き上げる場合はエイト環グリップビレーの項下段に記載されているロープウェイ方式用います。ロープウェイ方式は上流側と下流側と両方でロープが操作が出来るので2~3番手の者が流されることなくゴルジュを突破できます。2番手に行くのはは多くの場合パーティで一番力の弱い者とされていますが、上流からの引き上げが予想されるので、屈強の人を2番手に行かせて、力の弱い人は後の方から行くようにします。
雪渓
@雪渓の上を歩く場合・・・雪渓の中央が水流でとけていて端は側壁の熱でとけているので、中央と端の間を歩く。静かに耳を澄まして歩く、雪渓が薄かったり穴があいていたりすれば下を流れる水の音が聞こえる。危険を感じる場合はロープを出す。コンテで歩く場合はロープにループを作らずロープの長さ一杯(50メートル)に離れて同時に歩く。雪渓の崩壊で落ちた場合は大人数でロープを引きごぼうぬきする(ロープによる吊り上げシステムを作る場合もあるだろうが時間がかかる)。ロープを登る自己脱出(アクシデント対策のページの夏山サバイバルの項の後段を見て下さい)の技術を使う場合もある。雪渓はS字上に蛇行している。蛇行のカーブ外側は侵食側で側壁が立ち上がりシュルンドが出来やすい。蛇行のカーブの内側は堆積側でなだらかな砂利の川原が出来やすい。雪渓から降り口は堆積側に見つかることが多い(堆積側を求めてり雪渓の中央を横切る場合は極めて慎重に行動すること)。雪渓があると予想される場合はハンマーでなくてアイスバイルを傾向すると良い、アイスバイルがない場合は石や棒切れを拾ってその代わりとすると良い。
@雪渓の下を通らなければならない場合・・・一人ずつ雪渓を通過する。大声を出さない。雪渓の下は雨だれのように水が落ちている(雨具を着用した方が良い場合もある)。
@雪渓の堅さは刻々変化します。早朝は堅くアイゼンが必要になることもありますが、昼過ぎにはグズグズになってしまいます。朝だから雪渓の崩壊が起きにくいとは言えませんが、朝の内に雪渓を通過してしまう方が気分的に楽です。
高巻と落石
@高巻きを始める前に水筒の水を一杯にします。数時間かかる高巻き、ビバークになることだってあります。
@くの字に曲がる沢のく←の位置に滝がある場合堆積側である右から高巻いた方が小さく巻けると言う先輩もいました。しかし側壁が登れなくては高巻きは始められない、「右か左か、登れる方の側から高巻く」ということになります。
@高巻きの始めに登る側壁やルンゼは岩の風化が進んでいて崩れやすいので注意が必要です。始めの人、二番目の人が崩れなくても、三番目で岩崩れが起きるなんてこともあります。崩れたら前後左右を見て体を交わすしかありません。岩崩れがなくても、「上に人がいれば必ず石が落ちてくる」と思いましょう。落石があったら、とにかく目をそらすことなく落ちて来る石を見てかわしてください。どうしてもかわせない場合は片手を犠牲にして顔に当たるのを防いでください。ルンゼやチムニーは落石の通り道なので、そこを通過する場合は一人ずつにします。ロープを出してルンゼを登る場合はくれぐれもルンゼの中に入ってビレーをしないようにして下さい。ロープを出してルンゼを登りいくつか落石があった時はロープが痛んでしまう(場合によっては切れる)可能性があります。すぐにロープの点検をして下さい。
@側壁を登った後はやぶこぎになります。①つかんだ樹木が枯れていて折れた、②つかんだ根は腐っていて切れた、③浮石をつかんだ、④倒木をつかんだ、⑤雪の多い地方では樹木が皆下に向いて幹が伸びていて,それに乗って下に向かってスリップした、⑥樹木がない草付きや泥壁になりだましだまし行ったけど足場が崩れた、⑦熟達者がやすやすと進んだので行けると思って行ったら行けなかった、などの理由で大転落する可能性があります。難しい高巻きの場合は早めにロープを出しましょう。トップとラストでロープをフィックスしたら、長めのスリングの片方をハーネスに、片方を固定ロープにかけて進むのが速いです。
@ころあいを見計らって下降し(経験がものを言います)沢に戻ります。懸垂下降になることも多いです。ルンゼをひとりづつ降りることもあります。
刺す虫
@盛夏の沢には、カ、ブヨ、ブユ、アブなどの刺す虫がいっぱいいます。油断をすると百箇所ぐらい刺されてしまいます。刺されて腫れた所をさらに刺されてボコボコになっちゃうなんてこともあります。
@虫よけスプレー、携帯式電子蚊とり、など様々に工夫してなるべく刺されないようにしたいです。服の上からも刺して来るので、編目がきっちり詰まっているか厚手の服を着用しましょう。スリングを牛の尻尾のごとく体の回りで振り回すという方法は休憩時に効果があります。ヘルメットの上からかぶる防虫ネットは暑苦しいものですが、キャンプ地についてから使うのには有効です。
@タープ泊や焚き火は楽しいものですが虫に対しての防御線は無いに等しいです。虫の多い沢ではテント泊(入り口やベンチレーターに防虫ネットがついたテントを使用のこと)の方が無難です(虫に強いタイプの人を除く)。
@虫に弱い人は虫の毒に対するアレルギー反応が大きくて、刺されてない所まで刺されたようにボコボコと腫れあがります。体全体が虫の毒に負けると秋になっても腫れが引かないこともあります(早めに医者に行きましょう)。ちなみに顔の腫れは虫に弱い人でも数日で引いてしまいます(人の顔はすぐれものです)。
@上越や東北の沢でも秋になれば虫はいなくなります。虫に弱い人は、虫の出る時期には、虫のいない沢(丹沢、奥多摩、など)にしか行かないというのがいいかも知れません。
@同じ刺す虫に蜂の仲間がいます。おでこやまぶたを狙ってくるツワモノです。トップを歩く人もセカンドを歩く人も刺されないのに3~4番目が刺されたりします。蜂のテリトリーを侵したので攻撃されたのです。社会生活をする蜂の仲間、社会的に認知された攻撃という仕事のプロ(蜂)に狙われたら逃げるのは至難の技です。沢の中より藪の中にいる時が要注意です。筆者はトップを歩くことが多いせいか沢で蜂に刺された経験はありません(そこらあたりに蜂への防御策のヒントがあるかも?)。
@スズメバチはどちらかというと人里で暮らしている蜂なので、沢登りの最中にスズメバチにやられたという話しは聞いていません。でも、あなどることは出来ません。スズメバチの毒に過剰なアレルギー反応を起こす人の中に「循環の異常が急激に現われる」人がいて、心臓マッサージなどの救命救急に至ることもあります。心配な人は病院でハチアレルギーの検査を受けておくとよいです。循環異常発現アレルギーと診断された場合は特効薬が処方してもらえます。
@ぼくは虫さされの薬の「ムヒ」(抗ヒスタミン剤が入ってる)の軟膏タイプをいつも(冬も)持って山に行きます。抗ヒスタミン剤は、カ、ブヨ、ハチからヒルそしてアサモノや痔にまで効き目があります。サリチル酸メチルが入っているのでサロメチールとかサロンパスのように使ったりすることも出来ます。マタズレ防止クリームにもなります。
@<ハチ>
社会生活を営んでいるハチ(スズメバチ、ミツバチ)によるものが多い
毒=スズメバチ>アシナガバチ>ミツバチの順
・毒による直接作用=局所の疼痛・腫脹・
……ミツバチの場合針をぬこうとして毒嚢をつまんで毒を注入しない
………抗ヒスタミン軟膏、ステロイド軟膏
………洗浄、冷却
・アレルギーによる症状
……15~20分で出現、全身の発赤、じん麻疹、痒み、嗄声、呼吸困難、喘息様症状
→血圧低下、意識障害、ショック
………ポイゾンリムーバーで毒を吸い出す(ヘビの項参照)、
………アナフラキシーショックが予想出される人はエピペン(医師処方の個人用注射薬)を携行する。
@アナフィラキシーショック(行きすぎた防衛反応)の症状 | |
全身症状 | 倦怠感、不安感、無力感、冷汗、 頭痛、悪寒 |
循環器症状 | 血圧降下、脈拍微弱、脈拍頻数、 心悖亢進、胸内苦悶、チアノーゼ |
消化器症状 | 腹痛or鳴、尿、便失禁、悪心、 嘔吐、下痢、口異物感、異味感 |
呼吸器症状 | 呼吸困難、喘鳴、喉頭峡窄感、 胸部絞扼感、くしゃみ |
神経症状 | 四肢末端部or口唇部しびれ感、 意識喪失、目眩、耳鳴、痙攣、 昏睡、くらくらする |
皮膚・粘膜症状 |
皮膚蒼白、血管浮腫、紫班、 結膜充血、結膜浮腫、口腔粘膜 浮腫、皮膚疹、皮膚一過性紅 |
ヒル
@9月の始め、裏丹沢のキューハ沢でヒルに血を吸われました。キューハ沢の終了点は「蛭ヶ岳」です。表丹沢にはいないけれど裏丹沢にはヒルがいます。沢登りシューズを這い上がり、靴下も這い上がり、足首のところからくるぶしの方に向かって、皮膚に食いつきしっかりと血を吸われました。しかも二匹。血を吸ったヒルは丸々と太っておりました。血を吸われた場所は痛くもかゆくもありませんが、1時間くらい血が止まりませんでした(ヒルジンという物質の作用だとのこと)。吸われた跡は小さな穴になって残り、痛がゆくなり、完全に消えたのは数週間後でした。それ以外の後遺症は七年経過しましたが出ていませんので、ヒルが感細菌やウイルスや寄生虫の媒体の役目をすることはないようです。8月の終わり、裏妙義の丁頭岩から沢コースを横川に向かって下山している時にヒルにやられました。休憩して腰を降ろした時にズボンを這い上がり、ベルトの所からもぐりこんで腹に達して、腹の血を吸われました。やっぱり二匹。
@2004年ごろから丹沢にヒルが増え始め、表丹沢の沢は元より市街地まで生息範囲を広げています。
@6月~9月ぐらいがヒル対策の必要な時期です。
@ヒルに対しては沢登用のネオプレンゴムで出来たスパッツが有効です。これで足首からの進入は防げます。じめじめした場所で半分濡れたような石の上に腰を降ろしたりしなければ上半身からの進入も防げるでしょう。
@登山用品店でヒル対策用のスプレー(例:ヤマビルファイター)が購入出来ます。現地で靴・足首・ズボンの裾などに吹き付けると良いです。
@濃い塩水をスプレーするのも良いです。ナメクジに塩をかけるのと同じ原理でやっつけることが出来ます。
@「山ビルが木の上から降ってくるから気をつけて」と、45年前の小学校の修学旅行で奈良公園を歩いたときのガイドさんが言っていました。上から降って来るのかあるいは足下から上がっていって上まで行って落ちるのかは疑問ですが、2009.8/31に丹沢の大山に上がる唐沢川に行った時、たしかにズボンの太股の所にポタンと落ちてきて尺取り虫歩きを開始したのを見ました。同じく小学生の時、渋谷駅から東映の映画館までの道の途中に漢方薬屋さんがあって、マムシとかシマヘビとかヒルを店頭で展示販売していました。ヒルは肩こりの人のコリコリの肩につけて血を吸わせたり、しもやけの人の赤く腫れた足の指につけて血を吸わせるという治療に使うのだと映画に連れて行ってくれた親戚のオバサンが言っていました。
熊
@小学5年の夏休み天城山で林間学校があった。天城山に登るとかいう(目的地は覚えていない)ハイキングの出だしの林道で鎖に繋がれた小熊(たぶん赤ちゃん)がいた。ジーパンを履いた足でちょっかいを出したら小熊に足をかかえ込まれてしまった。ジーパンの生地が厚くて小熊の爪は通らなかったけれど、太ももに立てられた爪はえらく痛く、離そうともがいても、まるで父親に抑えられた時のような大きな力で締め付けられた。必至になってもがいていたら小熊がなぜか一瞬、力を緩めたのでぼくは熊の羽交い絞めから逃れられた。ちょっとあせったけど恐わい気持ちはなかった。
@利根川本流を遡行したとき、雪渓をくぐりオオイッイクイという場所で僕らは沢の左岸にいた。熊はぼくらに気がつかず沢の右岸にいた。「熊だ!熊だ!」と僕らは異口同音に叫んだ。ぼくらに気付いた熊は全力疾走で逃げていった。
@北海道の日高山脈を横に縦断した。ヒグマを恐れてリーダーはしょっちゅうホイッスルを吹いた。ぼくはクッキー缶の蓋に紐をつけて首から吊るして、鼓笛隊のようにたたきながら歩いていた。テントから数メートル離れた所に一斗缶に入れた食料を置いてビニールシートを被せて寝た(食料をテントの中に入れずテントから離れた高い木に吊り下げておくと良いという話しもある)。幸いヒグマには出会わなかった、その前年に○○大学のWV部がテントの前においてあった食料を食べに来て、その後、テントのポールをゆすり出したので、あわてて靴も履かずにテントの反対側から飛び出してヒグマに後ろから次々に倒された遭難があった。
@ヒグマはホッキョクグマに次いで大型の熊である。日高や知床のようにヒグマの生息密度の多い所に入る場合は、車に乗っている時からヒグマや鹿の飛び出しに注意する。駐車スペースに着いたらまずクラクションを鳴らす。車の外に出た時からヒグマが近くにいると考え警戒する。クマスプレーを携帯し、鈴を鳴らし、ホイッスルを吹いたりみんなで掛け声(ファイト!ソーレ!)を出して進む。曲がり角で前方の見通しが悪い時は必ずホイッスルや掛け声を出す。
@普通、熊は人間が通過するのを草や木の陰から気付かれないように見ているのだが、餌の貯蔵庫(土盛りされてる)があったり、巣穴があって子熊がいたりする所に近づくと吠えながら襲ってくるのだと言う。
@熊と相対した場合、恐がってはいけない&逃げてはいけない。「心を落ち着けて熊の目を見て歌を歌いなさい」と言われている。でも、腰が抜けてしまって歌うことなど出来ないかも知れない、熊の項の前半部で記したように「熊を指さして、熊だ!、熊だ!と言う」のがぼくが現実に出来たことだ。
ヘビ
@「杖を地面にコンコン打ちながら進むとハブの方で逃げて行きます。」沖縄のガイドさんの話です。試してみる価値ありです。
@応急処置
…①中枢側の圧迫
…②局所の吸引
……ホイゾンリムーバー(吸い出し器具、山道具屋さんや薬局で手に入ります)を使います。
……減圧して60~90秒待つ(吸い出す)ことを3回行う、歯形が2か所の場合は交互に6回
…③抗毒素投与
…「さわがない!!、あばれない!!」がポイント
@主な毒ヘビ | |||
名 前 | 体 長 | 生 息 地 | 咬傷による主な症状 |
マムシ(年3000 例内死亡は30例) |
70cm以下 | 北海道~九州 | 復視、平衡傷害、血管透過性亢進、 循環血液量減少、ミオグロビン尿、腎不全 |
ハブ | 160~220cm | 沖縄諸島 | 嘔吐、下痢、頻脈、チアノーゼ、 血管透過性亢進、ミオグロビン尿、腎不全 |
ヤマカガシ | 80~120cm | 本州・四国・九州 | 全身性出血傾向、凝固障害、 DIC(数時間の潜伏期間) |
ウミヘビ | 約120cm | 九州・沖縄など日本近海 | 神経筋毒症状、呼吸抑制、 ミオグロビン尿、腎不全 |
@咬傷
…毒ヘビか無毒のヘビかは、きず口からおおよその判断が出きる。
……マムシとハブは前歯の位置に一対の毒牙(歯が生え変わっている時は二対)がある。
……ヤマカガシは奥歯の位置に牙がある。
……無毒ヘビは牙痕がなく浅い歯形が多数見られる。
……衣服の上から噛まれた場合は毒が入らない場合もある(毒の注入部は牙の先端ではない)。
@毒作用
…血液毒と神経毒があるが主に血液毒(出血、溶血、血液凝固異常、血管透過性亢進、浮腫、筋肉壊死、血圧低下)
……ハブとマムシでは直後より電撃性の疼痛、30分で局所の腫脹、牙傷部の血はかたまりにくい、その後,腫脹が中枢側に広がり皮下出血が出現
……ヤマカガシでは上記の症状は弱く出血もすぐに止まるが、数時間後に出血傾向が現れるので注意
……全身症状として悪心、嘔吐、腹痛、下痢、眼症状(複視、霧視、視力低下)
……………毒作用の結果としてショック(生命を維持にとって一番大切な内蔵に血液を集めてしまうので脳などの血液が足りなくなって起こる症状)が起こる。
……………ショックの防止は毛布などで体全体を包んでの保温。
@毒蛇咬傷の治療 | |
局所の処置と感染予防 ①吸収防止 ②毒の除去 ③感染対策 ④局所循環対策 |
・安静、咬傷中枢側の緊縛、局所の冷却 ・咬傷部の吸引 ・破傷風トキソノイド+破傷風人免疫 グロブリン、 広域抗生物質 ・咬傷部の切開(医師以外は切開しない) |
ヘビ毒の中和 | (抗毒素投与時にはアナフラキシーに注意。注射後7~10日 で血清病が出現することあり) ・ハブ抗毒素、マムシ抗毒素 …受傷後数時間以内なら、症状に応じて 10~40mlを点滴静注 ・ヤカカガシ抗毒素 …受傷10~50時間で投与され、数時間で出血傾向や凝固異常の回復が 認められている。 |
全身管理 ①循環管理 ②DIC、出血傾向対策 ③アナフラキシー対策 |
・輸血 …血圧、脈拍、中心性静脈圧をモニターし、低容量性ショックや急性腎不全 の治療、予防を行なう ・メシル酸ガベキサートやメシル酸ナファモスタットの投与、 血小板輸注や凝固因子の補充 …ヤマカガシ咬傷に合併した出血傾向には抗毒素投与が必要で、凝固因 子の補充は無効。またヘパリン投与は禁忌 ・毒蛇咬傷の既往のある場合 |
その他の治療 ①血漿交換 ②その他 |
・ヤマカガシ咬傷で血清が間に合わない場合やアレルギー体 質で血清が使用出来ないとき ・サファランチンがマムシ咬傷に使用されるが、本剤はマムシ 毒を中和する活性はない。 |
@蛇に噛まれそうになったことは何度かあります。
@岩手の大深沢に入渓して間もなくの広い河原を歩いていた時です。首からぶら下げた地図を見ながら歩いていました。地図から目を正面の岩の上に移すと、とぐろを巻いた「まむし」がカマクビをもたげてこちらを威嚇していました。「フギャー!」っと叫んで後ろに飛び下がりました(あと一歩踏み込んだら攻撃されていたと思います)。
@新潟の岩井又沢に行った時、中流域のゴルジュっぽい所でとぐろを巻いた「まむし」に前途を阻まれました(石を投げて追い払いました)。
@「まむし」の毒はそれほど強いものではなく、大人だったら噛まれても死ぬようなことはないそうです(小型の犬や小さな子供が噛まれると死んでしまう危険がある)。「はぶ」の毒はそうとうに強く、大人でも耐えられないそうです。
@蛇に噛まれたらすみやかに下山して病院に行きましょう(抗毒血清剤を注射してもらう)。と言っても、病院は遠いので、噛まれた傷口の上をしばって、毒を吸い出すことを試みるる方が良いかも知れません。傷口を数十分のオーダーで縛っていれば組織が壊死してしまうので、すみやかに吸い出して縛るのを解除して下さい。ホイゾンリムーバー(吸い出し器具、山道具屋さんや薬局で手に入ります)を使います。ハブのいる沖縄の山(西表の沢あたり)を歩く時はホイゾンリムーバーは必携です。昔は噛まれた跡を切開して血を吸い出すなどと言われましたが切開による感染の方が恐いのでぜったいに止めましょう。口で毒を吸うのも歯槽膿漏の患部などから毒が入る恐れがあるので止めましょう。沖縄の病院のお医者さんが「はぶ」に噛まれた患者さんに最初に行う処置は抗毒血清剤の注射でなくて、「傷口の上を縛ってホイゾンリムーバーで毒を吸い出すこと」だそうです。
@防御策としては、沢登用のネオプレンゴムで出来たスパッツをつけることです。それで、ヒザから下の蛇の攻撃には耐えられます。草の根や岩角をつかんだ時に攻撃されることがあります。手への攻撃に備え長袖のシャツを着る(虫や草かぶれや擦り傷の防止にも有効)こと。ホールドの付近をよく見てから手を出すこと(特にトップを行く人)ようにしましょう。皮製手袋は有効だけれど、ホールドの保持力が低下するので墜落の危険がある場所では使わないこと。尾根上を行くヤブコギの時はぜひ手袋を使いましょう。
@「Timtamのブログ:山行記」バックナンバー(2005年9月)「ぶなの根じゃなかった」を読んで下さい。
@咬傷
…毒ヘビか無毒のヘビかは、きず口からおおよその判断が出きる。
……マムシとハブは前歯の位置に一対の毒牙(歯が生え変わっている時は二対)がある。
……ヤマカガシは奥歯の位置に牙がある。
……無毒ヘビは牙痕がなく浅い歯形が多数見られる。
……衣服の上から噛まれた場合は毒が入らない場合もある(毒の注入部は牙の先端ではない)。
@毒作用
…血液毒と神経毒があるが主に血液毒(出血、溶血、血液凝固異常、血管透過性亢進、浮腫、筋肉壊死、血圧低下)
……ハブとマムシでは直後より電撃性の疼痛、30分で局所の腫脹、牙傷部の血はかたまりにくい、その後,腫脹が中枢側に広がり皮下出血が出現
……ヤマカガシでは上記の症状は弱く出血もすぐに止まるが、数時間後に出血傾向が現れるので注意
……全身症状として悪心、嘔吐、腹痛、下痢、眼症状(複視、霧視、視力低下)
……………毒作用の結果としてショック(生命を維持にとって一番大切な内蔵に血液を集めてしまうので脳などの血液が足りなくなって起こる症状)が起こる。
……………ショックの防止は毛布などで体全体を包んでの保温。
@蛇に噛まれそうになったことは何度かあります。
@岩手の大深沢に入渓して間もなくの広い河原を歩いていた時です。首からぶら下げた地図を見ながら歩いていました。地図から目を正面の岩の上に移すと、とぐろを巻いた「まむし」がカマクビをもたげてこちらを威嚇していました。「フギャー!」っと叫んで後ろに飛び下がりました(あと一歩踏み込んだら攻撃されていたと思います)。
@新潟の岩井又沢に行った時、中流域のゴルジュっぽい所でとぐろを巻いた「まむし」に前途を阻まれました(石を投げて追い払いました)。
@「まむし」の毒はそれほど強いものではなく、大人だったら噛まれても死ぬようなことはないそうです(小型の犬や小さな子供が噛まれると死んでしまう危険がある)。「はぶ」の毒はそうとうに強く、大人でも耐えられないそうです。
@蛇に噛まれたらすみやかに下山して病院に行きましょう(抗毒血清剤を注射してもらう)。と言っても、病院は遠いので、噛まれた傷口の上をしばって、毒を吸い出すことを試みるる方が良いかも知れません。傷口を数十分のオーダーで縛っていれば組織が壊死してしまうので、すみやかに吸い出して縛るのを解除して下さい。ホイゾンリムーバー(吸い出し器具、山道具屋さんや薬局で手に入ります)を使います。ハブのいる沖縄の山(西表の沢あたり)を歩く時はホイゾンリムーバーは必携です。昔は噛まれた跡を切開して血を吸い出すなどと言われましたが切開による感染の方が恐いのでぜったいに止めましょう。口で毒を吸うのも歯槽膿漏の患部などから毒が入る恐れがあるので止めましょう。沖縄の病院のお医者さんが「はぶ」に噛まれた患者さんに最初に行う処置は抗毒血清剤の注射でなくて、「傷口の上を縛ってホイゾンリムーバーで毒を吸い出すこと」だそうです。
@防御策としては、沢登用のネオプレンゴムで出来たスパッツをつけることです。それで、ヒザから下の蛇の攻撃には耐えられます。草の根や岩角をつかんだ時に攻撃されることがあります。手への攻撃に備え長袖のシャツを着る(虫や草かぶれや擦り傷の防止にも有効)こと。ホールドの付近をよく見てから手を出すこと(特にトップを行く人)ようにしましょう。皮製手袋は有効だけれど、ホールドの保持力が低下するので墜落の危険がある場所では使わないこと。尾根上を行くヤブコギの時はぜひ手袋を使いましょう。
@「Timtamのブログ:山行記」バックナンバー(2005年9月)「ぶなの根じゃなかった」を読んで下さい。
草かぶれ
@南アルプスの深南部、黒法師山から光岳へと北上縦走した。山の南面は背丈を越える笹藪、山の北面は笹が薄かったから北上でなくて南下の方が楽だと行ってみて気付いた。さて数日の笹藪こぎの後に帰京し鏡を見てびっくり、顔の皮膚が細かい鳥肌が立ったような感じでざらざらになっていた。1週間ほどでザラザラは引いた。笹にかぶれたのだ。
@増水に追われて、上越の藤原山から大水上山まで藪こぎをした。左手の親指の付け根あたりが水ぶくれよりひどい状態の感じでクチャクチャになった。医者に行ったら草かぶれだという。やけどと同じ治療を受けた。もしかしたら漆かぶれかも知れない、漆はそばを通っただけでかぶれるすごい樹木(草ではない)だ。
@高巻きや、増水からの脱出、源頭の詰めなどで藪に入る時、草かぶれに注意したい。スパッツをつけ、長袖のシャツを来て、危険な場所でないかぎり手袋をして藪に突っ込んで行こう。暑いけどそのがまんの方が、後で来る草かぶれや虫さされに腫れと痛みとか顔の皮膚がブツブツになって人前に出たくなくなる苦痛より数段楽なのだ。
焚火、きのこ、山菜、魚釣り
山の食料のページの焚き火、きのこ、の項、山の理科ノートのぺージの山菜栽培の項、及び、山の道具のページの渓流釣りセットの項をごらん下さい。
地形図と読図
スマートフォンにGPS対応地図アプリ(ヤマップ,ジオグラフィカ等)を入れておけば、いつでも地図上に現在地を指し示すことが出来るようになりました(こちらをごらん下さい)。電池切れとか水没とか吹雪とかでスマートフォンが使えなくなる心配も複数のメンバーのスマートフォンをバックアップにすることで対応出来ます(交代でスイッチを入れる)。以下のGPSの無い時代の方法と併用すればより確実な読図を行うことが出来ます。
@読図は現在地が確実に分かっている所(電車の駅、バス停、名前のわかっている橋など)から始めます。慎重に入渓点を見つけて沢に入ります。入渓点の見つけ方についてはこちらをごらん下さい。
@枝沢の流入する場所など現在地を特定出来そうな場所に来るたびに地図と地形を見比べて「ここかも知れない?」とか「ここじゃないかと思う」などという断定しない感じで現在地を推理します。そうすること積み重ねていると、結果としてそれが地図をたどって歩いていることになって、大きな二俣のような所に来た時にかなり正しいという実感を伴って現在地の確認が出来るのです。
@枝沢の流入する方向に矩形のシルバコンパスの長辺の向きを合わせます。シルバコンパスの回転する部分のプラスチックに書かれた矢印(⇒)と方位磁針の方向を合わせます。次にシルバコンパスを地図上に置き、地図に書かれた磁北線と矢印(⇒)の向きが一致するようにします。シルバコンパスの長辺の向きが地図上の枝沢流入の向きと一致しているか確認します。同じようにして同地点での本流の流れの向きも地図上のそれと一致するか確認します。一応ここみたいだなと思って先に進むのです。
@二万五千分の一の地図は地形を読むのには便利ですが、登山道の記載は異なっていることが多いので注意が必要です。昭文社のエアリアマップがカバーしている山域なら登山道の記載はエアリアマップの方が正確みたいです。過去の記録も大切な情報源ですが、右俣と左俣が間違えて書かれているなんてこともあります。遡行図だけに頼らず、地図を見ながら登る努力を繰り返すうちに、間違った登山道の記載に翻弄されるなんてことは無くなります。
ビバークポイント
沢の中で泊まるのは最高です。焚き火を囲んで山菜の天ぷらを揚げ、岩魚の塩焼きを賞味して、岩魚の骨酒に酔いしれるのは至福の時です。夕方が近づいたらビバークポイントを探しながら歩きます。
①ゴルジュの中は増水の時に逃げ場がないのでなんとしても避けましょう。
②平らな砂浜のような感じの所でいかにも寝心地の良さそうな所は避けましょう。平らな砂場は増水の時そこに水が留まっていた証拠です。
③どうしても水流が洗った証拠のある場所でビバークしなければならない時は、簡単に側壁に逃げ登れる場所を選んで下さい。
④水流から2メートルぐらい上がった樹木のある平坦な高台をみつけましょう。そこは水が来ないから土の広場になってるはずです。
⑤側壁から落石が来ない場所でなくてはなりません(割れて尖った石のかけらが落ちてる所はNGです)。
⑥場所を見つけたら整地します。鋸(鋸必携、ナタは良くない)で灌木を切り倒して(必要最小限にしましょう)広場を作ります。岩が転がっていたらアイスバイルのシャフトを梃子にして持ち上げると取り除ける場合があります。2~3人で30分も整地作業をしていると見違えるように立派なテント場になって来ます。
⑦2本の樹木の間にロープを張り、スリング2本をブルージック結びで巻き付けて、そこを支点にタープを張ります。
⑧2枚タープを張る場合は1枚をロープの上に、1枚をロープの下に張れば、重なった部分が作れるので広い雨避けスペースが作れます。
⑨テントを張る場合もあります。整地をしっかりして、テントの底がきちんとした長方形(平行四辺形はよくない)になっているとポールが曲がりません。沢の中は風が弱いので張り綱は張らなくても大丈夫です。テントからの緊急脱出に備え小さなナイフをいつも首から下げていましょう。
⑩タープやテントの下に銀マットを敷いたら、寝床の出来上がりです。
⑪焚き火の場所はタープやテントから相当に離れた所(火の粉がナイロン地に穴を空けるから)で、水の近く(消火しやすい)にしましょう。
⑫山頂付近の高い所でビバークする場合はかなり寒いのでタープの下でツエルトにもぐるのがいいです。
⑬山頂に近くなると平らな場所が求めにくくなります。斜めの場所に寝る時は大きな石を足の所に置いて、それが柵になって寝てしまっても、ずり落ちてタープやツエルトの外に体が出て行かないようにすると良いです。特に、斜度のきつい所でツエルトにもぐっていて、下に寝ている人に引っ張られると、上に寝ている人がツエルトのテンションを頭で支えることになってしまいつらいです(上で寝た人は首を傷める可能性有)。
⑭衣類が濡れていては眠れないので、乾いた非常用衣類に着替えます。翌朝、出発前に濡れた衣類に着替えなおします。
通信手段
@連絡しやすい人になる・・・装備の分担、集合場所や時間、悪天候対応、などなど、リーダーはメンバーに連絡を取ろうとすることが多いものです。
それに応えてなるべく連絡の取りやすい状態を作りましょう。携帯電話を常に持ち歩き、メールチェックは頻繁に行いましょう
(メールで連絡を受けたら即座にリターンメール)。家の電話はFAX&留守番電話つきのものにしましょう。バソコンはインターネットにつなぎましょう。
リーダを含めて山の仲間に対しての「連絡のバランス感覚」と、歩き方・登り方・確保の仕方などの「行動のバランス感覚」
との相関関係は大きいように思われます。
@携帯電話・・・丹沢のモミソ沢の大滝は最近(2006年現在)、りっぱなボルトが打ち足されて安心してリード出来るようになりました。
1999年の秋、後輩のO君は大滝をリードしてなぜか落ちました。そしたらプロテクションのハーケンが抜けて、その下のプロテクションで止まりました。
怪我は足の骨折ですんだのですが、同行は初心者のA氏のみ、沢の中での行動は難しい状態になってしまいました。
それで、モミソ沢の大滝から携帯電話で東京のM先輩に救助依頼の連絡をしました。それを受けて、M先輩は勘七ノ沢を遡行中のKN氏、Tさん、
Nさん・・・の携帯電話に次々と電話をかけました。勘七ノ沢にいる仲間が救助に向かうのが一番早くて確実だと判断したからです。偶然、
携帯電話の電源を切っていなかったKD氏に電話がつながりました。勘七ノ沢の左岸の支沢から大倉尾根を越えての救助作戦が展開され、
O君は翌未明には病院の人となりました。携帯電話の通話エリアはさらに拡大されることが予想されます。電池の消耗を防ぐため電源を切って持ち運ぶにしても、
同じ山域(特に、丹沢や八ヶ岳など携帯の圏内の可能性が高い山域)に仲間が入っている場合は定時交信ならぬ定時メールチェックをするのがいいと思われます。
@アマチュア無線・・・2006年の夏に剣沢をベースに剣岳の源次郎尾根を登ってきました。
携帯電話は剣沢では圏外で剣山頂では場所によってアンテナマークが立ったり立たなかったりでした。中継局が衛星にならないかぎり、
深い沢の中まで圏内になることは考えられないわけで、沢の中の通信手段の主役はこれからもアマチュア無線のトランシーバで有り続けると思います。
離れている複数のパーティ間で連絡を取り合うだけでなく、滝の上と下やゴルジュの入り口と出口で会話が出来ます。
沢の中で事故があって在京責任者等に連絡するとなったら尾根に登ります(側壁の登攀有りかも)。コールチャンネル(430.00MHz)で全体に呼び掛けたり、
バンド内をスキャンして交信している局の話し中に割り込んで連絡を中継してもらいます。
アマチュア無線の電波は直進するので山の上に中継する人を置くと連絡出来る範囲を広げることが出来ます。
TimtamのコールサインはJE1AUZです。常用周波数帯は437.140MHzと437.220MHz、437.660MHz、437.880MHzです。
こちらもごらん下さい。
@連絡員となる・・・1984年9月、谷川岳の東尾根を登攀した時のことです。仲間が一人、落石を受けて動けなくなってしまいました。
3人パーティだったので怪我人とリーダーが残り、私は1人山頂に向かいました。下るより早く人のいる所に出れる位置(山頂には一般登山道が有り、
まだ人がいる時間に着ける)にいたからです。通常ならロープを出して登るところでもフリーでガンガン越えて(クライマーズハイの状態ですね)、ハイスピード&走るような気持ちで登りました。山頂に着いて、たくさんの人が援助してくれて、ヘリコプターが飛んで最速で怪我人(見たより小さな怪我だった)は病院に運ばれました。・・・自力で下山出来ずに救助要請することになって、携帯電話も無線もだめで近くに協力を要請できるパーティもなく、連絡員を出そうということになった場合、ロープ、登攀具、食料、人手などは十分に考慮して分割しましょう。連絡員となった人は安全を十分に配慮して行動しなければなりません(連絡員が途中で怪我して動けなくなったら大量遭難に発展します)。連絡内容は紙に書いて持って行くべきです。内容に脚色はいりません。「アクシデントの現場で」の項をごらん下さい。
@在京責任者・・・深い沢に入る時などは、「その山行期間中は山に行かない&山のわかっている人」に在京責任者をお願いしておくようにしましょう
(Timtamの場合は松浦代表が在京責任者)。登山届の上の方の目立つ所に在京責任者の氏名や電話を書いておきましょう。
家族や会社の人には山からの帰りが遅かったら在京責任者に電話するように言っておきましょう。それで、事故ある時の第一報は在京責任者にします。
山を知らない家族に連絡しても右往左往するだけで対応が遅れてしまいます。警察や消防への連絡は在京責任者から連絡してもらうようにします。
警察は事情聴取してその報告書(メンバーの個人情報と事故の要述)を作ってからでない次に進んでくれません。警察の事情聴取の間、
山行メンバーは釘づけになります(いろいろな動きが止まってしまいます)。そういう警察の動きを知ってお世話になれば、警察は心強い味方となってくれます。
手順を間違えた例を以下に記します。…奥穂の南稜を登りそのまま西穂に縦走という計画(1998年8月)でした。西穂高岳の登りにかかる少し手前で、
Ino先輩は先を歩く女性パーティに向かう一抱えもあるような落石の動きを手で押さえて止めようとしました。
そしたらIno先輩の右手の指二本が皮一枚で繋がってる状態になってちぎれてしまったのです。応急処置をして、
急ぎ西穂にある岐阜大学医学部の出張診療所に向かいました。診療所の要請でヘリコプターが飛びました。
Ino先輩は上岡の病院に搬送され、指の接合手術を受けました(手術成功、指2本共無事)。
調書を作るべく岐阜県警の人がロープウェイで上がって来てIno先輩のパーティを探したのですが見つけられませんでした
(Ino先輩がヘリに乗ったので一時的に解散していたため)。そしたら、岐阜県警の人は診療所に残されたIno
先輩の登山届にあるメンバーの家に上から順番に電話をかけていったのです。電話の内容は「○○さんが見つからないから住所や職業などを確認したい」
ということなのですが、「山にいて見つからない」と聞かされた幾つかの家族軍団はパニックに陥ってしまったのです。
幸い、ロープウェイで下山していたメンバーが次々に家に下山電話をしていた頃と重なって、大騒ぎになる前にパニック状態は沈静となりました。
「事故発生の知らせを受けたら」の項をごらん下さい。
合図(技術のコンセンサス)
@2004年5月第四週の葛葉川は締め切り手続きのタイミングが遅れて、定員10名を大きく上回る18名の大部隊となりました。遡行の途中から雨が降り出し気温も下がって長く立ち止まるとかなり寒い状態でした。中盤にある高さ7メートルの滝をリーダーのMはロープを出して登り、ロープウェイ方式(「岩登りの注意」のページにあるエイト環グリップビレーの項をごらん下さい)で後続のメンバーを滝の上げようとしました。一本のロープでは時間がかかるので、「もう一本ロープを上げて!」と下にいるスタッフ会員のSさんに向かって叫びました。でも、滝の音に消されて内容が伝わりません。それで、Mは自分の手に持ったロープを「コレ、コレ!」と指差して、その指を上に向かって二回突き上げて「アゲテ、アゲテ!」とジエスチャーしました。何度やってもなかなか伝わらず、もう一本のロープが上がったのは10名ほど滝の上に上がった後でした。
@沢登りの技術は目的や安全度は同じでも、山岳会や登山教室や登山ガイドによって微妙に手順が異なります。Timtamの沢に何度も行く会員であるならばTimtamの沢登りの技術でコンセンサスをとっておかなければなりません。Timtamの沢に二ヶ月に一度くらい行きながら1年も経てば、沢の音が大きくて、会話がまったく聞こえなくても、Timtamのやり方では、次にどんな行動に移るかがわかるようになるのです。予定している行動に移っていい時は両手で頭の上に丸を作り、ちょっと待たねばならない時は両手を頭の上でクロスしてバツを作ります。少なくともリーダーとサブリーダーはそれだけで通じる関係であるべきです。
@丸やバツを出しても見えないし声も聞こえない時にはホイッスル(バスケットの公式審判用のやつが音が大きい)を吹きます。丸の場合は鋭く一吹き「ビー!」、バツの場合は短く何回も吹きます「ビ、ビ、ビ、ビッ!」。
@丸やバツも見えないしホイッスルも聞こえない場合はロープの動きをみて判断します。トップの引くロープが出ていってロープ一杯になったら、合図が聞こえなくてもセカンドは登り出します。3人目、4人目がいる場合はセカンドは二本目のロープを引いて(ビレーしてもらうのがベスト)登ります。岩登りの注意のページの「ビレー解除の声が届かない場合」の項もごらん下さい。
プロテクション
@生きた樹木(大きく力をかけても抜けない太いやつ)の根元にスリングをタイオフ(一回巻きのブルージック結び)する。
@細い樹木だったら数本を連結する。一本づつ根元にスリングをタイオフしてカラビナをかけ、そのカラビナを数個、ロープで連結(クラブヒッチを使用)する。
@クマ笹数本の根元をブルージック結びで束ねる。
@岩角やチョックストーンにスリングをタイオフする。
@大きな丸石(本気で動かそうとしても動かない重たい石)にスリングをタイオフする。
@ハーケンを打つ。
@ボルトを打つ。
@チョックやフレンズをセットする。筋力や釘打ちの経験が少なくてハーケンを上手に打てない人は、チョックやフレンズについて研究しても良いかも知れません(でも、筆者はハーケンの方を信頼しています)。
@雪の中にスリングを結んだ棒切れを埋める(棒切れがなければスタッフバックに雪をつめたもので代用出来ます)。
@プロテクションに関連する言葉は多いです。以下なんのことだかわかりますか?
「ランニングビレー」「ネイリング」「カムデバイス」「リングボルト」「RCCボルト」「ハンガーボルト」「ハーケンとアングルハーケン」「コパトーン」「ラープ」「エイリアン」「スライーダー」「キャメロット」「ナッツ」「ヘキセントリック」「デッドマン」「ポラード」「芯抜きスリング」「クイックドロー」「ヌンチャク」「クリップ」「ピン」「支点」「NP:ナチプロ」などなど。
@信頼出来ないプロテクションは「小指くらいの太さの樹木にタイオフしたスリング」、「ボコボコ言う浮いた岩に打ったハーケン(ハーケンの頭をハンマーで叩いてもカンカンという金属音がしないやつ)」、「同じリスに打ち込まれた二本のハーケンの内初めに打ち込まれた方」、「根元まで深く打ち込まれていて効いているように見えるリングボルト」、「草付の草を束ねたやつ」・・・などなど、でしょうか。そういう信頼出来ないプロテクションを頼りにして登らなくてはならない場合があります。
「ホールドやスタンスには確かめてから力をかけるくせをつけること。」
「レストステップで登ること。」
「落ちない登り方に徹すること。」
「クライムダウン出来る登り方をすること。」
*レストステップ(静加重静移動)=重荷を背負って歩くときやゴロゴロした岩場や滑りやすい不整地を歩くとき、
人(ヒト)は自動的に確かめてから力をかけます。つまり「・・・歩幅せまく足を出し、滑らないか崩れないか確かめながらその足にそっと加重し、
加重しながら全体重を出した足の真上に移動して、その足一本で立ち上がり、それから後ろにあった足を持ち上げ歩幅せまく前に出し、
滑らないか崩れないか確かめながらその足にそっと加重し、加重しながら全体重を出した足の真上に移動して、
小さく勢いをつけて(=よいしょ!)その足の真上に立ち上がり、
以下くりかえし・・・。」という歩き方をするのです。この歩き方は安定して歩けるだけでなく石を落とすことも少なくて基本の山の歩き方と言えます。
クライミングジムでの練習方法
①沢登りを目指す方がクライミングジム(以下:ジム)に行く場合は「足の使い方の自動回路を身につけること」を目標にするといいと思います。
ジムに通う大多数の人の目標(登れるか登れないかの境目にあるルートの完登)とは違うんだと心に決めて下さい。
②準備運動を充分に行って下さい。
③より高いグレードが登れるようになるのでなくて「ゆっくり2時間以上の時間をかけて腕が疲れて登れなくなるまでトレーニングすればそれでいい」
と思って下さい。
④30手ぐらいのルートボルダー課題をみつけ、ジムに行く毎に同じ課題に取り組んで下さい。
*ルートボルダーはクライムダウンとトラバースが課題になっている点で優れています。
⑤既成のボルダー課題にトライする場合は、終了点で終わりでなくて、
スタートホールドまで戻って終わりにするようにして下さい。
⑥同じ日に何度も何度も同じ課題に挑戦すると同じ所の筋肉や腱を使いすぎて傷めてしまういますから3回くらいで止めて下さい。
⑦上記の練習を三か月も行うと、ハンドホールドを取ったとたんに足が理想的な(体の保持が一番楽な)
フットホールドに向かって自動的に動くようになります(実は、足だけでなく腰も肩も腕も体全体が自動的動く)。
これが「足の使い方の自動回路を身につけた」状態です。小さい頃に自転車の練習をしていていつのまにか乗れるようになっていた状態に似てます。
「きっと、沢の中にあって、しなやかで安定した動き(ネコのゆっくり歩きみたいに丁寧に足を置いて歩く)がいつも出来るようになるでしょう。
⑧月に一度程度でも良いですから、定期的にそして長く続けるようにして下さい。滝やゴルジュをリードする人には岩登りトレーニング(含:ジムトレーニング)
が必要だと考えて下さい。
問題解決能力
@「行きたい山を思い」「企画して(計画書を書くこともある)」「装備を揃え交通機関や宿泊を手配して」「実際に出掛けて行き」「山から帰って余韻を残す(片付けと次の山の準備含む)」といった行程が登山です。それは「企画して」「設計図を書いて」「材料を集めて」「地道に作る」「作り終えて余韻を残す」といった行程のモノ作りに似ています。以下は最近読んだモノ作りの本(渡波
郁 著 「CPUの創り方」マイナビ出版 高校生からが対象の電子工作技術書 滅多にないくらいわかりやすい)の一説(P279)です。「モノ作り」を「登山」と読み替えてみて、『ウウム・・・考えないとな!』と思っています。
「モノを作った経験があるヒト」が極端に減っているようなので、あえて当然のことを書きます。
問題を自力で解決すること自体がモノ作りですし、「問題が起こらないようになっている」または「誰かがフォローしてくれる」のはモノ作り風のテーマパークでしかありません。
逆に自力で問題解決をするのがイヤな人はモノ作りするべきではないです。これは、解決出来る自身がなければトライするなという意味ではありません。自力で解決しようと努力して、しかしながら結局は
完成しなかったとしても、それこそは貴重な経験だと思います。
「滝の落ち口で懸垂下降下降をセットする」という問題を解決中の筆者・・・セット後、信頼出来るリーダーのチエックを受けてから使用すること(懸垂下降でロープのセット間違いによる事故は多い)。
課題:寺の沢の沢登り、地図上ででテント泊適地を探してみましょう
答え:①と②と③の適地が見つかる。
①は水から遠いをがまんすればOKだ。宿泊するような大きな沢の場合、稜線上は高度が高くて、夏でもシラフカバーのみで寝るには寒い(この地図の場合は高度が低いからシラフカバーで大丈夫)。
②は一応正解の場所だ。傾斜が緩く上からの落石の心配が少ない。沢床から10m上なので増水の危険が少ない。
③は自動車道路(林道でない)から近いのをがまんすれば一番良い場所だ。
*良いテント場の条件・・・「平ら」「整地が楽」「水場が近い」「落石が来ない」「増水が来ない」「強い風が吹かない」「撤退が容易」「頭上を樹木が覆わない(雪山の場合)」「雪崩が来ない(雪山の場合)」
@「○○動物園には鶴と亀とが合わせて26匹います。鶴と亀の足の数の合計は80本だそうです。○○動物園にいる鶴は何匹で亀は何匹ですか。」 沢登りでなくて算数の鶴亀算の問題です。この問題に対しては以下のような様々な解き方があります。
①小学校の算数の知識だけで解くと次のようになります。
26×2=52…26匹に亀が混じらず全部鶴だったとすると、足の数は52本
80-52=28…実際の足の数は80本だから52本より28本多い
4-2=2…亀が1匹につき足が2本多くなるから、28本多いということはそれを2で割って
28÷2=14…亀は14匹。鶴と亀を合わせて26匹だから
26-14=12…鶴は12匹いる。 (答え)鶴12匹、亀14匹
②連立方程式では鶴をX匹、亀がY匹として、X+Y=26、2X+4Y=80 を解きます。
③1元1次方程式では 2X+4(26-X)=80 を解きます。
④解析学的に解く場合は亀が1匹だと鶴は25匹で54脚、亀が2匹だと鶴は24匹で56脚・・・と考えていって法則性を見つけて解きます。
@鶴亀算の問題を出したら、すぐに分かってしまう人、答えを出すのに時間がかかる人、練習を積んだら出来るようになる人、
算数は嫌いだからと言って始めからやらない人、などなど人は様々です。
@滝が登れるか?ゴルジュが突破出来るか?草付の側壁をだましだましで登れるか?・・・遡行者は沢の中でたくさんの問題を出されます。
その問題の解決力は人によって様々ですが、その能力が身に付いていなかったらヤバイいです。
沢登りは岩登りよりも雪山登山よりも危険“落とし穴のような危険”の多いジャンルだからです。
@いくら沢登りの経験を積んでも、沢での問題解決力が身に付かないタイプの人がいます。そういうタイプでありながら本人がそれに気が付いていない場合は
相当に危ないです。その人には「山歩きとかエアロビとか水泳とかマラソンとか基本的に安全で個人で出来る種目に移行すべきだよ!」
もしくは「沢みたいなヘルメットをかぶる山に行きたいならガイド登山に徹するべきだよ!」
と言ってあげねばなりません。
@算数の問題の解決能力は、沢での問題解決能力と少なからず相関関係があると感じています。
以下の和差算の問題を小学校の算数の知識だけで(方程式や解析学的方法を使わないで)解いて自己診断をしてみて下さい。
「太郎さんは次郎さんよりも4500円多く持っています。次郎さんは三郎さんよりも320円多く持っています。
太郎さんと次郎さんと三郎さんの持っているお金を合わせると10000円になります。三郎さんはいくらお金を持っていますか?」
…答えはこちらです。
メンバーシップ:役割分担
@岩登りにはなるべく二人で行くのが良い・・・<解説はこちら>・・・が、
沢登りの場合には4~6人ぐらいのメンバーを集めたい。もっと多くてもいいのだけれど、滝などの悪場の通過に時間がかかりすぎたり、
キャンプ地の確保が難しかったりして軽快でないから行ける沢がかぎられてしまう。反対に1~3人と少ない場合は何かあった時に人手が足りなくなる。
例えば、濁流の中でロープに吊られてしまうなんてことになってもビレーヤーの回りに人手がなければ水流から引き出すことが出来ない
(ロープを切るしかない)し、パーティを二つに分ける場合は単独行動者が出ることになる。
@沢登りには多くの役割(メンバーシップ)がある。その役割はリーダーが決めることもあるけれど、知らず知らずの内に決まっていることも多い。役割分担を間違えると危険な場合もあるので注意が必要だ。
@以下にその役割を列挙してみよう。
①滝などの悪場をリードする役、岩登りが抜群に上手な人が担当する。
②滝などの悪場をセカンドでしかもロープを背負って登る役、岩登りが上手で、大高巻や藪こぎに強い人が担当する。
*沢登りでは初心者や体力的に弱い人はセカンドでは登らない。滝の上に先にロープと屈強な人を上げてしまう必要があるからだ。
③沢登りをこよなく楽しむ役、ナメとか焚き火といったことをこよなく好む人が担当する。
*滝の登攀とかゴルジュの突破や大高巻なんていう大冒険も楽しいけれど、自然の中にとけ込むような沢登りの要素はそれにまさるサムシングがある。より高くより困難を求めない所に、記録を追わない所に、沢登りの魅力が凝縮している。
④沢登りをはしゃいで楽しむ役、感性の豊かな人が担当する
*きれいな水の流れに入って子供のようにはしゃぎたくなるのが沢登り、みんなではしゃぐべし。
⑤最後尾を行き全体をフォローする役、慎重で穏和な性格の人が担当する。
*全体を見守ってくれる役の人がいて、安心して先に進める。この役の人がいなかかったら、自分のレベルより一段以上下げた沢に行くべし。
沢登りの個人山行を青山一丁目山岳会が許可する条件
*沢登りはグレードアップを求める志向に適さないジャンルです。でも、条件はと問われることがあるので以下に記します。
1級の沢への条件
①ビレーヤーズグレード準4級を取得していること。
②1級→1級上→2級というグレードアップ志向の考えに慎重に対応出来ること。
*沢登りのグレードは水量や天候などの状況により大きく変化します。
③当該山行前三ヶ月以内に日和田山や鷹取山の岩場等の外岩アルパイン系ゲレンデでトレーニング
(概ねリードで登る)していること。
④連れて行く、連れて行かれるの関係になっていないこと。
2級の沢への条件
①ビレーヤーズグレード4級を取得していること
②表丹沢の1級~1級上の沢20本程度の沢登りのリーダー経験があること
リーダー経験とは全体にリーダーシップを取っていることに加え、ロープを出す部分は概ね全てリードしていることを言います。
少なくとも日本の山だったら、連れて行かれるなら行かれないルートはないと言えます。どこのルートを登ったと言うだけの登山経験は当てにはなりません。
③当該山行前一ヶ月以内に日和田山や鷹取山の岩場等の外岩アルパイン系ゲレンデでトレーニング(概ねリードで登る)していること。
④連れて行く、連れて行かれるの関係になっていないこと。
*日曜に数パーティはいつも入るような気ルートに、連れて行ってもらうのであれば、行けてしまうので、
初心に近い人にほど許可条件は緩やかのものとなります。しかし、実力差がはっきり上の人に連れて行ってもらうような山行に何度も何度も出かけて行くことは
青山一丁目山岳会の方針ではありません(少ない回数ならば、それはある程度必要なことなので、OKです)。
3級以上の沢への条件
谷川岳の岩場、北岳バットレスなどいわゆる岩登り本番ルートに向かう個人山行の許可条件
に同様であること。
家族の条件
参加メンバー全員の家族が「その山行には遭難事故の可能性があり、自己責任の元に参加メンバーになっている。」と承知していること。
トップをビレーするビレーヤーの位置
1、トップをビレーする場合のビレーヤーの立ち位置は以下を基本とする。
1-1 登りだしから中間支点三つ目をセットをするまで…一個目の中間支点の真下近くで落石が来ない所の岩壁にピッタリ張り付いた位置でビレーする。
トップが落ちたら真上に引き込まれながら衝撃を吸収する。落石には充分注意する(上に人がいれば大なり小なり石は落ちて来る)。
1-2 トップが中間支点を三つセットしたら…岩から2~3メートル離れてもOKであるが、トップの動きには細心の注意をはらい続けること。
1-3 トップがルンゼ(凹状)の中を登る場合…ルンゼの中は落石の通り道なのでルンゼの外に出てビレーをする。
2、西丹沢の鬼石沢の避難小屋から三番目の滝で8メートル登った所で中間支点を一つセットしてさらに
2メートル登った所で動く大岩と共に落ちた。中間支点があるのにそこで止まらず。10メートル下まで落ちてしまった。
滝から離れて滝壺の縁にいたビレーヤー(体重の超少ない女性だった)が中間支点に向かって5メートルほど引きずり込まれてしまったからである。
10メートル落ちたのだが墜落のエネルギーがビレーヤーを引きずることで吸収されていたので大きな怪我はしないですんだ。
岩角などに当たらなかったのは運が良かったとしか言えない。以下応用例を示す。
2-1
滝があって滝壺があってビレーヤーがいる場合は、ビレーヤーが滝壺に引きずり込まれることが予想される。そういう場合はビレーヤーの後方にセルフビレーをセットしなければならない。その際はセルフビレーの支点と1個目の中間支点を結ぶ直線上にあって、セルフビレーのロープがわずかにたるむ(テンションをかけない)位置に立つ。トップが墜落したらテンションがかかるまで引き込まれるが、それによって墜落のエネルギーが吸収されることになる。
2-2
高巻きの開始などで沢の側壁を登る場合は多くの落石が予想されるので、側壁から離れてビレーをしなければならない。ビレーヤーの後方にセルフビレーをセットするならば(するしないはその場所の状況による)、落石を避けるエリアが確保出来る程度にセルフビレーのロープを長くすること。大きな屈強な男性がビレーヤーとなってセルフビレーをセットしないで済ませるのがベターだ。
2-3
華奢な人は後方にセルフビレーをセットする方法を採用しない方が良い、トップの墜落によって中間支点めがけて(水平やや斜め上の方向に)ハンマーで叩くような大きな衝撃を受けるので、腰を傷めてしまう可能性があるるからだ。華奢の人の場合は後方にある立木や大岩などを利用した支点ビレーを使うべきである。ロープの操作性が少し悪くなるのと、中間支点にかかる負担がほんの少し大きくなるデメリットは無視するしかない。
2-4 日和田山の岩場のように、緩傾斜の岩場に連続して登攀対象となる急傾斜の岩場がある場合、急傾斜の岩場の方の岩にピッタリ張り付くことが出来ないので、ビレーヤーの後方にセルフビレーをセットする方法を用いる。
2-5 シングルピッチの場合は通常はセルフビレーをセットしないが、ビレーヤーの立つ位置の足場が悪くトップの墜落の衝撃でビレー態勢が崩されることが予想される場合は、態勢が崩れない方向に働くようにセルフビレーをセットする。
2-6
トラバースしたりハング越えたりするルートの場合は、墜落したトップを安全なテラスに降ろせる工夫(トップに補助ロープを引かせるなど)をしてからビレーをする。
2-7
沢のゴルジュでトップが側壁をへつる場合はゴルジュに入る前の河原でビレーをする。トップは中間支点にロープを通さずに進み(中間支点を用いて人工登攀するのは可)、落ちた場合は流れに乗ってビレーヤーのいる河原まで戻る。ビレーヤーは高速でロープをたぐりトップを河原に引き寄せる。なのでエイト環やATCなどのビレー器具は用いない。ロープは手で持つのみ肩がらみもしない。
2-8
沢の渡渉の場合はビレーヤーが一人の場合は下流の河原でビレーをする。渡渉に失敗して流されたらへつりの場合と同様にビレーヤーは高速でロープをたぐり、トップを河原に引き寄せる。なのでエイト環やATCなどのビレー器具は用いない。ロープは手で持つのみ肩がらみもしない。ビレーヤーが二人になれる場合は川上の河原にもう一人が立つ。川上のビレーヤーはトップが流されたら、ロープの流れをコントロールして下流側ビレーヤーが河原に引き寄せるのに協力する。ビレーヤーが三人以上になれるなら、三人目以後は川下の河原に配置してロープを引き寄せる力を増強する。
2-9
デージーチェーンの縫い目の強度は割と小さくて、大きな衝撃加重には耐えられない。セルフビレーは必ずメインロープでセットしてデージーチェーンはバックアップとしてのみ使うこと。ちなみに筆者は沢登りにデージーチェーンは携行しない。
2-10
トップの登りだしから中間支点一つ目をセットをするまで、スポット(トップが墜落したら手で支えて安全に着地させる)を行う人がいるが、安全でない場合が多い。スポットは、ボルダーの下の平坦な広場で、大きなスポンジマットを敷いて行う性質のものであることを知っていなければならない。同じく、中間支点二つ目くらいまで、しゃがみこんでビレーし、トップがクリップする時に立ち上がりながらロープを出すビレーヤーがいるが(フリークライミング競技のやり方)安全でない場合が多い。座っていては、トップの墜落の際に、走り出したりしゃがみこんだりして、高速でロープを引くことに対応出来ない。