遭難事故対策ノート

遭難事故対策ノート


 
遭難対策の心構え
危険バイアス
人は自分に危険がせまっている時に「どうせ間違いだ」とか「自分だけは大丈夫」とか思ってしまいます。脳は自動的に危険でない状態に自分はあると想定してしまいます。

意志力
危険バイアスを克服するためには、「もしかして無駄かも知れないけれど、まずは危険を避ける行動をしよう!」と思う意志を鍛えることです。

5秒から70秒
災害等で壊滅状態になった場所から助かった人は、5秒から70秒の間に回避行動を起こしているという統計があります。危険がせまったと察知したならば、まずは回避行動を起こすべきです。

遭難の原因(どんなに注意していても、どんなに安全と言われているルートでも事故は起こる)。
①知識不足、準備不測、トレーニングの不足

②先天的な運動能力(バランス感覚)不足

③運が悪い
・危険地帯の通過で危険な事が起こる確立が相当に低い状況(時期や天候)を見極めて危険地帯を通過したが、想定された危険な事が起きてしまった。

④自己評価の掛け違い
・行きたいルートと行くための実力のバランスが取れていない。先輩に「行けるよ!」と言われても行ける実力があるとはかぎらない。

⑤多い登山経験
・慣れや慢心はミスを生む、初心者や怖がりの方が時間はかかってもケアレスミスは少ない
・これまで大丈夫でも今回はわからない。
・1%のリスクでもでも100回行けば100%になる。

・リーダーとなって(orそれに準ずる役割を担って)行ったのでなければ登山経験(登山者の実力の尺度を示す経験)として信頼出来ない。
・リーダーであっても一度誰かと行ったルートを行ったのであれば登山経験(同上)としては質が低い.。
・ゆるやかな上昇カーブでも、より高くより困難を目指す登山を続ければいずれ限界を越える。


⑥想定外
・過去の知識ではほぼ考えられないことが起きてしまった。

⑦巻き込まれ
・メンバー、リーダー、別の登山者、登山の企画母体、既存の価値観、社会情勢等が発生させる危険に巻き込まれた。


◆遭難対策基盤と仲間作り
Timtam&Cueでは、優れた技術や強い体力を持つこと以上に、山の仲間作りをすることが遭難対策として重要だと考えています。
・山に行くために発生する雑務(仲間が増えれば雑務も増える)を積極的に分担しましょう。

・所属する山岳会(or 山のサークル)の集会とか行事などを休まないようにしましょう。

・自分の技術レベルあった自分の山に後輩をつれて行くのではなく、後輩のレベルに下がって後輩の山に行きそれを盛り上げるようにしましょう。

・半分は自分の行きたい山のために、半分は仲間の行きたい山のために活動をしましょう。

・仲間どうしのコミュニケーションを豊かにしましょう(Communication up、シーアップ)。

もし万が一、君が遭難事故にあった時、君の山での行動パターンや装備を知っていて、捜索救助の手順を効率的に考えてくれる仲間、…山の支度をして待機していてくれたり、対策本部に集まって来てくれる仲間、…リーダーシップを取ったり、記録係や会計係りになったりしてくれる仲間、…わずか200万円ほどの保険金を効率的に使ったり、それをおろすのに保険会社と交渉してくれる仲間、…地元の警察や山岳会などに何度も足を運んでいろいろ頼んでくれる仲間、…などなど、君はそんなふうに動いてくれるたくさんの山の仲間を持っていますか?。そんなたくさんの山の仲間を持っていることが、遭難対策基盤を持っているということなのです。

遭難対策基盤というと、登山届を出すこととか遭難救助保険救助組織とかのことだと思う人がいるかも知れませんが、それは遭難対策基盤の一部でしかないと知っていなければなりません。


◆「入口から出口までをカバーする登山の企画実施主体」は小さい方が良い。
・入口=登山の企画、メンバーの募集、渉外、など
・出口=登山の報告、会計申告、備品管理、渉外(渉外は入口から出口に継続する)、など
・企画実施主体=個人、山岳会、登山教室、ガイド事務所、など
・リスク=いつか遭遇するであろう大きな遭難事故の処理業務。

@登山教室MにA講師とBガイドとC職員が所属していたとします。A講師に事故があればBガイドにもC職員にもリスク分担が発生します。ところが、登山教室Mには講師のみしか所属していない(BガイドもC職員もいない)ということであれば、厳しい状況(職を失う,等)になる範囲が限定されます。ですから入口から出口までをカバーする登山の企画実施主体は小さい方が良くて、個人1名のみであることがベストです。

@個人1名とは1名で企画し実施し片付まで行うということで、単独登山のことではありません。1名で100名で行く登山を受け持つこともあります。

@1名がベストと言っても、1名のみはまず無いです。個人で企画しその人のみで行く単独登山であっても、山岳会に所属している人であれば山岳会が、山岳会に所属していない人であれば捜索救助を依頼する取り巻く家族友人が含まれて企画実施主体となります。

@例えば山岳ガイド協会のガイドはそれぞれ個人で協会に所属しています。ガイド協会は事故を起こさないように努力します。起きてしまった事故のリスクを最後まで背負うのはそのガイド個人です。都道府県山岳スポーツクライミング協会、同勤労者山岳連盟、等と会員個人(or会員団体)との関係も同様です。


~資金的な裏付け~自分の入ってる保険等の内容はよく研究しておきましょう。
@Timtamの講師が所属するガイド組合(NIAJ)の会長である天野博文氏が山岳保険を作っています。

@日山協の山岳遭難救助保険
日山協加盟の山岳会に入り、その山岳会の所属する都道府県山岳連盟でまとめて保険に入れてもらいます。保険の適用は所属山岳団体に登山計画書を提出してあり、団体で承認したものに限られており、しかも海外における山行は除かれます。(年一口7200円の掛金で、150万の救助料。)

@登山用品店で販売している保険
登山用品店がそれぞれ保険会社と契約しています。内容は様々なのでよく確認してください。

@労山の山岳遭難共済
国内だけでなく、海外における山行もカバーしています。労山加盟の山岳会に入ってそこでまとめて保険に入れてもらいます。

@ハイキング保険
ハイキング保険は低額の加入料で高い保証がついています(ほぼ旅行傷害保険と同等です)。ピッケル・アイゼン・ロープ・三っ道具を使用するような山登りには適用になりません。ピッケル・アイゼン・ロープ・三っ道具を使用する山登りはスカイダイビングのレベルで危険と考えられているようです。

山岳保険Ⅰ(ハイキング)の例
担保内容 保険金額 保険料 
死亡後障害 7,050,000円  132円
入院 6,000.000円  82円
通院 3,000,000円  208円 
救援者 2,000,000円  52円 
個人賠償  20,000,000円  26円 
合計  500円 

@都岳連個人会員遭難救助保険
都岳連救助隊やレスキューリーダーをバックに保険と救助のシステム作ってくれています。詳しくは都岳連に問い合わせて下さい。

@旅行傷害保険、ボランティア保険
ハイキング向け、ロープ・ピッケルなどを使用する登山は免責条項に入っていることが多いです。

@保険会社の山岳保険
登山者用の保険を作っている保険代理店がいくつかあります(登山情報誌等に広告あり)。

登山教室Timtam&Cueがお客様にかける保険(2015.4/1調) 
山岳保険Ⅱ(岩ゲレンデ・近郊沢)   山岳保険Ⅲ(雪山登山・深い沢) 
担保内容 保険金額 保険料  担保内容 保険金額 保険料
死亡後障害 2,133,000円  266円 死亡後障害 1,470,000円  198円
入院 2,000.000円  234円 入院  1,400,000円  176円
 合計 500円 個人賠償  20,000,000円  26円
 各講習山行の前日までに名前・日付・
 年齢・性別を保険会社にFAXします。
 
捜索  1,000,000円  1,100円
合計 1,500円

@保険会社の生命保険
ロープ、ピッケルなどを使用する登山は免責条項に入っていることが多いです。

@郵便局の簡易保険
郵便局独特の仕組みは研究しておくと良いでしょう。

@山岳ガイドの賠償責任保険
ロープを出すべき所で出さなかったなど、ガイドのミスが公式に認知された場合に降りる保険です。ガイド協会に所属するガイドの人が入っていることが多いです。

@遭難対策基金
①基金が200万円あったとしても、ヘリコプターを2回も飛ばせばなくなってしまいますし、人を要請すれば一人一日10万円が出て行きます。しかし、遭難救助の初動に直ちに使えるお金の存在は大きいのです。Timtamでは、山岳遭難対策基金(基金準備約120万円)があります。

②2010年の現在、警察の救助ヘリコプターの質と量が充実してきました。ヘリコプター対策よりも、人的(遭難救助の技術および救助に出動してくれるという考えを持った人)な備え(遭難対策基盤の山仲間の部分)や、事故防止思想を育てることの方が重要となっています。
・・・・・・・※①は1999年の記述です。②は2010年の追記です。

保険について考える参考事項
(1)落石で怪我をさせた…◆不注意で落石を起こし怪我をさせた場合は注意義務違反で損害賠償責任を負います。◆落石が予想される場所では警戒義務があるので過失相殺によって賠償額が減額されることもあります。◆岩登り中の落石は想定される危険なので損害賠償責任は生じないと考えられます。

(2)リーダの責任…◆仲間同士の山行ではリーダーには法的な責任はないことが通常です。◆初心者を、技術レベルの隔たる熟達者が、その隔たる技術を使うようなコースに連れて行く場合は注意義務が生じることがあります。◆岩登りの場合、あまりにも落ち度が大きい場合は民事責任が認められるようです。

(3)誤った情報…◆ガイドブックやネットの情報が誤っていたり、間違ったコースを口頭で伝えてしまっても、そこに行った登山者の判断ミスで遭難したと見なされることがほとんどです。

(4)急病人に間違った手当をした…◆善意で対応して、何か失敗があった場合、責任を問わないという法は欧米にはありますが、日本にはまだないです。

(5)設置してあるフィックス(トラロープ等)が外れた…◆遊歩道以外の登山道は管理者があいまいで、管理されていないことがほとんどなので、管理責任を問える可能性は低いと考えられます。

(6)自己責任であるという同意書に効果はない…◆消費者契約法で「一切の責任は負わない」といった免責条項は無効とされています。◆どのような危険があり、どの範囲は自分の判断で行動するかという自己責任について事前に説明することに意味があり、それが注意義務の有無の判断材料となります。

(7)ガイド登山中の事故…◆ガイドが予期出来る危険性に注意を怠っていなかったが問われます。◆例えば、雪山のガイド登山の場合、参加者は雪山のリスクを承認していることが参加の前提になっていて、その承認の範囲内であればガイドに過失はなく賠償責任を追うことはありません。ですが、ガイドが凍傷になることを予測出来たにもかかわらず、その注意を怠っていて凍傷になったとすればガイドに責任有りです。

 @登山教室Timtamの遭難対策基金

登山教室Timtam 遭難対策基金運用規定
制定:2003年3月7日 改訂2010.4.30 改訂2013.7.26 改訂2018.7.9

前 文
・山岳遭難事故発生に際して、そのもたらす悲劇は最小限に止めなければならない。そのための一助として、 登山教室Timtamは遭難対策基金を設立する。

・山に行くにあたっては勇猛かつ果敢であってよいが、同時に遭難事故を防ぐために細心かつ沈着でありたい。本基金が、遭難救助のために適用されることなど皆無であることを祈念する。


第1条
・遭難対策基金(以下基金とする)は「登山教室Timtamの会員およびその会友の山岳活動における遭難事故の救助および捜索 のために適用する。

第2条
・基金の充実を計るための行事(救助訓練等)を年1回程度実施する。その行事の参加費の半額を遭難対策基金に入金する。

第3条
・登山教室Timtam救助委員会又は登山教室Timtam代表は第2条の行事を企画運営する。

第4条
・基金の運営は登山教室Timtamの代表が行い、早急に収支する。
・登山教室Timtamの救助委員会は基金の運営を補助する。

第5条
・基金の適用は登山教室Timtamの代表の指示により行う。

第6条
・登山教室Timtamの終了時(有料講習会を1年以上開催しない時)における残金は登山教室Timtam救助委員会委員長に使途を一任する。

第7条
・基金は登山教室Timtamの会計簿(ブルーリターンA)の勘定科目「預かり金」の補助科目「山岳保険準備金」に記載し保管する (「山岳保険準備金」から山岳ガイド協会の保険積み立てを除いた額が登山教室Timtamの遭難対策基金)。

 


  
ツエルト必携&ツエルトビバーク

1、ツエルト必携
どんな山行にも絶対にツエルトをもっていきましょう。超低山のハイキングでも人口壁にトレーニングに行く時でさえもザックを背負って行くなら、その中にツエルトが必ず入っているようにしましょう。

2、ツエルトビバークの三種の神器
ツエルト・・・底が割れているタイプのもの。ポールはいらない。パーティに一つといわずいくつかあって良い。 (個人装備と考えて各人がもっていてよい)

マッチ・・・
・ザックの中、ポケットやポシェットの中など複数箇所に複数個持つこと。防水を忘れずに。ライターの場合はズリズリと擦って火をつけるタイプ (圧電式はトラブル多し)

コンロ・・・・超軽量の登山用コンロ、小型のガスボンベとセットで持つこと。圧電式の着火装置が付属しているコンロが多いが、 着火しないことがあるのでマッチも持つこと。

3、ツエルトビバークの用具
三種の神器
・・・ツエルト、マッチ(スペアマッチも)、コンロ(ボンベも)

金属のコップ
・・・火にかけられるもの

非常食
・・・・・・・・チョコ、ガム、チーズ、コンデンスミルクなどコンパクトでカロリーの高いもの。

雨具
・・・・・・・・・・ゴアテックスがコーティングしてあるものが良い。

非常衣類・・・・・下着がコンパクトで軽いのでおすすめ。(白でない方が良い。新素材でできたももひきと長袖シャツ)

懐中電灯・・・・・ヘッドランプ&超小型ペンシルライト(防水)の2種類を持っていると良い。

予備電池・・・・・懐中電灯と予備電池と予備電球はセットで持つ。

4、ビバークの方法
・ビバークを決定したら、すみやかに適地をみつけよう。座れればいい。上からの落石が来ないところを選ぶ(もし来そうならばヘルメットをとらない)。風のこない所や水の取れる所はもっと良い。雨が降ってきたら雨水を集める工夫をしよう。ルンゼの中は水と落石の通り道なので避ける。雪山の場合は雪崩の来そうな所を避ける(風下の吹き溜まりは危険!風を避けるとそこに引きずりこまれるので注意)。

・衣類を着込んで、トイレを済ませ、危ない所ならセルフビレーをセットして、2~3人なら横に並んで4~5人なら車座になってザクの上に腰を下ろし、ツエルトをかぶる。底の割れないツエルトはかぶれないので良くない。ベンチレーターが上になるように(ベンチレーターはのぞき穴にもなる)してザックの下にツエルトの底を巻き込んで体重で固定してしまう。風が強い時はツエルトを飛ばされないように注意する(ツエルトの予備があって良い)

・食料の残りを調査し食料を管理する計画を立てる。

・寒くなったら、コンロに火をつける。30分おきに5分燃やすなどの節約をすれば10時間は軽くもつ。燃料の管理は食料の管理とともに重要だ。火をたいている時は寝ないで起きている人の分担を決めておくこと。

・火がたけたらコップでお湯をわかそう。白湯でもいいし、チョコや生姜などを溶かして飲むととてもおいしいし気持ちもおちつく。

・厳冬期の高度の高い場所では、靴のひもをゆるめて足の指の凍傷をふせぐ。

・夜は長いけれど待っていれば必ず朝が来る。

・朝明るくなってからの行動も考えておく。
『ルンゼの懸垂になるから落石をよけた場所でピッチを切ろう』

『下からロープを引いて動かなかったらセットをなおしてくれ』

『ホワイトアウトだから一列になって方向を確認しながら進もう』

などなど。でも、考えすぎる時は楽しく前向きなおしゃべりをしよう。


↑ツエルトの張り方を紹介します。
①ツエルトをシラフをシラフ袋にしまうしまい方で袋に押し込んでしまいます。
②ベンチレーターの上の頂点の所(入口と反対側)が一番上に来るようにします。
③その頂点の所にはすぐカラビナがかけられるようにしておきます(多分、初めからカラビナがかかるくらいのテープの輪が縫い付けてあるはずです)。
④ビバークと決めたらまず120cmくらいの高さの所にツエルトを張るための支点Aを作ります。樹木や岩、何もなければ高さはありませんがザックでもよいです。
⑤その支点とツエルトの頂点をカラビナで結んでツエルトを引き出します。
*こうすることで、ツエルトが風に飛ばされることを防ぎます。
*暖をとる必要のあるメンバーがいるなら、この時点でツエルトに入ってもらいます。
⑥支点Aと支点Aから2.5メートル以上離れた支点Bとをメインロープで結びます。
⑦支点Aから2.5メートル離れた所のメインロープ上にフリクションヒッチを巻き付けます。
⑧フリクションヒッチとツエルトの入口側のベンチレーターの頂点をカラビナで連結します。
⑨ツエルトの位置を修正したい場合は支点Aの近くでメインロープ上にフリクションヒッチを巻き 付けてツエルトの入口と反対側の頂点のカラビナと連結します。
*支点A側のフリクションヒッチと支点B側のフリクションヒッチを動かしてツエルトの位置を修 正します。
⑩ツエルトの四隅等を地面に固定します。


  
事故発生の知らせをうけたら

~事故発生の知らせをうけてからのフローチャート~

1、落ち着いていますか?

Yes(以下Y)・・・・2に進む

No(以下N)・・・・深呼吸をしたり、指を組み合わせたり、胸に手をあてたりして落ち着くようにしましょう。落ち着いたら2に進んで下さい。


2、ノートを一冊用意しましょう。


3、ノートに今聞いた連絡の内容を5W1H(What,Who,Where,Why,How)の要領で整理して記入しましょう。情報をありのままに記入して脚色しないようにして下さい。 また今後あなたが連絡を発信したり、受信したりした場合はその日時と内容をすべてこのノートに記入していくようにして下さい。


4、あなたの受けた連絡は事故処理のリーダーシップを取れない人(遠い現地にいる人、あるいは在京でも山を知らない人、他の山岳会の人など)からのものですか?

Y・・・・リーダーシップの取れる人(信頼できるリーダー会員)が現れるまでは事故の報を一番にうけたあなたがリーダーシップを取って事故処理にあたらなければなりません。今リーダーシップを取れるのはあなたしかいないと認識しましょう。・・・・5に進む。

N・・・・連絡の打ち合わせに従って行動を開始しましょう。


5、「単に下山が遅れているのだろう。現地のパーティが自力で処理できてしまうだろう」と予測できますか?

Y・・・・9に進む。一部の人(山がわかっている人)に連絡を開始する。

N・・・・6に進む。

6、あなたのアドレス帳(所属の会の会員名簿など)の上から順番に電話をかけていきます。いつ誰に連絡したか、 2で用意したノートに記入するのはもちろんですが、電話の相手にも必ずメモを書いてもらいましょう。連絡をしているうちに次にやるべき行動がみえてきます。


7、救助隊を編成しなければならない状況ですか?

Y・・・・あなたが設置した本部(会の事務所やあなたの家など)に集合(山に行ける装備、捜索救助の用具を持って)するように連絡しましょう。 人がある程度集まったら救助隊を編成しましょう。隊員の役割分担を決めたら(あるいは決めるように指示したら)出発させましょう。

隊員の役割文担 ①捜索本部 ②記録係(隊員名簿、スケッチ、撮影、状況記録) ③雪崩の場合は見張り役(二次災害を防ぐ) ④サポート隊(ツエルト設置、湯沸かし)  ⑤ルート整備およびルート工作 ⑥通信係 ⑦会計係 ⑧その他

N・・・・9に進む。


8、関係機関に連絡しなければならないような事故ですか?

Y・・・・①警察 ②所属山岳会 ③会社 ④家族

N・・・・9に進む。

9、連絡待ち



  
アクシデントの現場で

落ち着きましょう。ここは安全な場所なのかまず考えてみて下さい。
安全な場所に移動したら応急処置をします。それから次の行動を考えましょう。

~事故発生時からのフローチャート~
                      
                   安全な場所か? → 安全な場所に避難

                       

        待機、好天待ち ← 自力下山できるか? → 連絡ー救助活動

            ↓            ↓              ↓

         現状の把握     装備、食料の点検  現地救助隊の編成ー救助本部設置        
       周囲の状況の観察   下山方法の検討          
       食料の管理        偵察           活動開始         ↓

            ↓            ↓            ↓ ←ーーーーー救助隊              

         ビバーク用意        下山                   ↓

            ↓                  捜索打ち切りーーーーー発見できたか

       連絡員がだせるか→→             ↓              ↓

                     |           長期捜索    応急処置ー本部・警察・家族へ連絡
,                                                        ↓
            ↓       |                     救出方法決定→搬出・下山 

           連絡       | 

            ↓        |        

          ビバーク   ←←

            ↓

       *自力下山できるか

 

落ち着きましょう。ここは安全な場所なのかまず考えてみて下さい。安全な場所に移動したら応急処置をします。それから次の行動を考えましょう。

~事故発生時からのフローチャート~
安全な場所か?
N:安全な場所に避難

自力下山できるか?
N1:待機大気、好天待ち(現状の把握、周囲の観察、食料の管理))、ビバーク用意、連絡員が出せるか?

N2:連絡救助活動が出来たら開始(現地救助隊編成)

Y:装備食料の点検、下山方法の検討、偵察

沢登りノートのページにある怪我人や病人を背負っての脱出の項もお読み下さい。


 
健康とは

健康といえばWHOの「肉体的にも精神的にも社会的にもすこやかなこと」が有名ですが、それは1960年代に盛んに言われたもので、古いです。
WHOは1986年にオタワ憲章というのを宣言して、その中で下記のように健康を定義しています。

<<健康とは・・>>
「一人ひとりの病気や障害の有無に関わらず、生涯にわたり意欲的に学び続け、絶えず自己実現を図り、いかなる社会変化にも対応し、主体的に生き抜くことである。」
「自らの健康はコントロールし改善出来る。」



  
心肺蘇生法

市民が行うためのBLS
心肺蘇生法は2005年に大幅に簡素化されました。「市民が行うためのBLS(Basic Life Support:一時救命処置)」ということで普及が図られています(以下2012年5月の最新情報も入れました)。

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一般市民が行う一時救命措置 ①成人(15歳以上) ②小児(1~14歳) ③乳児(1歳未満)

発見時の対応
・血が噴き出している→心臓が動いている→止血が先
・肩を(かるく)たたきながら、大声で呼びかける
・何らかの応答や目的のある仕草がなければ「反応なし」
・反応がなければその場で大声で叫んで助けを求める。
・小児・乳児は、足の裏をたたきながら呼びかける。

通報
・救助者が二人以上の場合119番とAEDの手配→自らは心肺蘇生開始
救助者が一人だけの場合は自分で119番通報しAED(近くにあれば)を取りに行き、その後、心肺蘇生開始

呼吸の確認
・呼吸は胸と腹部の動きを見る(10秒以内で)→「普段どおりの呼吸」がない場合は心停止

回復体位
・反応はないが、普段どおりの呼吸がある場合は
→気道確保して応援や救援隊の到着を待つ
*気道確保→①②③頭部後屈あご先挙上法
→やむを得ず現場を離れる時は回復体位


心肺蘇生開始の判断
①②③共同じ:「普段どおりの呼吸」がない場合は胸骨圧迫から心肺蘇生開始

胸骨圧の位置
①②③胸の真ん中(左右の真ん中で、かつ、上下の真ん中)

胸骨圧迫の方法
①両手で ②両手で(片手でもよい) ③2本指で

胸骨圧迫の深さ
①少なくとも5cm ②③胸の厚みの1/3

胸骨圧迫のテンポ
①②③少なくとも100回/分

気道確保
・頭部後屈あご先拳上法(乳児は軽くあごを上げる)

人口呼吸
・約1秒かけて・胸の上がりが見える程度(乳児は鼻と口を一緒に吹き込む)

胸骨圧迫と人工呼吸の比
①②③30対2

AED装着のタイミング
①②③到着次第

AED電気ショック後の対応
①②③ただちに胸骨圧迫から再開

AED電極パット
①成人用 ②小児用(なければ成人用) ③小児用(なければ成人用→成人用を胸と背中に貼る

電極パッドを貼る場所で次のことに注意
・医療用の埋め込み器具がある場合:パッドを離して貼る
・貼付薬等:取り去り、ふき取ったあと電極パッドを貼る
・濡れている:胸の水分をふき取ったあと電極パッドを貼る
・小児用パッドを成人用に使用してはならない

気道異物除去
・気道異物による窒息と判断した場合は、ただちに119番をだれかに依頼した後に以下の手当てを行う

反応がある場合①②
・強い咳が出る場合は、本人の努力に任せる
・異物が取れるか反応がなくなるまで腹部突き上げ法ろ背部叩打法を数度づつくりかえす。
※腹部突き上げ法は危険→素人はあまり使用しないでいい
・妊婦、高度肥満者、へは背部叩打法のみを行う
反応がある場合③
・乳児へは背部叩打法のみを行う

反応がない場合①②③
・反応がなくなった場合は、ただちに心肺蘇生を開始する
・心肺蘇生を行っている途中で異物が見えた場合は取り除く
※見えない場合は口の中に指を入れて探さない
※異物を探すために胸骨圧迫を長く中段しない


心肺蘇生法 (Cardio Pulmonary Resuscitaktion CPR)

全年齢対応 一般市民用(日本版ガイドライン2010準拠)

実 施 事 項 用 語 実施要綱(着眼点)
①安全確認
 大出血の有無
1.ここは安全です。 周囲の状況および大出血の有無を確認する。
②反応の確認 1.反応の確認(意識)
 ①大丈夫ですか?
 ②大丈夫ですか?
 ③大丈夫ですか?
観察位置(傷病者の肩部)に至る。
両手で肩をたたきながら大声で呼びかる。
小児・乳児は、足の裏をたたきながら呼び
かける。  
③119番通報
AEDを依頼する。
「誰か来て下さい」
「あなた119番通報を
 して下さい」
「あなたAEDを持って
 来て下さい」 
その場で大きな声で周囲の者に助けを求める。
119番通報とAEDの手配を具体的に指名し
て協力をもとめる。
④呼吸を見る 「普段どおりの呼吸をしていません」 胸、腹部を見て、「普段どおりの呼吸」をしているか
を10秒以内で確認する。
⑤胸骨圧迫  1.胸骨圧迫
  1.2.3.4.5.6.7.8.9.10
  2.2.3.4.5.6.7.8.9.20
  3.2.3.4.5.6.7.8.9.30 
呼吸がなければ直ちに胸骨圧迫を開始する。
●胸の真ん中
●圧迫の深さ
  成人:少なくとも5cm
  小児・乳児:胸の厚みの約1/3
●少なくとも100回/分 
⑥気道確保 頭部後屈あご先拳上法  傷病者の頭側にある手を傷病者の前額部にあて、
他方の手の一指し指と中指を傷病者のあご先にあて、
これを持ち上げて気道確保する 
⑦人口呼吸
(省略可)
1回1秒かけて2回 気道を確保したまま、額に当てた親指と人差し指で
傷病者の鼻を塞ぐ。約1秒かけて傷病者の胸が軽く
膨らむ程度を2回吹き込む
⑧胸骨圧迫と
人口呼吸の比
  胸骨圧迫30回:  人口呼吸2回  
⑨AED到着
 除 細 動 
電源→電極パッド装着
→解析→除細動
(除細動が必要ない場合もある)
 「離れて下さい」 
AEDの電源を入れたら、その後はAEDのメッセ
ージに従う
 「あなたAED使えますか」「あなた心肺蘇生法で
きますか」と聞く、出来るならしてもらう→パッド
を装着する間も胸骨圧迫を止めない方が良い
⑩心肺蘇生再開 胸骨圧迫
  1.2.3.4.5.6.7.8.9.10
  2.2.3.4.5.6.7.8.9.20
  3.2.3.4.5.6.7.8.9.30
AED操作後は直ち胸骨圧迫を開始する。
(約2分後、AED自動解析が行われる)
実 施 事 項 用 語 実施要綱(着眼点)
①安全確認
 大出血の有無
1.ここは安全です。 周囲の状況および大出血の有無を確認する。
②反応の確認 1.反応の確認(意識)
 ①大丈夫ですか?
 ②大丈夫ですか?
 ③大丈夫ですか?
観察位置(傷病者の肩部)に至る。
両手で肩をたたきながら大声で呼びかる。
小児・乳児は、足の裏をたたきながら呼び
かける。  
③119番通報
AEDを依頼する。
「誰か来て下さい」
「あなた119番通報を
 して下さい」
「あなたAEDを持って
 来て下さい」 
その場で大きな声で周囲の者に助けを求める。
119番通報とAEDの手配を具体的に指名し
て協力をもとめる。
④呼吸を見る 「普段どおりの呼吸をしていません」 胸、腹部を見て、「普段どおりの呼吸」をしているか
を10秒以内で確認する。
⑤胸骨圧迫  1.胸骨圧迫
  1.2.3.4.5.6.7.8.9.10
  2.2.3.4.5.6.7.8.9.20
  3.2.3.4.5.6.7.8.9.30 
呼吸がなければ直ちに胸骨圧迫を開始する。
●胸の真ん中
●圧迫の深さ
  成人:少なくとも5cm
  小児・乳児:胸の厚みの約1/3
●少なくとも100回/分 
⑥気道確保 頭部後屈あご先拳上法  傷病者の頭側にある手を傷病者の前額部にあて、
他方の手の一指し指と中指を傷病者のあご先にあて、
これを持ち上げて気道確保する 
⑦人口呼吸
(省略可)
1回1秒かけて2回 気道を確保したまま、額に当てた親指と人差し指で
傷病者の鼻を塞ぐ。約1秒かけて傷病者の胸が軽く
膨らむ程度を2回吹き込む
⑧胸骨圧迫と
人口呼吸の比
  胸骨圧迫30回:  人口呼吸2回  
⑨AED到着
 除 細 動 
電源→電極パッド装着
→解析→除細動
(除細動が必要ない場合もある)
 「離れて下さい」 
AEDの電源を入れたら、その後はAEDのメッセ
ージに従う
 「あなたAED使えますか」「あなた心肺蘇生法で
きますか」と聞く、出来るならしてもらう→パッド
を装着する間も胸骨圧迫を止めない方が良い
⑩心肺蘇生再開 胸骨圧迫
  1.2.3.4.5.6.7.8.9.10
  2.2.3.4.5.6.7.8.9.20
  3.2.3.4.5.6.7.8.9.30
AED操作後は直ち胸骨圧迫を開始する。
(約2分後、AED自動解析が行われる)

※心肺蘇生法は、傷病者を救急隊に引き継ぐまで、または傷病者に呼吸や目的のある仕草が認められるまで続ける。
  パッドは取らないで回復体位の姿勢(傷病者を横向きに寝かせる)をとらせる。

備考
:呼吸の確認の方法は『胸、腹部を見て、「普段どおりの呼吸」をしているかを10秒以内で確認する。』です。ムセッテいるなど「普段どおりの呼吸」でないと判断したらすぐに胸骨圧迫を開始します。胸骨圧迫が必要のない傷病者ならば、嫌がってハネノケルなどの意図のある反応があります。

:AEDが到着次第、AEDを使用する①ふたを開ける(電源が自動的に入るものと電源を入れるタイプがある),②服を脱がせ電極を張る(右の鎖骨の下と左の脇腹)、③AEDの音声ガイダンスに従う。

:AEDは山に持って行ける大きさ(2リットルポリタンぐらい))である。ふたを開けるとスイッチが入り、音声によるガイダンスが始まる。そのガイダンスに従って使用する。電極は使い捨てで、一度しか使えない。電極を貼り付けると自動的に心電図をとりはじめ、電気ショックが必要な場合は充電を開始して、電気ショックのボタンを押すように指示が出る。電気は八千ボルトなので、ショックを与える時は傷病者に触れない位置(一メートルぐらい離れる)に移動すること。以後AEDのガイダンスに従い続けること。電気ショックを1回行って反応がなければただちに胸骨圧迫30回、人口呼吸2回を行うサイクルに戻る。胸骨圧迫と人口呼吸の戻りそれを行っているとAEDの次のガイダンスがある。

:呼吸が回復したら傷病者を横向きに寝かせて、救急隊の到着を待つ。

:日本では、年間三万人の人が自殺で、二万人の人が心室細動(心臓が痙攣して、ポンプの役割を果たせず、酸素を多く含んだ血液を体内に送り出せない状態)により、八千人が交通事故で、亡くなっています。三分以内に除細動をすれば四人に三人は助かると言われています。五分で50%、八分で16%です。超小型の除細動装置を持って山に行くようになる時代が遠からず来ると思われます。

:回復体位・・・まくらはしないこと。息をしている場合は首を横に曲げます。首を横にしておけば窒息には安全である。

:Just Four Minutes (4分以内)、心臓停止後4分・・・大脳皮質不可逆、10分・・・脳幹部不可逆(脳死)

:原因疾患を問わない(頭部外傷、心筋梗塞、溺水、感電、異物窒息、急性薬物中毒etc)、医者を呼んでいるひまはない!

:相手がだれであれ”必ず助けるぞ!”という熱意をもつこと。

:だれでもできる(一般市民ができる)SSABC

:異物除去法・・・口腔、咽頭内から異物を指でかきだす←ガイドライン2000からは救命措置の手順に含まれなくなった。

:のど緊急切開・・・甲状軟骨と輪状軟骨の間の陥凹部(のど仏の下のくぼみの所)を開く(横にナイフをいれ、縦にひねる)←医師の行うこと。

:除細動・・・心臓の電気信号系がバランスを失って、平常のリズムを保てず、心臓を作る筋肉が個々バラバラに伸縮してしまう状態を細動という。←強い電気信号によってそのバランスを取り戻すのが除細動装置である。

:ガイドライン2000の旧の心肺蘇生法からの変更点・・・①口腔内確認をしない←異物があれば呼気が入らない。②、脈拍の確認をしない←心臓を押せば痛がる。③119番通報者を具体的に指名する。「あなた119番通報お願いします」←だれかに頼って、だれも通報していない事態を防ぐ。④循環のサインで確認する←実際には困難なのでガイドライン2005では行わないことになった。

:ガイドライン2005のガイドライン2000からの変更点・・・①胸骨圧迫心臓マッサージを30回と人口呼吸2回の組み合わせを5サイクル行う。②「循環のサイン(咳、自発呼吸、体動)」の確認は行わない。③AEDによる電気ショックが1回行われたらただちに胸骨圧迫にもどる。

:ガイドライン2010のガイドライン2005からの変更点・・・①心肺蘇生法は全年齢対応になった。②胸骨圧迫優先。③呼吸の確認が『①胸部の上下動を見て、②呼吸があるか音で聞いて、③頬で息を感じて』から『「普段どおりの呼吸」をしているかを10秒以内で確認する。』になった。従来の方法では10秒以内に確認出来ない可能性がある→少しでも早く胸骨圧迫を始めるため。もし「普段どおりの呼吸」をしている人に胸骨圧迫を施せば嫌がってはねのけるなどの意図のある反応が返ってくる。


  
非常通信~無線の使用~

まず、非常通信周波数に合わせます。
この周波数は呼出用周波数と同じなので空くのを待っていると
何時までも通信できないのでスキをみて送信を開始します。

【通信例】
A:ヒジョウ ヒジョウ ヒジョウ CQ CQ CQ こちらは JE1□□□  JE1□□□  JE1□□□ どなたか応答願います。(受信にして応答がない場合は繰り返す)

B:ヒジョウ ヒジョウ ヒジョウ JE1□□□  JE1□□□  こちらは JZ9□□□ JZ9□□□ です。取れますか?  どうぞ。

A:ヒジョウ(ヒジョウ ヒジョウ) JZ9□□□ こちらは JE1AUZ 松浦です。
14時40分 北アルプス立山の剣岳にて遭難事故発生。現場は、三ノ窓雪渓上部 転落して出血多量  意識不明の模様 富山県警察本部山岳警備隊へ連絡願います。  繰り返します  14時40分 北アルプス立山の剣岳にて遭難事故発生。現場は三ノ窓雪渓上部 転落して出血多量  意識不明の模様 富山県警察本部山岳警備隊へ連絡願います。 JZ9□□□ こちら JE1AUZ どうぞ

B:ヒジョウ(ヒジョウ ヒジョウ) JE1AUZ こちら JZ9□□□ 了解しました。
14時40分 北アルプス立山の剣岳にて遭難事故発生。現場は三ノ窓雪渓上部 転落して出血多量  意識不明の模様 ということですね。すぐに警察に連絡します。 JE1AUZ こちら JZ9□□□

A:ヒジョウ(ヒジョウ ヒジョウ) JZ9□□□ こちらは JE1□□□ 宜しくお願いします。このまま待機しす。 JZ9□□□ こちら JZ9□□□

B:ヒジョウ(ヒジョウ ヒジョウ) JE1□□□ こちら JZ9□□□ 了解しました。

注:沢の中など電波が届きにくい場所にいる場合は尾根に中継を置くようにします。


 
ヘリコプター救助

S氏より情報
 Date: Thu, 26 Jur 2012
@ 携帯電話でヘリコプターを要請した場合はその携帯電話を使って他の連絡をしないで、携帯電話を消防(or警察)からヘリコプターを飛ばすための連絡の受信用に備えること。

@ストックに雨具を結びつけて旗にして降るなど大きく目印を作るのが良い。縦走路などでは多くの人がヘリコプターに手を振るのでヘリコプターのパイロットはどこに救助に向かうか特定しにくくなるのが防げる。

@ホバリングしてホイストで吊り上げてしまうのでなく、着陸して来る場合はヘリコプターのパイロットの顔が見える側からヘリコプターに近づくこと。

@ヘリコプターが来る前に負傷者のザックから団体装備を抜き、負傷者の荷物は負傷者のザックにつめておく。ヘリコプターが来たら、負傷者といっしょに負傷者のザックも運んでもらう。

@セルフレスキューということで夕暮れまでがんばって、日暮になるからヘリコプターを呼ぶという例が多いが、暗くなったらヘリコプターは飛べないので、夕暮れになるもっと前にヘリコプターを呼ぶかどうか判断するのが良い。

@ヘリコプターは風上に向かって飛んでくる。飛んで来る方向や、ヘリコプターの吹き降ろす風のすごさを計算して待機すること。

@ヘリコプターがせっかく飛んで来たのに帰ってしまうことがある。それは見捨てられたとか発見出来なかったというのでなくて、危険のリスクを減らすために、乗員やにもつを減らしに帰るてめであるので悲観しないこと。ヘリコプターはまたやって来る。

@ヘリコプターは10分で飛んできて、あっという間に救助してしまう。

@地図やGPSでで緯度と経度を読み込んでそれを伝える探してもらいやすい。


T氏より情報

Date: Wed, 25 Jur 2012
@ヘリへの合図について基本的には、雨具などの目立つものを片手で持って、頭の上でグルグル回す。よく言われる、フラッシュをたくや鏡の反射は、上空からでは見つけにくいそうです。

@蔵王の防災ヘリやスキーパトロールの人は、雪の上に緑や黄色のバスクリンで大きく円を描くと言っていました(スキーパトロールはあらかじめ溶いたものをペットボトルで持って行くそうです。粉の入浴剤ならそれほど重くないので、非常用に持って歩いてもいいかもしれませんね)。

@ヘリ救助では、GPSは最強の武器です。緯度経度が特定できていれば、ピンポイントで救助に向かえるので、わずかな雲の切れ間でもアプローチが可能になります。一般登山道を外れての遭難などでは特に有効です。地図がなくても、数字だけ分かればいいので、GPS機能付のデジカメで写真をとり、再生画面で緯度経度を確認すれば大丈夫です。

@WECトレック社長の古野さんは、「最近のスマートフォンのGPSは携帯の圏外でも使えてかなり有用。日本製の端末には良いチップが入っているので、GPS専用機に遜色がない」と言っていました。


宮城県警機動隊救助小隊レンジャー分隊より
Date: Fri, 15 Feb 2002
@先週の連休最終日に、宮城県の北部、秋田県境にある栗駒山で遭難事案がありまし た。 天候が回復した13日午前中にヘリコプターで3名を救助しました。 3名は雪洞の中で救助を待っていたもので、手足に軽い凍傷を負っていました。 救助中のことですが、3名は山スキーで、1人が40kgくらいのザックを背負っていたの で、ホイスト救助のためにスキーと大型ザックを現場に放置して吊り上げました。

@状況によるということを前提としてですが、この事案のように、サーバイ バースリングで吊り上げるときには背中のザックが障害になることから現場に放置す ることを考えて、貴重品などを身に付けて待機することを勧めます。 できれば、放置したザックには持ち主を示す措置をお願いしたいのです。 

@大型ザックでもヘリのダウンウォッシュにより吹き飛んでしまいます。救助位 置から遠ざけて、後日、回収に来てわかりやすい位置に埋めるなどではどうでしょう か。 救助活動中、曇りで強風の状態でした。パイロットとしては現場活動は短時間にした いものなのです。


ヘリコプターの特性
リコプターの活動は有視界飛行です。昼夜の別、天候、パイロットの技術・経験・知識によって大きく左右されます。速度が速いので見落とす可能性が大きいと考えるべきです。


要請の方法と条件(警察を窓口として依頼することが望ましい。)
@事故状況と負傷状況を的確にメモし、最寄りの山小屋などの通信手段を利用して「所轄警察署」を通してヘリコプター会社に連絡をとってもらうこと。事故者が己パーティで無い場合その氏名、住所を確認し連絡に努めること。
自衛隊ー県知事の要請が必要
条件
・人命救助であること。
・自衛隊以外に方法がないこと。
・自衛隊法に違反しないこと。

警察ー依頼者が明確なこと(富山県警・長野県警など)
条件
・生命の危険があり、緊急を要すること。
・遭難者に自力救助の能力がないとき。

民間ー仕事でないので丁寧な対応が必要。(東邦航空(調布)・旭航洋(北ア))など。
条件
・救助、遺体搬送は原則として警察の許可が必要。

要請に必要な条件
・要請責任者の住所、氏名、連絡先 ・保険加入の有無 ・目的 ・経路 
・現地の目標 ・地形 ・気象(視界、雲量、風速、天気の様子、積雪、雪質) 
・ヘリポート設置の有無 ・標識の有無(吹き流し、焚き火)

飛来の条件
・昼間の「晴れ」の状態で、風速15.4m突風8.2m以上の風が吹いていないこと
・重傷者であること。搬送が人力で困難なこと。天候上、急を要すること。

ヘリポートの条件
20m四方以上に近い平坦値で風向きが明確に判断出来るようにした場所なら着陸 できる可能性有り。
・ビニール、砂などの飛散物がないこと。(ビニールはローターに、砂はタービンに影響 を与えるため。)
・進入は向かい風、(十分な広さをとる)、斜面は平らに雪面の凹凸が分かるよう新雪
は踏み固める(ホワイトアウトを防ぐため)

ヘリコプターに近づく場合
・接近は前方左右45度方面から。頭上に注意すること。特に傾斜地の場合上方からの接近は絶対しない。長い物をもって接近しないこと。
・テールローターには絶対近づかない(地上1m前後の高さで回転している)。
・ドアの開閉は自分たちでやる。・負傷者は担架のままは乗せられない。

ホイスト使用の注意
・ホイストは中型以上でなければ装着できない。(ベル212・214など)
・最大吊り上げ重量272g、全長78m。
・ホイストケーブルは帯電しているのでまず地面にアースをすること。(右足で立ち、右手でフックを持つ。)

ヘリコプターに発見されるためのポイント
・視界の開けた尾根筋へ登る。
・樹林帯を避け障害物の無い所で待つ。
・生木を燃やし大量の煙をだす工夫をする。
・手や長い布きれなどを振る。

ヘリコプターへの合図
遭難した登山者はヘリコプターが接近したときに、下図のようなサインを送り、救助要請の意志をヘリコプターに送る。①ヤッケ、雨具など色鮮やかで大きな目印になるものを片手にもって上空にむかって大きく円を描く。②ヘリコプターの乗員が確認出来る位置まで近づいたら体側に沿って上下に振る。

  


  
夏山サバイバル

徒渉でのロープワーク
・ビレーヤーは川下にいる
・確保器は使わず両手でたぐりよせる
・ビレーヤーより川下に流される前に引き寄せる

 

・上流に支点が取れる場合

 

・一人渡れれば流星法が使える

 

肩組みの徒渉

 

・流れと人の進行方向の関係

 

・杖をついての徒渉

 

へつりのロープワーク

 

  
自己脱出(=ロープ登り)&降り
@トップロープでビレーしてもらいながら練習すること。
@下図の方法でスリング(ハーネス用と足用の2か所)をセットして登る(降りる場合も同じ)

ハーネス用の例=メインロープに60cmスリングをフリクションヒッチ(巻数多いバッチマンが良い)を巻き付ける(セットする)。そのフリクションヒッチに60cmスリングをタイオフ(カウヒッチ)して連結、さらにハーネスの安全環付カラビナに連結する。

足用の例=上記でセットしたハーネス用スリングのすぐ下に、フリクションヒッチを巻き付ける(メインロープに巻き付ける)。そのフリクションヒッチに60cmスリングを2重にして作った30cmスリングをタイオフ(グースヒッチ)して連結し、次に60cmスリングをその30cmスリングにタイオフして連結する。結果としてハーネス用より25cm程度長くなる。一番下になる60cmスリングに足を入れて土踏まずで立ち上る(アブミになる)。


@終了方法 その1
適当な高さまで登ったら、ハーネスより下に垂れたロープに懸垂下降器をセットする。セットした懸垂下降器のさらに下に垂れたロープに足に巻き付けて踏みつけて立ち上がり、 スリングのテンションを解除する。スリングを回収して、懸垂下降する。

@終了方法 その2
トップロープをセットする。ビレーヤーはメインロープを仮固定、クライマーは上から来るロープを自己脱出で登る、適当な高さまで登ったらビレーヤーは仮固定を解いて、クライマーをロワーダウンさせる。

@終了方法 その3
一番上の支点まで登り、テラスに立ってロープのテンションを解除する。セルフビレーをセットした後、自己脱出システムを解除する。練習ではあまり高くまで登らない方が良いので、自信を持って自己脱出が出来るようになってから行うこと。

   

 

@セカンドオートロック型ビレー器を用いた自己脱出の方法がある。懸垂下降登り返しの項を参照のこと。

 

トップ墜落とビレーヤーのテンションの解除とビレーヤーの交代


@トップは支点の所でビレーヤーにテンションを指示してロープにぶら下がる。
@ビレーヤーはテンションのかかったロープを仮固定する。
@テンションのかかったロープにオートブロック(ブルージック結びなど)でスリングをかける。
@オートブロックとビレーヤーの近くの頑丈な支点をマリーナヒッチで連結する(マリーナヒッチは120cm以上の長さのスリングを用いて作る)。
@ビレーヤーは仮固定を解いてテンションをマリーナヒッチに移し、その場を離れて自由に動けるようになる。
@ビレーヤー交代要員はビレー位置に付きメインロープをビレー器にセットする。
@マリーナヒッチを解除してビレーヤー交代要員のビレー器にテンションを移動する。

 
負傷傷者の背負い方
120cmスリングで背負う
120cmナイロンスリングを負傷者の尻からとって救助者の両肩にかけ背負い紐とする。

背負う人の胸の所の背負い紐になる部分を60cmスリングを使って中央に引き締めてカラビナで固定すると良い。

短距離の移動なら十分に役立つと考えます。

*筆者が実際に出会った数回の救助の場面で使われた背負う方法はこの方法がほとんでであった。素早く出来て、背負う人が両手を使えて、懸垂下降まで出来る方法として相当に優れている。



◆ストックとザックで背負う
ストック又は60cmくらいの長さの木の枝をザックの背負いひもの下の所に通し入れておく、背負った時にストックと背負う人の背中の間にザックがあるように通し入れておくとストックが背中に直接当たらないので痛くない。ストックに両足をのせてもらい負傷者をザックで背負う(ザックを背負子にする)。

負傷者の背中をスリングで固定したり、雨具で被うように固定すれば、負傷者がのけぞることにも対応出来る。背負う側もかなり楽で、長距離の移動なら、今の所、この方法がベストのようである。

雨具上下で背負う
雨具のズボンの尻の部分を上着の中に入れます(折り紙のヤッコさんの胴体と足を連結するように)。

上着の腰の部分を細引きできっちりしばり上着とズボンを連結します。

上着の右腕とズボンの右足、上着の左腕とズボンの左足を結びます。

120cmスリングと同じ形で背負います。負傷者の尻が雨具でつつまれるなど120cmスリングの方法より優れています。

雨具でなくても長袖シャツと長ズボンがあれば同じことができます。

短距離の移動なら十分に役立つと考えます。

負傷者がハーネスをつけている場合
(1)ハーネスの腰に回るメインベルトの右盲腸の位置と左盲腸(もちろん左に盲腸はない)に2本のスリングをタイオフし(ミュールヒッチorカウヒッチ)て背負いひもとする。下の(2)にあるように、ハーネスの左右のレッグループのビレーループへのベルトの付け根の所に2本のスリングをタイオフしする方法もある(力点が下になるが背負いやすい)。

(2)ザックの中身を出し、背負い紐の上の付け根に、スリング2本をタイオフし、ザック背中上部の釣り手の中を通して交差して正面に出す。そのスリングを負傷者のハーネスのレッグループに掛けて、ザックを背負う(負傷者が背負われる)。

意識のない負傷者を一人で背負う体験をしておきたい。
@平地にビニールシートをひき負傷者役があお向けに横たわる。

@救助者は負傷者の横に同じ向きに横たわる。

@負傷者の救助者から遠い側の足を近い側の足の上に交差させるように乗せる。

@救助者は一本背負いのようにして負傷者の腕を引きながら反転し負傷者を背中に乗せる。四つんばいになり、付近の石や立ち木などにつかまって立ち上がる。

@120cmナイロンスリング(or 長さ3m長幅20mmのテープで作ったスリング)を負傷者の尻からとって救助者の両肩にかけ背負い紐とする。背負う人の胸の所の背負い紐になる部分を60cmスリングを使って中央に引き締めてカラビナで固定する。→3つ上項の120cmスリングで背負う図&写真を見て下さい。


エイト環の仮固定

@2014年現在、エイト環の仮固定はこちらの方法を採用しています。

@2メートルほどの高さに打った支点にロープをかけ、エイト環仮固定の練習を行う。

@垂直程度の壁を懸垂下降し途中で停止して、エイト環仮固定を行い両手をフリーにする。

@仮固定を解いて、さらに懸垂下降で下まで下る。

@負傷者を背負うと100kg以上の重さがかかるのでエイト環仮固定は簡易的なロープをクロスさせる方式ではなく(解除できなくなる)、ロープをグルグル巻きつけて固定する方法をとる。下図では巻きつけたロープにくぐらせているが、解除できないことの方が問題なので、2001年度よりくぐらせずに止めるようにしている。さらに、2014年現在、エイト環の仮固定はこちらの方法を採用している。

@負傷者を背負っての懸垂は2年次生対象の救助訓練②で行う。

 
Aの部分にカラビナをかけて止める。二人分の荷重がかかる場合はさらにテンションを逃がす工夫が必要!

ハーフマストの仮固定

@2014年現在、ハーフマストの仮固定はこちらの方法を採用しています。

@ハーフマスト結びによる、ビレーや懸垂下降はエイト環などの確保器具を落とした場合に頼もしい見方であると同時に、様々な用具の不足する救助の場面では有効である。
@2メートルほどの高さに打った支点にロープをかけ、ハーフマスト仮固定の練習を行う。以下エイト環仮固定の時と同様に練習する。


@Aの部分にカラビナをかけテンションのかかったBのロープに止める。二人分の荷重がかかる場合はさらにテンションを逃がす工夫が必要!

チロリアンブリッジのセット

@川の対岸にロープの一方を固定、川を越えてロープを張る。ロープを張る支点の3mほど手前の位置にブルージック結びでスリングをかけそのスリングにかけたカラビナを動滑車に、ロープを張る支点にかけたカラビナを定滑車にしてロープをピンと張る(トラックの荷のひもをかける方法と原理は同じ)。

@ロープにハーネスのカラビナをかけ、ロープを渡って対岸に渡る。

@張られたロープの高い方から低い方に渡る方が簡単。

@チロリアンブリッジは荷の運搬(流星法と組み合わせる)にはスピードがあり輸送力もあって威力を発揮するので、時間があれば、ザックなどを運搬してみる。


90度回転すれば荷揚げシステムの図になる。
ハーケンの打ち込み方向に注意(図では抜ける方向)
図のようにハーケン1本による支点でシステムを作ってはなりません。
ハーケンの場合は効いていても3本を連結して1つの支点にして下さい。全力で、腕より太い、枯れていない、樹木を、探して、支点にして下さい。・・・人工の支点より立木の方が望ましい。

 


  
雪山サバイバル

<雪崩による埋没の捜索>(スコップ・ビーコン・ソンデ棒を使って)
捜索場所:起こった場所と見失った場所を結ぶ線をのばした先のデブリ(末端堆積)の中、手袋や帽子などが見つかった時はその場所より下にいると判断するべきである。

避難場所の確保:二次雪崩が発生した場合見張りの指示する場所へ逃げる。

目印をつける:事故発生現場、捜索した(しない)場所には目印をつけておく。

スカッフ&コール:人は深さ2m以内に埋まっていることが多いので、意識がある場合は雪の上を歩き回る足音や声はよく聞こえている。捜索者は横一列に並び、間隔は肩と肩がふれあうくらいのせまいもので良い。リーダーの「スカッフ」の声で雪面をかくように捜索し、遺留物がないか調べる。「コール」の声で雪面に両手でメガホンを作り呼びかけ、耳をあてて反応を聴く。

雪崩ビーコンによる捜索:二班にわけ、一班が雪崩ビーコンをいれたザックを雪中に隠しもう一班がそれを捜索することを繰り返し練習する。

ゾンデ棒による捜索:横に長く溝を掘る。二班に分かれ一班は溝のどこかにザックを置き、雪をかけて溝全体を隠す。 もう一班が横一列に並び、ゾンデ棒をリーダーの指示に従って右足の前、左足の前および一歩前の身体の中心の3点にさし捜索していく。 (ゾンデ棒は差し込むのではなく重力に従って重力によって落ちていくような感じでトントンと下に沈めていく。そうでなければ雪の中に曲がって入っていってしまう)

<埋没体験>
埋没体験:
深さ1mほどの人間が入るほどの穴を掘り、ヘルメット、 ヤッケに身を固めた人間を埋め雪中に埋まった時の体験をする。恐いと思う場合は頭の入る部分に空洞を作ってさらに防水した トランシーバーをもって連絡を取れるようにして埋まるのが良い。ゾンデ棒を上からさして人間に接触した場合の感覚を試したり、 スカッフ&コールをして雪のなかで声や足音が聞こえたりする実体験をする。

低体温症:雪の中に長く埋まっていると、 身体の内部の熱は維持されているが両手足などの末端は非常に低い温度になっている。救出していきなり身体を動かし、末端の冷たい血液を内部のあたたかい生命維持のための重要な臓器 (心臓など)に流すとショックにより死亡してしまうことがある。雪崩による埋没から救出したら いたずらに動かすことをさけツエルト内などで静かに加温するように努めなければならない。

<負傷者の搬出>
ツエルト担架

①負傷者をツエルトでくるむ。
②引き綱を出したり、ツエルトを閉じたりするのに雪玉を利用しインクノット(クローブヒッチ)で縛ってしまう方法が有効である。
③ツエルトの内側に雪玉を入れ外側から雪玉を芯にテルテル坊主を作る要領でツエルトの布地で包み、テルテル坊主の首の所をスリング等で縛るのである。テルテル坊主の芯としては、雪玉の他に、小石、カラビナなども利用できる。
④関節の部分(足首、膝、大腿のつけね、腰、首)の左右にテルテル坊主を作ってスリングを引き出し、縛り、ツエルトを閉じる。②に書いたように、テルテル坊主は運搬用の支点にもなる。

ザック担架:
①空のザックを3個(A,B,C)用意する。
②背負う側を上にザックAとザックBを同じ方向に並べて置く(本稿では雨蓋が左側にザックの底が右側なるように並べる)。
③Aザックの背負い紐の下(底側)とBザックの背負い紐の上(雨蓋側)をカラビナで連結する。
④もう1つ残ったCのザックを雨蓋が右になるようにしてしてBザックの隣に置く(ABCの順で並ぶ)。
⑤Bザックの背負い紐の下(底側)とCザックの背負い紐の下(底側)をカラビナで連結する。
 *ザックの背負い紐は2本あるので③のAB連結と⑤BC連結のためにカラビナが4個必要である。
⑥ABC、3連に並んだザックの上に負傷者が寝る。
⑦6人の救助者を揃え、ABCザックの計6本の背負い紐を持つ位置につく。
⑧だれか1名をリーダと決める。
 *ザック担架を動かす全ての動作はリーダーの合図で行うこと。
 *リーダの合図でザック担架を持ち上げる。リーダーの合図でザックタンカを降ろす(負傷者の足側から降ろす)。
⑨長い距離の移動の場合はABC3連ザックの背負い紐にスリングをタイオフして救助者の肩にかけると良い。
⑩下り坂は負傷者の足側が前になるように進む。上り坂の場合、頭側は足側と比べて重いので、頭側が前(上)の方が搬送しやしすく、また傷病者の不安が少なくなる。

左写真=ツエルトタンカ







左下写真=ザック担架(ザック3ヶをカラビナで
       連結する)

右下写真=ザックの上に負傷者が横たわり、
        ザックの背負い紐を6人で持つ 

ツエルトタンカ


ザック担架(ザック3ヶをカラビナで連結する)


クの上に負傷者が横たわり、ザックの背負い紐を6人で持つ


<弱層テスト>

 

☆手首だけで引っ張って円盤がはなれたら危険、ひじならやや危険、肩ならほぼ安全
腰なら安全と思われる。

評価1、安定        →腰を入れて引いても崩れない
評価2、おおむね安定  →腕で抱えて引いたらはがれた
評価3、結合状態が悪い →手首だけで引いたらはがれた
評価4、非常に悪い    →円柱を掘り出したら崩れた
評価5、非常に不安定  →テストの必要なくあきらかに危険


☆雪質の観察と危険の目安 

  雪質      |  硬さの判定(弱層となるか)      
新雪         握りこぶしが入る( なる)         
こしまり雪    1~4本の指が入る(なることもある)   
しまり雪     1本指が第一関節まで入る(ならない)  
ざらめ雪     指は入らない(濡れざらめ雪になるとなる)
こしもざらめ雪 強く押すと一本指が入る(なることもある)
しもざらめ雪  ばらばらと崩れる 固まらない(なる)   
氷板       一本も指が入らない(ならない)       
表面霜      吹くと飛び散る(なる)             
クラスト      一本も指が入らない(ならない)      
あられ      簡単に指が入る(なる)            

新雪
握りこぶしが入る(弱層となる)

こしまり雪
1~4本の指が入る(なることもある)

しまり雪
1本指が第一関節まで入る(ならない)

ざらめ雪
指は入らない(濡れざらめ雪になるとなる)

こしもざらめ雪
強く押すと一本指が入る(なることもある)

しもざらめ雪
ばらばらと崩れる 固まらない(なる)

氷板
一本も指が入らない(ならない)

表面霜
吹くと飛び散る(なる)

クラスト
一本も指が入らない(ならない)

あられ 簡単に指が入る(なる)

☆雪崩発生の危険あり
①雪崩発生と地形の特徴との関係
地形の特徴
カール状(凹丈)の場所(斜面)、狭く急な谷筋で丈夫に広い斜面あり、雪庇(吹き溜まり)の発達する場所

植生の特徴
細い樹木や灌木しかない、樹木がまばらである、草付やハイマツ帯、ガレ場、過去に雪崩れた痕跡(枝、幹の折れ)

②雪崩発生と傾斜
30度~45度(ただし隣の沢から尾根を乗り越えて来ることもある)

③雪崩発生と降雪
標高2500m以上で、新雪の降雪約10cm、 標高2000m前後で、新雪の降雪約30cm、 標高に関係なく、新雪の降雪約40cm以上

④雪崩発生と風
風速10m以上

⑤雪崩と雪質(弱層)
あられが降った、表面霜が出来た、積雪内部にしもざらめ雪が出来た、濡れざらめ雪が出来た(融雪、雨などによる)

⑥登山者側の問題
雪崩に関する知識がないまたは不足、事前に気象や山域の調査をしていない、事前の非常時の態勢の打ち合わせ不足、体力がない(行動のスピードが遅い)、行動技術がない(雪崩回避の行動がとれない)、精神力が欠ける(雪崩回避の行動がとれない)、万一の場合に初動捜索をする能力がない、雪崩ビーコンを持たない、ゾンデを持たない、スコップを持たない、蘇生法を学んでない、仲間の命に対する責任の自覚が欠ける


心がけること:
・間違った行動
「せっかく来たのだから」「日程に余裕が無い」・・・精神的誘惑
「吹雪がやんで天気になったから」・・・雪崩に関する無関心
「他のパーティが行動しているから・・・自主行動・自主判断の放棄

・雪崩を想定した準備
行動の原点に雪崩を想定する、メンバー相互の安全確認、雪崩走路を想定したルートファインディング。

・身支度
防寒着をつける、フードを被る、ファスナーやボタンをきちんとしめる、身につけている装備をはずしやすくする(またははずす)

・ルートの選択
事前に雪崩走路を予測し退避方向を決定しておく、 なるべく尾根の直登直下降をとる、 やむを得ずトラバースする場合は、少しでも安全と思われるポイント (大岩、密生した木立、尾根)をつないでいく

・行動上の注意
雪崩が予想される場所で立ち止まったり大勢が集まってはならない、スキーで滑れるような疎林では雪崩を防止出来ない、雪崩が予想されるような場所では20m以上間隔をあける、立ち止まらず、静かに速やかに行動する、待機者は雪面に絶えず気を配り、行動中の仲間を監視する。


②雪崩に巻き込まれたら:
・大声で仲間に知らせる。
・事前に決めた退避方向へ逃げる。
・身につけている装備を捨てる。
・手足を動かし、浮上する努力をする。
・手、腕で顔面を覆い、口、耳、鼻に雪が進入するのを防ぎ、呼吸空間を確保する。
・埋まってしまったら、慌てず呼吸を落ち着ける。
・むやみに大声を出さない(雪の中から外への音は伝わりにくい)。


③雪崩が発生したら:

・巻き込まれた人の行方を見届け、捜索範囲の確定に役立てる。
・声を掛け合い、メンバーの確認をし、埋没者の手足が出ていないか遺留物がないか探す。
・すみやかに安全な場所に移動し、再度メンバー確認を行う。
・雪崩ビーコンは受信レンジにする。OFFにしてはならない。
・生存者は二重遭難の危険がないならば、直ちに埋没者の捜索を開始する。


④雪崩現場でのパニックの克服

下からの救助隊は生存処置にはならないので、自分たちでの捜索を忘れ、すぐ救助依頼に走らないこと。その上で状況・装備・人数などを考慮し、自分たちで救助捜索できるのかどうにかについて正しい判断が必要となる。また、呆然として動かないとか、ショックで動けないとか、人情に駆られてやみくもに現場に入って探すなど、二重遭難の危険性が大であり、発見できない場合が多い。事前の充分な知識と、組織的熟練度を高めておくこと。

⑤役割分担:
・事故の記録と雪崩の見張り
現場図面・時刻・捜索内容などの記録を、現場を見渡せる安全な場所で行う。

・埋没者の手当
安全地帯を整地し、ツエルト、テントを張り、ストーブを焚くなどして暖める。

・埋没者の捜索
二重遭難を避けるため、見張りと連絡を取り合うこと。また、事前に退避方向を決めておくこと。


⑥捜索

・退避方向を決めておく。

・埋没地点の可能性
雪崩で見えなくなった地点の延長戦の下流、雪崩の向きが変わった外側のデブリ、遺留物の下流

・雪崩の幅が広い場合、約20m間隔で並びデブリの上を捜索する。

・信号をキャッチしたらレンジを変えながら追尾する。

・複数の埋没者がいる場合、信号が複雑になる。
複数の信号を受信したらすぐにレンジを変え、強い信号のみ受信する。

・2mレンジになったらビーコンを雪面につけて、信号が強いと思われるところをただちにシャベルで掘る。


⑦埋没者発見後の処置

・直ちに顔を掘り出して、呼吸を確保する。
・口、鼻につまった雪をかきだして、気道を確保する。
・ビーコンを発信レンジに戻す。安全地帯に搬送するまでOFFにしてはならない。
・搬出に充分な広い穴を掘る。
・掘り出す時は事故者を大きく揺すったり、ひきずり上げるようにしてはいけない。除々に体のまわりの雪を取り除き、事故者を外気(風)に直接さらさないように、顔以外の体からは、雪を全部取り除かない(雪で被って保護する)。事故者を完全に掘り出して外気にさらすと急激に体温を失ってしまうことになる。ツエルト類をかぶせてから、体についた雪を取り除き、体が直接外気にふれないようにしっかりと包みこむ。ツエルト類の包み方がいいかげんだと、ゆるんで隙間が出来、冷たい風が入ってしまう。
・事故者の移動は静かに丁寧に行い。事故者体の中心部に冷たい血液が流れるのを防ぐ。
・意識の有無に関係なく、外見からは負傷の程度はわからないので、慎重に扱う。
・心臓マッサージを行う場合は、ザック、スキー板など、固いものを下に敷く。
・速やかに安全地帯に移動し、ツエルト、テントに収容する。
・頭部、胴体の保温と、ゆっくりした加温を続ける。低対温症になった体はなかなかもとにもどらない、最低でも2時間はかかる。元気になって動き出したら冷たい血液が心臓に流れて、心停止した例もある、症状が緩和されたように見えてもすぐに対応をやめてはならない。
・濡れた衣類は出来れば脱がせて渇いたものと交換する。

 
<雪山のロープワーク>
◆ダイナミックビレー:雪上でのビレーは岩壁でのそれと異なり、ロープの流れにゆっくりと制動をかけ、強いショックを与えないようにします。具体的には決してビレーの手を握り締めないで、ロープと衣服との摩擦によって制動をかけるようにします(制動を大きくしたければ、ロープの体に回す部分を大きくします)。これにより、雪上に作った不安定な支点がこわれるのをふせごうとするのです。スタンディングアックスビレーと腰がらみビレーがあります。
*腰がらみは雪山登山だけでなく、岩登りや沢登りにおいて、安全確実なセルフビレーがセット出来ない(安全確実なビレーポイントが作れない)場合に大変有効です。
*不安定な支点=雪にさしたピッケル、雪にさしたスノーバー、雪に埋めたピッケル、雪に埋めた雪入りスタッフバック、雪に埋めたデッドマン、ポラード(直径1メートルくらいの人口の雪きのこ)、氷に作ったVスレッド、氷にセットしたアイスハーケン類、など
 
スタンディングアックスビレー        腰がらみ(岩,沢,雪山オールラウンドに使える)

スタンディングアックスビレー

ピッケルのシャフトの頭部(石突の反対側)に60cmスリングを二重にして30cmスリング(=スリングA)を作りタイオフ(巻数の少ないブルージック結び)します。ピッケルを雪面に刺し、ピッケルの頭かスリングを足で踏みつけて固定します。スリングAにカラビナをかけ、そのカラビナにパートナーから来たロープ通し、そのロープを肩がらでビレーします。ピッケルの雪面への刺し方、Aスリングの長さやセットの位置、踏み込む足が山側か谷側か両足か、・・・etc.が定説に落ち着いていないようです。実地の研修を多く積み自分のやり方は自分で決めなければなりません。自分より上の者が自分を越えて滑り落ちて行く時に自分の腹側をすり抜けるだろう位置でビレーします(背中側からすり抜けるとシステムが壊れます)。

スタンデイングアックスビレー、3人の場合(下りを例に)
①1ピッチ目で下る人を甲、後から下る人を乙とします。中間者は中間者。
②甲と乙は共に、ロープを安全環付カラビナでハーネスのビレーループと連結します(メインロープとハーネスの連結はゲートを反対に向けた安全環付カラビナ2枚で連結することが望ましい。以下同じ)。
③中間者はロープに、甲から2メートル強の所にクローブヒッチ(インクノット)を作って安全環付カラビナをかけ、そのカラビナとハーネスのビレーループの安全環付カラビナを60cmスリングで連結します。
④乙はスタンデイングアックスビレーをセットして、甲と中間者を適当な場所まで下らせます。
⑤甲と中間者はしっかりと足場をかためて立ちます。甲はビレー解除を指示し、ロープをいっぱいまでたぐり降ろします。
⑥甲はスタンデイングアックスビレーをセットして乙を甲と中間者がいる位置まで下らせます。
⑦-1 乙が甲と中間者の場所まで降りて来たら、中間者は、先ほどで連結していた甲から2メートル強の所の連結を解除して乙から2メートル強の所に新に連結しなおします。
⑦ー2 乙のバランスが不安などの理由でつるべ方式が取れない場合(下降者が入れ替われない場合)はロープの上と下を入れ替えて再び甲が下ります。乙に連結していたロープの末端を甲に連結、甲に連結していたロープの末端を乙に連結しなおせばロープの上と下の入れ替えが省略出来ます。
⑧-1 乙と中間者が下ります(甲はスタンデイングアックスビレーをセットしたままの状態)。
⑧-2 甲と中間者が下ります(乙が再びスタンディングアックスビレーを行う)。


スタンデイングアックスビレー、ガイドとクライアント2人の場合(下りを例に)
①ガイドとクライアントA共に、ロープを安全環付カラビナでハーネスのビレーループと連結します(メインロープとハーネスの連結はゲートを反対に向けた安全環付カラビナ2枚で連結することが望ましい。以下同じ)。
②クライアントB(中間者)はロープに、トップから2メートル強の所にクローブヒッチ(インクノット)を作って安全環付カラビナをかけ、そのカラビナとハーネスのビレーループの安全環付カラビナを60cmスリングで連結します。
③ガイドはスタンデイングアックスビレーをセットして、AとBを適当な場所(声が聞こえてなるべく緩傾斜の場所)まで下らせます。
④AとBはしっかりと足場をかためて立ちます。ガイドはスタンデイングアックスビレーを解除し、Aにロープをたぐってもらいながら下降します(ガイドはビレー無しでAとBがいる位置まで下降)。
⑤ガイドはクライアントAとクライアントBがいる場所まで降りて来たら、クライアントAに連結していたロープの末端をガイドに連結、ガイドに連結していた方のロープの末端をAに連結しなおします(ロープの上と下の入れ替えを省略出来ます)。Bは先ほどの連結ではガイドから2メートル強の所の連結されているままなので、これを解除してA2メートル強の所に新に連結しなおします。
⑥ガイドはスタンデイングアックスビレーをセットして、AとBを下降させます。


◆コンティニアスクライミングの研究:

沢登りノートにあるコンテニアスクライミングの項をごらん下さい。→こちら

雪上の支点について:
デッドマン

ビレイポイントのない雪面で、雪に埋め込んで使用する支点用具です。主にセルフビレー用の支点として使われます。空に上がる凧の反対の「雪に食い込んで沈む凧」のイメージでセットします。締まった雪に効きます(新雪は無理)。

スノーバー

雪面に叩き込み、雪壁登攀のランニングビレイの支点として使用します。複数のスノーバー(ピッケル、バイルも使える)を連携してランニングビレーのシステムを作ります。スノーバーはかたい雪でないと効かないので、不安な場合は写真中央のスリングに長スリングを結びつけ全体を深く雪に埋めて、スリングのみ雪面に出し、強い支点を作ります。雪に埋めるなら、スノーバーでなくても、木の枝でも、ストックでも、雪を詰めたスタッフバックなどでも強い支点になります。

アイスハーケン

写真左から
イボイノシシ…岩と氷と凍った草付に対応するスグレモノです(2012年現在ヴァーテックス社扱い)。
スナーグ……打ち込みハーケンだが、ネジが切ってあるので回収が用意です。
スクリュー…ハンマー不要、Vスレッドを作る道具にもなります、ねじ込みすぎて刃が岩に当たらないように注意して下さい。
*Vスレッドを作るにはスクリューの他にダイニーマ細スリングとそれを穴から引き出すカギ付の編み棒様の専用用具が必要です。
氷抜き棒…スナーグやスクリューを回収した途端に中の雪を抜くための用具です(ホームセンターで購入)。
アングルロックハーケン…を幅広のクラック| ||<|のように打ち込みます。
*ロックハーケンは氷雪用ではありませが、岩が出ていれば使えるので重宝します。

◆雪稜でのロープワーク(樹木や岩の割れ目などの確実な支点が見つからない急峻な雪稜)
◇個人の標準装備としてデッドマン1つ、スノーバー1つ、アイスバイルゼン1つ、ピッケル1つ、ハーケン(イボイノシシ2、スナーグ1つ、スクリュー1つ)を持ちます。

◇セカンドの動作
セカンドはセルフビレーをセットします。セルフビレーの支点としては雪に打ち込んだピッケルかバイル、それが効かない場合はデッドマン、それもだめな場合は穴を掘ってピッケル等を埋め込んで作ります。時間をかければ支点の強度が充分にあって、整地された操作性の良いビレーポイントが作れるわけですが、時間が短縮された方が安全である場合も多いので、状況に合わせて工夫する必要があります。次にトップをスタンディングアックスビレー(腰がらみビレーの場合もある)でビレーします(トップが滑落した時のロープの流れを考えた位置でビレーしなければなりません)。

◇リーダーの動作
リーダーは、スノーバー・ピッケル・アイスバイル・デッドマン(標準装備で自分のとパートナーの用具を合わせると最大7ヶ)などを雪面に打ち込んで、(スリングカラビナをかけメインロープを通して)ランニングビレーをセットしながら前進します。最終的にはリーダーはアイスバイル1本を手元に残します。ロープが一杯になる手前でビレーポイントを作り、セルフビレーをセットします。途中にハーケンが打てる岩の割れ目、灌木などの強い支点ががあれば、そこにランニングビレーをセットしたりビレーポイントにしたりします。


 
救助訓練

2012年に実施した救助訓練の流れ(於:丹沢・前大沢)
①懸垂ロープの継ぎ足し
*2本のロープをつながないで懸垂下降を開始してしまった所、懸垂の途中でロープAが足りなくなった場合を想定する。
*別の救助者が上からもう懸垂の途中地点にもう1本のロープBを届ける。
*ロープをAとロープBの末端を2箇所共連結(結び目αと結び目β)して大きな輪を作る。
*連結部の結び目通過(1班はテンションかかった状態で行う)してロープBで下降を続ける。
*下に降りたら、ロープBの右側を引き、結び目αが降りて来たら結び目αをほどく。その後ロープBの左側(反対側)を引き結び目βを引き寄せながらロープBを回収する。結び目βをほどきロープAも回収する。

②自分で打ったハーケンで懸垂下降
*Aロープで懸垂し、途中停止、停止点でハーケンを打って懸垂の支点を作りBロープで懸垂する。Aロープを回収しないでハーケンの支点をバックアップする。
*Aロープと打ったハーケンは回収する。

③人を背負っての懸垂下降(一人1回)
*120cmスリングを使う方法で背負う
*負傷者を上からビレー(安全の為に&下降器の制動力不足を補う為に)
*懸垂者を下から懸垂のロープを持って補助(落石が予想される場合は懸垂者も上からビレー)
*負傷者を上からビレー出来ない場合を想定
 ア、ビレー器の制動アップの工夫(エイト環二回かけ、ハーフマスト二回ひねり)
 イ、救助者から20cm上にセットした下降器から負傷者のセルフビレーをセットする。

④宙吊り状態からの救助(1班のみ行う)

⑤懸垂下降の登り返し
*2分の1吊り上げシステム使って(1班は1/3,1/5,1/7も行う)
*時間があれば自己脱出による登り返しも行う

⑥太い木登り
*スリングを幹に巻いてそれをアブミにして登り、途中の枝からロープを垂らして、懸垂下降で降りる。

⑦自己脱出
*木の枝から垂らしたロープを自己脱出で登る。

⑧時間余った班が行う訓練
*ロープを投げない懸垂下降(袋入れ、首かけ、ロープ引っ張り方式)
*人の背負い方各種、ザックと棒、ザックとハーネス、ザックと棒と雨具
*単独登攀
*合図なしのリードアンドフォロー


2011年に実施した救助訓練の流れ(於:追浜・鷹取山の岩場)

(セットしたトップロープや懸垂用ロープはその場に残す)(女子班を作る)(伝える側の指導過多注意!)
1、コの字エリアにて(トップロープをセット、その隣のやや上に懸垂下降用のロープをセットする)
①懸垂下降の登り返し(ロープの結び目が上に来るまで回転させてから固定、2分の1吊り上げシステム使って登り返す)
②懸垂下降&仮固定各種(エイト環、ATC、ハーフマスト、ハーネスがない場合)
③自己脱出(=ロープ登り)&降り(トップロープでクライマーをビレーする。トップロープに隣に張られた別のロープをスリングをかけて登る。適当な高さまで登ったら、懸垂下降器をセット、下のロープを足に巻き付けて踏みつけて立ち上がり、スリングのテンションを解除、スリングを回収して、懸垂下降する)
④二人懸垂各種(エイト環二回かけ、ハーフマスト二回ひねり、支点折り返し懸垂)
⑤懸垂救助(懸垂下降で降りて行き、宙吊り状態の人を救助“エイト環、ハーフマスト”する)

2、樹木の広場にて
①合図なしのリードアンドフォロー(リーダーはビレー解除を言わないで、ビレーの体勢をとりロープをあげる、セカンドはロープがいっぱいになったらもう一本ロープを引いてカラビナのかけかえをしながら登り途中でサード以降にトップの声を中継する。中継出来ればロープウェイ方式が使える、中継が不可ならサード以降全員は髭出し方式でロープにつながって同時登攀する。)
②単独登攀(ロープをザックにしまい末端を固定、ブルージックでハーネスと結ぶ、自分でロープを適当な長さ出しながらプロテクションをとって登る(10mおきくらいにメインロープと支点をハーフマストで連結)、懸垂で降りて末端の固定を解除、ブルージックでロープを登る。)
③つりあげシステム(1/2,1/3,1/5,1/7)(樹木を支点に本を見ながら研究する、補助ロープを使わない方法で、タイブロックは使って良い)
④ビレーヤーの脱出(マリーナヒッチによるテンションの移動、トップに引き寄せロープをつけに行き、再びビレーの体制の戻りトップを降ろしながら、ビレーヤーのいるテラスに引き寄せる)
 
3、その他(時間にゆとりがある場合)
①懸垂下降中に服や髪の毛が下降器に挟まり動けなくなった人を、ロープ割り懸垂で救助に行く(エイト環+安全環付カラビナ、1ロープにカラビナをかけ2ロープにエイト環をからげて下に折る)
②単独クライミングトレーニングの方法(トップロープの上を固定し下には重りを吊す、アッセンダ―(タイブロック)をロープにセットしてハーネスと連結、単独登攀し、単独登攀を途中で止めて懸垂下降する。)
③ロープを投げない懸垂下降(袋入れ、首かけ、ロープ引っ張り方式)
④人の背負い方各種、ザックと棒、ザックとハーネス、ザックと雨具

 
単独登攀の方法 <参考>
(1)メインロープを‘エイトノットを施した’末端(:末端A)からザックの中に、ザックの上から送り入れる。
(2)メインロープの反対側の末端(:末端B)を3mほど出して残り全部をザックに入れてしまう。
(3)メインロープの末端Bを頑丈な支点に固定する。
(4)スリングで、双方向に効くオートブロックヒッチ(ブルージックなど)を、メインロープに施し。そのスリングをハーネスに連結する。
(5)メインロープを‘次の支点に届く長さ’だけザックから出し、(4)のオートブロックヒッチは‘その長さ’分だけ末端A側にスライドさせる。
(6)支点まで登って、メインロープを支点にクリップする。(5)と(6)を繰り返して登って行く。
(7)10メートル置きくらいに、普通のクリップでなくてメインロープと支点をハーフマストで連結する形にする。
 *メインロープがその重さで下がってしまうのを防ぐためである。
 *ハーフマストでなくてクローブヒッチやエイトノット等で連結すると、ロープの弾性を利用することが出来なくなる。

(8)終了点まで登ったらシステムを解除する。メインロープの末端Aを終了点付近に固定する。
(9)固定されたメインロープを使って懸垂下降をし、ヌンチャク等を回収しながら、登り始め地点まで戻り、末端Bの固定を解除する。
(10)メインロープ(末端Aが固定されている)を使って、もう一度、同じルートを登る。
 
単独クライミングトレーニングの方法
(1)トップロープの上を固定し下には重りを吊す。
(2)タイブロックなどのロープを登る器具(アッセンダ→以下:タイブロック)をロープにセットしてさらにハーネスと連結する。
*タイブロックは小さく軽いので個人装備として登攀行には常時傾向していても邪魔にならない。→吊り上げシステムの項参照
(3)タイブロックを体にタスキ掛けにしたスリングで上方向に吊る。
*ペツル社のシャントというアッセンダ―は「①スリングで上方向に吊る必要がない、②ギザギザの歯でロープに食い込む構造でない 、③ロックを解除して下方向に移動することが容易、④懸垂下降のバックアップをセットする器具でもある」などの理由で、単独登攀しながら高所作業する用具として優れているが、 胸から吊るしたタイブロックによる単独登攀より30センチほどよけいに落ちた所で停止するので、単独クライミングトレーニングには向かない。しかしながら、2本のロープを使い、 胸から吊るしたタイブロックによる単独登攀と併用すれば、そのバックアップとして有効である(→懸垂下降の項参照)。 シャントの様なギザギザの歯でロープに食い込む構造でないロープ登り器具は他にも数種(コング社など)も発売されている。
(4)単独登攀をする。
 *タイブロックはロープ上をスライドして上方向に進み、クライマーが落ちればロープに食い込んで止まる。
(5)単独登攀を途中で止めて、タイブロックにぶら下がり、懸垂下降システムをメインロープにセットする。
(6)メインロープを靴に巻き付けて、それを踏み込んで立ち上がり、タイブロックにかかるテンションを解除する。
(7)タイブロックをメインロープから解除し、メインロープの靴への巻き付けも解除して、懸垂下降で下に降りる。
(8)単独クライミングトレーニングの(5)以下の手順は、「懸垂下降終了点付近でもう一本のロープを繋ぎ、繋ぎの結び目を通過して懸垂下降を続ける方法」に応用出来る。
 
負傷者の背負い方(ハーネスを利用)
負傷者の背負い方は夏山サバイバル訓練で練習したスリングを使う方法 と、ハーネスを使う方法のうちハーネスを使う方法を行う。夏山サバイバル訓練ではスリングを使う方法に重点がおかれている。 過去の山行での怪我人の搬出の事例を振り返ると、全てスリングを使う方法が使われている(スリングを使う方法は簡単で事故現場からの脱出がすばやく出来るし、 ハーネスをつけない程度の場所で怪我することの方が多かったため)。いずれにしても安全な場所まで行き。救急手当をして、長い距離、 負傷者を背負って搬出する場合はザックを使う方法に切り替える。

 
ロープ割懸垂(救助用のもう一本のロープが無い場合)
服や髪の毛が挟まったり、バックアップのスリングがロックするなどして、懸垂下降(空中懸垂)の途中で動けなくなった人を助けに行くシステムである(救助される人がぶら下がるロープのテンションを利用)。救助される人は、スリングを持っていないか、スリングを持っていてもフリクションヒッチを使えない程度の初心者である(ガイドに対するクライアント)。

ロープ割り懸垂でなくて自己脱出のシステムを作り、ロープをつたって降りていく方が、時間はかかるかも知れないが、ロープのテンションからの自由度が高いし、緩斜面にも対応出来る。実際の場面では、知名度・汎用度・単純度も高い自己脱出を使うべきだろうと考える。なので、ロープ割懸垂はロープワークの総合力を試すための「ゲレンデで行う課題」としたい。


安全環付カラビナとエイト環を使用

右ロープにひっかけて・・・

左ロープを巻きこんで行く、

左ロープを巻いたら、エイト環を下に折る、 

実際にテンションのかかったロープにロープ割懸
垂をセットした所。

救助する人の上に行き、救助する人の懸垂下降
のセットを解除出来るためのシステム(フリクショ
ヒッチ等)を作る。

◇救助される人にマリーナヒッチでセルフビレー
をセット(救助者がフリーになれる支点と連結)す
る。
◇二分の一吊り上げシステムをセットし自分
の体重で救助される人を吊り上げ、救助される
人の懸垂下降システムを解除する。

◇救助される人にフリーになった懸垂用ロープを
使い再度懸垂下降をセットしなおしてもらう。マリ
ーナヒッチを解除してあげて懸垂下降を再開して
もらう。
◇救助される人によるテンションがロープに戻っ
たらそれを利用して懸垂下降する。テンションが
緩む可能性があるので、救助される人の近くか
ら離れない。

安全環付カラビナとエイト環を使用


右ロープにひっかけて・・・


左ロープを巻きこんで行く


左ロープを巻いたら、エイト環を下に折る


実際にテンションのかかったロープにロープ割懸垂をセットした所。


救助する人の上に行き、救助する人の懸垂下降のセットを解除出来るためのシステム(フリクショヒッチ等)を作る。


◇救助される人にマリーナヒッチでセルフビレーをセット(救助者がフリーになれる支点と連結)する。

◇二分の一吊り上げシステムをセットし自分の体重で救助される人を吊り上げ、救助されるの懸垂下降システムを解除する。


◇救助される人にフリーになった懸垂用ロープを使い再度懸垂下降をセットしなおしてもらう。マリーナヒッチを解除してあげて懸垂下降を再開してもらう。

◇救助される人によるテンションがロープに戻ったらそれを利用して懸垂下降する。テンションが緩む可能性があるので、救助される人の近くから離れない。

 
懸垂下降の登り返し
自己脱出による登り返し
懸垂下降で下まで降りたトップ(以下:下の人)は、ロープを引いてみてロープが回収出来るか確かめる。次に降りた地点から先に進めるかを確認する。ロープは回収出来るが、降りた地点から先にはまだゴルジュが続くなどの理由で進めない場合には、ロープを回収しないで、上の懸垂の開始地点まで登り帰さなければならない。上に残る人と打ち合わせが出来ていなければ、自己脱出でロープを登る。

セカンドオートロック型ビレー器による登り返し、その1
ハーネスのビレーループと安全環付カラビナを30cmスリング(60cmスリングの二つ折り)でつなぎその安全環つきカラビナにセカンドオートロック型ビレー器(ATCガイド等、以下ATCガイド)と懸垂用ロープをセットしする。ATCガイドのすぐ下の懸垂用ロープに60cmスリングでオートブロックヒッチ(バッチマンが良い)を施して、それをカラビナでビレーループと連結する。懸垂の制動手が右手とすれば、左手でそのオートブロックヒッチがロックしないように調節しながら懸垂下降をする。トラブルが起きた場合は左手を解放して、オートブロックヒッチをロックさせて懸垂下降を停止する。その後、以下の方法で登り返す。
---------------------
①ATCガイドより数十センチ上にオートブロックヒッチを施し足用のスリングをセットして、足で立ちあがる。
  *自己脱出の項参照して下さい。それ(自己脱出)の足用スリングです。
②ATCガイドのカラビナホールとハーネスのビレーループを安全環付カラビナで連結する。
③ATCガイドとオートブロックヒッチの間にあるロープを2本まとめて引き上げる。
④ATUガイドにぶら下がる(ATCガイドはロックする)。
⑤足用スリングを上にスライドさせる。
⑥足で立ち上がりながら、ATCガイドとオートブロックヒッチの間にあるロープを2本まとめて引き上げる。
  *立ち上がりとロープの引き上げのタイミングを合わせること(立ち上がりの方が遅れるイメージ)。
⑦以後、④~⑥をくりかえして登って行く
---------------------


セカンドオートロック型ビレー器による登り返し、その2
もし比較的緩斜面の登り返しで、さらにオートロック型ビレー器(ルベルソーキューブ等)を持っているならば、ハーネスのビレーループに降りる方向にロックする(登りはロックしない)ようにそれをセットし自分で自分をビレーしながら登る(緩斜面なら自己脱出をセットしなくてもオートロック型ビレー器だけで登れてしまう)。

上の人と協力しての登り返し
打ち合わせが出来ているか、上と下で声が聞こえて話が出来るようなら、以下の方法が使える。テンションのかかったロープがスライドするので、自己脱出による方法に比べて落石を起こしやすいので自己脱出が出来ない場合に使うのが良い。
---------------------
<その1>2本ごぼう抜き
①下の人は、2本の下に垂れた懸垂用ロープの末端を2本共ハーネスに結ぶ。
②上の人はロープをビレーしながら(orオートロックシステムを施して)2本まとめて引き上げる。
---------------------
<その2>1本ごぼう抜き
①上の人は懸垂用のロープをスライドしないように固定する(確実に固定)。
②下の人は、二本の下に垂れた懸垂用ロープの内一本(Aロープ)をハーネスに結ぶ。
②上の人はAロープをビレーしながら(orオートロックシステムを施して)引き上げる。
③下の人は、二本の下に垂れた懸垂用ロープでビレーに使わなかった側のロープ(Bロープ)にすがって登る。
④ロープが細いとかオーバーハングの岩場で腕力が尽きそうならば、下の人は、Bロープにフリクションヒッチをかけてホールドにしたり、自己脱出を使ったりして登る。
---------------------
<その3>2分の1システムによる吊り上げ
①下の人は、二本の下に垂れた懸垂用ロープの末端を繋ぎ、そのロープを自分のハーネスの安全環付カラビナに通す。
②上の人は、下に垂れたロープの内一本をロープの結び目が上がって来るまで引き上げる。
③上の人は、結び目が上がって来たら、懸垂用のロープがスライドしないように固定する(確実に固定)。そして、一本のロープ(Aロープ)をビレーしながら(orオートロックシステムを施して)引き上げる。
④下の人は、二本の下に垂れた懸垂用ロープの内の一本で引き上がらない方のロープ(Bロープ)にすがって登る。
⑤結果として2分の1の吊り上げシステムとなって、楽に早く登り返すことが出来る。
---------------------

 
テンンションのかかったロープを固定して自由に動けるようになる。
下図では片手でフリクションヒッチを施すのみであるが、仮固定で両手をフリーにし、マリーナヒッチでテンションのかかったロープを固定すれば、ビレーヤーが自由に動いた後に(例:負傷者の所まで往復)、再度、ビレーヤーにテンションを戻すことが出来る。

 
ロープの結び目通過
<注>空中懸垂や人を背負っての懸垂下降の時には結び目通過は行うべきではない(失敗する可能性が高い)。

◆懸垂者によるエイト環結び目通過

①二本のロープを末端を揃えて、普通のノット(フェーラー結び)を施して束ね結ぶ(結び目は末端
から1mぐらいの所に作る)、結び目が障害物を乗り越える能力は最大になる。
②細めのダブルロープを使用した結び目ならば、エイト環(輪の大きいクラシックタイプのエイト環)
を通過させることが出来る。
③通過しにくい場合は1メートルくらあるロープの末端(2本)を結び目より先行してエイト環の輪に
通し、結び目通過のタイミングの合わせてその末端を引くと良い。
④太いロープの場合はエイト環にかかるロープのテンションをマリーナヒッチに逃して結び目を通
過させ、通過後にマリーナヒッチを解除してテンションをエイト環に戻す方法で対応する。

2本束ねて普通のノットで結ぶ(末端は1m程度)
いわゆるリング荷重になるが結び目は障害物を
越えて進む。 

一つ結び目が通過してから次の結び目が来る
ように二つの目結び目は離しておく(写ってい
ないが写真の下に二つ目の結び目がある。 

◆懸垂者によるハーフマスト結び目通過
使用ロープ:ベアール8.1ミリ・アイスライン新品同様、
*8.1ミリの細いロープではうまく行きますが、太いロープ、古いすべりの悪いロープの場合
は写真その4の所の操作が大変で、トンと落ちる距離を相当に長くすることになるでしょう。

*ハーフマスト結びで長距離の懸垂下降をするとロープがクルクルとたくさんキンクしてしまい
がちです。HMSカラビナの所でロープが回転しないように握り押さえながら進んで下さい。

その1、 

その2、 

その3、結び目がハーフマスト結びを広げる。
 

その4、広がった穴にロープ末端を入れて引く
結び目が通過したとたんにトンと落ちる(この
写真の場合で20cmくらい落ちる)のでそれ
に対応すること。
 
①二本のロープを末端を揃えて、普通のノット(フェーラー結び)を施して束ね結ぶ(結び目は末端から1mぐらいの所に作る)、 結び目が障害物を乗り越える能力は最大になる。

②細めのダブルロープを使用した結び目ならば、エイト環(輪の大きいクラシックタイプのエイト環)を通過させることが出来る。

③通過しにくい場合は1メートルくらあるロープの末端(2本)を結び目より先行してエイト環の輪に 通し、結び目通過のタイミングの合わせてその末端を引くと良い。

④太いロープの場合はエイト環にかかるロープのテンションをマリーナヒッチに逃して結び目を通 過させ、通過後にマリーナヒッチを解除してテンションをエイト環に戻す方法で対応する。

2本束ねて普通のノットで結ぶ(末端は1m程度)いわゆるリング荷重になるが結び目は障害物を越えて進む。


一つ結び目が通過してから次の結び目が来るように二つの目結び目は離しておく(写っていないが写真の下に二つ目の結び目がある。


◆懸垂者によるハーフマスト結び目通過
使用ロープ:ベアール8.1ミリ・アイスライン新品同様、
*8.1ミリの細いロープではうまく行きますが、太いロープ、古いすべりの悪いロープの場合 は写真その4の所の操作が大変で、トンと落ちる距離を相当に長くすることになるでしょう。 *ハーフマスト結びで長距離の懸垂下降をするとロープがクルクルとたくさんキンクしてしまい がちです。HMSカラビナの所でロープが回転しないように握り押さえながら進んで下さい。


その1、


その2、


その3、結び目がハーフマスト結びを広げる。


その4、広がった穴にロープ末端を入れて引く結び目が通過したとたんにトンと落ちる(この 写真の場合で20cmくらい落ちる)のでそれに対応すること。
◆補助ロープを使って結び目を通過させる。
下記は上からロワーダウンで吊り降ろす場合の結び目通過なので、懸垂者の動きが上のビレーヤーから見えている場合のみ使用のこと(4行下の<注>参照)。
救助者などを上からロープに吊って降ろして行く時に用いる。ロープを繋ぐことで、同じ支点を使って、ロープ2本分の長さを吊り降ろすことが出来る。エイト環などの制動器(以下:エイト環)でロープに制動をかけながら降ろすのだが、2本のロープの結び目がエイト環を通過出来なくなるので、次の①~⑩の手順で結び目を通過させる。
<注>上にいる人が懸垂者の動きが見えなくなる場合、10メートル程度降ろしたあたりから、懸垂者に引かれているのかロープの重みで引かれているのかが区別がつかなくなってしまう。なので、上からの吊り降ろしより、普通の懸垂下降を最優先させなければならない。普通の懸垂下降で「結び目通過」が必要になった場合は、懸垂者によるエイト環結び目通過マリーナヒッチによる方法で対応する。
①一本目のロープAと二本目のロープBをダブルフィッシャーマン結びなどで連結しておく(連結は頑丈に行うこと)。
②一本目のロープAでエイト環αを使って救助者の吊り降ろしを行って行き、ロープAとロープBの結び目が近付いたら、ロープAをエイト環αに仮固定する。
③テンションのかかったロープAと補助ロープCをフリクションヒッチで連結する(スリングでロープAにフリクションヒッチを施し、そのスリングと補助ロープCを連結)。 *フリクションヒッチ→ブルージック,バッチマン,クレムハイスト,マッシャー,など
④補助ロープCをもう一つのエイト環βに仮固定する(補助ロープCに大きな弛みがあってはならない)。
⑤エイト環αの仮固定をほどき、エイト環βに補助ロープCからのテンションがかかるまで、ロープAを徐々に繰り出す。
⑥エイト環βにテンションが移ったら、エイト環αを結び目を通過した位置にセットしなおす(結び目を通過させる)。
⑦ロープBをエイト環αに仮固定する。
⑧エイト環βの仮固定をほどき、エイト環αにロープBからのテンションがかかるまで、補助ロープCを徐々に繰り出す。
⑨エイト環αにテンションが移ったら、エイト環βと補助ロープCを解除(取り去る)する。
⑩エイト環αとロープBを使って救助者などの吊り降ろしを継続する。

◆樹木をビレー器具にして吊り降ろす場合の結び目通過方法
下記は上からロワーダウンで吊り降ろす場合の結び目通過なので、懸垂者の動きが上のビレーヤーから見えている場合のみ使用のこと(上の項の<注>参照)。

①吊り下げを行う場所に太い樹木が植えていればこの方法が便利である。
②一本目のロープAと二本目のロープBの末端を二本束ねて、普通のノット(フューラー結び)を2個重ねて作り、連結する。普通のノットを引きはがす向きの加重(リング加重)が加わるので、安全のために、結び目からそれぞれのロープの末端は1メートル程度出すこと。
③エイト環などの制動器を使わずに太い樹木の幹にロープAを掛けて、樹木とロープAの摩擦を利用して制動をかけながら救助者などを吊り降ろす(腰がらみのビレーに似ている、腰→樹木)。
④ロープの結び目があっても気にせず、ロープAからロープBに移行する。フューラーノットの結び目は樹木で引っかかることなく、その表皮の上を滑って通過する。「岩登りノート」の懸垂下降の項もごらん下さい。

つり上げシステム
・ごぼうぬき、1分の1、2分の1、3分の1、5分の1、7分の1のシステムがある。
 *本ページでは補助ロープを使わない吊り上げシステムを採用している。

引き上げに用いられる支点(アンカー)は極めて強力に設置されていなければならない。

・多くの人手があれば、綱引きの綱を引くようにして、負傷者を引き上げてしまうのが良い(ごぼうぬき)。他ののシステムは摩擦による抵抗が大きいからである。

・人手は少ないが、負傷者が腕力でロープを引ける場合は2分の1システムが良い(リードクライミング中に途中で墜落したクライマーがビレーヤーの助けを借りて 上の支点までゴボウで登る時と同じ原理)。

・人手が少なく、負傷者が腕力でロープを引くこともできない場合は1分の1システムが良い。

・3分の1システムは「チロリアンブリッジのセット」や「トラックの荷台の荷物をロープで引き締める方法」と原理は同じである。

1分の1システム
 補助者Aは負傷者Cに向かうロープを引
 き上げる(Aがいない場合も本システム
 は機能するが訓練が必要)

 支点のカラビナが滑車であると、吊り上
 げスピードは最速となるが、救助者Bと
 負傷者Cの体重差が大きい時は要注意!

 Bはロープの中間をハーネスに結び体重
 を利用して負傷者Cを引き上げる(余り
 ロープが団子になって落下しないよう補
 助者Aに依頼、Aがいなければ別工夫)。
 さらに負傷者Cから支点に向かうロープ
 を手で上方向に引きながら、負傷者Cに
 向かう。浮石が多く、負傷者Cに向かっ
 て落石が予想される場合は要注意(他
 に方法がないか考えること)。

 
 Bが頭を下にして負傷者方向に向かう方
 が力に無駄がないが、頭を上にして負傷
 者Cに向かって良い。

 Bが負傷者の所に達したら、上の支点が
 滑車でなくて、さらに補助者Aがいなけ
 ればそれ以上吊りあがらないので、支点
 から救助者Bに向かうロープを自己脱出
 で登り、ある程度登ったら、再度、負傷
 者Cに向かう。
2分の1システム
 
@オートブロックはバッチマンタイプ1が緩
 みやすくて良い(止まらない場合はタイプ
 2を使う)。
@オートブロックと支点のカラビナの間隔
 が短いとオートブロックがカラビナに引き
 込まれてカラビナの反対に移動しロック
 をかけることが出来なくなる。それを防
 ぐため、カラビナとオートブロックの間に
 60cmスリングを足す方がベター(60c
 m上がったらオートブロックを負傷者の
 方向に引き下ろす)。

@1/5や1/7システムの場合は上の60
 cmスリングを足す方法を採用すること。
 せっかく引き上げても緩んだオートブロッ
 クが締まるまでの距離だけ下がってしまう
 (1/7だったら10cm下がったら70cm
 引いた努力が水の泡)ことを防げる。
5分の1システム 

@救助者がAを下方向に引くと5分の1
 *最上部の支点はガルーダヒッチなどの結びよりオ
  ートロック型ビレー器具(ATCガイド等)の方が良い。

@B1とB2はつながっている。
@B2位置にスリングでオートブロックを施してカ
 ラビナをかけ、それにAからのロープをクリップ
 して上に引けば7分の1システムに移行する。
3分の1のつりあげ
 *90度回転すればチロリアンブリッジのセットの図となる


左図上のようにハーケン1本による支点
でシステムを作ってはなりません。

ハーケンの場合は効いていても3本を連結し
て1つの支点にして下さい。全力で、腕より太
い、枯れていない、樹木を、探して、支点にし
て下さい。

左図の右端中央のユマールはオートブロック
ヒッチ(バッチマンタイプ1マッシャー)を使う。
*2分の1の図の右上の位置を参照

左図右端下のブルージックはセットに時間が
かかるので、バッチマンが多く使われている。


◆吊り上げが必要になった場合の優先順位
1位…1分の1(ごぼう抜き、3人は必要)
2位…2分の1(手が使える負傷者を上げる)
*負傷者を背負った救助者を上げる方法としても良い。
3位…5分の1(効率が悪い)
4位…7分の1(非常に効率が悪い)
5位…3分の1(3人は必要)
1分の1システム

@補助者Aは負傷者Cに向かうロープを引き上げる(Aがいない場合も本システムは機能するが訓練が必要)。

@Aの頭の位置にある支点は強力なものでなければならない。

@支点のカラビナが滑車であると、吊り上げスピードは最速となるが、救助者Bと負傷者Cの体重差が大きい時は要注意!

@Bはロープの中間をハーネスに結び体重を利用して負傷者Cを引き上げる(余りロープが団子になって落下しないよう補助者Aに依頼、Aがいなければ別途工夫)。さらに負傷者Cから支点に向かうロープを手で上方向に引きながら、負傷者Cに向かう。 浮石が多く、負傷者Cに向かって落石が予想される場合は要注意(他に
方法がないか考えること)。

 
@Bが頭を下にして負傷者方向に向かう方が力に無駄がないが、頭を上にして負傷者Cに向かって良い。Bが負傷者の所に達したら、上の支点が滑車でなくて、さらに補助者Aがいなければそれ以上吊りあがらないので、支点から救助者Bに向かうロープを自己脱出で登り、ある程度登ったら、再度、負傷者Cに向かう。


2分の1システム

@オートブロックはバッチマンタイプ1が緩みやすくて良い(止まらない場合はタイプ2を使う)。

@オートブロックと支点のカラビナの間隔が短いとオートブロックがカラビナに引き込まれてカラビナの反対に移動しロックをかけることが出来なくなる。それを防ぐため、カラビナとオートブロックの間に60cmスリングを足す方がベター(60cm上がったらオートブロックを負傷者の方向に引き下ろす)。

@1/5や1/7システムの場合は上の60cmスリングを足す方法を採用すること。
せっかく引き上げても緩んだオートブロックが締まるまでの距離だけ下がってしまう(1/7だったら10cm下がったら70cm引いた努力が水の泡)ことを防げる。


5分の1システム 

@救助者がAを下方向に引くと5分の1
 *最上部の支点はガルーダヒッチなどの結びよりオートロック型ビレー器具(ATCガイド等)の方が良い。

@B1とB2はつながっている。

@B2位置にスリングでオートブロックを施してカラビナをかけ、それにAからのロープをクリップして上に引けば7分の1システムに移行する。


3分の1のつりあげ
 *90度回転すればチロリアンブリッジのセットの図となる

図のようにハーケン1本による支点でシステムを作ってはなりません。
ハーケンの場合は効いていても3本を連結して1つの支点にして下さい。全力で、腕より太い、枯れていない、樹木を、探して、支点にして下さい。

図の右端中央のユマールはオートブロックヒッチ(バッチマンタイプ1マッシャー)を使う。
*2分の1の図の右上の位置を参照

図右端下のブルージックはセットに時間がかかるので、バッチマンが多く使われている。


◆吊り上げが必要になった場合の優先順位
1位…ごぼう抜き(3人は必要)
2位…1分の1(手が使えない負傷者でも上がる)、
3位…2分の1(手が使える負傷者のみ)、
*負傷者を背負った救助者を上げる方法としても良い。
*渡渉やへつりの場合はあらかじめ2分の1をセットしておくと、ビレーヤーより渡渉者が下流に流された場合に対応出来る。

4位…5分の1(効率が悪い)
5位…7分の1(非常に効率が悪い)
6位…3分の1(3人は必要)

・トップが登れた所をセカンドがフォロー出来ない場合は、ダブルロープを使った引き上げシステムを作るのが良いだろう。トップはダブルロープのうち一方のロープ(以下:青ロープ)を支点に固定してまう。そして、もう一方のロープ(以下:赤ロープ)だけを思い切りテンションをかけながら(引き上げながら)ビレーする(3分の1システムを作って引き揚げても良い)。セカンドは、まず、青ロープをハーネスからはずし末端をフリーにする、次に、青ロープを手で引いて登ったり、青ロープにフリクションヒッチを施して自己脱出で登ったりして上昇する。セカンドの上昇力とトップの赤ロープの引き上げ力が加わって2分の1システムに近い効率で昇って来ることが出来る。

・7分の1と9分の1システムは非効率で時間がかかる。現実の場面で使えるのは5分の1システムまでであろう。その5分の1システムも、つりあげ者が1人しかいなくて、しかも、2分の1システムが作れない場合(負傷者のロープを届けられないor負傷者が手を使えない)に行うことになるだろう。

・下の写真は7分の1システムである。

器具名、下から上に向けて
(1)3分の1用タイブロック

(2)ヌンチャク
*タイブロックと対
 及びプーリーと対

(3)3分の1用プーリー

写真上部の立木付近を拡大し
て器具名と共に下に掲載した。
下の写真では器具名を上~下に向け
て反対順に記しているので注意のこと


雪山で支点を作ったり、つりあ
げシステムをセットする場合は
早く確実に(出来るだけオーバ
ー手袋をしたままで)行いたい。
そのためにはヌンチャク、オー
トロック出来るビレー器具(ル
ベルソキューブなど)、小さな登
高器(タイブロックなど)、救助用
滑車(プーリーなど)、といった用
具をなるべく使うべきである(プ
ーリー1つとタイブロック1つ、
軽量のヌンチャク数本は冬季
登攀の個人の必携装備にし
て良いと思われる)。冬季登攀
中に手袋してハーケンの穴に
スリングを通す作業は至難だ、
でもヌンチャクならそれを簡単
に行うことが出来るのだ。
器具名、
右下から左上に向けて

①7分の1用タイブロック
 *①の下が上記写真の
  (3)3分の1用プーリーである
②カラビナ
 *タイブロックと対
③7分の1用プーリー
 *ない場合はカラビナに変更
④5分の1用プーリー
 *ない場合はカラビナに変更
⑤ヌンチャク
 *タイブロックと対
  及びプーリーと対
⑥5分の1用タイブロック
 *下に引くとロックする向きに
  セット
⑦オートロック式プーリー
 *ない場合はルベルソーキュ
  ーブ等に変更
⑧カラビナ
 *オートロック式プーリーと対
タイブロックとプーリーを組み合
わせて作った、オートロックシス
テム

左下に伸びるロープの末端に
負傷者がつながる。

上の写真ではこのシステムで
なくてオートロック式のプーリ
ー1つを使っている(立木にか
けた白いスリングのすぐ下)

オートロックシステムを確実
に作ることで、つりあげシステ
ムの安全が保たれる(つりあ
げシステムの心臓部と言える)。

プーリーやタイブロックがなけ
れば、ルベルソキューブなど
のビレー器に変更、それもな
ければガルーダやビエンテや
フリクションヒッチに変更する。


器具名、下から上に向けて
(1)3分の1用タイブロック
(2)ヌンチャク
*タイブロックと対及びプーリーと対
(3)3分の1用プーリー

写真上部の立木付近を拡大して器具名と共に下に掲載した。
下の写真では器具名を上~下に向けて反対順に記しているので注意のこと

雪山で支点を作ったり、つりあげシステムをセットする場合は早く確実に(出来るだけオーバー手袋をしたままで)行いたい。そのためにはヌンチャク、オートロック出来るビレー器具(ルベルソキューブなど)、小さな登高器(タイブロックなど)、救助用滑車(プーリーなど)、といった用具をなるべく使うべきである(プーリー1つとタイブロック1つ、軽量のヌンチャク数本は冬季登攀の個人の必携装備にして良いと思われる)。
冬季登攀中に手袋してハーケンの穴にスリングを通す作業は至難だ、でもヌンチャクならそれを簡単に行うことが出来るのだ。


器具名、
右下から左上に向けて
①7分の1用タイブロック
 *①の下が上記写真の(3)3分の1用プーリーである
②カラビナ
 *タイブロックと対③7分の1用プーリー
 *ない場合はカラビナに変更
④5分の1用プーリー
 *ない場合はカラビナに変更
⑤ヌンチャク
 *タイブロックと対及びプーリーと対
⑥5分の1用タイブロック
 *下に引くとロックする向きにセット
⑦オートロック式プーリー
 *ない場合はルベルソーキューブ等に変更
⑧カラビナ
 *オートロック式プーリーと対



タイブロックとプーリーを組み合わせて作った、オートロックシステム

左下に伸びるロープの末端に負傷者がつながる。

上の写真ではこのシステムでなくてオートロック式のプーリー1つを使っている(立木にかけた白いスリングのすぐ下)

オートロックシステムを確実に作ることで、つりあげシステムの安全が保たれる(つりあげシステムの心臓部と言える)。

プーリーやタイブロックがなければ、ルベルソキューブなどのビレー器に変更、それもなければガルーダやビエンテやフリクションヒッチに変更する。

  
ロープを投げないで懸垂用のロープを張る方法。
懸垂用のロープを投げるとヤブや岩角に引っかかるのがあたりまえである。一番目に懸垂下降する人は引っかかったロープを直しながら (末端を結べばそれが岩角などに引っかかって取れなくなる可能性もある) 降りなければならないので、危険である。フリクションヒッチを懸垂用ロープにかけてハーネスと連結する方法でバックアップ を施すべきだが、そのゆとりもないほどに急がされる場合も多い。
*全てリスクに対応出来るベストな方法は「①のロープを袋に入れて腰から吊るす方法」である。

①懸垂下降をする者がロープを袋に入れて腰から吊るし、ロープを投げずに袋から繰り出しながら降りて行く方法
…ロープを袋に入れる方法がベストと考えられる。
…ロープの末端を結べるので安心度も高い。
…細いダブルロープでなくて、シングルロープ2本をつないで懸垂下降する場合、ロープ2本はロープ袋に入りきらないのでロープ袋を2つ用意する。
…ロープの末端を結ぶ時は2本束ねて結びます。潅木にひっかかるなどのトラブルを防ぐため、2本を束ねて結ばずに、1本ずつそれぞれにノットを作る方法がありますが、 誤って末端の結びを解かずにロープの回収を始めてしまうと、ロープが回収出来なくなります。
②懸垂下降をする者がロープをループにして首にかけ、数メートルずつ繰り出しながら懸垂下降する方法
…片手で懸垂のロープを抑え、片手で首のループからロープを繰り出す。
…①の方法に比べ、袋に入れる手間が省略出来て便利だが、首つりになってしまうリスクがある。
…投げたらひっかりそうな所で、とにかく早く下降してしまわななければならない時に有効な方法である。
③2本のロープの1本ずつを振り分けて右と左の腰に短いスリングで吊るし、左右から少しずつロープを繰り出しながら懸垂下降する方法
…末端を結び(結び目を解かずにロープの回収を開始してしまい回収不能になるリスク有)、ロープを振り分け、 60cmスリングを2重にした30cmスリングで振り分けたロープ束の中央を吊って、ハーネスのギアラックにカラビナで吊るす。その作業を右のロープと左のロープ1本ずつ行う (クライマーの左右の大腿のあたりにロープが吊られる)。
…ロープがクライマーの腹側から引き出されるようにセットする(背中側から引き出されてはいけない)。
…右と左からロープが出て来るので、ビレー器の真下、体の中心線の所にロープを持つ手(制動手)が来ることになる(両手を上下に接近させてロープを握る)。
…ズボンの腰のあたりロープを添わせて制動をプラスすることが出来ないので手袋をして懸垂下降をすること。
…失敗すると長くロープが出すぎて垂れ下がってしまう可能性がある(潅木が多ければ引っかかる)。
④ロープを投げずに懸垂の支点の付近に残して置き、懸垂者が4本のロープを引く形で降りて行く方法。
…上の者が懸垂用ロープを徐々に繰り出して補助する。
…半分の距離を懸垂した所で、半分の距離分のロープが落ちて来る(ロープといっしょに石も落ちるので注意)。
…その半分のロープがどこかに引っかかるかも知れないので、末端は結ばない。
⑤エイト環等でビレーしながら吊り下ろす方法
…懸垂者は両手が使える。
…懸垂者が見えない状態で降ろすのは危険(懸垂距離は15メートル以内に留める)。
…20メートルも降ろすとロープの重さで懸垂者の動きがわからなくなる。
⑥カウンターラッペル関連図
…懸垂の支点は金属の輪でなければならない(ゲートを反対向きにした2枚のカラビナ、そのカラビナは残置する)。
*残置スリングを懸垂の支点にしてはならない。懸垂下降の途中で熱により溶融して、スリングが切れてしまう。
…トップロープのロワーダウンする時の形なのだが、ビレーは登っている者自身が行う。
…ロープは投げずに上に残し、懸垂者が引きながら、降りていく。
…ロープが岩角にあたり擦れる部分が多いので(摺れが原因で石が落ちるので注意)、長い距離(5メートル程度以上)の懸垂には向かないが、最も早くロープが張れる方法である。
…50メートルロープを使い、16.6m(50m÷3)以下の距離を下るカウンターラッペルならば、上から3本のロープが垂れる状態で懸垂を終了出来る。 懸垂者の下降器にセットされていたロープを負傷者のハーネスの安全環付カラビナにかければ、3分の1のつりあげシステムを作ることが出来る。 手の使える負傷者なら2分の1(3分の1ではない)のシステムで行う負傷者がロープをたぐる方法も使えるので非常に素早く吊り上げることが出来る。

*カウンターラッペルは縦走路から数メートル下に落ちた負傷者の所まで素早く懸垂下降し、状況を確認し、 負傷者を縦走路まで吊り上げるのに非常に有効な方法である。
*ただし、石を落とす可能性が大なので、負傷者の真上からでなく少し離れた所から降りること。

 
人を背負ってを懸垂下降する方法 その1  その2はこちら
@懸垂下降というよりはロワーダウンと呼ばれている方法に近い
*キーポイント1=「人を背負ことで生じる下降器の制動力不足を補うこと」
*キーポイント2=「負傷者にメインロープからセルフビレーをセットすること」
*キーポイント3=「負傷者のセルフビーレを負傷者の体重でテンションがかかる長さに調節すること」
@短距離(ロープの長さの1/3以下程度)を降りる時に有効である。長い距離の場合は次項の 懸垂救助の方法を用いた方が良い可能性が高いので状況に応じて選択しなければならない。
@救助者が1人だけしかいない場合に有効である。2人以上いる場合は次項の懸垂救助の方法を用いた方が良い可能性が高いので 状況に応じて選択しなければならない。
@救助者は、自分のハーネスに結んだ懸垂用ロープを上に向かわせ、ロワーダウンの支点で折り返して下に向かわせる、 下に向かって降りてきたロープをボディビレーする(カウンターラッペルと呼ばれている)。
*救助者はビレー器を通してロープを上に送り出すことで下降する。トップロープの支点の摩擦が加わって制動力が増す。

*カウンターラッペルは、ロープ支点にかけて真ん中を出す必要がないので最も早く懸垂下降が開始出来る。 あちらこちらで擦れるのでロープが痛む。「カウンターラッペルはオーバーハングでないかぎり、その「あちらこちらで擦れ」が大きすぎて 長い距離の懸垂下降には向いていないと知っていなければならない。またその「あちらこちらで擦れ」で 落石を起こしやすいと知っていなければならない。
@負傷者のセルフビレーをセットする。
*救助者のハーネスから上に伸びるロープの、ハーネスから1mくらい上の所に、フリクションヒッチ(バッチマン等)でスリングをセットする (下降を開始する前にセットしておく)。
*負傷者の所まで降りたら、負傷者のハーネスと上記スリングを連結してセルフビレーとする{連結する前にフリクションヒッチをスライドして、 ちょうど背負いやすい長さ(セルフビレーにテンションがかかり負傷者の体重の何割かを支える程度) に調節すること}。
@負傷者の手当てをし、背負って、降りる。
人の背負い方は夏山サバイバル訓練で練習した方法を使う。

 

 
懸垂救助(負傷者が宙吊りになっている場合の救助の方法)
@負傷者役の者が、トップロープにつながり岩場の途中まで登り、手を離してトップロープに宙吊りになる。トップロープの確保者は、テンションのかかったロープを仮固定し、その場に待機する。
@救助者役の者は負傷者の上部から懸垂下降する(落石に注意)。
@懸垂下降はハーフマスト2回ひねりエイト環2回がけなど、 制動力の大きな方法を使う。
@負傷者の上部で、負傷者のハーネスに手が届く位置でなるべく高い位置に停止し、ロープを何回も巻きつけて仮固定する。二人分の体重がかかって解除出来る仮固定でなければならないので、仮固定をしないで制動手を握りしめ、もう一方の手で負傷者との連結作業などっを行った方が良い場合も多い。
@負傷者を、救助者のエイト環の小さい輪又はそこにかけたカラビナに、スリングで連結する(ロープのテンションがあるので、負傷者は軽く持ち上がり、救助者はその重みで下がるので連結は容易である)。負傷者を救助者のハーネスに連結してはならない(トラブルが発生した場合救助者の身動きがとれなくなる)。
@負傷者の腹を救助者の足の間にはさむ感じの位置になり、スリング負傷者の背中からとって負傷者の頭を起こすようにする。頭を起こすことは省略しても早く下ろした方が良い場合もある。
@負傷者をささえていたロープを切断する。この時救助者の懸垂用のロープを切ってしまわないように、ナイフの刃の向きなどに配慮が必要である。本訓練ではロープを切断せずにトップロープの確保者が仮固定をといてロープを流す。
@救助者は仮固定をといて負傷者を連結したまま懸垂下降を再開し、下まで降りる。

@人を背負ってを懸垂下降する方法 その2
…長射距離を人を背負って懸垂下降する場合は懸垂救助の方法を用いる。
…上のテラスに補助者がいてさらに懸垂用ロープAとは別のロープBがあれば負傷者を上からロープBでビレー(張り気味でビレー)する
(補助者による負傷者の上からのロワーダウン+背負う人の自力懸垂) 懸垂の距離が短い場合(数メートル程度)は下の写真の灰スリングは省略出来るしエイト環2回がけなどで制動力を増さなくても大丈夫になる (懸垂の距離が長いときは補助者による上からのコントロールが出来なくなるので灰スリングや制動力の増加は省略してはならない)
…下のテラスに補助者がいれば、懸垂用のロープAを持って補助する(不足の事態に懸垂用ロープAを引けば懸垂は停止する)。下の補助者は上からの落石の来ない場所にいること。
…懸垂の距離が長い場合は、ロープBの重さに翻弄されて、上の補助者が確実にビレー出来なくなるので注意。

紫スリング(下降器をハーネスから離してセットする工夫)は救助
者につながる。灰スリングは負傷者のセルフビレーである(エイト
環の小さい方の穴を利用してセルフビレーをセットする)。

オレンジロープを仮固定すれば、救助者がシステムから
脱出できる(脱出できることが本システムの真骨頂)。







二人分の体重がかか
っても大丈夫なように、
あらかじめエイト環2
回がけなどの方法で
下降器の制動力を
増しておくこと。


下に人がいれば懸垂
ロープを持って補助す
る(落石に注意)。

紫スリング(下降器をハーネスから離してセットする工夫)は救助者につながる。灰スリングは負傷者のセルフビレーである(エイト環の小さい方の穴を利用してセルフビレーをセットする)。

オレンジロープを仮固定すれば、救助者がシステムから脱出できる(脱出できることが本システムの真骨頂)。


二人分の体重がかかっても大丈夫なように、あらかじめエイト環2回がけなどの方法で下降器の制動力を増しておくこと。


下に人がいれば懸垂ロープを持って補助する(落石に注意)。












 
ショートロープ研修
<想定1>右手を負傷してロープ操作が出来なくなった負傷者を伴って2人で岩稜ルートを通過する。
<想定2>想定1の負傷者と未成年(子供)を伴って3人で岩稜ルートを通過する。
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安全を絶対に守れると確信出来ないなら進まない、引き返して別の方法を考える。
◆ショートロープは熟練した山岳ガイドが使う技術であって、安易に使うものではない。


◆ギアの携行法、
なるべく必要最小限に、ハーネスにつけるのみ、胸につける場合は右側に少々、ザックのウエストベルトは撤去する、ピッケルバンドはいらない(ピッケルのアルペンざしなどピッケルの携行法の工夫)、安全環つきカラビナはネジ式(途中までしか締めない)、スリングは細いダイニーマ60cm×2とナイロン120cm×1 (120cmスリングは持ち運びに便利、支点工作、簡易ハーネス、スリングによるショートロープおぶい紐、お助け紐など多用途)

◆支点を作る
岩角、鎖、立木などをなるべく利用、240cmスリングで固定分散(早い)、流動分散は使わない。

◆ロープのザックへのしまい方とコイルの止め方
①雨蓋の下、右側から引き出せるようにする(ザックから物を出す場合はサイドジッパーから)。
②9m,4m,2m,♀(クシニクと覚える)、即ち、負傷者からコイルを持つ手までに2メートル、コイルに4メートル、肩に巻くのに9メートル使い、残りをザックに送り込むように入れる。
③はじめは9メートルの部分を(コイルにして肩にかけないで)ザックに入れておくとすっきりする(4m,2m,♀)。
④ザックから出たロープをハーネスにクラブヒッチで連結する。
⑤首と左手でコイルを作る。
⑥コイルは右肩から左腰にかけて襷(たすき)がけにする。
⑦ビレーループに通して、コイルをからげて(2回転する方がベター)、オーバーハンドノットで止める。
*負傷者から15m離れた所のロープを折って1メートルほどのヘアピン(ロープ2本の束)を作りそれを救助者のビレーループに通して、 肩にかけたコイルをからげて、セカンドに向かうロープに止め結び(オーバーハンドノット)する。オーバーハンドノットでなく、ブーリン結びや八の字結びを使う人もいる。

◆負傷者とロープの連結
①ガイド協会はエイトノットであるが、Timtamではブーリンプラス止め結びで連結する(なぜならハーネスがない場合に使えるから)。
②ブーリン結びで腰にじか巻きした方が下りの場合、結び目が後ろに来るので、ハーネスのビレーループに結ぶより有効になる(負傷者が落ちても半回転しない)。

◆コイルの持ち方
負傷者側から左手で持って、コイルを作り、作り終えたら右手に持ち替えて(左手で巻いたロープを右手で持つのは負傷者側からロープを伸ばせるから)、コイルが負傷者からのロープの上にくる方向に右手首を時計回りに返し、右手の中指と人指の間で負傷者側から来るロープを挟む(ロープの緩み止めが出来る)。
*指の間でロープを挟むのでなく、引き解け結び(スリップドヒッチ)を作ってからコイルを作り、引き解け結びの輪(直径15cmくらいに作る)とコイル(直径40cmくらいに作る)を一緒に持つ方法がある。コイルを左右の手に持ち替えるのが(下の段落に記載の方法より)容易になる。
*指の間でロープを挟むのでも、引き解け結びを作るのでもなくて、「コイルが負傷者からのロープの上にくる方向に右手首を時計回りに返(数行上に記載)」すことを2回行うことでコイルに巻き付けて、コイルを固定してしまう方法がある。コイルを左右の手に持ち替えるのが(下の段落記載の方法より)容易になる。


◆コイルの左手への持ち替え
右手の手首のひねりをもとにもどしてロープの緩み止めを解除。コイルを左手に持ち替えて、コイルが負傷者からのロープの上にくる方向に左手の手首を左回りに返し、左手の中指と人差し指の間で負傷者側から来るロープを鋏みロープの緩み止めを作る。
*コイルの左右手への持ち替えをくりかえし練習する(以下左手から右手への持ち替え)。
左手の手首のひねりをもとにもどしてロープの緩み止めを解除。コイルを右手に持ち替えて、コイルが負傷者からのロープの上にくる方向に右手の手首を右回りに返し、 右手の中指と人差し指の間で負傷者側から来るロープを鋏みロープの緩み止めを作る。


◆下りの場合
①下りは負傷者が先行する(負傷者は救助者より下方にいて救助者に上方向に引かれながら歩く)。
   *登りは救助者が先行する。
②鎖場をコンテで下る方法:(a)ロープを鎖にかけて鎖スライドビレー,(b)カラビナを鎖にかけてそのカラビナとハーネスをスリングで連結した鎖スライドセルフビレー(鎖スライドビレーは登りにも使える)

◆トラバースの場合
①負傷者の上側を歩く、歩けない場合は振り子トラバース、振り子トラバースも出来ない場合はロープをフィックスするか後ろにビレーヤーを配置する(負傷者は中間者になる)。
②2人の場合は2人の中央の上から2人をロープで釣る。
③トラバースルートをショートロープで通過するのは相当に難しいので、負傷者の後ろにいて腰のハーネスを掴んで歩くぐらいで良い(ロープを介せずに負傷者を持つ)。
④たとえば雪の斜面では負傷者用のトレースをつけて次のレストポイントまで行き、負傷者用のトレースの上にショートロープ保持者用のトレースをつけて戻って来きて上下2本のトレースをつける。
⑤トラバースのショートロープは難しい、危ないと思ったらロープをフィックッスとか、後続にビレーヤーを配置する方法に切り替える。それもだめならルートを変える(例えばトラバース出来る所まで戻り、そこをトラバースしてから直上する)。

◆レストしてもらう方法
セルフビレーをセットしてあげられない場合は低い姿勢で手はどこかを持ってもらか地に手をつかせる(手でどこかを持たせることで不用意にその場から動かなくなる)。もちろん、セルフビレーがセット出来るならセットしてあげる(負傷者はセルフビレーをセット出来ない)。

◆タイトロープへの切り替え
①6m(2+4=6)のタイトロープは両手はフリーだけれど確保力は小さい
②15m(2+4+9=15)のタイトロープは有効(短いと確保力が小さい、長いとロープと回りの木や岩との摩擦が大きくなりすぎる)。氷河の場合は20~25mのタイトロープを使う(日本では沢の高巻きとか急斜面のヤブ漕ぎなどで使用するので10~20mの長さが良い)。

◆スタッカットへの切り替え
①手のコイルをほどくのみで4mのスタッカット
②肩のループをほどくと15mのスタッカット
③ザックからロープを出して50mのスタッカット(いつも行うリードアンドフォローのクライミング)
④セカンドがビレー出来ない場合は単独登攀になる。技術が無いとか時間が無いなどで単独登攀出来ないなら引き返す。

◆打ち合わせの重要性
①次に行うことを説明し、意志の疎通をしっかりしてから行動開始すること。なるべく見える所、声が聞こえる所でピッチを切る。
②ロープは伸びていて結びあっている者どうしの距離が遠いほど安全度は高い、だが、それは離れる者どうしのしっかりした打ち合わせがあってこその安全である。
③例えば「動かないで下さい」では不十分で「ここから一歩も動かないで下さい」と打ち合わせる。「ロープがいっぱいになったら、セルフビレーを解除して登ってきて下さい」とか、「ロープが弛まないように登ってきて下さい」とかはっきり打ち合わせてから離れること。
③声が聞こえる距離以上に離れない方がいいけれど、声が聞こえないいし姿も見えないしホイッスルの合図でさえ届かないくらい離れることが多々あると知っていなければならない。

◆岩角ビレー、棒くいビレー
1本のロープをビレーするのに有効、下りの場合はビレー終了後巻き取りながら追いつくことも可能(コンテで行ける程度の場所の場合)
 
◆懸垂下降,負傷者より先に降りる場合 懸垂下降補助①滝
負傷者に懸垂をセットしてから下る(ハーネスのビレーループからスリングで作った30cmぐらいの「ひげ」を出してその「ひげ」の先に下降器をセットすると‘先に降りる者の懸垂で負傷者が振られなくて’良い)。下に降りたら、ロープの末端を持って負傷者のトラブルに備える(落石が来ない場所にいること)。

◆懸垂下降,負傷者のより後に降りる場合 懸垂下降補助②
懸垂のロープをセットしてから、上の支点の所でロープを固定、負傷者に1本のロープで懸垂してもらい、もう1本のロープでビレーする。
*負傷者が1本懸垂で下れるのは緩斜面だけだ。急斜面や空中懸垂になる場合はエイト環2回がけなどで制動力を補うこと。
負傷者の懸垂が終わったら、上の支点の所のロープ固定を解除しロープが下から回収出来るようにする。後続者は2本のロープで普通に懸垂下降をする。この方法は懸垂の初めが不安定な足場である場合に有効である。しかし、上から負傷者(懸垂者)の動きが見えなくなってしまう場合は、20メートル程度降ろしたあたりから、懸垂者に引かれているのか、ロープの重みで引かれているのかが区別がつかなくなってしまうので、10メートルを軽く越えるような長い距離の懸垂下降の場合は「懸垂下降,負傷者より先に降りる場合」を使用すること。

◆ロープフィックス ガイド型
単独登攀をして、ロープを固定しながら戻る。1人しかいなければ回収も含めて2往復になる。負傷者はラビットノット使用で固定ロープを通過する。まず、負傷者を悪場の手前に留める (動かないで待っているように指示する)。ザックからロープを出しながら(上り出しの支点にロープを固定すること。 途中のランニングビレーにハーフマストヒッチでロープをかけながら行く単独登攀で進む)悪場を通過し、安全地帯まで行きロープを固定する。ザックをその安全地帯に置いて 、再び負傷者の所まで、ロープを支点にクローブヒッチなどで固定しながら、戻る。負傷者の肩あたりの高さにロープが張られるように固定する。負傷者の所に戻り、 負傷者のハーネスのビレーループにスリング2本を連結しうさぎの耳のようにする。うさぎの耳とフィックッスたロープをカラビナ(耳それぞれに2ヶ)で結び、 負傷者を伴って悪場の先の安全地帯に向かう。途中の支点でうさぎの耳のカラビナを一つずつかけかえて行動させる(いわゆるフェラータ)。 *にフェラータとは梯子段という意味のようですが、ここでは、ロープでなくてワイヤーがフィックスされたルートとその通過方法のことを指します。 ヨーロッパで、軍隊の山岳地帯危険個所移動用に設置されたのが始まりで、登山者用にフェラータルートの整備と設置が現在も進行中です。

--------------
◆2人の場合のひげ出し
エイトノット2つとクラブヒッチでひげを作る、ひげの長さは20cmから30cmにする。2人の間隔は1~2メートル、夏が1メートル強、冬は前の人にアイゼンで蹴られないように2メートル弱。弱い方の人が近くつまりひげに繋がる。

◆2人の場合のロープを真ん中で2つにわける方式
①2人をショートロープで引くとわかっていて、さらにスタッカットやトラバースになるピッチがあるとわかっているなら、出発前にロープを真ん中にエイトノットを作り、そこからザックに送り込んで、2本のロープがザックから引き出せるようにしておく方が良い。
②上記ひげ出しを使う時は1本だけロープを引いて2人をつなぎ、2本使いたいときはひげをほどき、もう1本のロープで結びなおす。
③ひげ出しを使わないで2本を引いてで歩く時は、2つのコイルは持てないので、弱い人の側のロープのみコイルを作り手で持つ(弱い人が近く)。強い人(後ろの人)の側のロープはコイルなしでハーネスの安全環付きカラビナに繋ぎ直接引く(タイトロープにする)。「ロープが大きく弛まないように歩いて」と指示する。弱い人のザックのサイドのベルトの所にヌンチャクをかけ強い人のロープを通しておくと、弱い人がロープを踏まないで良い。
④スタッカットにするときにがこの方式の本領発揮である。また、トラバースの時も2人の間の上部に位置することが容易である。
 
◆ルベルソーキューブ(あるいはATCガイド等)によるビレー
①ロープを半分から分けて2本にして二人を同時に上げる場合に有効である。ルベルソーキューブ(以下キューブを略)を2個持っていて個別にセットすると、一人落ちて一つがロックしても、もう一人の方のルベルソーはロックしない。ビレーポイントでセルフビレーをセットしなくても良い。次のピッチはセカンド2人のルベルソーを借りてまたそれを2個持って登る(3人組にルベルソーが4個あるということ)。
②ルベルソーキューブを吊るす支点は確実なものでなければならない(確実でない場合はクラシックな腰がらみによるビレーが最も有効である)。
③ルベルソーキューブを支点から吊るすカラビナは小さな安全環付カラビナ、ルベルソーキューブとロープの間にセットされるカラビナは大きなHMSカラビナである(HMSカラビナを使わないとスムーズなロックの解除が出来ない。

◆ルベルソーキューブのロックの解除
解除法①:解除ホールに補助ロープを結び、そのロープを上部の適当な位置に作った支点から吊るしたカラビナに通し、 さらにビレーヤーのハーネスと結ぶ(補助ロープに弛みがないように結ぶ)。ビレーヤーはビレーの手側のロープをしっかり持ちながら (ガクンと落ちるように解除されるのを防ぐために)ゆっくりとしゃがみながら補助ロープを引いて、ATCガイドをロックが緩む向きに(ビレーホールを中心にして)回転させる。
解除法②:解除ホールにカラビナのゲートのバネでない側を引っかけて、それをテコにして、ATCガイドをロックが緩む向きに(ビレーホールを中心にして)回転させる。 腕力の弱い人の場合はこの方法が出来ない可能性が高いし、習熟していないといきなりガクンと落とすように解除させてしまうので、解除法①を最優先させること。
解除法③:HMSカラビナを上下にキコキコと動かす(数センチメートルオーダーでわずかにロープを緩める方向に動かすことが出来る)。
・附録:1つのルベルソーで後続2人に繋がるロープを2本同時にビレーすることが容易である。しかし、一人だけ降ろすことが大変なので注意が必要である (テンションのかかっていない方のロープにフリクションヒッチを施してからロックを解除しなければならない)。
・附録:ルベルソーキューブでロープを登る方法がある。即ち、ハーネスのビレーループに降りる方向にロックする(登りはロックしない) ようにそれをセットし自分で自分をビレーしながらロープを登る(ホールドが豊富な緩斜面に有効である)。

*1周目はハーネスをつける。スリングやカラビナの数は限定しない。2周目はハーネスなし、安全環つきカラビナ2、普通カラビナ1、60cmスリング2本、120cmスリング1本のみ持つ(二人分合わせてその数)。


 
救助隊編成

1,隊員の役割分担をきちんと決めておきましょう。
①捜索本隊
②記録係(隊員名簿、事故現場のスケッチ(含、撮影)、救助の進行状況(克明に))
③雪崩の見張り役(二次災害を防ぐため)
④サポート隊(ツエルト設置、湯沸かし)
⑤ルート設備およびルート工作
⑥通信係
⑦会計係
⑧その他

*救助を依頼された場合、リーダーか、隊員か、何係か、自分はどこにあてはまるのか考える。
*集まった集団にあって自分が会のリーダー会員でなくとも、リーダーシップをとれる第一順位があるとすればリーダーシップが委譲できる人がくるまでリーダーシップをとり続ける。


2,注意事項 
①隊員の安全確保が第一
②多数か少数精鋭の救助隊か、リーダーは隊員の安全確保の視点から決定する。
③手を貸したら最後までめんどうを見る。役割の解除はきちんと確認する。
④死亡の判断は出来ない。生きているものとして扱う。
⑤救急車に乗せるときは生存者として申告する。(死体は物扱いです。)
⑥あらゆる場面でできるだけメモを残す。
⑦連絡は必ずメモとともに。(5W1H)
⑧弁解や言い訳を連絡にいれない。
⑨電話の相手にもメモをしてもらう(メモが無いと伝言ゲームのようにいろいろと解釈が加わって伝わってしまう)

3,連絡
第一報 警察
第二報 所属山岳会(又は会社)
第三報 家族には所属山岳会(又は会社)に頼む。


登山教室Timtam緊急連絡体制

   Timtam救助委員会←←担当リーダ←←←←事故発生
     ↓ ↑    ↓     ↓    ↓         ↓
   登山教室Timtam 事故者自宅  現地警察署   現場処置
                    山小屋
                    消防防災・病院

マスメディア対応
対応によって救助活動が阻害される可能性があります。現地もTimtam救助委員会もサブリーダーが対応にあたり、リーダの指揮権を守るようにします。

 

登山教室Timtam
03-3600-3570  (優先順位1)

Ta
090-1691-6581 ( 〃   2)



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